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継承物語  作者: 伊阪 証
暗部王動乱

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55/74

キャリントン・イヴ

死ぬ程銃弾の話をします。

頭が痛い時は大体こうなる。

今回からは過去話+本編が暫く続きます。

あと最近はエンジン不調気味。

五本は予約投稿済みだけどその後の二本も早めに出したい所

カンの過去は、特に殺人やそういうものは無かった、平和な日本で生きた人間だった。全ては刑務所で教わったもの、彼は府中刑務所の囚人であった。

ハイランダー症候群、彼の細胞は突然機能を停止、だが身体自体は止まらなかった。細胞の時間だけが変化した・・・今でもよく分かっていない、確かな事は・・・人間から外れた、神話の存在・・・神話の元ネタと同じ風になった。・・・彼はジュデッカの設計図となった人間、言うなれば帝国を成した半分である。

「これが差し入れの漫画だ、気に入ってくれるかなって思って買って来たよ。」

と言われて後で確認したら・・・。

「・・・あの女、複数作品の冒頭三巻だけ入れて置いてきやがった。」

彼女との出会いは毎日を送った盛り上げた。名前は喜友名詩音、離婚して縁は切れたが嘗て家族だったと言っている。

府中刑務所では様々な事を教わった。犯罪者目線だから分かる、特にこの極悪人が多い場所であれば尚更。

『コイツは犯罪者ではない』もっと言うなら『犯罪をする選択に至れない』悩む事や苦しむ事も考慮されているかもしれないが『合理性から行わない』『合法の範囲で詐欺を行う知能犯』と扱われている。正義感や罪悪感は一切無い人間だ。

使える、役に立つ。故に仕込む。



恋人は宝石の様なものだ。

時に財産、時に装飾品となる。財産という安堵、装飾品という価値、それを有している。

彼女は俺の安堵であった。


自分の出生を調査したが、特に問題は無かった。寧ろその逆、裁判の記録を漁った所、妙に他の刑務所の囚人数が増え、その出生が全てタカハシという家に関係していた。

弁護士や探偵と知り合い、事件や事故を解決、知名度を裏で上げ、影から支え、そして遂に実行する。

タカハシの潔白証明、過去最大の冤罪事件。府中だけそ該当者無しというのは狙いがあるのだろう・・・だが、公言は出来ないと判断し、一人もいないなんて有り得ないと強制的に調査をさせる。彼女を利用し、タカハシと関係があったがもう殺されたとして誤魔化せば良い。

「偽造で大事なのは信用だ、偽造した組織か、正義を証明した悪人、どっちが信用されるかな?」

彼は見事にその陰謀を打ち砕き、その結果問題が多発、そして偽造する環境が整った。

「後は、府中を改修して政府にするだけだ。」

凶悪犯罪者、故に指揮系統を担っていた人材は多く、支配する事は容易。

治安の悪化、悪人を利用した支配、破綻していく世界だが、今出来る限りの事をする。企業の投資はこちらに切り替わった、もう信用は無い、優勢なのは府中刑務所政府であった。



