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28話 王の依頼

 夜、衛兵たちの訓練から戻った俺は久しぶりに玉座の間へと足を踏み入れた。


「グスタフ、よくぞ来てくれた」


 そこにいたのはいつもの2人。王とモーガンさんだ。


「訓練指揮、ご苦労。素晴らしい成果を上げているようで何よりだ」

「いえ、俺なんか全然。衛兵たち全員の陛下への忠誠のたまものです」

「謙遜するな、グスタフ。他ならぬお主の功績を認めておるのだ。近くまた何か褒美を考えておるが、しばし待て」

「ありがとうございます」

「うむ。それでだが、今回お主を呼んだのは訓練指揮への労いと……もうひとつ頼みたいことがあってなのだ」

「頼みたいこと、ですか?」

「そうだ」


 王が頷くとモーガンさんがそれに応じて、俺の元にくると何かを手渡してきた。


「えっと、これは……何かの飾りですか?」

「それは剣の(つば)だよ、グスタフくん」

(つば)?」

「剣の持ち手と刀身の間に挟まってるやつさ。これを見てみなさい」


 モーガンさんが腰に差している剣を見せてくれる……ホントだ。あまり意識して剣を見たことが無かったから分からなかったけど、確かにどの剣にもあるな。この平べったい鉄のやつ。


「それでこれがどうしたんですか、陛下?」

「うむ。その鍔には独特な紋章があるだろう? その紋章は近頃この王国で暴れ回っている盗賊団のものなのだ」

「盗賊団!」

「なんだ? もしかしてすでに知っていたのか、グスタフ?」

「い、いえ……」


 ……知らないはずがない。何故ならそれもまたゲームのイベントのひとつに関連するものだからだ。

 

 魔王軍の登場に便乗するようにして王国の中で徐々に勢力を拡大していった盗賊団はあちこちの町を荒らし回ったり、旅の途中の行商人を襲って問題視されるようになる。そしてそれを見かねた王はその盗賊団の壊滅を依頼するのだ──勇者アークに対して。


 だけど、そんなイベントも俺という存在の介入でどうやら少し変わってしまったらしい。


「グスタフよ、お主にはこの盗賊団を壊滅させてほしいのだ」

「やっぱり……」

「うむ? どうした?」

「い、いえ、なんでも」


 そりゃそうなるよな。勇者の魔王討伐の旅を途中で止めさせて盗賊団を倒させるよりも、王城の人員だけで解決できるならそうするのが自然な流れだ。


「それでは引き受けてくれるかね、グスタフよ」

「はい。分かりました」

「その間のレイアの警護についてはレベルアップした衛兵たちに任せ、なるべく早急に事にあたってもらいたい。いつもお主にばっかりスマヌな」

「いえ、そんなことは。すぐに出立します」


 しかし盗賊団を倒すイベントか。とりあえず引き受けてはしまったけど本当に俺がやっちゃっていいのだろうか? 実はゲーム上ではこのイベントをクリアすることで新しいエルフのヒロインが勇者一行に加わることになる。そのエルフの職業は魔術師で、今後の魔王討伐の旅では重要な戦力になるはずなのだ。


 ……まあいいか、今の勇者一行にはアグラニスとかいうよく分からないが実力者っぽい魔術師がいることだし。




「──というわけで、これから数日よろしく頼むな、ニーニャ」

「はぁ……まあ王からの依頼なら仕方ないわね。サッサと片づけましょ」


 カチャカチャと、手元でルービックキューブみたいなものをいじりながらニーニャは物憂げなため息を吐いた。


「もしかして、子供たちから離れることになって心配か?」

「……ううん、レイアがちょこちょこ顔出してくれるって言ってたから」

「……そっか、それならいいんだけど」


 ……ちょっと悪いことしたな。ホントは俺1人でも大丈夫そうではあったんだけど、念のためってこ理由でニーニャも連れ出してしまった。


 俺たちは2人、城下町から出て北西へと馬車に揺られて進む。今回の一件に関して、モーガンさんにはたった2人で大丈夫かと心配されたが問題ない。

 

 盗賊団の壊滅、字面にするとかなりの大仕事に思えるが実際はそんなことはない。ゲームをやり込んだから知っている事実ではあるが、この盗賊団には中ボスが3人と大ボスが1人いて、そいつらさえ倒してしまえば後はザコばかりなのだ。


