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エピローグ

長編に手を出し、終盤で書いてる手が止まったので供養に投稿しました。

メインストーリーはあらすじに書いています。

投稿は最終場面、エピローグのみ。

評価などをいただければ、本編も書き直して投稿したいと思います。

 あの日、魔王と結託したとして姉は投獄、処刑を言い渡された。

 教会は穢れた存在だとして聖女の肩書を剥奪し、魔女と呼んで貶めた。

 しかし姉は微笑み、魔王の伴侶とされるならば本望だと受け入れてしまった。


 処刑の前日、様子を見に訪れた私はあの日のことを聞いた。

 姉は初めからユージンさんが長くないことを知り、望みを叶えるために側についていた。

 ユージンさんの望みはアリエルさんに恩を返すこと。

 幼いころから強すぎた彼女は「実力が伯仲した相手と戦いたい」と口にした。それがユージンさんを育てた(飼い始めた)理由。人相手では不足だと考えたアリエルさんにはちょうど良い相手のはずだった。魔人は肉体は強くとも治療するには治癒魔法では効果が薄く、大怪我を負うと完治までに時間がかかる。アリエルさんは気がつくと本気で戦えなくなっていた。

 そんな時に姉の神聖魔法を受けて快癒したのは衝撃的だったのだろう。ユージンさんは「聖女が側にいるなら心置きなく戦える」そう告げて生死の全てを姉に託した。

 しかしアリエルさんが本当に望んだのはそうではなかった。

 大人になり欲望を抑えられるようになっても残ったものが、ユージンさんの子供だった。

 二人が別れたのは何年経ってもアリエルさんが身籠ることがなかったから。それは光属性を持たないユージンさんに原因がある、一時期行動を共にした母がアリエルさんに話したそうだ。

 その内容についてアリエルさんは本人に伝えていない。それでも人との違いを埋めるためにユージンさんは光の加護を望み、魔王討伐を目標に定めた。

 母が口にした創世記からの引用「人は光を宿して生まれ来る」、ユージンさんが希望を見た四英雄物語から「魔王を倒した勇者は光の加護を授けられる」。その二つの言葉を胸に、姉は覚悟を決めた。


 教会、そして貴族達から魔王は《ジン》と命名された。

 同時に冒険者だった頃の実績、人々を守った守護者(ガーディアン)としての功績、名前まで抹消させられた。

 けれど人の記憶は消せない。あの人のことは私達の中に残っている。悪意を付け加えられるぐらいなら、記録など始めからない方がいい。

 司教はよく勇者を支援したと讃え「聖女になるべく努めよ」と言われたが、その浅ましさと厚顔さに呆れてしまった。

 私は丁寧に理由を述べ、申し出を断った。

 あの日、最後の魔法力を使い果たして以来、私は神聖魔法を使えなくなっていた。

 未だ神聖魔法が使えたとしても、今更あの存在を敬えるとは到底思えない。ましてや司教のいる教会に戻ろうという気は起きなかった。

 報告に呼ばれたのは私だけではなかった。

 勇者アリエルは自ら魔王を育てたと申告し、全ての報酬、恩賞を断り、立ち去った。

 ラフテラは魔王を師匠と呼び、自分は戦士ではなく暗殺者だと告げ、姿を消した。

 権力者達はひとり残る私の前で憤慨した。魔王を倒し、神からの祝福まであると言うのに勇者達を利用できなかったからだ。

 教会が功績を誇ろうにも、聖女を魔女にしたことは人々を不安がらせた。「魔女を育てたのか」「違う」「聖女様を魔女にしたのか」「違う」「リアトリス様は聖女様ではなかったのか」「あれが勝手に魔女になったのだ」それが決定的だった。教会への喜捨が消え、冒険者ギルドは修道士の受け入れを辞めた。

