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継承物語  作者: 伊阪 証
暗部王動乱

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シー・ユー・メイビー

ローガンは英雄の器ではない、そう自称している。

彼の好きな事は嫌がらせと他人の怒りと焦燥だ。

その結果、彼は正義に立った。正義に立った時、すぐに殺気・苛立ち、焦燥、自壊をする。

偶然によって正義になった、そんな人間だ。

以上が彼の過去である。悪戯は対価を求めぬ、そして無責任な

「工廠公、これは全財産だ。」

「結構あるけど・・・どうした?」

髪を結い上げてサラシで締め、男装の状態で対応する。・・・彼自体は知っているが部下からの信頼が厚い分、彼は一人で来るのは珍しい。

「偽物の帝都を作る。一夜城作戦だ、出来るか?」

突然何を・・・と思ったが、別に問題は無い。五分テントを実戦投入、そして築城を行う。一夜と言いながら多分数日は余裕がある。

「・・・避難民は足りてる、実行の為に海運の人員寄越せ。」

「ああ、三日で済ませるぞ。」

「一夜じゃない。」

「名前的に都合がいいんだよ、こっちの方が。」

と言っているとアルトリウスが血だらけで入室してきた。遂に帝都より前で災害を狩り始めた。特殊部隊級でも基本撤退命令が下され・・・百人は容易に命を落とす災害、しかもそれを複数、複数種を同時に当たり前の様に殺して帰ってくる。少なくとも二日は不眠不休の筈だ。多分脳の半分を寝かせながら戦っている。草食動物の真似だろう。つまり手を抜いている。

「差し入れだ、違法薬物ばかり横行しているからそれを利用して新種を出した。」

・・・と瓶詰めの飲み物を差し出す。

「翼が生える的な・・・。」

「エナドリだな。」

「エナドリだった。」

「合法に出来る範囲で努力した産物だ。」

ヘロインの様な『体内ボロカスにするやべー薬』は厳しいが、割とそれ以外は緩い国・・・とはいえ希少品なので薬は過剰摂取目的も難しい。市場が拡大しないのだ。拷問用に利用する連中も居る。尚更回ってこない。

