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継承物語  作者: 伊阪 証
暗部王動乱

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60/74

ムーンフェイス・ウィズ・ラフ

朝六時が一番伸びないから毎朝六時に連打投稿してる

結局、差別は文化の形成において避けられないものだ。しかある程度発展した際にその差別というものが停滞の原因であると気付き、逆に差別を排除する傾向に向かう。

故に言えるのはどの国にせよ差別ある限り停滞する程発展していないか、停滞して沈みかけている事に気が付かないかの二択である。

この世界に差別があり続ける限り、文明は発展させてはいけない。新技術が危険であれば、破壊するのみ。

雷電の神格と契約し、その文明は一万年を越せども過去の文明を超える事はなかった。

自分の使命は、ある日突然変化した、それは自分を何故か理解してくれる友のお陰であった。

「私はボードワン・フランクール。こう見えてれっきとした男ですが・・・女の子として扱ってくれると大変嬉しいです。」

「フランツ様は・・・私の様な邪血ではありませんので・・・。」

「私は嬉しかった、あの時の言葉が。」

「彼の道は守り通したい、命を捨ててでも。」

「全ては長い幸せな夢でした。」

自分はその時、敵と思われる物を斬り続けた、全て必要なものと信じて。その手は握る様に止められた。・・・壊す様な握り方ではなく、止める様な握り方、苦痛に顔を顰めながらも、誠実を見通す、それ以上の誠実な目で。