彼女とまた会った時に、自分は無罪となっていた。もうそんな価値のある機関ではないし、気にかけてもいない。

「警察か、無罪になった後三万円補償金をやるから許せって言ってきたな。」

国家は破綻続き、この国だけではない。戦争によって荒れたのもあるが、派手に崩れた。

「裁判で三千万円まで引き上げたが間違ってないって主張していたよ。」

どうせ貨幣に価値は無い、だが、明日食う飯の金は欲しい。

「あとお前漫画の中で一番オススメしてた奴打ち切られてたの知った上で渡したよなお前。」

「うそ!?なんで知ってるの!?」

「作者が逮捕されてこのムショに居たからだよ。」

寂れた商店街は、もう人もおらず、物だけが残っていた。

「この缶詰はいけそう。」

「やはり頭数が少ないと扱うのが楽だな。」

「そうなの?」

「もうどうせ滅ぶ世界だ、手折る様に安らかに送るべきだろう。」

嫌という程この終わりを見ていた、理解しているのだ。隕石の落下も、衛星の落下も。

彼女の衣服の下は爛れていた。救いは無い、やがて死ぬ体だ。

「私は、そう長く生きれない。」

「・・・そうか。」

「核の汚染、腐る世界。ここならギリギリ安全だけど、触れる事も・・・。」

泣くのは我慢していた筈だ、頬が僅かに温まる。

「出来ない、貴方を傷付けない為に、そうしたくない。」

人間に未来は無い、どうして未来が無くなったのかは分からない。だが、自分が不幸かどうかは、恐らく幸運だった。

「・・・だから、強く生きてね。」

自分が心を失くしたのはこの辺だろうか。もう取り戻す事も有り得ない。そんな風に思っていた。

彼女に会えたのだから、自分はきっと幸せなのだ。自分にもし、生まれが否定されるものであったとしても・・・彼女がこの様に扱われるなんて事があったいいのか、そう苦しみながら涙を堪え続けた。

もう、その情熱は冷めた。冷めた筈だ。

彼女は私の安堵なのだから。

スタンガンを撃ち込まれ倒れた私に意識は無く、目が覚めた時には英雄の剛腕の中だった。

あの天を包む灰色も無く、清々しい位の晴天だった。



暗部王からの対談申し込み。あまり考え事は出来ない、取り敢えず指定の場所まで進む。

「リュファス、エリニューエスを護衛に待機、戦える能力は無いから絶対に戦うな。愛してるよ。」

「警告するよりも現を抜かせる事の方が有効だと気付いたか。」

「言いたいから言ってるだけだ。」

「・・・ちょっと予想外かも。」

「カオルコは遊撃、カンは周辺の偵察、闘は帰還するまで後一時間、そこから狙撃援護をするらしい。」

「確認終了だな。借りた奴等は動員してある。」

「戦闘は控えろ、一人は必ず逃げて情報を広めろ。」

「そんくらい手は打ってある、だが、偽物の可能性も否定出来ない、それを確認するまで動かないつもりだ。」

彼の予想は少数精鋭、警告として部屋から出るな・・・外へ逃げると迎撃で姿を現す、ゲリラは炙り出した実績からギリギリまで動かさないだろう。

自分は気付かれない程度の音量や衝撃で敵の切り札役を潰す。それは間違いなく対話相手ではなく、護衛だ。

「リュファス、来るな。」

「いえ、行きましょう。」

「・・・作戦か?」

「はい。」

少し話して把握した。確かに理に適った作戦だ。それであれば納得出来る。

「もしも傷一つ付けられたら中断だ、毒薬の可能性を否定出来ない。」

「守ってくれるから安心して油断するよ。」

「警戒は怠るなよ、弁舌に期待している。」

簡単にリュファスの提案を言うなら、偽の王である。リュファスを女王に仕立て、その護衛が王の役割をしている。これは女帝がいる帝国であれば文化的なものだと片付けれる。以前エルフ・ストリートに騒動を起こした際、恩賞として物を幾つか貰い、それを使えば『偽物の可能性はあるが、超高級品のドレスを喪失させるとは思えない。』という偽物が上の方ではないと踏んでいるのだ。

他にもリュファスは恋愛営業上手、リピーター率7割オーバー、3割は指名料不足だ。実力はある。だが、多分自分であれば剣や銃位は耐えられる、だがリュファスは即座に穴を空けられる位に弱いだろう。自分の実力次第だ。