「ソーダで薄めて使うものだから輸送も楽だぞ。」

「初期のコーラみたいなもんか。」

一夜城作戦の開幕、ほぼ同じ城を建設する。避難民を用いて徹底的に行う。何より、金以上にローガンの下に着いた人材は彼に褒められる様に努力する。



マノンとの戦闘中、少し前の話。カンはかなり早い段階で統計上の神を捕まえていた。彼がいることで神罰執行が実行可能になるらしい。

「・・・確かにそうだな。」

「僕としては人質役は良いですけど・・・多分マノンは怒るでしょうね。」

自分はもしもの場合に逃げる準備だけはしておこう。死にたくはない。

「とはいえ彼女には軸がある、信念がある。」

尚更死にたくはなくなった・・・が、彼は別の事を伝えたいらしい。

「彼は子供ですか?」

その質問の答えは濁した。

「・・・さぁな。」

だが、それに一つ加えた。彼は何も知らない人間に並ぶ苛烈さがあると言い・・・そして。

「一つ言えるのは、童心故にあの煮え滾りがある。馬鹿じゃないと出来ない、子供じゃないと出来ない、そういう事だ。」

自分には遠く及ばない何かがある。この時の自分は贖罪に関連していると思っていたが、後でそうでないと知った。



カンとコウキは立ち上がる、自分の目的を果たすべく、執念が彼等を立たせる。

「優衣を任せた。」

「ああ、良い刀だ。奇跡の様な・・・ああ。」

「そろそろ来る筈だ。」

真上より飛来する剣、取り損ねれば其の儘世界の正反対まで届く事になる剣だ。マノン程ではないとその剣を受け止め、外れかけた肩を戻す。

『複製品をセットでつけておきますね 完璧メイドベスより』

「(楽しそうだな彼奴等。)」

倶利伽羅剣と・・・倶利伽羅剣クローン?倶利伽羅剣(1)?を持ち、右腕の肘から先へ剣を入れ、持ち手を差し込む。血が流れた儘、止血のワイヤーで縛る。

「コウキ、災害としてではなくとも、数人、己の手で殺したのでしょう?」

カンが背中を支える、無駄な血を出し切って正面の試練に挑む。

「俺は、もう昔の自分には戻れねぇ。」

超えてきた苦痛、伸し掛る試練。

「殺しもした、失敗もした。」

殺した女、殺す事になった女。自分は間違えて生きて来た。間違えて、正しくなるのではなく間違え続けてでも幸福を導き出す。

「・・・敗北だけは、絶対にしない。無駄でない事を証明し、必ず勝つと誓った。」

倶利伽羅剣の炎を燃やす、腕を焼き、肉を止血する。

初手はカン、群れる渇望の洗脳が刺さった、背後を取り、優衣を深々と刺す。

「駄目だ!心臓も大動脈も切った!全然死ぬ気配がねぇ!!」

「五割までならやっても問題無いって言われたが漸く実感したな。」

目を覚ませ、容赦はするな。迷い始めた自分の手を掴み、捻る様に唱える。

「何か来る!」

この女、魔術に近い物を行使している。ヒントか、ブラフか、取り敢えず今の場所を避けるべきだ。

優衣が落ちた、何故かその場に落ちた。

「テレポーテーションだ!気を付けろ!!」

ロタールの脚、それも考慮すると・・・多分彼女は超能力の大半を使える。神格と契約したならばそこの神も影響しているだろう・・・が、彼女は以前会った時その様な行動はしなかった。最初から使えると見て判断する。

超能力はESPとPKの二つ、それ以外にもある。前者は知覚に関して、テレパシー、透視、未来予知、過去視、霊視、地獄耳なんかもここに入る。後者はサイコキネシス、テレキネシスという物体への干渉、そしてそれ以外にパイロキネシス(PKに分類しているものもある)やテレポーテーション、記憶操作や念写、物体送信・回収がある。