「ここからは俺に任せろ。ちとやり過ぎだが悪かねぇ。」

彼の名はアルトリウス、自分を変えた正義の人間だった。怒りを絶やす様で、しかし余った分を活用する人だった。

そして、あの犠牲から生まれた仲間がいた。

使命が変化、効果自体は薄く、ボードワンと共に過ごした時は強かったが、今は弱まっていた。

程よいストレス、プレッシャー。理解出来ないそれは全員の気を引き締め、強迫観念を駆り立て、義務だとのめり込む。

そして土地を受け取った、新たなる王、二千年以来の王・・・中部王として。だがしかし、事件がそれを許さなかった。



ド・ラ・ボルド付近の山、マノンとコウキの二人、一人がバックアップで潜んでいるが・・・慎重に、明かさない様に、そして有り得ない位置にいる。

瘴気と爆発、間違いなく死に掛けた。

マノンが手を貸し、引っ張り上げる。

「空気の中では重い、完全に帝都の城壁を破壊しに来てますわね・・・。」

「マスタードガスだ、エリさんなら治せる。」

「失明以前に、戦いにくいでしょうね。」

風が吹き荒れる、物質送信で質量が狂った。都市が壊れる事は無い。今の内に着陸するべきだろう。

「無茶させてしまいますが、信じているのでどうか生きて帰って来なさい。」

補助を頼み、パラシュート無しでのHALO降下を行う、その為に走り、前回と真逆の方向に進む。

「私は秘匿すべき戦力、敗北は有り得ないですが、勝利も同様に不明。もしもの場合は超遠距離で援護はしますのでご安心を。」

「(標準ミスったら俺死ぬんだけど。)」

そうならない事を信じて、倶利伽羅剣を握る。優衣も持ち合わせ、もう片方のそれも潜ませてある。

「さぁ!行きなさい!貴方自身への最高の決着を!!」

「応!」

「飛ばしますわよ!コウキ!!」

風を引き裂く、濁流の真逆を進む。彼は空高くより下に落ちる。着地は穏やかに、そして、緩やかに落ちた。



近くで災害を狩る優は一旦手を止め、倶利伽羅剣の複製品で削ぎ落としていた。

「災害の素材を解体、骨一本でも腐る程リソースとしての価値がある。」

『当分は困りませんよ涎が止まらないぐへへ・・・。』

「ベス汁は戻せ。」

『ドローンで回収しますね、着陸路は作らず半磁力式クレート回収だけで行きます、』

「一回試験的に動かしてからだな。」

明らかになった技術・・・それも、あまりに手に余るものだ。

「・・・災害同士で繁殖可能、か。」

『衝撃でしたね、半分位知性が無くなってましたのも。』

災害の性別は三つ、仮にA-B-Cとしよう。同性でなければ繁殖可能、そして親と子はそれぞれ別の性別。更に親はどちらも子を産める。

「幸い、産まぬ人間だけは増やせないとの事だ。」

『と言っても数はそこそこいますね。』

「昔製法があったそうだ、それを凍結して放置しているのもある。」

直感で気付いた技術、そして耳を劈く鈍い音。

「始まった。」

右手を一度外し、リブートする。

「ベス、災害狩りを続行しつつ位置を変える。送信可能になったら送れ。」

血を振り落とし、顔を落とし、汗水を切る。

鈍い音は増えていく。距離はかなりある筈だ。



風は鈍く裂かれ、そして耳が極度に冷える。着地後の調整を済ませたら、軽量の関節アーマーを中に仕込み、マノン戦で治せなかった箇所をギリギリ再現する。破壊されたらかなり足を引き摺る。物理的にも。

優衣の方から引き抜き、ライフルを取り出す。

敵影無し。

『真上だ。見事に掛かってくれたね。』

「よし、行くぜ。」

『・・・数が多いね。』

「・・・ああ、雨時々人と血だな。」

真上にはパラシュート降下中に気絶した様な連中ばかり、迎撃も出来ない。

落下するまで待つ、逆にそうする。乱射は厳禁、確実に当てれる範囲で撃つ。

「推定二百人か。」

群れる渇望は使わない方が良い。余剰エネルギーは少ない。完全な回復はまだ出来ていない状況、野戦病院じゃエリニューエスとて手が打てない。

自分の周囲に近付く連中だけ、死体であろうと問答無用で斬り捨てる。その時に気付いた。

その次の時には、剣が衝突していた。裏の手で優衣を引き抜けた為に防げた。

「暗部王フランツだな?」

「戦争王コウキとお見受けした。」

優衣を右手に、倶利伽羅剣を左手に。向こうはUZIらしき銃と剣を握っている。剣の速度から推測するに・・・銃の動きは大体分かる。

「「いざ、尋常に勝負!」」

と言いつつ、片方は時限爆弾に合わせ、もう片方は死体に仕組んだ爆弾を起爆させる。

「プラスチック爆弾か、火薬特有の臭いを誤魔化す為に死体に埋めたな?」

「ああ、威力の方が大事だ。何より、死体の持つ病をばら撒ける。」

煙が薄くなると、互いに無傷で立つ。

敵は死体で耐えていた。中に鉄板を仕込み、跳ね返していた。恐らく全ての死体に何かを仕込み、把握している。自分は死体を撃って誘爆させ、実際の爆発とは違う方向に飛ばして残りは死体に耐えさせた。

振り返る前に、どちらも声がする方向にライフル/マグナムを撃った。

上手も下手も無かった、死体を盾にする為と死体の爆発を回避する為に出来るだけ低くした姿勢はほぼ一致した。互いに真上を通過する。

弾着音が無い事に気付き、銃弾に標準を合わせ跳弾を狙う、跳弾の場合、基本的に計算は不可能。山勘や経験則で当てる連中も現実にいるが・・・あまり深く考えない方が良い。

フランツが先に動いた。跳弾に対する自信を持てず、剣が二つの閃光を覗かせる。それよりも高く、光すら切り裂く剣が線上に黒を入れる。

痛み分けか、いや、向こうが先だった。経験則で剣に負けた、かなり久々だ。剣を覆さずに振り下ろすが、その剣の真下に誰も居なかった。

剣の回数が徐々に増えていく、その中で僅かな遅れとなり、裂傷も増えていく。マノンの時は腕が未熟だった為にカバー出来たが、そんな相手ではない。

倶利伽羅剣の重さがここに来てデバフとなる、その状態で前に進む。前に進む度に傷が増える、向こうはまだ余力がある。

神経の鈍り、自分の身体に疲労は蓄積していた。実質的な体力はかなり低くなっている。

どの札から切るか、強いられている。一泡吹かせた上でやっておきたい。

コウキの一刀は常に不意打ちとなる、その上で相手は煙を用いて常に不意打ちとなる条件を整えた。視界から除外するだけで、無理に顔の向きを変える等の機能は無い。不意打ちは見破れる、脳でそれに関して回し続ければ無効化出来る。つまり鉄板を引き出し、鏡にして見ているのでは?と考えた。若しくはサーマルスコープ等を利用しているかだ。