 市井の人々は教会が、司教が聖女に何をしたのかを知っていた。

 ユーリに連れて行かれた私を取り戻すために姉は人々を、貴族を利用したからだ。

 司教は貴族だった私達の家を潰し、孤児院に引き取られた私の身を盾に取り姉を聖女にした。

 醜聞は貴族に、国王の元にも届いた。姉の訴えは認められ教会の発言力は地に落ちる。貴族を弄ぶほどの(国王に匹敵する)権力は与えていないと。


 処刑の当日、ある貴族の一声で話は覆る。

「勇者ユーリが魔王に負けたことも記録に残すのか?」

 勇者アリエルが姿を消した以上、若い勇者であるユーリの汚点を早々に記録に残しておくことはできなかった。

 今回の出来事は魔物が凶暴化して街を襲ったとされ、魔王の記録そのものを消した。

 証拠を残すことになる処刑は執行されなかったが、解放された後も教会は姉の魔女を取り消さなかった。

 そして国で一番大きいと言われていた教会は、数年後わずかな人数と孤児院を残して拠点を変えることになる。


 あれから十年が経った。

 死んでも返せないと嘯いていた借金は、商人のグラントリーが闘技戦で得た利益を使ってくれた。

 しかし冒険者ギルドに保管されていた書物は数多く、街の小さな家では受け取るのも難しかった。

 私達は街から遠く離れた村で新しい家を建てた。


「アデルハイト様、いつもありがとうございます」

「賢者のお姉ちゃんありがとう!」


 小さく手を振る私に身体を大きく曲げる村の人々、子供達は風を起こすぐらいに大きく手を振り返してくれる。

 あの人の遺産を継いだ私は、この村で賢者と呼ばれるようになっていた。

 そこには幼い私が欲しがっていた、魔法について知りたいことの全てがあった。

 しかし書物はそれだけではなく、魔物、動物、植物、鉱物、道具、病気、何より多くの物語が集められていた。

 どうしてそこまで集めたのか、本人がいない今となってはわからない。受取人不在の場合、遺産はギルドに納められる事になっていた。もしかするとギルドにいた誰かへのプレゼントだったのかもしれない。

 私はその書物に収められた莫大な知識を使ってこの村の農作物にあった発育不良を改善させた。

 これから注意することとして、農作物を狙う獣やそれを追ってくる魔物が潜んでいると教える。

 普段はラフテラが巡回しているけれど、魔法の訓練も兼ねて私も手伝っている。

 他にも病や怪我を負い、治療を欲する者には赴いて薬師や聖職者の真似事をする。

 作ることができないもの、足りないものはグラントリーに運ばせて商いをさせた。

 手の空いた時間にはリアトリス姉様と共に子供達に物語を聞かせている。

 そうしていつしか私は賢者、ラフテラは守護者、姉は魔女様として子供から懐かれている。

 けれどあの出来事が記憶にある限り、私は自分自身を魔法使いだと思っている。

 あの人が私をそう呼んでくれたから。


「アデル、急いで! もうすぐ家なんだから! ラフテラは先に戻ってるよ!」

「わかっています。それから前にも言ったでしょう、女性を急がせるのは良くありません」

「アデルだから大丈夫!」

「本っ当っ、あなたはあの人そっくりですよ!」


 癖のない黒髪にくるりとした焦茶の目をもつ男の子。悪戯好きで走り回るようになった頃には着る服に悩まされた。

 スカートが短ければ捲られ、長ければ潜られる。おかげでローブはいつもクシャクシャ。賢者と呼ばれる私でも男の子の行動を諌めることができなかった。

 男の子は母親の事が大好きで、外に連れ出しても帰るとなると途端に元気を取り戻す。

 その母親は子供を育てる自信を失い、しばらく行方を晦ませていた。連れ戻すのには随分と骨が折れたが、今は落ち着いて姉と一緒に暮らしている。

 離れている時間があったのが良かったのかもしれない。明るくなった彼女は前よりも子供を深く愛しており、気づけば真っ先に出迎えに現れる。先触れにラフテラを帰したのもそのためだ。

 小高い丘に背の高い女性の手を振る姿が目に入る。

 それを見た男の子は私の元を離れ、駆け出していく。そして飛び込む男の子を彼女は優しく受け止めた。

 彼女が落ち着いた理由はたったひとつ、自分の子に母と呼ばせるのをやめたのです。


「ただいま! アリエル!」

「おかえりなさい、ユージン」

主要キャラが何を欲して行動していたのか端折り過ぎてわからなかったので本文1,000文字ほど追記しました。

作者的にはリアトリスが一番満足を得ていると思っています。


【作者からのお願い】

読んでいただいた後に、本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価をお願いします。

他の方の目に留まれば尚嬉しいです。

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