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継承物語  作者: 伊阪 証
暗部王動乱

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54/74

『木炭の方がよく燃える』

生物は多種多様、その中でエリニューエスを酷使し、様々な新生物を根付かせるべく努力していた。

「サキュバスって周波数が二百種類あるんですよ。」

「逆に二百種類だけなのか。」

「サキュバスは竜種の真逆、集団としての究極ですから。」

「言語を扱えるって事で良いのか?」

「人間を取り込み、最初にラテン語が広がって派生もしましたが取り敢えずラテン語を使うって事で。」

「なるほど・・・。」

「あと盗聴も出来るのでその装置作り中です。」

「どんな感じ?」

「ラジオみたいな感じのですかね、脳オルガノイドから音声を出力、CPUって基本消費電力が高いんでこういう脳オルガノイドの方が節約出来て良いんですよ。人体とPCでも消費量は10^nで表さないといかない位差がありますし。」

「エリニューエスが自家発電してエネルギーぶっ込むと。」

「そうですね、ATP大量消費なので献血みたいにやってます。」

「アイツ以外再現出来ねぇしな。」

魔女のなり損ないはそう言った、作業着と箱を持ち、試作品を各所に届ける為に出て行った。



そこで今日の目的が幕を開ける。

何故サキュバスという生物が発生したのか。

その目撃者が存在するとアスタルトから情報が入った。

その正体は・・・悪意の玉座を継いだ者。

「・・・聞いていたより変人だった。」

リーツィアより使いこなしている。前よりも強力だ、だが、本人が戦争等に一切用いていない。

「・・・。」

人化を抑え、生命の種を等価交換する。一匹を一人に・・・まぁ、擬人化を物理的にしたという事だ。

「・・・。」

蜂の巣で生き残った女王蜂を人に変えて通じもしない言葉で説得をする、そんなやべー奴が目の前にいた。

「まぁ、可愛らしい。」

「正気か?」

自分と目を合わされた時用に散弾銃を二丁、目を確実に潰すラットと体をへし折るスラッグで使い分けている。

「災害だから止むなし・・・って顔ですね。」

「いや、それ以上の因縁がある。」

「・・・個人ではなく、種にですか。なら仕方ないですね。」

闘に合図を送り、指示する。念の為自分の態度を再現して話す様に言った。

「記憶注射を優に注文してくれ。ラテン語圏で大学生迄の標準知識を入れた奴で。」

『何に使うんだ?それなりの対価も貰うぞ。』

「二次災害を中立化或いは味方化出来る。」

『・・・分かった。』

『会話はどうやってしている?』

「英語は使える。」

『言語野がかなり制限されてるのか?』

「多分識字障害だ。」

『災害として日が浅い可能性もあるが・・・脳の構造を弄るだけじゃ難しい。外科手術の知識があるなら対災害麻酔と道具を送っておく。』

「頭蓋骨に穴開けるのは無理だぞ。」

『そういうのはナシだから安心しろ。そして闘に前渡されたエマの銃を狙撃仕様とセミオート仕様に変えた物を用意しておく。そっちの弾丸規格版含めて合計四種類だ。』

「ブローニングを踏襲すれば低コストでも唯一無二なものになる。ロマン派な作りだと最初は思っていたが量産する工夫がされている。素敵だろう?」

『同感だ、拙速は巧遅に勝るって奴を実感するよ。』

「・・・向こうが準備終わったから戻る、切るぞ。」

『準備ってなんだ?』

「そりゃさっきまで全裸で会話してたからな。アイツ。・・・切られた。」

災害は災害でも人災を物理的にも婉曲的にも実行する奴を目の前にして警戒は解けない。そして察は問われた。

「君は、善人か?」

それに対し彼は具体的なアンサーで返す。

「アーノルド・シュライバーがああなった経緯、他にも話してやろう。」

なんだかんだ長話をしてしまった。銃は置いたが、敵意を感じない為無意味だ。あとしっかりドライな性格も有している。冷静な人間だとよく分かる。

「・・・君が善人である事は理解出来た。」

「もっと詳しくした報告書があるから言語や文化を理解次第調べると良い。」

「そうだな、そうさせてもらう。」

数多の暗い過去を彼は継ぎ、解決した。王として当然である。その当然は他者にとっては違う。自分は横暴と実力により強引な解決を可能としているだけで普通は出来ない。人類は苦難に立ち向かう生物だ、その果てがアルトリウスと考えると・・・自分もまだまだな所がある。