一度離れたタイミングで身体を解す。行ける、柔軟性は足りている。新体操や体操の心得はある程度は備えている、柔道や相撲の為にある程度身に染み込ませた。

身体を細く、槍の様に伸ばす。先に入れた剣の切り口により赤い深みを見せる。反撃に対し地面ギリギリまで張り付き、足音に合わせて優衣を振り切った。

型を知っているが故の型破り、無茶を承知で押し通し、潜り抜けては我を穿つ。

倶利伽羅剣の狙いが定まった。

鋒の長さは足りる。

穴澤流十文字を刀に応用、順序を横から縦にし、横で意識を呆気に取り、本命の縦を当てる。

暗部王に軽く当て、しかし本命は真下にあった。


暗部王との懸念もあり、ロタールとカンで戦った、そう、手の内を明かさない為だ。

地面の石が割れ、その奥の金属板も切れて奥底から這い出る方に彼女は現れる。

「クシナ、お前の出番だ。盾は任せた。」

フランツの足を掴んだ、避けようと致命的、間違いなく相当なダメージに出来る。

「相手は小賢しい、此方の勝利には絶対的な盾が必要だ。だから持ってきたのさ。」

剣を何度刺してもその手は動かない、それどころか手がどんどん固くなる。

優衣が遥か上より叩き込まれた、肩の奥深く、肋骨を折り、腹の底が痛み始める。衝撃、コウキの丁寧な一撃。自分とは質の違う一撃だ。

何より、段違いの殺意がある。

掌底で安全な方の剣を打ち返し、一度肩を犠牲にしてでも手を引く。

霧が晴れ、その盾の全貌が明らかになる。

「・・・?」

アレはリュファスという女・・・いや、聞いた限りでは男だ。腹立たしい。遠目では見たが、武器を隠せる箇所が多い。ドレス時と比較すると・・・一番は胸、そこに隠している可能性がある。


エリニューエスの手は明かされている、アスタルトから調査の履歴があったとの事だ。であれば誤認させて実際はヘカテーという風に組んだ。

掌握は出来ている、どデカい隙さえあれば十分だ。

大体この修羅道みたいな世界にはヘンテコな力を持っていたり単純にステータスの暴力みたいな連中がいるが、彼の場合どうだろうか。

多分ギリギリまで明かさないだろう。だが、この手のもので一番容易なものがある。そして、剣の動きがやや覚えのあるものだった。

『召喚術』

超能力の物質送信と同じ、そして特定の英雄誕さえあれば実行可能なもの。召喚術の神というのは居ない、新たに神格作らない限りその様なものは起きない。利便性もそこまで、移動や取り出しに関してエネルギーを使う。無い物を作るというのは出来ない。

自分の物であるという印があると楽になるが、知らない物を持ってくる可能性もある。英雄誕は数自体少ない、前奪った物も危険なものばかり、魔女達の住む地下に封印されている。

召喚術は場所を選ばない、突然出現させる事も可能・・・。そう、マノンも使っていた体内ヘの送信。

一応一番の弱点を言うなら・・・戻せないという事か。

鄭成功の記憶を模写した奴は言葉をキーにしていた。その場合指示が的確になり、どちらかと言うと戦闘向けではないがインテリアの様に設置出来る。

とはいえ太公望のそれではない。

候補者が不明、だここまで周到だと其方を考えた方が良い。金属板は無いと・・・つまり、地雷を警戒して入れ替えたか仕込んだか。

「クシナ、倶利伽羅剣の使い方は分かるか?」

「おっけ、問題無い。コウキの記憶はうっすらとしかないけど大丈夫。」

「ああ、ヘカテーが補助する。」

倶利伽羅剣の衝突、それが起きた場合どうなるその答えは不明である。少なくとも録な事にはならない。炎を纏う剣が対の位置に立つ、先の殺意が高揚し、コウキの力はより苛烈なものとなる。

若々しく、猛々しい。その剣はアルトリウスと同じ振り方で落とされる。

クシナとやらに何度攻撃を当てても意味が無い。・・・アレは、産まぬ人間だ。間違いない、殺せぬ筈だ。しかも相当練度があり、再生も耐久も侮れない。スタンリー程ではないが、かなり戦って慣らしてある。それも短期間で。

