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継承物語  作者: 伊阪 証
軍神の渇望

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結果的正解の綻び

三ヶ月放置ってマジ?

戦争で、移民は有効だ。

先ず第一に、経済を破壊出来る。移民があれば治安を悪化させ居住範囲を狭め、段々と軋轢を生む事が出来る。

第二に戦力として利用する。借金、国籍を利用し戦地で移民を処分する。負債である移民をどう効率的に処分するか、それも国家元首の手腕次第だ。

帝国程の大国では、勝敗は基本関係無い、長期戦になった際にどれだけ失敗をしたかで決まる。

対大国の戦争では冷戦の様に失敗の回数で決定し、それ以外の場合冬戦争の様に全ての失敗を味わう事でこれ以上失敗しても問題無い状況にする。

ソ連時代、ロシア時代でもこの勝因に変化は無い。日本の辛勝は『期間を設定し、その上で戦う』のが上手く出来たからだ。

帝国も同じだ、金融に頼らず、自国で完結した生産システム、そして移民も有し、それを戦場に送り込む程度に強度の高い法を設定出来ている。そこら辺は知事長の管轄だが、彼女の対内戦能力、治安維持能力は他の公爵に変え難い。



軍神であれば確実に殺せる。・・・それが勝負に勝つ事において取り逃しを発生させない力がある。

・・・これから毎日が戦闘になる・・・そう。

エリーゼの中の殺人鬼が、今確かに手を出したのだ。

軍神の欠点は、勝利を確実にする事である。攻城戦だったら敵を倒し城を奪う事、同時に「味方の大将が死のうと勝利に変化が無いなら問題ない」というものになる。

軍神が強化されれば死の確率も下がるだろうが、同時に狂っていく側面も強くなる。

『軍神を殺す事を込みにして戦略的撤退をし、敗北したという風に見せかける。』それが唯一の弱点だ。

・・・恐るべき事に、コウキ自体が強くなっている。今はあの実力で済んでいるが軍神抜きで考えてもかなり強い。大半の人間がそこで敗北する。

故に、この戦いはかなりコウキに不利なものとなる。

そう、勝利条件は彼女の救出を射程圏内に収めてしまった。

エリーゼ・イニャールは殺人鬼としての姿を現した。


東方国は不思議な国である。

「・・・人口計算が何度やっても合わない、どこにストックがあるんだ?」

最弱が彼だとして、被害者数が周辺国の歴史上に存在する推定人口を大幅に超えている。

「もしや、下の人間が一人殺せばそれ以上の人間はより多く殺した事になると?」

有り得ない、それはどう考えてもおかしい。金融の世界ではないか。

順位があるから、覆せる。それは、上の順位を殺す事のみで変えられる。強制的に人の背中を押し、歩かせる。

・・・東方国は、存在してはいけない国だ。

翻って、東方国さえ滅ぼせればイニャールの危険性は抑えれるのでは?



アルトリウスは剣を竜の神の残骸に入れ、天に掲げる。・・・熱風がそこなら届くだろう、と。

ある問題を彼は解決した。それは食糧不足である。

「竜のレシピを作っている、美味いぞ。」

風を受け止める壁を作り、熱風と太陽で受け止め、肉を焼く。

「肝心の本体、首から上は取り逃した。攻撃範囲は奪ったがブレスや嵐は残っている、予想以上に素早くなってな。」

全てストレートに。彼は何も凝らなくてもシンプルな実力だけで解決出来てしまう。火災に僅かな水では意味が無いが、彼は洪水が如く降り注ぐ。汚染も、火災も、全て流してしまえる人間だ。

「正気を失わせる程度には失血させておいた。後は同士討ち待ちだな。」

英雄として規格外、後にも先にも、超えるには災害があって漸くスタートライン、これに歯牙が届きかけたパブロはやはり異常だった。稽古を受けようと思っても戦艦だろうと空母だろうと壊れるからと言われた、それよりも強い。