そして彼が語った、心が動かされたのだ。

「自分の過去も話すか、対等にする為に。」

人体の奇妙、いや、生物の奇妙。

例えば病、それは時に人を異形へと変える。それは時に美しく、時に醜く歪めていく。

・・・自分は目の前の少女が日々変わる様を見ていた。誰もが見捨て、自分は彼女であった何かを世話し続けた。千年の恋も冷め、自分は最早可哀想という気持ちでしか彼女は見れなかった。

樹木の様に変質し、日光に当たれば変色する。日光の遮断された洞窟の奥に留まり、その身体は骨の脆いものとなり、動けなくなった。

彼女はアルビノの様な美しいものにはなれなかった。分かりたくもない感情しか伝わらない。

樹木の皮の様だった肌は、魚の鱗の様に煌めいていた。枝と葉は鰭の様に、そして髪色は洞窟の水が艶を与える。細く弱まった髪が、最後の輝きを取り戻していた。漸くその美しさを自覚した時、彼女は既に死んでいた。何時もの様に動かず、彼女が死んで数日経って、腐り始めて漸く気付いた。

改めて自己紹介だ。僕の名はチャーリー・ダーウィン。

『チンパンジーの子』と学者は言っていた。

進化論が主流でない時代、その後アメリカでも『Creation or Evolution』と争う位には自分という人間は信用されていなかった。

ビークル号の関係者、もっと言うなら海賊上がりだったり、海軍所属等の人々が揃い、この港町を取り仕切っていた。自分の存在は伝えられていた。彼等は世界一周の覇者で、当時の平均、その後の平均と照らし合わせると一度の航海で二億円は収入がある勿論一人あたりだ。だから彼等はその邪険な態度はしない、次の冒険を心待ちにしていた。

だが、自分は冒険に行けなかった。

異形に出会い、死ぬまでの僅かを看取る。

自分は変化する身体にも惹かれていたが、人間である、同胞であるという意識があった。同胞から変わっていく存在を最初こそ苦しめる位なら殺すという考えで生きていた。

・・・自分に、殺す勇気は無かった。

生かす、それが希望なのだ。もっと言うなら、初恋と同じ、人間の姿が良い。

ホムンクルス、それが彼の正体である。人類の進化を突然変異以外のアプローチで進める、第三の手法、変生論である。

彼は実質的にクローン、そして貴方への愛の成立条件を満たしている。

・・・それ故に災害となった、そして願いは叶った。

自分の古い願望を果たす為に、その災害は力を振るう。それは愛と欲望に塗れた・・・確かな優しさであった。

「・・・それ以来、災害の種類や検証を慎重に行った。」

「・・・待て、その異形は災害だったのか?」

「自分はホムンクルスだから寿命は大して長くない。同じクローンの類なら分かるだろう?」

・・・何故奴はそれを知っているのか、疑問ではあったが教えられた。

「クローンはホクロやシミ、ニキビが出来ない。それが出来る程贅沢な栄養供給と処理が強くない。食べ過ぎると胃袋を押し上げて吐く位脆い。それも決して多い量じゃない。」

「・・・そうだな。」

「ビタミンCを摂取していないな、先ず摂取する必要が無い身体なのもあるが、柑橘類の臭い一つしないのはおかしい。」

「どんだけ鼻利いてんだよ・・・。」

そして告げるように言う、だが、それを重く受けとめはせず、軽く語れと唆すと気を軽くして話される。だが、ほんの少し笑顔になっただけ、根がそういう人間なのだと確信する。

「僕はそういう災害さ、神でさえも人に落とし、虫螻を人に昇格させる。人類を滅ぼすには人類を増やすのが一番手っ取り早くてコストも掛からない。」

付け足す様に間髪入れずに言うことには・・・。

「ある事件の話だ、端的に言えば、妊婦が産んだ子の大半が獣の様だったり、逆に獣が人の様な子を産んだ・・・そんな騒動が起きたのさ。その解決の為に自分は存在すると思っている。先の事件もそれの一つだ。」