「ま、これも仕事ってことで割り切るわよ」


 カチャカチャ、カチャリ。ニーニャはルービックキューブもどきを完成させると同時に顔を上げた。


「確か盗賊団が最後に確認されたのはフォボスの町だったかしら。私たちもそこに向かっているのよね?」

「まあ方角的にはそうだな。でも町に寄るつもりはないよ」

「え? どうしてよ」

「もうそこに盗賊団はいないからな。ヤツらがいるのは西の森深く。通称【魔の森】の中さ」


 ニーニャが目を見開いてこちらを見る。


「魔の森って……確か人間が立ち入れないほど強いモンスターたちがウヨウヨいるところじゃないっ! 盗賊団はそんなところをアジトにしてるっての?」

「ああ。ヤツらは傭兵崩れなんかが多くて戦闘経験が豊富だから、モンスターたちとの戦い方も心得てる。自分たちにとっては安全でその他の連中には危険な場所をアジトに選んだんだろう」

「レベルも高そうね。王がアンタに依頼を投げるのも分かるわ。普通の衛兵たちじゃちょっと荷が重いだろうし」

「そうだな」


 確か盗賊団のザコのレベルが12~15、中ボスのレベルが20、大ボスのレベルが25とかだったはずだ。王城衛兵の平均レベルが15程度なことを考えると、中ボス以上が出てきた時の被害は大きいだろう。


「まあ俺とニーニャなら余裕さ」

「そりゃ、アンタに勝てそうなヤツとか居なさそうだけどね……」

「なんでそんな呆れたみたいに言うんだよ」

「なんかアンタが盗賊団を1人で吹き飛ばす姿が想像できちゃうのよ。アタシって必要かしら?」


 ……まあ、1人でできるのかできないのかで言われればできるけど。


「たとえそうだったとしてもニーニャは俺に必要だよ。だからこうしてついてきてもらったんだ」

「……フ、フンっ! 別にそんな気を遣わなくってもいいわよっ」

「事実を言ったまでだよ」

「ふぅん……あっそ」


 ニーニャは唇を尖らせてスネたようにしつつも、しかし満更でもなさそうな表情だ。うん、どうやら上手く機嫌を取れたみたいだ。俺もちょっとずつ女の子の扱いがマシになってきただろうか。

 

 ……それにニーニャが必要というのはウソじゃない。これから行く先で俺たちが出会うことになるのは決して盗賊団だけじゃない。エルフのヒロインにも会うことになるはずだ。

 

 ゲーム上でのエルフのヒロインは、里の幼子たちを盗賊団に人質に取られて無理やり働かされている。勇者一行は盗賊団を倒してエルフを仲間に引き入れることになるのだが……今回その役目が俺に回ってきている。エルフのヒロインと男の俺1人で接するよりかはニーニャという女の子が居てくれた方が、相手としても安心できるだろう。


「頼りにしてるからな、ニーニャ」

「まあ、全力を尽くすわよ」


 カチャカチャ、と再びルービックキューブもどきをいじり回し始めるニーニャ。


「……ところでさっきから遊んでるそのオモチャ、なに?」

「え? コレ? なんか年季物の組み木のパズルらしいわ。アタシが小さな頃にスラムに居たジイさんからもらって……今でもヒマな時にはいじってるのよ」

「ふーん……」


 ニーニャからちょっと借りてみる。……ん? なんだこれ? どの面にも何の絵柄も無い。しかもルービックキューブのように3×3のキューブですらない。不定形な木と木が組み合わさってできる線のみがそこにはあった。どこをどう動かせばいいのかも分からなかった。


「えっと……これ、何をそろえればいいの?」

「そろえるって……なにが?」

「いや、こういうパズルってさ同じ色とか模様とか、そういうものをそろえるものじゃないの? なにを目指してどこを動かしていけばいいのかさっぱりなんだけど」

「なにを目指してって……そりゃこの箱を開けること以外ないじゃない」

「開ける? これ箱なの?」

「うん。ジイさんは『古い時代の宝箱じゃー』なんて言ってたけど……ウソかホントかは分からないわね」

「へぇ……しかしさすが子供の頃からいじってるだけあってそろえ慣れてるみたいだよな? ニーニャはこの箱を開ける手順をぜんぶ丸暗記してたりするの?」

「え? この箱のパズルは開いて閉じてを繰り返すたびに解法は変わっていくから暗記なんて無駄よ? だいいちそんなことしても楽しくないじゃない」


 ……おお、ニーニャさん実はかなり頭がいいみたいだ。少なくとも俺よりかははるかに。


 新しい発見をしつつ、そうして馬車に揺られること1日。俺たちは魔の森の入口までやってきた。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


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