自分は悔しさに襲われる、コウキは恐らく教える事の方が上手い、ローガンと同じく、前線に居ない方が優秀な人物だ。

腹立たしい、コウキは自分とは違う、仲間を死なせる事はしないだろう。したとしても、何も残せず、無駄に犠牲を選ぶ事もないだろう。

「シルヴェール、力を貸せ。」

合図を送り、週位に針や刃物、十字架を打つ。

「・・・召喚術か・・・?」

召喚術・・・と言ってもこんなとんでもインテリアを作るのは多分アイアンメイデンを作る以上の変態だ。足がいつの間にか刃物に貫かれ、クシナを抱き治させる。

「ありがと、疑問点があったら踏み込むよ?」

「これをやったのは誰だ?」

「・・・多分ここにはいない。」

「その心は?」

「仕事が雑、さっきまで緻密に戦ってたのが相手だよ?」

「・・・それもそうだな。」

確実に削れてはいる、そして相手のミスも増えてきた。リュファスの外見は結構効くらしい。

それもそうだ、ボードワンという人物は調査した、その中でリュファスの前、多分父親の記憶にフランツとボードワンが居たとの事だ。裏切った訳ではないが、フランツは自分を見捨てて諦めたが為に百年は自分も出れなかったとの事だ。

復讐の希望者は絶えない程多く、王時代の過失から今の所業まで揃っている。

「その程度で足りるかよ。」

剣の重さが変わった、自分に積み重なる負債は足を止める。しかし一方でコウキは剣に託した、剣に降り掛かる重みを握りたい共にぶつける。

互いに顔の隣を掠めた。クシナは僅かについて行けず、発達途上の身体でなんとか張り合うが、攻撃に関してはやや足りない様子であった。

だが、コウキとクシナのコンビネーションは素晴らしい、カンとの相性は互いに技術的な欠点を補い、万能と言えるものだった。攻撃する隙がない。こちらは逆に明確な隙がある、だが、打った所で効果が無い。一転攻勢の為に場が整えられており、確実に被弾する。強みが別視点のものから映される、多分他の仲間と組んでもカメレオンの様に色を変える。

故に重く、殺意が鋭い。自分だけが決め手なのだから。

何が違うのか、それを理解すればする程自分には負い目が湧く。申し訳なく剣を振っては、それは強くもなんともない。

コウキは気を抜かずに立った、僅かに背中が垂れる・・・少し首が重い、肺が詰まる。

「予想以上に損傷している。」

「大丈夫?」

「大丈夫って事にしてくれ。」

背負った剣を振り下ろす、倶利伽羅剣であれば行ける筈・・・だったが、止められた。倶利伽羅剣が止められた。どういう事だ、有り得ないと困惑する。

持ち手を射抜いていた・・・鋒で剣を止めた。

何かが壊れた、フランツの奥底に眠るプライドの様な物が、それは正しいかどうかも分かりはしない、一つ言えるのは、自分が正義でない事と、相手も正義でないという事だ。

「お前は何人を無意味に殺した!!」

「どの口が言ってんだ、お前が言えたものではないだろう。」

「戦争王!お前はその名の為に捧げられた命を理解しているのか!?」

「知らん、そんなものに答えなんざ求めていない。」

「だからお前は殺し続けるのか?世界が沈むまで。」

「この世界は甘ったれた考えと懺悔の様な口先三でどうにか出来るものじゃない。」

「ならば尚更後先を考えない事の方が夢物語ではないか!!」

「お前のエゴは醜い、お前に苦しめられた人間を助けて回った。お前はそのエゴが多少破綻した程度で王の責務を捨てた。与えられたチャンスも、全て捨てたんだろう?」

「違う!」

「何が違う!言ってみろ!!ここまで酷い人間だとは思いもしなかった!!」

「俺は・・・!俺は・・・。」

彼には分からないのだ、その使命が人と会う事を禁じ、コミュニケーションさえマトモに出来ず、最終的に孤独となる。それが多少変化した所で、彼は自分自身を理解出来なかった。

