ぼくの家は動物園
「ゆう君の家には犬居ないの?」
みーちゃんは不思議がりました。ゆう君は動物が好きで、動物の話ばかりするから、犬か猫を飼っていると思っていたのです。
「シンリンオオカミとスマトラトラなら居るよ。」
みーちゃんは不思議がりました。犬も猫も飼っていないのに、狼や虎が居るなんて信じられません。だから、確かめたい、見に行きたい、と思いました。
「ねえ、見に行っていい?」
ゆう君は少し困ります。家には沢山の動物が居ます。それは、パパもママも大切にしていて、勿論、ゆう君も大切にしている《ぬいぐるみ達》。だから、汚されないかな、乱暴にしないかな、と思いました。
「あんまり触らないでね。」
みーちゃんは不思議がりました。狼や虎を触ろうなんて思わないからです。だって噛まれたら大変です。手がなくなっちゃうかもしれません。
「うん。触らないよ。」
ゆう君は少し安心しました。みーちゃんは、ひー君と違って、普段から物を大切に使うし、しーちゃんと違って、嘘もつかないし、まいちゃんと違って、約束を忘れたりしません。
「じゃあ、行こう。」「うん。」
ゆう君は笑顔で言いました、みーちゃんも笑顔で言いました。
急ぎ足で着いたゆう君の家、みーちゃんは少しドキドキ。玄関を開けると、大きくてモコモコした牛のスリッパがお出迎え。
「ただいま。」「おじゃまします。」
洗面所にはテナガザルのタオルハンガー。手洗いうがいをすませると「こっち」ゆう君は自分の部屋へみーちゃんを案内します。
「わぁ!」
みーちゃんは驚きました。ゆう君のベッドには、大きな狼と虎が寝ています。
「本物みたいでしょ?」
ゆう君は、シンリンオオカミのお腹に頭を乗せて、スマトラトラを抱きかかえました。寝る時はいつも、そうしています。でも、みーちゃんは心配です。ゆう君が食べられてしまう。本物じゃないと分かっていても、そう思ってしまって、ドキドキします。
「他にも居るの?」「いっぱい居るよ!」
自分の部屋を飛び出して「ほら!」ゆう君が指さした先、テーブルの周りには、象、パンダ、鹿、キリン、大人が座っても潰れません。テーブルの上のヤギはティッシュケース。
テレビのリモコンはペリカンの口に、カンガルーのお腹の袋にはエアコンのリモコンが入っています。ソファには亀とアルマジロ。ソファの横には大きな白熊も居ます。
ゆう君の家は、あっちもこっちも、どこもかしこも、見渡す限り動物のぬいぐるみ。カーテンタッセルにコアラ、カーテンレールの上にはフクロウとオオハシ。トイレのペーパーホルダーはライオンでした。
家中を見て回って、沢山の動物に会って、自分の家とは違う、ゆう君の家に、驚いたり面白かったり、みーちゃんは楽しくて、ゆう君は楽しんで貰えて嬉しくて、二人はずっと笑っています。
「凄いね、ゆう君の家、動物園みたいだね。」
「うん。ぼくの家は動物園!!でも、皆には内緒だよ。」
「どうして?」
「大切な物は、大切な人にしか、見せちゃいけないんだって。」