「だが、精神の疲弊は免れない。国内の治安維持は抑圧によって起き、それが爆発する事もあるだろう。」

何から何まで規格外、永遠の一直線が故に無敵。

・・・それが、彼なのだ。

だが、彼は言う。

「コウキに一点だけ負けている点がある。記憶総量だな。」

「・・・ん。」

「アイツの記憶の質は無意味で空虚な一万年より良いだろうな。3%位の時間で遥かに超えている。死んで増殖する、ゾンビの様な戦い方を行えるって事だ。」

彼女に知恵を貸す、だが、それは同時に『死ねば強い』という状況に陥ってしまう。死ぬ事を選択肢にした戦術を優先してしまう。

「肉差し入れて水差してこい、己を助けるには己が一番だろう。お前であれば尚更だ。」

自分の想い人は、あまりに無謀であると。



ナイフの距離感とは到底思えない。今までの敵は回避して突っ込んでこない・・・だが、彼女は此方の弱みを知りながら躊躇をしない、寧ろ当たりに来る。当たる位置を変える事で威力を大きく下げる。

二天一流 前八

鍛える時の姿勢に直し、脳をリセットする。

天位直通

脳を回せ、このナイフの距離感には弱点がある。

切っ先を返す、深く来ているが小回りを効かせる事が問われる二天一流を基本に、強くなくても確実に受け止め、打ち返せば消耗は抑えられる。

この手の殺人鬼は信用ならない、喉はもう切った、彼女がどう言い訳しようともう聞けやしない。

自分はあの英雄とは違う、不完全だから愛してくれる人がいる、だが、自分は認めたくない。



心の揺らぎを観測したならば、決め手を打つ。

「・・・ベス、射出用意。」

『もう少し容赦してあげたらどうです?』

「・・・悪い、命が掛かってんだ。」

『それなら、仕方ない。じゃあ派手に飛ばしましょう。』

発掘した価値を見せてみろ、費やしたエネルギーに応えろ。それだけの価値があると信じている。

「セット。」

『愛の神格:神崎銓。重量二人分(軽)。目標地点:帝国内特定無法地帯ル・ノワールへ設定。』

灰色の高速砲・・・射程に拘り、残りは本体の推進力で飛ぶ・・・アタッチメントでロケットの発射台にしたのだ。

「俺の弟を頼んだ。」

『ああ、任せてよ。』

災害製の大砲が牙を剥く。ガスの漏れ出る音と共に骨の塊が棺桶の様なものを強く押し出し、弾き飛ばす。

「パブロ!サポート!」

『応!』

大音響が空気を退け、風として押し出していく。熱が冷める程遠く広く風を送る。

妨害しに来た連中を即座に撃ち、脳天丸ごと破壊する。

「災害製、どれもやべぇな。材料さえ揃えば無制限化出来るのが尚更魅力だ。」

やろうと思えば体内に収容可能。体内に結びつき、組織に介入しながらも形を保つ。流石にある程度強度が無いとガリウムみたいに崩れる。しかし自分であれば問題ない、特に群れる渇望を入れている箇所は強い。



コウキの戦いはそれでも均衡状態だった。それに関しての評価もある。

「あの女、色々特殊なんだよな。血縁は近くはないが同じ祖先だし。強いて言うなら竜種を除外した俺って感じ。」

「・・・侵入段階で半殺しにされたこっちの気分を考えてくれ。」

「戦闘メインじゃないのに突っ込むからそうなる。暗殺者じゃないのか?」

「暗殺なんて政治的意図と同志の収集もあるから目立たないとダメなんだよ。」

「それもそうか、下手なだけかと思った。」

アルトリウスは言葉足らずを指摘されつつも笑う、彼もまた帝王学を知る者、当然と言えば当然だろう。

「防御姿勢、特定の姿勢になると外部からの強い攻撃を拒絶する。だからと言って感覚遮断するとそれを超えうるハルノブの因果逆転が対策出来ないから五感は残している。ジュデッカ亜種だな。これが第一の特徴。」

「第一?第二は?」

「攻撃出力、これは本人由来だ。ジュデッカで縛っていないから速度は当然速い。これだけでも・・・これがなければ先ず東方国の頂点にはなれないだろうな。血流が強化されるから攻める程強くなるが同時に傷を負った時の修復も難しい。これが第二の特徴だ。」

その攻防に対し、無敵を打ち破る手段として出した答えは・・・反射だ。

神経が痛みや異常に対して瞬時に反応する。

それを逆手に取り、ギリギリのラインで反射を誘発し、姿勢を崩す。

上手く行っただろう、恐らく上手くやれただろう。

そう思っていた。

第三、血流集中・・・酸素は呼吸時、あまり消費しない。酸素を使い尽くすまで再利用する。

第四、反射転撃・・・反射を起こした際に、可能な範囲であれば組み付いて絞め殺すまで腕にインプットする。

第五、衝撃梱包・・・体内の脂肪分を程よく分散しクッション化、集中した箇所のダメージを大きく減らす。場合によっては体内を強制的に変形し回避する事も可能だが、一度接触してから動き始める為浅くする程度にしかならない。

