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継承物語  作者: 伊阪 証
聖女と無条件の醜悪
9/74

コンテナと積み重ね

「王国で最も気を付けるべきは魔術では無い、気高さと格差による治安の悪さだ。」

アランはそう言っていた記憶がある。

かくして彼は治安最悪、略奪行為の横行する街、窃盗街という不名誉な仇名を付けられただけの街にやってきた。誘拐された彼は、誰にも連絡を取れないまま、苦しめられるだろう。



一帯の荒廃、こうも汚れた街が他にあるだろうか。石の積まれ方が昔の栄光を語る。

コウキの衣服は既に奪われた、極寒の中、死ぬ事も出来ない。手を見れば裂傷と打撲傷が見える。血流が変貌し、マトモな色をしていないのだ。

すると一人が通り過ぎる、あの道には誰もいない、視界を遮る様に彼がいる中目を合わせず、石や弓、銃弾がデタラメに撃たれ、訓練していない連中ではただ歩くだけの相手にすら当たらない。一方で彼は攻撃の素振り一つせず、目を伏せた。・・・実力差から来る余裕では無い、諦めているのだ。無秩序にもゴミだらけの端っこの道があり、血飛沫落書き肉片が転がる街並みの中でさえ、彼一人を狩るのには一致団結していた。

彼の目は死んでいる、一般的な目と同じだが、下を向く彼に光は入らない、また、不思議とその黒は大きく見えた。

暴言や罵声が軍の咆哮の様に響いた。蛮族の様に揃ってはいない、非正規軍の様な指揮にして、敵前逃亡を誰一人行わない最高の軍隊。

・・・それがこんな形で見なければ最高だったろうに。

「彼女は・・・何処へ・・・。」

折れた心が一言、零した。


寒さに耐えかねて無人になった家から服をくすねた。背面がジッパーになったワンピース、汚れた女物のショーツ、パンプスは無視して靴下を履き、最低限普段らしい身形を整えた。汚い、洗うか変えるかはしておこう。

「・・・君は、逃げなくても良いのかな?」

背後から声を掛けられた。先の男だ。しかし、彼は別の方向を見ていた。

「ヒッ・・・!化け物!近寄るな!来るな来るな!!気持ち悪い!気持ち悪い!キモイキモイキモイ!!」

「じゃあ、君ではないか。・・・目の機能を使い物にならなくした奴が言うには説得力に欠けるな。」

肌の色が飛ばし飛ばしで異なっている、白から黒まで、肌の色という意味ではなく、絵の具の色という意味で。腐り落ちた色から、血の通っていない色まで揃っている。病めども死なず、この世で最も死に近い人間だ。

衣服を変えた儘の現状、武器は持てない。硝子片一つで化け物に向かう童女を刺し殺した。失血の後に、苦悶に沈む。

「・・・あー、ごめんなさい。迷惑掛けちゃって。」

「・・・うん? ああ、君は珍しいタイプの・・・人か・・・。それともそういう癖か、そういう使命か。」

「んー、特に何とも。」

「立ち話はよそう、私を殺したら彼女はもっと悲惨な目に遭っていただろう。・・・非道ではあるが、マシな結果だな。」

「かっこいい・・・かな? うーん、私は好きな人がいるからかっこよくはないかも。」

「余計な事は言わなくても良いさ、見た目の割には幼いが・・・それでも小さいな、箱入り娘か。」

「箱入り!箱に入れられて運ばれたけどね。」

「・・・誤魔化して消そうとしたか、やっぱりろくでもない奴の娼婦の類だったか。」

彼はこの煉瓦の街外れ、コンテナばかり積まれ、新井式回転抽選機にも見える場所に来た、道もコンテナ、梯子もコンテナの側面を削ったものか地面の段差を使ったもので登る。軍手を受け取るも、多少の出血が防げない、彼は止まらずに行ってしまうかと思えば、気付いた時には力強く引っ張り、上まで運ばれる。