「ボードワンも、仲間も・・・助けたかった。」

精神が狂い始める、コウキの殺意に気圧され、そして差に打ちひしがれる。

「正義と言い張ったから復讐心を絶やさずに生きれた・・・。」

悲しくても立たなければいけない、どちらも同じである。

「やりたいのは復讐さ、お前みたいに惨たらしくやりたいんだ。」

互いが理解し、片方が妬く。故に戦う。

「・・・でも、ボードワンがそれを許さない。自分が居なくても幸せになれと・・・。」

「ならば俺を倒して再び支配してみせろ!!俺は幸せになる事を願われている!だが!知った事ではない!!」

コウキは王の意地を見せた、泣き縋る目前の人間を、容易に切り伏せる。

「そんなものか!その程度で俺に立ち向かっているというのか!!」

「違う!」

「ならば立って戦え!剣を握れ!」

復讐の為に心も身体も燃やす。

「(私ほんとに必要だった?)」

『(多分意表を突きたかったの勝つ姿を見せたかったんだと思うよ。)』

ヘカテーを解く、そして、抜いた血を戻す。使命混じりの、殺意に満ちた使命を。

その使命は、人の精神だけなく、僅かだが身体に傷を付ける。

「『輝ける七つの海』」

自分自身と自分自身、その乖離と同調性を利用し加速させる。

それは斬撃でも、打撃でもある。致命傷どころか軽傷にすらならない、だが、神経が摩耗する程集中力を散らされる。誰が原因か、無意識に刷り込まれる。

「・・・全員だよ、傷付けない為に戦うなんて俺はしない。全員をベットし、全員で戦う。」

都市に今残る数十万人の軍人と共に、命を捧げる。

「来い、幾らでも後悔してやる。」

王は確かに王となった。

「年貢の納め時だクソッタレ、国家予算五年分は絞ってやるよ。」

銃弾を問答無用で押し付ける。四方八方、無数の弾丸、機関銃を用いて撃ち続ける。

全員の位置と銃のブレは覚えている。支配領域を逆算して銃弾の程度を見る。

「これで問題無い、召喚術も飛び道具も封じた。」

マノンに極限のフィールドでの戦い方は学んだ、色を付ける様に視界が分かる。優衣に無理をさせて跳弾で返す。乱して繋ぎ、狂わせて当てる。

その中で無駄な挙動に見える舞いの様に戦う、クシナは被弾しようと構わず突っ込み、弾丸を貫通させて予測させない様にする。

威力が下がった状態だが、予測不可能な位置に突っ込んで来る弾丸と威力はそのまま、予測可能な弾丸、しかし数と跳弾がその比較さえ無意味にする。周囲の建物を砕くかと思えば、金属がそれを跳弾に変える。

フランツは侮っていた、相手が新人の王である事、帝国軍の復讐心・・・勝つのは不可能、それをかなり早い段階で気付いていた。

歯車が狂い出した。

「『希望の下にて』」

コウキは甘かった。

「『奈落を出てて光へ』」

フランツも甘かった。

「『火を経て光へ』」

ローガンも甘かった。

「『終わりを慮れ』」

全ては狂団が支配する。

「『真理は全てのものに勝利する』」

何かは分からない、召喚術の詳細が不明な状態だ。尚更手の打ちようがない。

肺が停滞する。呼吸を拒否した。

「何が・・・。」

いや、理解出来た。

「空気に有毒な化合物を混ぜて蓄積させている。」

錬金術、それもまた彼の手中にあった。

若しくは、協力者。大々的に打たないとなれば遠隔でやっている。

「『マノンお姉ちゃん、お願いします!』」

遥か遠くにて、彼女は顔を赤くする。

「・・・はぁ・・・はぁ・・・心臓に悪いしめっちゃ効く・・・。」

息を戻し、血を拭い、そして言った。

「ちょっと大盤振る舞いしちゃうからね!」

「(自分とコウキの立場が違ったらと思うとゾッとします。)」

しかし顔は直ぐに冷徹に戻る。彼女にはクールビューティーが似合う。・・・人前であれば。

「『神罰執行』」

そう唱えると、世界が破滅するかのように二つへ分かたれる。目前が割れ、世界の位相がズレる。

亀裂が世界を空間で引き裂いた。

「(大盤振る舞いし過ぎだ。)」

恐らく世界の破壊に匹敵するもの、多分周囲の災害も問答無用で殺している。

「狂団の邪魔が入ったな。」

やはり錬金術の正体はそれであった。手の内が明らかになった時点で強気に出れるが、フランツには当てていない。今の技の正体は知らないが・・・銃弾が徐々に減っている。暴発か拘束、流石に時間を使い過ぎた。巻き込まれた可能性も否めない。