「動き続けろ!来るぞ!!」

ナイフ二本が仕込まれていた服が軽くなる、多分体内に飛ばしてくる。自分の真隣に出現し、僅かに刺さった状態で出血する。

「送り返してやるよ!」

ナイフを投げ付け、猛毒に染まった血を目に当てる。下手に止めれば血が飛沫となる。

倶利伽羅剣を構え、己の足も伸ばし、一歩一歩確実に詰める。雪山を砕き前に進み、ナイフを追って手を伸ばし、剣を刺す。

急激な温度変化、パイロキネシスが展開し、火を噴く。血が蒸発し、衣服が徐々に燃え始めるが・・・迦楼羅炎の前でそれは無意味であった。

「るあぁぁ!!」

切れた腕から剣が振り下ろされた、テレキネシスが腕を引き、下ろさない様に固める。

皮が焼けて溶けかけたカンが、マノンの素肌に突っ込んだ。そして抱き締めずに首を絞め、腹を抉る。

「俺が小賢しい奴だなんて思うなよ、こっちは本気だ、こっちはガチでやってんだ。」

胃を貫く様に刺し、顔面が歪み始めた頃にそれは解かれた。

「行くぞ!」

倶利伽羅剣をカンギリギリまで刺し、溶けて繋がった部分を、血が昇ったカンの顔面、足や手を繋ぎ毒を流し込む。

そして顔の皮を剥がした。

「奥の手第一、エリニューエスに高い金払って用意してもらった。薄い膜だ。自分型の膜、アルミニウムで言えば8000系に近い、熱耐性が弱いものだ。」

先のコウキの接触があり、一時的とはいえ進化の恩恵がある。

迦楼羅炎は無害な炎、罪を焼くもの。炎を塗り替え、裁いてから殺せと言わんばかりに後回しにし、守る炎となる。

「とはいえ流石に燃え過ぎだろ。」

「お前が燃えなさ過ぎなんだよ。」

雪崩の位置は理解した、このパイロキネシスはまだ出力が上がりそうだ。どうにかして利用するべきだろう。

「『神罰執行』」

体力はもうない、残りは根性次第。カンは手を抜く様に言われているが実際の所かなり消耗している。

「『神罰執行』『神罰執行』『神罰執行』」

「連射してきたぞあの女!」

「そんなのアリかよ!!」

雪山が大きく溶けた、地面が歪み、一部は溶岩と混ざり始めた。天と地の差が広がり、風と雷が吹き荒れ、火山が目覚め、氷が落ちてくる。曇天が光を閉じ、山奥から夕日であろう何かが差し込まれる。

ギロチンが地を整え、天から洪水が始まる。

「硫酸だ!気を付けろ!!」

「何が超能力だよ!化学物質テロじゃねぇかクソ!!」

「害意が産んだ大人への抵抗手段だ、武器と変わりねぇガジェットだよこんなん!!」

そう言いつつ、切り替えてコウキの足をカンが掴み真上に飛んだ。

「(多分奥の手が二個三個あると踏んで倶利伽羅剣を利用する為空間を縮めて殺すつもりだろう。)」

だから敢えて離れ、真下に向けた直後、その差は縮まった。

「(正面かどうかで大きく威力が変わる・・・結構戦い自体は下手だな。)」

カンが沸騰しかけた氷水に手を突っ込み、そしてコウキの足に位置を合わせて蹴る。

本命はそっちじゃない、カンは立たずに、寝そべった儘指を構える。

魔術の一時的解除、そして標準を合わせて、発射までが整った。

「『指弾』」

選択を強いた。それも両方防ぐ事が可能なギリギリの状態で。片方はコウキの倶利伽羅剣、僅かに遅れて到達する。もう片方はカンの指弾、無色だが理解出来る、しかし威力は不明。魔術を利用した代物であると気付かない。・・・地中に埋まった影響を全て引っ張り出した。その威力はどれ程か、計り知れないものとなる。

どちらも致命傷となりうる、だが、神罰執行の影響がある以上、テレポーテーションは使えない。仮に使ったらロタールが守るべき神を手に掛ける。

だが、だが、だが。甘かった。マノンは消耗を殆どしていない。

今までの攻撃全ては何処かに破棄されていた。

今回も例外無く、切られた後も、カンの高威力・・・それも水も溶岩も全て薙ぎ払った威力が受け止められ、何処かに消え去った。

「物質転移だ、ロタールが打撃主体にした理由が分かった。」

下手すれば骨折も通用しない、心臓を止めようが脳がくたばらない限りは意味が無い。下手すれば大脳、中脳、脳幹を同時に破壊する必要もある。しかも身体的な伸び代は大きい・・・確かに彼女は世界最高峰の一角に相応しい。一撃で全部砕いて来る連中には分が悪いが、それ以外には彼等以上の強さを見せる事も出来る。

湧き上がる活力が、程遠い道を諦めない。

トラウマが蘇ろうと意味がない訳では無い、寧ろ背中を押していた。

「『輝ける七つの海』」

見せつけられた腕を切り、無意味だと言わんばかりに腕を袖の下から治す彼女に見せつけた。切られた腕から剣を外し、僅かに大きいそれを結び付ける。

「『肯定反応』」

結び付けた腕で魅せるは怪力の剣、耳の隣を掠め、間合いも詰めずに切り落とす。

「鍛え方が違う、時間が圧倒的に短い。年単位という感じもしない。もっと短い・・・日や時間の単位だ。」

質とセンス、であれば彼が上。武道とは経験と努力の賜物、半端なセンスや力任せな技を的確に倒す為のもの。・・・言ってしまえば相手のうっかりを待つ技である。だからマノンのかなり上に立てている。