「・・・良し、此処に衣服はある、男女問わず揃っているから持っていくと良い、私は触って漸く気付ける程度に目が悪い、着といてくれ。素肌を擦り付けて試すな。腕だろう?」

「騙せなかったかぁ・・・。」

「空腹かもしれんから次は飯を用意しよう・・・とは言っても何も無い、私には魔術も何も無い、空腹の儘水だけで何ヶ月立ったかな・・・タンパク質の消耗のせいで身体が維持出来ない位だ。」

「じゃあ、私が狩りをしてくる。武器はある?」

「ラットのショットガンとかどうだ?」

「良いね、私の好きな人が教えてくれたから分かるかも。」

「サバイバルナイフ、ジッポー、ロープ。湖周辺だけにしておけ。」

「分かったー!(別に使わないけど。)」

「護身用でもある、それを忘れるなよ。この辺りは不良が多いんだ。」

心配の募る、走っていった子供。妙に誰かを思い出してしまう、その時に自分は笑いもしなかった。・・・自分は唯一の救いも、苦しんでいる様に見えていた。

「ルナ、君は此処に居て良い存在じゃない。・・・苦しんでいる君はいい加減開放されるべきだ。」

己を侮辱するのは、少し辛い。だが、己の不幸でさえ掻き消してしまう、彼女という光がただ心に残ってしまうのだ。



出血口を縛り、変化した色を見かけた。意識が朦朧とし、ソファーに突っ伏す彼を見た。

「・・・ああ、少し触らせてくれ。このワンピースも見覚えがある。懐かしい・・・だが、少し小さいな。・・・君が殺したのか?継いだのか?」

「ううん、知らない。」

「そうか。」

彼を少し持ち上げ、引っ張る。

兎数羽、それ以外は冷凍コンテナに入れてある。電力は発電機がかなり多く、水力、風力、電力とあるが一番気になるものとして小型原子力発電というものがあった。自分は死なないが彼は大丈夫なのであろうか、若しかしたら言語が合ってない可能性もある、産まぬ人間の特性で会話は出来るが慣れは必要だ、無意識に会話していたが、よくよく考えれば違和感があった。

「料理は無い、火で焼いても自分を間違えて焼く事がある位だ、出来る訳が無い。・・・ゴミは食うなよ。」

「兎!調味料無いけど。」

「植物持っても枯れるからな、作る事も出来ない。」

「私料理出来ない・・・お母さんが全部やってくれたから・・・。」

「まぁ、偶には直な味を知っておくと良い。私には良い味すら分からない、痛いのは苦手だから、緩和するものを探す位しかない。」

兎は生だと野兎病を起こすので気を付けよう。兎は煮るもよし焼くもよし、淡白な味なので若干物足りないと思ってしまう。信州のウサギ汁や四川の角煮が有名だ。

「ほぼ鶏肉ね、これ。」

「駱駝よりは上手いな。」

「他にも冷凍保存してあるから・・・。」

「干し肉にでもすると良い、後で作っておく。」

「大丈夫?足りる?」

「食べ過ぎたらショック死する、少しで結構だ。」

「ストレス解消出来る?」

「・・・彼女がいるなら大丈夫さ。」

「彼女・・・?」

「ルナ・トゥールーン。私の読んだ本の中でクルアーンは最も理に叶った聖書だ、私の思想を押し付けるつもりじゃないが、彼女には関連する言葉を託した。だからトゥールーンだ。それを気に入って本当の姓を教えてくれなくなったのさ。」