カンは引き続き手を明かす。彼は切り札を毎度隠す為、諜報に強い。自分は一人一人を助けて、彼がその得たリソースを運用する。良いバランスだ。

「火薬探知犬を一般市民に貸し出した。小型犬も今歩いてる奴は九割が訓練個体だ。」

カン第一の手、コストこそ掛かるが防衛戦ではかなり優秀。火薬の種類を分けて優先順位も把握してある。

「静寂の作法、こっそり流行らせた甲斐がある。情報交換は表立って出来ないだろう。コウキに頼んでおいて良かったな、ホント。」

曲を流行らせた、吟遊詩人は諜報員として使われる事も多く、敵は接触を避けてしまう。寧ろ別の吟遊詩人を送る。その為被らない事を期待されて聞き出せない。

「準備に一年も与えたのが間違いだったな、こっちは仕込みに仕込んで完全に防衛が出来る準備を整えてあるんだ。」

大局観で盤上を仕切るカンと、微細な戦術で対面相手を滅多打ちにするコウキ、それを汎用性とスピードでカバーしつつ作戦を実行するカオルコ。

「クシナは外周、基本暗殺で戦え。」

『堀に投げておくね。』

「出来るだけ早く済ませろ。撤退の基準は少数精鋭であれば戦力の五割が目安、決死隊の可能性も否定出来ないが半分だからそう難しくないだろう?」

「ああ、分かってるさ。」

準備は一通り終わらせた。軍人の証明であるネクタイに切り替え、リュファスが締める。

「・・・ふふ、結婚式みたいだね。」

「リュファス、警戒は怠るな。」

「・・・ごめんね、少し緩まないといつもの調子になれない。」

「・・・分かったよ。」

『爆破物は無い?』

「臭いで分かるさ、引っ掛かりも無い。」

『銃砲類は?』

「黒色火薬が臭う。」

中心部、対談の場は旧王宮ド・ラ・ボルド。

「・・・俺が先だ、黒色火薬の銃弾なら弾速は無い。貫通せず止めれる。」

護衛は扉の前にも用意されていない。中に全員存在する、か。

「穏便に行くぞ。」

「ああ。」

斜め方向からヒールを切り込み、床板に確かな音を鳴らす、その火薬の音と銃口を物ともせず前に進むドレスの女、そしてその護衛は銃口を外させ、二つとも喉笛に突っ込んだ。

「やぁ、『戦争王』。」

「陰部王だったか?陰キャ王かもしれん。」

さっきとは違う悪意がある、暗部王の手引きというか影響で働いていたのかもしれないが・・・隠してしまうだろう。

「こんな雑なコミュニケーションから始まるなんて想定外にも程がある。経験不足だなお前。」

リュファスが結構ずけずけと言う・・・ああうん、そう言うプレイもあったのかもしれないが・・・うん。銃口を指した際に排莢箇所にア〇ンアルファ的な何かを塗っておいた、勿論トリガーにも。一瞬でも時間を稼ぎ、二発目を遅れさせれば有効打になる。

案外気付かれないものだ。大広間を選ばない事で安全を保障した・・・多分盗聴役がいるのだろう。発射機構と組み合わせるには便利なものだ。

『(的と言える人間は周囲には居ないね。)』

「(だとすれば・・・。)」

『(遠距離からの盗聴。)』

リュファスに会話は任せ、こちらはこの場所を手っ取り早く罠を仕掛けて破壊する事に関して想定する。

『(目の前の人達はフェイクだけどサキュバス系のバックアップを仕掛けてる可能性がある。)』

「(殺す以外に手出しは無用って感じだな。)」

『(表に出てくるかな?)』

「(表に出なきゃいけない理由に関しても計画している、カンに自分の計画と照らし合わせて達成させる。)」

リュファスの挑発を聞きながらも此方は此方で会話、思考含めて盗聴されていても問題無い範囲で行う。

「・・・英雄は人を殺してまでなる必要があるものか?先ず殺す必要もないだろうに。」

暗部王はそう言った、自分を否定する様な言葉でもあった、そしてそれは己にも向いたものだろう。

「お前みたいな汚れた人間がいるから英雄が望まれ、殺す事で救いになる。善悪の順序通りだから何も間違っていないさ。」

「(普通に怖い。)」

『(いつものほんのちょっとだけアンアン言ってるのが恋しい。)』

「会話内容もマッチポンプか?ねぇな、そりゃ本当にねぇ。自分は人間として虚無ですなんて言ってる様なもんだろ。あぁ本当かったるい、本当は話したくもない。オドオドした陰キャの方がまだ面白い話が出来るっての。」

「(この状態でもアリかもしれない。)」

『(その現実逃避はどうかと思うの。)』

もうコウキには手の打ちようがない、リュファス自身も多分お人好しだから出来ないと踏んでこんな事をしている。

「幸運な時代、アルトリウス等が善人であり、支配を維持出来ているからそう言われる。だが、お前は悪を拡大する側だ、悪と善を分離させて都合良く気付かれない様に新しい経済活動の市場を作ろうとしている。」

「戯言でしかない。善のお零れを貰っている悪の話なんて聞くに絶えない、どちらが優れた市場かの比べ合いっこだ。それに負けた上に恩恵に預かっている負け犬も話だから尚更聞くに絶えないな。」