繋ぎ合わせた腕を主体に徒手空拳を繰り広げる。

群れる渇望も消耗が激しい、燃料が徐々に不足するし、元から大した効果も無い。有り得ない挙動を多少させられる程度。

段々と押しても超能力が猛威を振るう、鈍くはなっているが、より雑に、より大規模にもなっている。

カンとコウキのコンビネーションはロタールも絶賛するものであった。合わせていると言うよりは、カンの動きにコウキが合わせる時が多い中、コウキは大技だけはカンを頼る。神経の消耗を起こしつつも短期決戦で解決するコンビネーションを、長期戦に転用して接続を最低限にする。

公爵と王位を見てみろ、自分の一番相性いい奴は死んだし単体性能異常だし足を揃えて誕生するのは不協和音だ。歩調は揃えない方がいい曲が誕生する、それでこそ帝国だ。それに比べたらかなり良い連中だ。カンは今でこそ相性が悪いものの、攻撃は当てられている。

マノンは恐らくやろうと思えば遠隔で分解してくる。そうしない理由は何かある。自分の場合躊躇無く切ったが、その際にかなり猛毒を発生させており、それを懸念しているのだろう。

「・・・そう考えると自分は相性が良い所もあるのか。」

今回も割と幸運な状況で戦っていた。そんな気がする。と言っても知性ある限り有効な自分は誰相手でもそんな感じだ。

神罰執行が何故連発出来たか、正直最初っから打ち続ければ良いとは思うが・・・。

「迦楼羅炎?」

罪を焼く炎、それに例外が無ければ、彼女が手を汚していない程有効なのでは?と確信した。超能力は神の在り方を変えてしまう、実際宗教の誕生に超能力が関わっている事も多い。だから最初は使わなかった。

神罰執行の条件は罪が少ない事ではないか。マノンが押されている理由もその罪に関連した事だろう。

喉を絞められてもそれを倶利伽羅剣が許さない。ほぼ動き無しに最速で剣が撃ち抜いてくる。

内臓転移がコウキに通用しない、・・・というのもコウキはエリニューエスに頼んで内臓を取り除いている。心臓と生殖器以外はエリニューエスとの密かな契約によって内臓代わりの状態にしており、食事も基本最低限となっている。その心臓もサイズが違う、通常の扱いを受けれず・・・入れ替えるにもスカる。Null、或いはエラーは起きているのだ。

カンには通用するが・・・入れ替え先がない。ロタールは妙だから危険、というのもアレが人間とは思えない。

「よし、脚が治った。」

コウキもカンも言うほど押せてはいない、相手の弱点につけいっているだけだ。動くべきは自分だ、彼等を助けるのも自分、導くべきなのも自分である。

武道は将棋に近い、グラフで評価すると突然崩れる事もあるが、基本的にジワジワ追い詰めるものだ。だからウッカリはかなり重い、先の前者に当たるのもそのウッカリである。差が縮まっていない、寧ろ追い込まれている気さえする。

「どうとでも言えるから、今から追い込む。」

人質に価値は無い、自分の範囲なら巻き込める。

カンとコウキの隙間を縫う様に割り込むは遠征公ロタール、どこの流派にも属さない、ほぼ独学の技。彼は人類の括りに収納する必要は無い、病の痕跡を用いて防ぎ、攻撃手段にも変える。

超能力か、神罰か、体術か。複数か。

小さく、微かな声で言った。

「『神罰執行』」

0.1秒遅れて気付いた、甘かった、そういう事も出来た。

「あー!クソ!この女汚ぇ!!」

言うだけで十分、神罰執行の要件は満たされた。

これは恐らくあの統計上の神へ聞かせなければいけないのだ・・・その挙動が断片でも伝われば可、やっぱりクソ技である。

「硫酸はキツい!」

ミスト状にしても危険な硫酸、沸点は290℃、溶岩ですぐに気化する・・・下手すれば、立つ事も許されない。

マノンが体術に切り替えると見越して剣を持ったが、多分剣よりも内に入る。この剣は一度振ると中々止まらない。踏み込んで前に出るべきだ。

パイロキネシスに切り替えさせる、剣を外に向け、抱き締めたがタイミングは緩まない。・・・しかし温度は高い箇所から低い箇所へ向かう、硫酸の気化が起きても排熱がそれを跳ね除ける。