「可愛い名前と、良い苗字。キンチェムみたい。」

「きんちぇむ・・・?」

「馬と人間のお話、ぱっと聞いて思い出した。」

突然コウキは痛みに倒れかけた。

それに駆け寄る彼に触れ、少し支えていた。

「・・・傷だ、蛆が居たら火薬でも塗っておけ、気絶するだけで済む。」

「大丈夫・・・でも、治りにくい・・・。」

「刺し傷・・・レイピアか?銃創か?」

薬草等は無い、不死に意味は無い、だが、彼女は妙に苦しんだ。

コウキが居ない、今迄不死の中で痛みを請け負ったコウキが居ないのだ。勝手に請け負っていた事はさておき、目覚めないだけかもしれない。

「・・・注射針か。硬いな、何の金属だ?」

「う・・・!」

「今すぐ抜く、少しタオルを噛むといい。」

痛覚が根から響く、相当奥底まで刺されていた。脊髄、大脳に影響が無い分マシか。

「父親・・・一度もみた事はないがその医療だけは受け継いでいる。任せろ。」

「任せろじゃなくて早く抜き終えてよ・・・。」

「カーボン製、タクティカル・・・何だ?・・・ピストル? ・・・注射銃って事か?」

「・・・抜けた?」

「済まない、集中が完全に削がれた。」

「・・・あー、良かった。」

「食べた影響で血管や胃が運動したからか?・・・いや、そこまで影響しないと思うが・・・。・・・抜けるかどうか確認しているのか・・・?探知機も無いぞ・・・?」

「ありがとう!・・・アフターケアもバッチリだね。」

「事後処理・・・そういうものもあるのか。」

「良い医者になるかな?」

「助けたい一人を助けれないからどの道資格なんてないさ。」

少し抱いて頭を撫でた、不意にするが、彼は気が抜けたのか甘んじていた、立ち直りが早い事に驚いてはいるが、変な患者が多かったのか、それとも自身の知見、特に生物に対してが乏しいからか、彼は理解し得なかった。

涙が一筋見えた、愛情というものを見た事がある、読んだ事もある、だが、彼は親子愛という最も素朴なものが欠損している。それが心に深く刺さる。腰周りを抱き返される、その時に少し動揺し止まったが、理解は出来た、どこか自分も反対ではあるが近い、否定出来ない目の前の光景が、唯優しく憧憬に満ちていた。


泣き止んだ後も平然としている彼は、余程人間味に欠けるが、生物的にはスタンダード、他人を忘れていた彼だからこそそういう思考に陥る。その中で質問をした。

「・・・アルトリウス・・・知らないな。生まれてから字を覚えた事はあるがこの国の言葉と本の字だけだ。・・・だが、公用語が違うのにどうして君は話せるんだ?」

「分かんないや。」

「・・・殺したとかなら分かるんだがなぁ・・・この傷とか、経験則で言えば不意打ちのものだ。一点だけ深いが素早く打ったために治りにくい訳じゃない。拷問のジワジワと行うものと全然違う。」

「心配してくれるの?」

「・・・君って割と悪女っぽいのか?」

「私、人を甘やかして駄目にする悪女!サボタージュも時には大事。・・・それで、最初出会ったら時は何があったの?」

彼を見つめる、先の負い目があるのか、いや、心を許していたから彼は確りと話した。

「・・・安心しろ、私に好き好んで近付く物好きは現状君ともう一人しかいない。・・・私は他人の性格を矯正し同一のものにして軍人を作る為に利用されているだけだ。・・・止めるな、・・・君も彼女の様にされてしまうよ。」

そして彼は自身の立場を語る。

「エリニューエスの部下と契約を結び王国に仕えている、軍人の性格矯正装置。・・・まぁ、死んだ奴はあの子に全部焼き付くされるだろう。」

次に彼は名とその使命を語る。

「私はジョー・クレイトン。女神に愛され、その代償として全ての生物と植物に嫌われた者だ。」

使命としては『寿命が尽きるまで生きる』・・・というもので、改竄された、ルールギリギリのものである。帝国には存在しない、女神というワード、それも目に留まる。だが、彼は続けた。