「ああ、まだ話し終わってはいない。これから第三から第百まである。あの二つ程重くはないが、油断していいものじゃない。」

第六、乳酸不流・・・乳酸を溜めない事が可能になる、誤差程度だが止まる挙動が減る為長期間の戦闘程影響が大きい。

第七、視線抑圧・・・視線による重圧、気配を消せなくなるが、背後でも圧倒的存在感を放ち、動揺を強く出来る。

第八、不揺の耳・・・耳の中身、耳石を固定する。目眩や昏倒がなくなる。防御姿勢の亜種で、独立して稼働する。

第九、瞳の調整・・・瞳のサイズを調整し、目の先を特定させない。水晶体等も確認出来なくなるが、視認性や色の識別に影響する事はない。

第十、誘導破線・・・攻撃における最適な打ち方を脳内のみで再現する線。信頼する味方がいる場合はタトゥーの様に出てくるが、生物・植物相手でなければ発生しない。

「能、その一部はあの女由来だからな。特に力に関わるものは。アレの遺伝だけで様々な能を再現出来る。」

第十一、破線同期・・・破線に対して円形であれば打撃、直線であれば切断等攻撃が最適な形に切り替わる。破線がなければ発生せず、破線があっても共有はされない。

第十二、遅効一閃・・・時間経過で一撃を入れると一定以下のスケールに対し問答無用で致命傷になる。

第十三、悪徳心得・・・傷・毒・病に対して痛覚を刺激させ、感覚を狂わせる。実質的にダメージを増やせる。

第十四、攻撃分散・・・攻撃を分割し、一撃辺りの威力は減るが回数が増える。本来の火力よりは下がるが、広い範囲への攻撃や傷の箇所を分散、奥深くへの追撃と場合によっては本来よりも被害を与えられる。

第十五、要素付着・・・攻撃時に使用した素材にはない物質の性質を起こす事が出来る。温度や状態はその物質が固体の時のものとなるが、武器や部位にその影響は発生しない。

「ティアマトがいるだけで結構ハードル下がってるのもあるが、そもそも子供は安易に産むべきものじゃない。女傑が滅多に出ないのも産み過ぎて身体が壊れたケースも多い。だから子供も少ない。」

第十六、盲愛の剣・・・武器を握った状態で外見や傾向等が好みである程致死率が下がり、同時に負傷率を上げる。

第十七、四季事変・・・敵の体温を気温と同じ状態まで落とす/上げる。常温でも低体温に至るが、心拍数による温度の変化が大きくなるのでそれを調整し対策する必要がある。

第十八、索敵発光・・・自身に傷口が発生する度に傷口が強く発光し、光量は傷口の数に比例する。一つ五秒で停止する。深いと範囲は広がるが二回目三回目の場合、奥しか反応しない為刺しや突きに弱い。

アルトリウスは話の間に説明を挟みつつ、その言葉の度に遠くで目視可能な爆発が起きる。

可能なだけ、可能なだけで、本当にギリギリだ。

ギミックが多過ぎる。異質な挙動を五十以上同時に稼働させて漸く一瞬の隙が出来る。多分半数以上が自動で動作している。残りのものに絶対致命傷対策のものがある。決定打を狙うにもリカバリは難しいし、下手すれば決定打を打った事に気付けない。

倶利伽羅剣はその防御姿勢すら壊すが、重い為切りにくく、再生力がある敵に弱い。

「あ、あと分かってる限り百なだけで増えるぞ、だから時間経過で対策どころかメタを張られる。俺も下手には戦えない。だから毎回一撃で終わらせる様にしている。その結果が致命抵抗、爆風距離、防御姿勢ってな。」

だから、キャパオーバーを狙う。アルトリウスの場合、小賢しい対策はせずに純粋なステータスで上回っているので質が全然違う。

もう一つの問題は、コウキの精神性だ。今の彼女を打てるだろうか。死にはしないという保証があっても、彼女の状態は保証出来ない。スリップダメージ程度の出血で、強引に殺す。