「『守ってくれるんだね、ありがとう。』」

ヘカテー使って惑わす、群れる渇望の不意打ちを並行して起こし、心理的に揺さぶる。

パイロキネシスを解かせ、段々と気流が混じり、多少は害があるが程よい状態に気体が戻る。それどころか急激に流れ風となり押し込まれる。

先の中でもパイロキネシスだけが異常な力を有している、アルトリウスのメタ技というのはこれだろう。光の速度で突き刺す・・・ジュデッカの遅延でも足りない程度には早い。耐久力が異常だがマノンの様な回復力は多分無い。

誘発する必要があるが・・・切るだろうか。さっきから陰湿な嫌がらせやヘカテーによる存在しない記憶とかエルフストリート特産品のお薬とか色々しているが、聞いている気がしない。

「(三人掛りで行うぞ、出来るか?)」

「(応。)」

「(ああ、そういう事か。)」

先の嫌がらせをもう一度試す、特に薬、媚薬と筋弛緩剤が有効なら戦況は大きく変わる。上振れというか効き過ぎた場合もしもの場合はロタールを犠牲にして逃げる。効いていないとはあまり思えないのもある。過剰摂取で血を吹きそうな予感もする。それはそれで好都合だ。

テレポート、テレキネシス、物体送信、パイロキネシスが厄介だが、未来予知は以外とそうでもない。未来視が混ざっているが・・・未来の確定か、結果までの過程を飛ばして教えるか・・・未来視の場合確定して並行するから負けだと言われたら負け確定、結果までの過程を飛ばした方が好都合だが、多分事故を起こす選択を減らす為に使っているので弱点にもなっている。過去視で何をされたかバレる、同じ手はあまり使えないが、パッケージがバレンタインチョコと大差ないのでこちらは問題ない。

ヒットアンドアウェイ、その連続で凌げるだろうか。正直物足りない。彼女がリスクを犯せる状態にする・・・であれば。

・・・ロタールにさせる。

「(視力と聴力を一時的に奪えるか?)」

「(マノンへは無理だ、効かん。)」

「(いや、違う。)」

統計上の神へ素早く標準を合わせ、三人の攻撃タイミングを合わせた。

「『神罰執行』」

そう言っても何も起きなかった。全てが狂う様に彼女の顔色が変わる。溶岩に溺れる様に統計上の神が動いていた。

「空振りだ、残念だな。」

あの赤の正体は腫れ物だ、微生物や小動物を利用したもので、死体がガスで膨らむのを利用した。溶岩が破裂する様に見えただろう。

「お前のせいじゃないか?あーあ、ひでぇ事しやがる。後先考えない奴はこれだから。」

神罰執行を封じた、目と耳を無効化、これはもう許されなさそうだが、ヘカテーを使って乗っ取るのも視野に入れた。脳がある程度焼き切れて修復時に干渉する必要がある。

マノンの顔が歪む、表情も、涙も。人生や価値、生きた意味。それが破綻した。

その上でヘカテーを用いて方向を変える。

『(マノン、私は生きています。これは守る為の膜、後はどうとでもやってください。)』

混乱とカンの情報をベースにヘカテーが再現し、藁に縋らせる。

『(私は貴女を信じていますよ、マノン。)』

掴んだ、高揚と共に火力過剰が起き始める。抑え切れない心が燃え始め、応援される喜びが火を引く。

自然災害が次々に起きる、超能力がありとあらゆる自然の脅威を起こし始める。神罰執行よりも遥かに強い、人類崩壊の兆しが如く。

「(狙い通りだ。)」

予想以上でもある、テレキネシスで右腕が折れた、彼女の腕、かなり硬かった上に参考にして全身へ広げたが、それですら折った。あのパイロキネシスを生身で耐え、衣服を次々に新しくしている彼女の火力は自分にも影響する・・・いや、影響してでも火力の高さに拘っている。