「植物に悪口を言い続けると成長を拒否して枯れるという話があるが、私は存在だけで周辺にそれが引き起こされる。」

目を逸らし、透明プラスチックの窓を見つめて言っ

た。

「災害とあの物好きだけはそうではないらしい。今日は来てくれるだろうか・・・。彼女は綺麗な顔と端正な身をしている、君も出会ったら挨拶位しておくと良い、間違えて何かされるかもしれないから気を付ける様に。」

目に涙が見えた、彼女、ルナに相当な負い目を感じている、元が善人なのだ、ここまで人間として否定され、記憶もなく、奪われ続けた。だが、少し違う、彼は幸せというものが過去に存在しなかった。

幸せがないから憧れなかった、それ故に彼はそんなに絶望していない、しかし、こうして教えてしまった時、些細な物でも喜びとなってしまう。侮蔑的な扱いの後に受け入れる優しい人が居た時や、威圧的な対応をしてきたがその実厳しくマナーであると指摘しつつも失態を認めた時とか・・・死んだ女の姿をした女と出会った時とか。これは、躾にも近い。

その甘美を求め続け、縋る、それに縋る事が出来ないと確信した時、人は漸くひねくれる。・・・完全に個人依存なのだ。

だからこそコウキは言った、その行動は、二度行われるものではないとしても。

「・・・私はいつまでも生きられない、多分、五年も経たずに殺される。・・・だから、忘れるか、我慢してね。」

その言葉の重みを知りつつも、自分にもするべき事があると伝えたのだ。

「君も同じ口か、盾にするなりしても良いが、大災害になりかねないぞ。・・・だから自分の身は自分で守れ。」

案外、淡白に返したが、目は背けられた。又は適当に片付けられた。それを少し笑うと、耳の赤さを知らない、記憶に無い彼には分からない、頭隠して・・・尻ではなく、耳隠さずの笑い話が生まれた。



コンテナ積みの湖、軍港か何かだったのか、段差が大きい。とはいえコンクリートが割れた後が散見され、風化しているとも考えられた。・・・そんな中、一本の道に影があった。

「・・・不味い、王国軍か。殺されたら私の使命記憶を継承する事になるぞ・・・!?」

「・・・私も手伝う。」

「頼らざるを得ない、済まない。」

「私、少しは鍛えて貰ったから大丈夫。」

「本当に不味い時は私を盾に使え、君だけは助けられる・・・代わりに一日数十人が私の継承で自殺を選ばされる事になる。」

「・・・良い人、そういう人はタイプ。」

「・・・少しは希望を持って粘るよ。」

ナイフを二本、バールにはダクトテープとロープを括り付けてある。簡易的なグラップリングフックとして使える。近代的な銃火器が置くのコンテナから見つかった、冷凍保存されており、ついさっきまで頑張って溶かしていたが・・・大丈夫だろう。

銃はStG-44、45は十丁しかない希少品だが、こちらは最低でも数千は作られている、アサルトライフルのベースとなった武器だ。使い方が単純故に直感てきにも理解出来る。二つ目にはM1911、ハンドガンとしては改良されつつ文明が続く限り最適解として存在する武器・・・と言って差し支えない。人類史への失望とも言えてしまうその言葉は、なんとも詩的で面白い。・・・しかし、近代銃の問題点がある、それは対アーマーを想定した武器ではない点、鎧に命中した場合、意味が無くなる。フルオート銃の個性は全て無に返された、30×8のチャンスと、8の危険なタイミング、そして1発のオマケチャンス。

「・・・良し、眉間に一人一回かな。」

敵の数は未だ知らず、しかし殺気は充分、後は自分の信じる限りを。

敵は恐らくゴロツキだが軍関係、ベガスにいるベロンベロンの軍人と同程度の倫理観と殺意がある、自分の先輩にだろうと銃が無くともガンを飛ばす馬鹿野郎共だ、不意打ちで終わらせよう。サプレッサー等は無く、スコープも無い。一発目は標準確認に使う。