「(ユウキにこの内容伝えたくないなぁ。)」

『(帰っていいかなぁ。)』

「(多分バレてるから早期に決めて良いか?)」

『(丁度良いタイミングで発破掛ける。)』

一方その頃、カンとカオルコ。

宮殿外は自主的に逃げ、死体こそ転がっているが敵の方が数としては多い。

指弾は使えない状況、戦力としての情報は不明。

「多分戦力はバレてる、一番のタンク要員が居ないからなぁ・・・コウキかリュファスに攻撃を仕掛ける。」

で、あれば。

彼が狙撃に集中する訳が無い。

「(とはいえ敵戦力が全体のどれだけ使用されているか。質より数って敵だからな。算出が難しい。推測もそうだ。)」

アルトリウスを皇帝にすればすぐ立て直せるが、囮としてはデメリット付き、今死なせると連鎖的に崩壊する原因となる。

コウキか、皇帝か。見極めて殲滅か攻撃の移行かを決める必要がある。

「・・・ここはコウキを信じて殲滅、そして帝都に向かうべきだ。」

コウキも早期に終了させた方が良いと理解している。そして、ヘカテーに頼む。正体を明かし、リュファスを下げて戦いのカードから消す。

『(今は駄目だけど無理矢理隙を作る、さっき試してリカバリまで一秒間はある。)』

「(即座に決めるぞ。)」

『(初動の詰めまではこっちでやる。)』

「(攻撃はこっちだ。)」

全員の思考を強制的に中断、そして自分の目にすら止まらない速度で手の近くから切り始める。

「・・・。」

居合を最後の箇所で止められた。

「・・・久々だな、避ける奴なら見たが止める奴は初めて見た。」

「予想はしていた。」

剣先を手掴み、その後を振り切れずにいた。

「(力技じゃない、麻痺させて止めているな。)」

肩までは掌握されている、それであれば倒れる様に突き進む。

「・・・チッ!」

腕を曲げられる、離れているても数秒程度は動かせるか。反射を握られているとなれば触るのはNG、徒手空拳は蹴りに縛るか。

リュファスを後ろの扉に突き離し、そして抜いた剣を掴み続けたその手を蹴り開かせる。

中国拳法混ざりに机の上から下へ一人を強襲、そして一直線に捨ててもう一人を始末した。

偽物とはいえ、実力は差し支えない。・・・と言うよりも厄介、多分手近な所に起きたくないのだろう。

銃声を鳴らされた時、直ぐに見切った。順序で言えば逆、銃声よりも先に銃弾に気付けた。

「(狙撃手、それもライフル。黒色火薬なら大型の銃弾かと思ったが小型の銃弾も使っている・・・。)」

予想外だ、リュファスの方に問題は無いが、多少は掠った。

「(無煙火薬弾はあまり使われていない、生産も少ない筈だが有している。まずアルトリウスみたいな馬鹿げた連中がいるせいで小口径銃なんて大して強くねぇのに。)」

腕が余程立つ狙撃手・・・或いは、暗部王本人。

別で考えている事と絡み合い、そのシナリオは不味いと冷や汗が滴る。

硝煙で追うなら、早期に片付けるべきだ。

ジョーカーが解き放たれた。武器を回収はしたが重いので別で輸送、だが、それでいい。武器は不要、掌一つで握り殺せば良い。

「あれかな、うん。」

壁を跳ねる様に登っては宮殿の頂上から装備無しのダイビングを敢行、そして姿勢を変える。

蹴りを抑えなければ死ぬ、それか逃げなければ死ぬ。それに対し提案として拳銃を引き抜いた。銃口がそちらを向いた、思考を鈍らせ、逆転の可能性である迎撃体勢、ボルトアクションライフルを二発撃つべく片方を引き金、もう片方をボルトに添えた時・・・。

「空マガジン、もうさっき八人撃っちゃったからね。上空で拳銃なら確実に弾を込めていると思ったでしょ?・・・残念、さっきの落下でもう撃ち尽くしたのさ。」

闘は心理的な賭けに勝った、やはり銃関係の腕は伝わっている、多用した影響もあるが、完璧でないのが救いだ。

「・・・銃弾のサイズ、大きいなこれ・・・。」

・・・対物ライフルか、重機関銃。壁に埋もれた弾丸は決して軽いものではない。見切れる程に重く遅いものだ。重機関銃・・・?