・・・コウキは、あまりに他者の物語を乱し過ぎた。その振る舞いは傲慢極まりない、だが、それは人は幸運だとも言える。物語の様に苦しみ抜く必要なんて、誰も望んじゃいない。それを良しとする人も居ない。だが、主人公はそれを望む事が多い。それを認めないからこそ、彼は英雄なのだ。

遠くからデリバリーで助太刀がやって来る。

「・・・私は神の中でも最も不可思議な存在だ。」

一矢が報いに来た。

「神は個人を愛さない、故にギリシャ神話は信用されず、衰退した。・・・一部でしかないからそこまで大きい影響はなさそうだが。」

名を神崎銓、生前は男で巫女、今は女神。

「・・・だが、私はコウキを愛している。」

その役割は何者からか与えられたものだ。

愛は偏在するべきだった、だが、突如、愛を誰にでも向けられる世が訪れた。

「あまりにも理不尽な生き方の中で、人を見捨てぬ光であると信じている。」

理想を夢見る事は、理想以外を切り捨てる前提で行なわなければ何一つ果たせない結果になる。

「・・・竜の神よ、これがお前の見捨てた人類だ。」

エリーゼの中に潜む、竜種の血と共鳴。彼女が最近急速に力をつけたのもこの理由だろう。

「今更手を出す位なら帰れ、お前の命に価値は無い。」

「・・・私は、そやつに愛した人間を殺されたから恨んでおる。」

「間が悪かっただけだろう、何より、彼が殺さずに生きれる人生を用意せず、その寵愛の為に歪め、覆す為に破滅寸前まで追い込んだ・・・守れもしなかった上に、守る必要がある状況を自分から作って失敗するとかバカか。何一つ考えてないからこうなったんだろう?」