「(ヘカテー、無理を言ったな。)」

『(勝つ見込みが無くても、一緒に着いていくよ。)』

「(自慢の娘・・・と言いたいが、正直、自慢の相棒だな。ヘカテー自体が母であって欲しい位だ。)」

『(うーん、微妙な嬉しさ。)』

「(俺には、俺には嬉しいさ。)」

ヘカテーがブーストを掛ける、群れる渇望の愛情という条件を最大にし、災害であった時の火力を一時的に取り戻す。

耐える為に全てを費やせ、防御を構築し、マノンの熱狂に向かう。


さぁ、原初の炎だ。物体受取による水素の供給、そして遥か先の星から炎を受け取る。右にガス、左に炎、赤という太陽の写し身が接触する程白に染まる。

最初に視覚が破壊された、眩しさで精神も乱される。顔が焼ける、熱波が届き、音も届く。だが、それは初動に過ぎない。

これは広範囲の一撃ではなく、一点集中の為に作り出した炎だ。レーザーの様に射出されるは青い炎、銀の光、全身が熱い、しかしヘカテーがそれを補って防壁を作る。

パイロキネシスの最高峰、ガスが発火し、青の光でオーロラを引き起こす。地球を覆うベールは、尖る様に空を覆い傍からも、別の国からも見えた。電子機器の大半が破壊された。

「『蒼白星の飛沫(シリウス・ライト)』」

空に放たれた光は、コウキを狙って明確に降り注ぐ。明確過ぎて見えやしないが、覚悟して受け止める。

「『キャリントン・イブ』」

恒星の種類として有名なのは色である。赤か青、後者の方が燃え、寿命も短い。

アルトリウスの対策は破滅の日照まで、つまり太陽と同等の威力しか耐えられないのだ・・・彼への飽和攻撃、それがメタ技と言えるものであった。

コウキは咄嗟に考えた。

倶利伽羅剣であれば防げる、だが、範囲が小さい。

「無理をしてでも実行するか。」

水は十分だ、溶岩も煮詰まった。暑さからしても十分だ。氷は消え、熱された大雨が続く。

「水蒸気爆発、大体1mLの水が2Lの水蒸気になる。二千倍さ。『輝ける七つの海』」

自分を起点に微生物を盾に。出力は十分。連鎖的に地球の一部が焼け始める。何とか防げるだろう。

「火山の破片と、衝撃による全身への苦痛。」

自分達の防御手段は無い、それを分かってこの手を選んだ。後は再生力勝負、息があればエリニューエスに回せばいい。


アルトリウスが先程移動していたのはこの為だ。彼女は惑星の破壊手段を持っている・・・その為、殺す準備も一応はしてあるが、少し制裁しておく程度で良いだろう。

「・・・心配だから射程ギリギリまで来たが・・・不味いな。一帯が破壊されるのは特に。」

剣を一つ一つ紡ぎ、光を纏い、一つの剣となる。

「・・・ペナルティだ、因果応報を理解すると良い。」

その聖剣十二束を握り、そして十文字に切る。

因果は逆行した、最初からそこにあったかの様に。

その運命を決定付けた。

崩れた筈の地面が解され、平らになって酷く凹んだ。

そしてマノンの胸に大きく傷が入った。

「・・・邪魔するな・・・アルトリウスゥ!!」

遙か遠くに居る彼は嘲った。

「残念だったなマノン!だが、死んだとわざわざ隠していた時点で容赦の必要は無い。」

コウキに申し訳程度の警告、手に入れれそうな状況が出来た事に歓喜する。マノンは自分よりは優しい・・・和解出来ると信じたい。

「コウキ、そいつを殺すなよ。もし殺したら歴史が変わる所じゃ済まない、俺やハルノブに並ぶ事になる。」

・・・三人がかりなのではそうは言えないが、それでも世界のパワーバランスが乱れる。下手すれば味方も居なくなる。

マノンは先程確かに怒った、絶望と笑いの先に起きた急な挫折が彼女を怒らせた。

水蒸気爆発の一部が切り裂かれ、三人分のスペースが空く。北部の数国が滅び、避難が完了した一部の都市も消え去った。被害は未知数、その上でベールを解いてカンとロタールが彼の跳躍を支えた。