「・・・まさか、狙撃の方が陽動?」

戻って早々幸先が悪い、重機関銃が複数箇所にあると思われる。それによって宮殿を崩壊させ、殺す。

「・・・場所は・・・。」

狙撃距離の記録に、こんな話がある。『世界五位の記録だけは、ライフルではなく重機関銃による記録』と。航空機やボートに搭載し運用、建物を粉々に粉砕するのも容易。・・・それであれば。

「半径1000mは最低でも考慮しなければいけない。」

・・・私に任せればモーマンタイじゃない?みたいな事を言ってくる爆速ヒロインはいない。

「・・・落ち着け、いつもより焦燥感がある。焦るのは禁物だ。」

部屋自体は硬い、だが、脱出ルートが潰されるのは厳しい、多分そこを狙われる。

「俺は多重人格だ、別々の人格が同時に存在し、同時に話す。」

何やら突然言い出した、揺さぶりか、或いは裏切りか。聞くしかない、挑発して本性をほじくり返すべきだ。

「それぞれの思考が並行して進むのさ。」

「じゃあなんだ?妄言聞いて甘やかせってか?」

「もうそれが出来る様な余裕は無い。」

「知らねぇよ、俺にとっちゃ何か意味があるか?」

「笑わない、それだけでも感謝する。それは地位に伴ったものか?」

「俺はそういう性格じゃねぇ、そういう失敗で死んだから避けているだけだ。」

結構だ、気付いたらしいが今はブラフとして使いたい。明かさずに耐える。

「リュファス、締め上げろ。」

「了解、My fair KING。」

もう我慢する必要は無い、窓に近付けでカーテン越しに押し付ける。

「折って構わん、収納を利用して縛れ。」

「了解。」

関節を折り、膝は立てるが逆方向に曲げ、歩けない様にした。

「盗み聞きはされる前提で動いていたさ、リュファスが戦えないとか思わない方が良い。自分の構造をある程度模倣させておいた。そこいらの軍人より強いだろうな。」

ボディーガード五人の首を切り捨て、窓から放り投げる。

「多分伝えてねぇな、隠す為に言ってない、そして以前の手口を考慮すると金だけ渡している可能性が高い。」

ならばこれで撤退が始まる、カオルコに掃討戦を伝える白の発煙筒を投げた。毎作戦で色を変える為気付かれていないだろう。

先から繰り返される痛みの正体に気付く。さしたるものではなかったが、リュファスの瞬きがいつもよりも強いと気付いてから疑った。

「頭痛、レーザーポインターか超音波で盗聴してるな。」

そして偽物の暗部王に目を向け、剣を持つ。

「アーノルド含めて何人に手を出したか、嫁を強姦し自殺或いは殺害、子供の記憶を無意味に継承させる・・・この辺が特に気に食わないがお前はやり過ぎた。」

倶利伽羅剣の冷えた炎が発火する、その炎は傷付けぬものである。しかし、その炎罪を許さず。

「笑いやしないさ、殺意だけをお前に向けている。」

コウキを纏めて、目の前の人間を焼き払う。

「感覚器官が鈍っている、リュファス、来い。」

「何かあったか?」

「・・・、分かった。」

護衛ではない、狙撃手。工廠公から盗んだ銃だろう。精度やレーザーサイト、それを利用した盗聴器は別の存在からだな。

「影武者だから上位の立場・・・なんて思っているだろうけどお前はスケープゴートだな。銃弾でお前諸共撃ち抜くつもりらしい。」

貫通するとなれば弾速はそれなり、初速800m/sはあるだろう。貫通する分遅くはなるが、威力は寧ろ上がっている。貫通すると逆に傷になりにくい。

威力から連射はしてこない、仮に被弾しても二発であれば問題無い。こちらの反撃は連射能力的に五発、マグナムとはいえ弾速は初速200m/s、大した弾速ではない。

遅い、それが一番の問題だ。死にかけの偽物を釣り糸で吊るし、影からリュファスに引っ張らせ、同時にカーテンを開ける。気付かれる前に引き金を引いた。

「こういう時のコイツだ。」

マグナム、装填数は六発。反動に耐えるのは難しくない、しかし次の工程と些か相性が悪い。

そして、空気抵抗を無視した一直線の投擲が死体越しに、銃弾並の速度でカッ飛んで来る。