銓がどこまでの事を出来るかは知らない、だが、この拮抗した数秒を最初に動かし、支配出来る。

「情愛の矢を、一つ。」

第一の矢を放つ。

「・・・精神を壊す矢だ。さぞ痛かろう。」

だが、その矢はあらぬ方向に進み始めて・・・。

「あ!ごめんコウキ!当てちゃった・・・。」

とは言っているがコウキを信頼し切った上で当てている。・・・精神がほぼ壊れている中、この矢で少しでも変えれば、彼は健全な状態に戻る。

精神の崩壊が起きた、しかし、理由は不明。だが、愛情だけがそこに介入する。愛があって愛があって愛があって・・・愛がある。

その拳は、愛を灯して軍神以上の出力を出す。

『王法絢志』『王盤振舞』

『王道落怒』『王想之功』

『王切不暇』『王杖素戎』

『王責直刃』『王鼓雷棍』

『王華爛漫』『王行闊歩』

全てを以て『王厳時代』

王が帰還した、王が成立した。

「さぁ、時代を証明しよう。」

狂いの時代を戻し始める巡礼へ、軍神を欺き、目の前の世界を導く新たな一人へ。

彼にとっては、人の命等取るに足りない、格好を付ける為だけのもの。

人の心を知りえぬ災害より、人の心を模倣した果てに。

チャーリー、クシナ、カオルコ、カン、最低限抑える為の戦力は揃えた。

「こっちも準備完了だよ、全部やるべき事をやっておいた。」

「災害としては未熟だが、私の友人達は色々教えてくれるからね、その力を出し惜しみはしない。」

後方支援も揃っている、砲台の標準設定も済んだ。チャーリーのそれは少し時間が掛かる、南部で使えなかった分を回して行使する。

「コウキ!どうやら彼女と弟に血縁はないらしい。コンプレックスで竜種の血を入れた結果ああなったそうだ。」

「人間に引き戻せるか?」

「愛情を引き出せるなら、だな。」

やはりここぞと言う時に取っておくべきものだ。第一の配置はチャーリーの護衛、盾を構える。

「ダーウィン!」

「・・・それでは、失礼。」

全員が一斉に目を背ける。周囲を取り囲む仲間達も。

「・・・愛にある障壁を取り払う。これが理想だ、これが最適だ、これこそが相互的な愛だ。」

そう唱えれば、気付けば相手はヒトに戻る。その竜の血は取り払われ、崩れ落ちては立てない。脱力感が身体を支配する。

「役目は終了した。これで撤退か?」

「ああ、後はこっちでやる。」

倶利伽羅剣の速度では相性が悪い、優衣を引き抜いて向ける。

カオルコ最速の入刀、これを防ぐには初動からどの方向に向くか判断する必要がある。ダミーの変則斬り、本命の袈裟斬りを織り交ぜて混乱させる。

ここで敢えてダミーを排除し、全てコウキの挙動を誤魔化す為のブラフにする。

信仰をすげ替えろ、さもなくば彼女は消える。

その状況を引き裂く様に、一本の線が通る。

竜の神、その頭部だ。

「・・・地震か?」

「違う!アレだ!奴が来る!」

「マノン!!」

『・・・届かない!!』

あのドデカくて動き回る生命体は、彼が最適だ。

「ああ、ようやっと俺の出番だ。」

真下へ剣を均す。

「ハルノブ・フジワラ・・・分かり易い名の方が良いか。」

そして、切っ先を下へと振り切る。

「俺の名は宮本武蔵、そういうデカブツ狩りの為に普段は宇宙空間から邪魔しているが、今回ばかりはそれも出来ん。」

その剣は、あまりにも早く、時空間を歪め、過去最大百年に届く。勿論未来に残す事も可能だ。これに関してはある程度の距離が必要だ。停止する事が無い剣だからそうなってしまう。

・・・周回軌道上より、その斬撃は届く。

最大射程は面積で示すよりも、緯度と経度で示した方が楽な位広い。もし狙いが月であればそう長い時間は掛けずに解体する。

『結論生命体』アルトリウス

『豊穣の舵取』カルナ

『超常的現実』マノン

『波動方程式』パブロ

それに並ぶ、純粋な人間として最強の存在。

『因果収束剣』ハルノブ

ほんの、オマケだ。

余波の斬撃と、一本の筋を狙う斬撃が単体で狙いを定めて向かってくる。狙いは雑だ。

「射程圏内だ。」

その範囲に精度は無い、フィールドに佇む全員を切り刻む。自動で行われるティアマトの再生、エリニューエスの半自動再刻印、単純化構造もフル稼働、マノンからの借り物も、弱い斬撃なのに再生が間に合わない。

一度に何度分の剣を重ねている。再生すればする程疲弊し、再生しなければ失血で死ぬ。

これで死ぬなら、将来に生きる価値は無い。

それが例え地獄の底であったとて、僥倖であると言える様に。

群れる渇望は枯渇につき使用不可、だが、因果に対抗する、状況を書き換える無敵の剣が自分の手にはある。

倶利伽羅剣を構える。

その剣は、その人間を切る事なく、持ち手に下される。

「竜種の血は最大値がアルトリウス、最低値だとそんなものか。」

「・・・私の負けだ。もう戦えやしないだろうな。」

「多重人格も消したから正気になったな。チャーリー、実際消えてるのか?」

「本人由来なら消えないが、継承由来だと消える。」

やっぱり、アルトリウスに対抗するべくどこからかデータを寄せている。アルトリウスを殺す為の何かが動いている・・・問題はそれの余波で彼以外全滅しそうな事だが、世界法則を歪め、在り方すら動かして殺そうとする・・・。醜悪だ。

・・・自分は、英雄として良くなっているのだろうか。



世界は積み重ねで変わっていった。

先陣を切るのはコウキ、王として民衆の心を惹き付けた。

「マジか、話しただけだぞ?」

「民衆は基本馬鹿だ、勝手に立ち直ったり開き直っても責任はこっちに向くって事さ。」

「面倒事が多い分助かるよ。」

「裏でエリニューエスを使って功績も増やしている。これで裏切り者は一人も出ない。」

高価なセットをエルフ・ストリートで作り、崩壊したド・ラ・パルドで撮影を行い、完成したウィリー・スタジオの映画を売り込む。言語が分からずとも、その作中の英雄とコウキを同一視させれば良い。利益を得るにはそれしかない。反骨精神を宿す人間はすぐに立ち上がり、刈り取る準備をしてある。