一発目は右に、鎧の音がした、上にどれだけ行くかを確認し、ゴロツキにしては用意周到であると確認した。

驚きの先を、驚きは余暇、未来を読むように守るべく走り出す献身的なゴロツキを中途半端だと脳に結果を突き付ける。その次に狙うは警戒して別方向を向いた輩、その首筋が脳幹という弱点を晒しているのだ。

顔を隠さない辺り、自信があるのか。それとも彼と違うと思い込んでいるのか、気分は悪い。

小隊に大して最も有効な手は相手の数を誤認させる事、例えば二丁の銃で二人撃ち抜く、移動を繰り返しつつ石などにより陽動を行なう事で音から誤認させ、気を逸した後に撃つ、スタンダードアンドユースフル、何にも変え難い。

ではそろそろ潮時だ、ロープを足に結び、広葉樹の幹から跳ぶ、木に注目した人、認めない人、木も陽動であるとか、動物が動いたと考えた人も。

最初から此処に来ているのが間違いなのに、帰れる訳が無いだろう?

六発、体感時間からレートを測定し、もしもの場合のフルオートに備える。

木から吊るされた状態では相手の銃、弓、魔術、どれも脚にしか当たる事は無い、上手く見えない密林、血が飛び、倒したと一安心する事も良い。・・・なんせ、此処の住民はそれの方が好ましいと思っている。実に地方分権をした民主主義らしい決定だ。

死刑判決即銃殺、死体は罰金の代用としよう。

撃ち抜かれて離れ離れになった足に想いを馳せつつもトリガーはバグった天の川の様に何度も何度もついては離れる。

葉は貫かれた、これも彼の敵である、この道は恐らく彼を嫌がった植物の死骸が最早不毛とした場所だ。肥やしを足せば良い感じに自然が再生してくれるであろう、環境保護の一環として、彼流にやってみよう!

脚を付けて、紐で上下括り直す、数分あれば元通りになる。して、ナイフは仕舞う、敵が奪って、叩き切る切れ味の悪い武器の代わりに使われ、ロープを切られると厄介だと考えた。

少し演技混じりに声を出す。

「・・・誰かぁ・・・変な・・・気味の悪い男の人に襲われて・・・逃げてきた・・・。」

それだけあれば充分だ、中央十字の背景を調べた所、弱者救済を謳っていた、クルアーン等が発掘された経緯を見ると、聖書もベースになっている可能性がある。逆に、ローマ帝国を参考に相手の性格を推測出来る。

罠に掛かった、弱者救済を信仰し、その通りにした、弱者と言っても弱者を理解する脳が無い、考えた結果、考えを捨てた、そんな彼等も死体に成り果てた。・・・彼は軍関係、とはいえ、日記に書かれた限りを見ると、全くの不本意である。ここまでするケースは無いとボヤいていたので、自分は殲滅を適切と考えた。

手を最初に伸ばす、銃で射抜いた後、皮一枚で繋がった脚に血を浴びせる、素材を足して治った脚、それを確認した後に動揺と静止、その次を導く。崩れ掛けた中で鎧の為に暴れはするが軸は安定している、それを用いて顔を踏み、下に沈むと同時に蹴り跳ぶ。銃の二丁持ちは出来ない、反動制御による不安定さがネック、それを支えられるのは一秒に一眉間の貫通の判断が必要になる。鎧を盾にしつつロープの余りを引っ掛け、藻掻く将来の遺体を手繰り寄せ、悲痛な叫びを聞かせる。毒矢と弾丸がコントラバスの響きを立てる、遠い光があった、しかし、どれも同族が同族を殺すだけの吐き気のする光でしかない。蛍の様に段々と消えてゆく、お開きだ、子供一人に苦戦する彼等に価値は無い、だが、相手が子供と知れない時、彼等は逃げという選択肢に出て、最早数を数えるのに証拠は遺体ではなく足跡になってしまった。