「(いや、マノンの影響ではない。)」

恐らく、先に殺されている。銃弾の位置がズレている。その位置を無理に直したのではないか。超能力と演出で有り得ない挙動を見せた、そういう事か。

「ありがとう、マノン。」

「ええ、お安い御用です。」

帝国の主戦力が全員盤上に上がった時、周囲の国が同時に戦争を止めた。そこに映るマノンという文字、そしてそれを生き残り更に倒したと言われるロタール、カン、コウキ。

全世界が停止する、彼等へ注目した。

フランツがコウキを止めるか、コウキがフランツを終わらせるか。命を掛けて戦うべく立ち上がった。

この戦いは復讐である、だが、同時に復讐の禍根を止め、見せつけるものでなければいけない。

心に復讐を忘れた火が咲いた、片方は優衣を握り締め、もう片方は同じく剣を握り締める。

目が切れようと、腕が爆ぜようと、その剣は叩き付けられる。フランツは後先を考えず、コウキはエリニューエスを信じているから。

その差が重なって互いが乖離する。同じ位置にいるくせに、どこまでも差が存在する。



過去の話が無性にしたくなった。

そうだ、自分とボードワンの馴れ初めだ。

自分が納めていた大都市エルフ・ストリート、旧宮殿ド・ラ・ポルド、双子都市ジュベールとイゾアール、無法地帯シャリエ要塞。エルフ・ストリートは規模に対して差別が根強く、認めない人間も多かった。王国が発掘した文書を全国民が受け取った『聖書騒ぎ』も時期的に被っている。

その中ではやはり影も大きい、災害の発生した過去もあれば、生物実験や薬物製造の違法で済めばまだ良い位の倫理に反する行為をしていた。

その中で拾ったのがボードワンだ。実験の果てに竜種の抽出を行おうというもので、サキュバス等の夢魔に混じって出現するドラキュラ、ドラクル・・・その辺の竜の子と言える連中を狩っていた。その中で偶然成功したのが彼だそうだ。

ボードワンが初めて人生で会話した相手であった、自分は言語をある程度理解していたが、最初はリアクションで感情を示すのが一杯一杯だった。100年以上は生きたが、慣れるなんて事は無かった。コミュニケーションが上手く成立しなければ、会話や思考も上手く出来ない。王として活躍出来た理由は・・・根底の正義感。彼に合理性や理性は無い。

正義を教えたのはボードワン、彼は「こうされたら嬉しい」「こうされるのは嫌」「嬉しいと嫌は個人によって違う」を五年掛けてある程度教えれた。それでも半端な所はある。先ず教えるのに無理があった。食事のやり方も分からず・・・寧ろ知っていた事の方が少なかった。

どうやら彼は元々はエルフ・ストリートにこそ住んでいたがそこまで毒されてはいなかったらしい。だが、彼というあまりにも哀れな人物を見かねて助けたとの事だ。

自分に魅力は無い、寧ろその逆だった。自分はその時に人間は利他的に生きないと思った、全て利己的な生物であると、シュライバーの様に自然の摂理であると思わなかった。

和解したは和解したが、どうしようもない傷だけが残り、数年が過ぎた。自分だけは利他的に生きるべきか、利己的に生きて自分を守るべきか。その結論は、他を害する事であった。利己と利他を守るのは特定の人間を排除する事、そう確信して手を打っていた。ボードワンはそれに気付いていたが、負い目から彼を傷付けぬ様守っていた、その時はまだ後々の様な大規模な事件になると思っていなかった。

やがて王となった彼は、ボードワンやその他の為に走り、王としての地位を確固に、しかし恨まれる事も多かった。

ボードワンの役目は変わった、大規模になったが故に迷惑を掛けてはいけない、竜種である自分ならその罪も事件も、確実に覆い隠せる。

逃亡し、死に際で彼に身体を差し出した。

竜種として、血と精を混ぜ、自分に取り込ませた。赤と白の祝福は血を滾らせる。

故に竜の力を使い、周囲を圧倒する破壊力を持っている。それがこの王だ。

その王は、コウキよりも熟練である。その契約と愛があれば越えられる、執念以上の感情が自分を支配した。僅差で高みに立った、首を切る寸前まで登り詰めた。

「・・・はぁ・・・やった!」

切ってやらねば屈辱だろう、そう思って奥に押し込もうとしたその時、剣は微動だにしない。過去を思い出した時の様に手が止まった。掴まれた剣を眺める事しか出来なかった。

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