「持ち手は切れないが壊れもしない、残り一発で後押ししておいたのさ。」

風向きも、銃弾も、投擲も、全て加算される。

「回収は任せた、優。」

『おうよ、もう手は回してある。』

『回収、行きますよ。』

持ち手だけは問題無いので、そこを掴む専用のボックスを作った。ブースターで加速し、同速に修正、そして逆方向に噴射して停止させる。

常温量子コンピュータ製作の為に解析し、返却する予定だ。


死体は後で確認するとして、焦燥感を抑えるべく必死にリュファスを抱き締める。

「・・・異様だ。」

「分かります・・・妙にストレスが掛かるというか・・・。」

『こっちも多少影響してる。』

「質としてはジョーのアレが近いな。」

「抑える方法は?」

『配分を変えるね、ちょっと疲れるかもだけど。』

酸素不足か?と思うが不思議とその感じがしない。だが窓は開けよう、今は銃弾しか空いていない。

一番驚くべきはこれ、一度窓を開けたから問題なかったのだろうが、・・・運が悪ければ爆発していた。。

「・・・ヘカテーを誤魔化せるのは相当だ、ゾッとする。」

ストレスの正体は高山病、錯乱の症状が出ていた。

「あの部屋、壁にも床にもビッチリ人間を仕込んでいたのさ。」

メタンガス、無味無臭で爆発の危機がある。酸素の量を減らしていた・・・気付かないというのが引っ掛かるが・・・。

「感覚も全て誤魔化されていた。ヘカテーは遺伝工学、自分依存な部分もあるし、人類の遺伝が共通している範囲にしか有効じゃない。インキュバスやサキュバスの混血だ。」

ヘカテーは遺伝の合致率にかなり依存する。99.9%で干渉可能、そして更に細かくする事で制御率が増える。かなり厳しい条件のものだ。

しかもそれだけじゃない、この個体は見た事がある。

「敵ではない、味方の死体だ。」

暗部王、かなりのやり手な上に手段を問わない・・・細かい作業を重ね、勝利を目指すのではなく相手を負かす為に努力する。

「会議中に邪魔をするのを目的にしていない、精神的動揺を残す為だけにやった・・・。これであれば本物を知らずともダメージを与えられる。」

自分とは相反する、勝利を目指す自分と、敗北させる事を目指す向こう。

「死体を使い認知不可の爆発を起こす、壁の硬さ・・・いや、音響が違和感あるものだったから気付けた。」

行動を緩める事か、離脱するか。これが一番打つべきでない手、冷静沈着な指揮官であれば確実に踏み留まる。調査すべき対象が多い上、全て繋がっている。

「想定外として全滅させた為に爆破担当が不在。だから最悪の状況は回避出来た。だが、銃砲がここで発砲されたら爆発は間違いなかった。」

何も考えるな、迷えば死ぬ、災害の巣に突っ込めはそれこそ賢明でないが、準最良位にはなる。多分急ピッチで作ったからガス自体がそこまで発生していないのだ。

「今敵が困るのは恐らく留まる事だ、爆破装置を組み込んで始末するのもアリだがそれだとバレて遅くなる、考察までの時間を逆に与える事だろう・・・普段のコウキはそう言うよ。」

一応言うなら、敵を全員殺すという目標を最終的に達成すれば良い。

「暗部王の狙いは皇帝。」

この戦いは皇帝と暗部王、どちらが上かの戦いである。王位再選を利用した帝都付近の戦場化、内側から侵攻を許せば経済基盤、つまり逆に包囲される。兵糧攻めが完成したら負け、そう考えて戦略を進めるべきだろう。



その眼光は、自分とは程遠いものだった。

自分は闇から手を絶たねばならない、それを自覚した。

ちなみに日本の警察では誤認逮捕による事故死(内容聞いたら殺人と変わりないけど)で補償金12500円にしようとしたのでカンの3万円はマシな方。

国家に不正無くすだけで名君になれるのでハドリアヌスは案外仕事してない。能力はあるけどそれ以上に厳格な所があるから国家として大成出来た。

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