君はクエーサー
蒸し暑く、汗でペタペタする肌が時折触れ合う。
はじめは人ひとり分以上開いていた距離は、数年をかけ、今では時折腕が触れ合う程に縮まった。
スマホの天気予報を見て「明日も暑いね」なんて言葉を交わしながら夜道を歩いていると、花火を見に行こうと誘われる。
混むのは嫌だよ。
そう返すと、彼は数メートル先のコンビニの灯りを指した。
「じゃあ、目の前で打ち上げようぜ」
花火を手に子供みたいにはしゃぐ。
強烈な光度で弾けては消えるそれに、その瞬間瞬間に強く弾けて過ぎ去ってきた眩い日々に思いを馳せた。
「火いる?」
はい、と彼が突き出した弾ける燃華に私の蕾を近づける。
瞬間、激しく華燃えた。
気持ちが繋がったみたいだ──。
らしくもなく、そんなことを思った。
「誕生日おめでとう」
まだ伝えていなかった大事な言葉に、彼はニカッと笑った。
「打ち上げ花火やろうぜ」
最後に残った大きな筒。
導火線に火をつけて、彼が私の手を取り駆けた。
ヒュ〜、と上がった火魂が見上げた夜空に華開く。
その華の奥で、私は街明かりにかすみながらも漫然と輝く星空を見ていた。
ただ夜空を見上げる2人を、夏の静寂が包む。
彼を太陽みたいだと思う。
明るく燃え盛る輝きと、強い力で誰もを引き付ける彼を。
けれど。
慣れてきた目が夜空に多くの星を捉える。
強く、淡く、大きく、小さく、光り輝く星々。
その遥かムコウの宇宙の数多の星のなかで、太陽の100兆倍も明るく輝き、太陽の1億倍もの質量ですべてを引き込むそれは、宇宙で最も明るい天体──。
彼が太陽ならば。
”君”はクエーサー。
初投稿作品です。
ご覧いただきありがとうございました。
いつかストーリーを練れたら連載として長編化したいな。
にしの佐布里