呆気に取られた、群れる渇望の影響の可能性もある。時代的に有り得ないが、他個体が群れる渇望に存在する方が危険、まだマシな方である自己の責任によって目を逸らす。

「災害は死をトリガーにした逆行だ、人間は出産を通して産まれるが、災害は死体を利用して発生する。死んだ時の体を利用して作るから本人とは言い切れないが。」

殺されて、確かに人類への憎悪はある。それでも愛すると向き合い、挑み続ける。彼は人類を増やし人類を苦しめる。ただ、それも程よくだ。

その精神は決して否定出来るものではない。在り来りな人類そのものの姿だ。

「俺の名は、コウキ・タカハシ。元群れる渇望の人間だ。」

「・・・災害っぽい言い方だが・・・知らないなぁ。」

人類をよく知る二人が手を取り合った。

「暫くはここに留まる、自分は街に行くべき人間じゃないからさ。」

「また会おう、チャーリー。」

「ああ、今日は会えて本当に良かった。」

手を取り合い、仲が良い人間であると強く握って示す。そうすると強く握り返され、いつもと違う愛情ではなく友情を思い知らせ、それに喜ぶ。

「自分の事をあまり語らなかったな。・・・善人なのは理解出来たから満足だ。」

彼女の方を向き続けて言った。

「燃え尽きた・・・いや、木炭の方が燃えるという奴だろう。」

嘲笑ではなかった、心配しているのだ。

「・・・ハニー、そうは思わないか?」

「・・・Good。」

「慣れ始めたか、So good!だ。」

彼は女王蜂に言語を与えた。これも何時もの事、段々慣れて来た。


数日後、業務を終えて昼休みの中、燃えたスタジオに代わる場所へ赴いた。

ウィリー・スタジオの語る奇妙な話。

「・・・都市伝説の類いだ、元からある程度アンダーグラウンドな産業、情勢や思想を掴む為にそうしている。」

彼はムスタファ・ケルツ、劣化版ダヴィンチというか・・・先ず大体の世界の人間はダウィンチの劣化というのは置いておき・・・彼は特化しつつも汎用性が高く、特にその情報収集能力は諜報機関随一、だが、一つ欠陥がある。

彼は虚言癖が元々あったが、最近それが使命により強制されている可能性が浮上したのだ。

今は脚本家、話半分に情報を聞いていたが、断片でも心を掴む面白さがある。自分の好奇心が悪いと思うが、アスタルトは外見に何かあるらしい。

「その中でも一際奇妙な作品があった。」

「(タケノコフライうめぇ。)」

「聞いた話をまとめたフィルムリールだ、後払いな。」

「(ガサ入れして絞って転売するか。)」

「これ一個作るのにも結構な額だ。丁寧に梱包してはおいたが気を付けろ。」

「分かったよ、面白くねぇなら酒飲みながら見るつもりだ。」

「一応概要のファイルな、ネタバレ対策で抑えてあるが切れば解ける。」

「さんきゅ。」



「・・・何これ。」

「個人的売買フィルム、依頼を引き受けて販売する。二月に一度カタログが出てそこから選べる。本は出版社の取り分が多いから通信販売になっている。」

「東海道中膝栗毛の時代に逆行したかぁ。」

「・・・あ、それは陛下の所の可愛いメイドさんから依頼された奴だ。」


「作品内容は『精液に若返りの作用がある男が・・・。』」

「ああうん分かったもういい。どうせ絶倫設定か逆レだどうせなら後者の方が良い。」

「後者だ。」

「持ち帰った方が良いか?」

「レ・ミゼラブルを貰ったとでも言っておけ。」

「ああ。渡す物が銀色という点に差異は無いからな。」


「そういえば、前渡されたクルアーンの分析が済んだ。・・・アレは冷凍保存されていたらしく、実際に使われたのは五十年も無い。」


「初期の印刷ソフト、当時コンピュータで有名ITが協定を結んで作ったものだ。・・・この話を調べたら当時印刷ソフトの会社のトップが誘拐され、人間不信になったそうだ。」


「ブラウン・エックス。彼が人間不信の中で友人として接触し、宣伝の為に利用した。」


「このクルアーンの異常な箇所は言語にある、クルアーンは基本アラビア語で作られる。そうすれば交流が容易になるからな。」


「・・・で、ジョーは人名を掘り下げず、名詞を既存の言葉に当て嵌めた為現在においては彼は知られずにイスラム教の教義だけ広まった。」


「狂団の正体を解き明かすのに使える可能性がある。それだけだ。」




「・・・あ、御主人様。」

「愛しのリュファス、どうした?」

「・・・そのフィルム・・・。」

唐突に泣き出した。全員困惑する。

「ごめんなさい。」

折角だ、目には目を歯には歯を、涙には涙を、馬鹿には馬鹿を。

「ごめんな・・・普段の夜満足させれなくて・・・。」

「おいメイドと関係持って大丈夫かよ。」

「毎回入れ替えて五時間位粘るけど睡眠不足で持たないあまり・・・。」

「陛下がある事ない事吹聴し始めた・・・!」

リュファスとの冗談は気楽で快い、妙なおどろおどろしさがある皇帝とは大違いだ。あの子がどうあれ、苦しんでいた所に遥か昔の様な希望を実現し、有難く、そして嬉しく思っているのだ。