そして、彼の背後に魔女の存在を示唆、国の機密情報を漏洩させて王国崩壊の余波に先手を打ち、戦局に不確定要素と絶望を齎す。

・・・全て、この戦局はカンの掌にある。

「俺は陛下の言葉に心を打たれた。真意をすぐに理解出来た。」

「それで?」

「この国、いや、世界を継続させるには陛下以外居ない、だから託す。」

全てはここから始まった、帝国崩壊の序章。

「・・・先ずは、エリーゼ・イニャールとの婚姻だ。アルトリウスの姉をブランドにしている以上、名前の価値はある。」

「おうよ、こっちは外周作戦を完了させる。」

王は主役であってはならない、その甘さは痛い目を見て漸く分かるもの、軍略と理屈を以て、君臨と支配を。

さぁ、国の継承が始まる。



あの日、自分とアルトリウスは話した。

「まぁ、俺は最高の英雄にはなれない。」

「・・・それは無理があるんじゃないか?」

「俺は強過ぎるが故に挑むべく努力し、その結果ハルノブ以外の三人は発生した・・・いや、マノンは自然発生か。」

それはそうだ、彼は偽造された鎧を叩き切った痕を拭う。

「世界の法則がどれだけ歪もうと、俺が戦えなくなる程歪めたらその日には歪めた奴は確実に生きれない。」

「・・・。」

「信仰と継承で歪みに歪んだ、人類の修正。」

世界は常に異変に溢れている。それがこの結果だ。

「お前に先に話しておくが、これを思い出すのはこの身体の心臓が壊れた時だ。」

狂った世界と英雄の、きっと苦しい物語。

彼が居て尚進めなかった、挫折した世界だ。

「お前は英雄であり、救世主だ。」

英雄は、実力や功績だけでは評価されない。

後の影響力次第で全て決定される。

「・・・希望となれる、希望そのものではない、照らす太陽じゃ駄目だ、電気や、炎を、人々に託し、電球や蝋燭の様に灯す。」

アルトリウスと自分には、程遠い隔たりが存在する。

「・・・それが、きっと一番良いんだ。」

・・・それは、どちらが上か下か分からない程遠いのだ。



暗闇は逆光を強く示す。

「ただし、それは狂団の法においてあってはならないのだ。」

信仰心の背中を押したのは彼だ。

信仰心狂わせたのは彼だ。

彼こそが全てを渦巻く根源である。

「人生は縄の如し、秩序あらばその縄は美しい。」

そして、縄の秩序は一つ一つを紡ぎ合わせて綻びを隠し、良き秩序となる。

「・・・ただし、秩序に正義と悪は不要である。そう言ったのはアルトリウス、お前だろう。」

気に食わない。正義と悪を無視した秩序。

それは腐敗の一歩手前、次の時代に明け渡すつもりもない。卑怯卑劣極まりない、悪だ。

ならば、出来ないと罵られようと構わない、自分はその王朝を倒してみせる。

その為に、一世一代を狙う。コウキを殺せば多数の有力者は心を折るだろう。

彼は投資対象だ、だが、死んだ所で所で保険は降りない。保険が出たとしてもリターンは少ない。

そして、何より。

「彼が教えをどう考えるか、それこそが最重要だ。」

もし気が合えば共に世界を壊したいものだ、裏切られたし、信者も減った。だが、信者は増やせるし仲間に増えて損は無い。

「愛狂からだ、殺すなら。」

そして、現在並行して進めている排熱伝導卿の強化計画・・・速度では足りずとも歴代の弱点をキッチリ頭に入れている脚曲がりの彗星とは相性が悪くて当然だ。・・・そして陽より速しの本領発揮を並走して封じるという荒業・・・彼女の警戒を解いた状態だからアレは防げたが、彼女の次第であの計画は即座に破綻していたろう。

「・・・それでも、記録を残すのは大事だ。」

自分は絶対記憶・・・絶対記憶は対価として著しく思考を落とす、計算も考えるより見た方が早い・・・自分は絶対記憶を与えられ、正しく思考する権利を奪われた・・・自分なりに頑張っても、違うと言われた。

いっそ、と狂った。この世迷い言が一番褒められ、百人に一人が支えてくれた。そして狂団が完成した。

時間を遡った記憶さえ覚える・・・無茶苦茶な脳で。

「・・・理解も正しさも必要ない。自分は正しい考えを求めて来た・・・だが、正解は狂った思考だった。」

人類は、間違い切った生命だ。

正しいのか間違ったのかは分からない。

だが、全員狂って失敗したなら私は正しい。

私が正しい、私が正しいのだ。

これが正解なのだ。

これが正解でなければならないのだ。

・・・もう、引き返せはしない。

自分を信じてくれた人々に、報い返すのだ。

人間の原理と摂理だ。人間の当然だ。

・・・自分は、守るべきものを得たのだ。

ケジメと、答えを・・・終わらせなければ。

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