逃がさない、追い付いて殺す、相手は今後の危険性が考えられ、コウキであれば見逃すだろう、ジョーはそこまで戦える力は無い。自分にしか出来ないのだ、私はこれ以上コウキを悩ませない為に、私の知る正論を突き付ける。

そこで一人、明らかに周囲とは違う、絶世の美女とは違う、叩き上げの美女・・・性格外見を一致させた様な、弱者とも言い難いが猿轡とロープで動けなくなされていた美女が見捨てられていた。

折角なので敵なら遺言を、そうでないなら治療道具を渡すとしよう。

と解いた所、彼女は言う。

「・・・私は、ルナ・トゥールーン。」

「私はコウキ・タカハシ。・・・ジョーが会いたがっていたよ?」

「あ、ありがとう。」

親切に教え、脚を支え、連れて行く。

「どうしたの?お姉さん。」

「・・・あの男の居場所を吐けって、私は彼に詳しい、異端者だから。」

「でも、傷、浅いね。」

「私は普段からこういう扱いを受けてる訳じゃないの・・・止められて、優しくされる・・・でも、彼が、嫌だし、不気味だし、気持ち悪い。・・・それでも助けなきゃいけないって、内心ずっと思っているの。賢いし、優しいし。皆の優しさと違う、明確な目的を持った優しさをしているの。」

「危ないから、充血してない分大丈夫だとは思うけど・・・よっと。」

「あ・・・ありがとう。」

「・・・私は彼、格好良いと思うよ。」

「え・・・?」

「ふふん、数時間だけど私が目、肥えてるね。勝った。」

「ち、ちょっと・・・。私も彼格好良いって思ってるからぁ・・・言わないでね?無駄な心配をさせちゃう。」

「・・・ふーん。」

「ほ、ホントの本気よ!」

「あーはいはい、分かった。」

「絶対分かってないわよね!」

「んっふふー!」

傷心気味の彼女に少し手を貸し、彼の所まで導く。

一応偽装や偽物の可能性を考慮して銃は発砲出来る様にし、背後を常に取る。

服を交換する様に良い、性別を隠しておきつつレディース物を混ぜた事で自分が男と判断されていない、衣服に納刀箇所やマガジン、銃、メリケンサックじみた物が無いか予め徹底的に排除する。・・・あった手を突っ込む。

「・・・指輪?」

「あああ!!見ちゃダメ!見ちゃダメぇ!!」

「はい、プロポーズ中は行かないから、待ってるね。」

「あああうううう・・・。」

ニヤニヤと見たくなるのは自分の性格からか、そうでもない、今珈琲を飲んだらラテになってそうだ。


私の作風に対し違和感のある表現が見抜けると様々な所で今後の予想が出来ます。頑張れ読者。

帝国の通過システムについて。

現在の通過はソリドゥス金重を基準にしている。ソリドゥスはローマ由来、ドルのマークはソリドゥス金貨を指す。これは金本位制だったが金貨王により凡そ1300トンの金を一年で支払われ、銀本位制に代わる、その中でも帝国の通貨は交換対象とその支えがどれになっても対応出来る為交換性が高く『数さえあれば全て揃う』と評価された。レセップスの玉座と呼ばれた毒銀山の開拓以降銀も価値が無くなった。現在は各国の物と交換出来るかどうかの貿易で評価され、帝国においてはテトリという名になっている。

これが第一通貨で、第二通貨は騎士団通貨、ヴィルギルの行うビジネスで、現代の銀行と同じ役割をしており、セキュリティを担保に動いている。また、チェルノボグの契約において最大手。

第三通貨は緊急時に発行される領主券で、各裁量を定められ、大体は研究施設に委任される。

多分本編には絡むけどそこまで影響は無いので一応書いときます。

ジョー君の使命は不死みたいな特性が付きません。クソデバフスキル。

災害名は基本的に比喩なので実際に人間かと問われるとそうでもないのです。

戦い重視のコウキには長弓を渡すと『何だこの変態武器はァ!』と言って捨てます。

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