「・・・目的達成だ、これで児ポに引っ掛けて複数箇所を合法的に終わらせられる。」

「複製ラインは整えておきました。コスト自体は微妙ですけど敵の潰し方次第で最大二十倍は取れるかと。」

「ワイド馬券みたいな倍率だ。」

手を恋人繋ぎにしたまま街へ出て、そして会話を別の言語で行う。ラテン語以外は珍しく、スラングもかなり仕込んだ英語で行った。

「外付けヘカテーちゃんでサブリミナルも仕込んであります。」

「開発は出来たか、対象範囲が小さくて使いにくいと思っていたがこんな方法で解決出来るもんなんだな。」

『なんか目覚めそう。』

「引き継ぐなよ。」

コウキ自体、この道具を作戦用として暗に示し、その上でハイクオリティに作った。ベターデイズという前例もある、サブリミナルという特定し易いものを仕込みながら、モールス信号を仕込み、各地の人員を動かす。継承は人質依存かつ、精神面でかなり負担が掛かる。今の所国民の復讐心から始まり維持されているが、最近は嫌悪されている。ここでこのサブリミナルで隠したモールスという暗号を使い、指示を回す。流入を完了させる迄は派手な行動を起こさず、物資を貴金属で買い占めて流し続ける。

「流通箇所から割り出す。違法なルートは其方側の人間に協力して貰ったが終わり次第処分だ。」

「実が熟してきて美味しいですからねぇ。私のおちんぎんも前より良くなった。」

「内部留保自体も多い、王国破産と外交の乱れで物の価値が乱れているから今の内に確保すべきだろう。」

自分もその一端を担った以上、手を出さなければいけない。作戦の実行後、暗部王が向かってくるまで待機し、狙われ易い自分に誘導。・・・反転攻勢の準備は終わった、確実に殺すという覚悟をして今回の戦いに挑んだのだ。

「それはそれとして、一度見ます?」

「そうだな、モヤモヤした気分で寝るのも一興だ。翌朝すぐ起きれる。」

フィルムをセットする前に蓄電池を繋げようとしたら、そのフィルムリールの端に紙切れがあった。

「・・・なんだこれ・・・。」

薄く、水に浸せばすぐに溶けるであろうものだ。端を折り、切ってコップに入れた所、鏡に取り込まれる様に消えた。

「災害の言語野での該当語無し・・・。」

紙を見続け、そう思っていた。分からないにも程がある。・・・だが、見覚え自体はある。

「シンダール語だ、使う人間の数次第で拡張される昨日だから該当しねぇのか。」

トールキンの物語、ホビットの冒険や指輪物語に登場する、創作上の言葉。文化という点で一致しているが会話として用いられなければ災害は対象と看做さない。・・・アルトリウス並の人間数人に理解させ、暗号用に使い、他に使う人物が居たら殺す位の勢いがなければ使えない。ピーキーだ。

「文章自体は単純、ある程度の知識さえあれば解けるな・・・。」

コウキは直ぐに理解した、魔女という言葉、地下を婉曲的に表現、現在の魔女と合わない数字を示された。一度目立つ所に向かうが、彼は対策・・・地下に慣れる準備をしてから向かう。