今なら可能だ。

剣で銃弾は弾き返されず、推進する。

「『輝ける七つの海!』」

方向を変え、刺突から一周させて袈裟斬りに変える。技のブーストだけにそれを費やす、恐らくどこかで対価をキッチリ取られる。それを覚悟して突っ込む。止まる事の無い剣は持ち手からいとも容易く掴まれた。それだけを捧げようと、なけなしの貯金であるかの様に容易く扱われた。

重さが異次元にある倶利伽羅剣を素早く上に上げ、そして真下へ叩き込まれる。それは勝利の証明、頭が回るよりも先に剣を入れた。

「マノン!止めよ!」

統計上の神は叫んだ。

コウキの切り上げた刺さり、それを受け止めた状態で止まる。だが、もう体力は無かった。精神的なブーストを切らし、突貫で縫った傷が開き、腕が解ける。反動で薄い赤色の燃料の液体を吐き、血も混じる。生の実感も意識も無くなり、戦いどころではなかった。

「・・・流石に認めるしかなさそうですわね。」

返事は無かった、目は閉じられ、カンも倒れるが這い蹲って岩の上に座り傷口を焼いて止血する。

「・・・余裕なんだか、苦戦したんだか。」

「割と余裕はあった方だ、死んでも勝てば余裕がある方だろう。」

「・・・それなら・・・良い。」

カンも意識を失い、ロタールは誰かに祈って剣を仕舞う。エリニューエスが流石に話を聞いて向かってきた。

「・・・コウキの交渉次第だろ、後は。」

まだ戦いは終わっていない筈だが、統計上の神は言った。

「やり過ぎです、マノン。本気で心配しましたよ。」

「無事で何より、私の主。」

「手抜きではありましたが偶に本気が混じっていました、暫くは神罰も許可無しに使えない様にしておきますよ。」

彼等にも事情はあるが、取り敢えずは功労者の蘇生、多分今までで一番傷を負っている。ロタールの持つもので誤魔化していたが、多分普通に戦えば死んでいた。

「・・・さぁ、コウキ。私に媚薬と筋弛緩剤を何度も打ち込んだ言い訳を聞かせて貰いましょうか。」

「何してんの!?」

「地元の宣伝。」

「私も聞かなきゃいけないんだけど!?」

・・・少し、羽目を外し過ぎたかもしれない。

コウキの損傷率:92%


コウキの輝ける七つの海はQueenが元ネタだけどそれ以外にも理由や背景が色々あります。

一つ目は海の自然における割合と循環システム。一応災害なので彼は海を進化させ陸を滅ぼす系の災害になってます。つまり入浴剤。なんか違うかも。

二つ目は輝ける・・・というのは海面ではなく海中、水の中から光が差し込む光景と海底火山の光景の二つです。太陽光も月光も指します。

三つ目は人体の水分量が七割である事、地球の陸海の割合が3:7である事。

四つ目は群れる渇望はオーバーターニング循環を参考にしていて、海水が沈殿する事で海洋の酸素吸収が減るというものをベースに、群れる渇望は時間経過の中で人類があまりにも道を外れた場合海流や環境を乱す様に生態系や地球環境を捻じ曲げ、最終的に地球から酸素濃度を減らし、他惑星に近くして生物を受け入れる体制を作るという目的を達成出来るから。

・・・とまぁ結構色々あります。災害というのはこんな感じで由来あるものが多いです。派生して増やしてるから手抜きではある。

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