アルトリウスと会い、誰も連れずに目的地まで着いた。

「いずれ教えなければいけないものだ。」

暗闇を歩き、そしてチェルノボグが手を引く。

「ありがとう。」

「前より大きくなったんじゃないか?その手。」

「チェル姉はデカいまんまだな。」

「昔は銃を握るのも精一杯だったさ。親がアレだからいつの間にか畑作業に便利な身体になっちまってな。」

アルトリウスの話に戻され、そして再び聞き入る。

「魔女は合計で二十人存在していた、八人は地下で暮らしている。」

そして扉を開け、地下街の明るい街並みを見せる。

心拍数や重力が違う。気温も湿度も。

そこは地獄の様に、何かが違う。自分は存在してはいけない場所だと拒否される。

「俺と同じだな、死に疎い奴は嫌われるのさ。」

遠いではなく、疎いだ。彼は死を知らぬ訳では無い。或いは、死後に証明されるものか。

・・・何となく理解してしまった。

そして前に進む脚は杭の様に不動なものとなったのだ。自分はそれを掌握し、覚悟を乗り越えたとだけ理解する。

光を手渡され、僅かに空白を介して掌に収まる。

「太陽光の魔女、名はアマテラス。彼女が存在する限り地下だからといって不利を被る事は無い。地下でも植物は育てられるし、気温も維持される。」

燃え盛る緋色の女、金で橙で赤、そして白の女。血潮が上からも見える。手を握ると心拍が上がる、緊張感ではなく、高揚感。

「雷の魔女、外に出ると雷雨になる為外出していない。名前はアシアク。多分一番仲良くなれるだろう。静電気がキツいから気を付けろ。恋と勘違いする奴が結構多い。」

「八木に電流走る。」

「電気羊の夢を見るかみたいな言葉だな。」

触れようとした瞬間に静電気が起き、普段の反射・・・手を引くと言うよりは横に避け逃がし、相手の袖を掴む。・・・その流れで押し倒す直前まで行った為、強く引っ張った。

「失礼。」

「・・・このパターンは初めてかな。」

「反射のプログラムを書き換えているから衝動的に掴んでしまうのさ。」

「次回からガソリンスタンドのアレを触ってくるのをオススメするよ。」

その次は誰かと振り向いたら、パンクな服で飾る女が居た。しかしピアスやアクセサリー類は薬指の指輪、ベルト以外は存在しない。

「被服の魔女、衣服を重んじる魔女だ。テーテュスって店の名前に書いてあるから分かり易いだろう。綿花の扱いと活用が主だ。他と比較して特徴は無いが功績は随一だ。ファッションを築き上げ婚姻率を上げ、産業も育て、怪我も減らした。それだけなら一時代を作り上げた英雄だが更に地下水問題も片付けた為魔女認定をした。綿を使って吸わせて運んだのさ。彼女がいなければ人口自体もっと少なかっただろう。」

毎回スーツを渡していたのは彼女だったか。あのやたら硬くて傷が付かない所か衣服の下にだけ切り傷がついているのに衣服は無傷・・・という代物だ。エマの師らしい。

「パナス、医学の魔女。彼女は医学の先端を理解させない儘行う事で技術漏洩を防ぎ、他国を出し抜く為に存在する。本来の目的は医学の間違いを訂正する為、民間療法の中でも危険な行為が流行ったりすると困るからそれ対策に彼女がいる。そっちがメインだ。」


「シバルバー、死後の魔女。遺体が転がってないのは彼女のお陰だ。文明レベルが低いものの彼女が居なければ病を抑えられない。もう一人関係してはいるが根本的ではないからな。」

青白い肌の女・・・日陰に行こうとするので手を引くと、そこが赤く変色していく。

「・・・。」

自分は一度弾かれた様な気がしたが、抑えて逆に握り込む。そしてその赤は白に混ざり、最後に桃色の変わりゆく途中で挫折する。

「・・・あ・・・。」

「手を取ってくれ。」

「・・・駄目・・・。」

「・・・ミイラか。かなり綺麗だ。」

「・・・すぐ判断出来る、引く。」

「確かにな。」

怖いとかではなく、気持ち悪い。死体に詳しい時点で最早不気味、増して馴染むことの無い世界を作り出し、それを忘れ去った場所で孤独に生きればそう思う。

「婚姻の魔女ジョカ、宗教という体にして科学を教えている以上、彼女は儀式の材料として必要だ。彼女は・・・結婚相談所、相性が良い相手を探してくれる。お前は行くな。家系図は無視するタイプだ。」

魔女と言うには純白な衣服、白と薄い青だ、シバルバーに似た色をしているが、此方は真逆に生を体現した姿をしている。その胸は決して大きくない、その背は高くも低くもない、その顔は美しくも可愛くも、不細工でもない。誰が見ても馴染む、人狼ゲームで最後まで生き残りそうな女。

「ドレス補正か。」

「補正!?私単品は!?」

「幼馴染補正無いと雑魚。」

「・・・まぁでも初手激ヤバハラスメント仕掛けて来た他のよりはマシかな?」

西部王と北部王だな間違いない。

「西部王と北部王と皇帝だな間違いない。」

「そうだったそれも居た。」

次は別の、二人同時に紹介されたが、対比的な姿で覚えやすいが分からない。・・・拡張子を覚える様な・・・途方も無い感覚がする。

「徴税の魔女、センゲン。彼女はヒトの不要なものを集める。地下の倉庫に入れ、使える様に治す。税金が少ないのは彼女のお陰だ。・・・そして次に語るもう一人と組み合わせるのが一番重要な役目だ。」

ティアマト、デメテルに及ばずとも決して小さくない飛び込みたくなるが多分子供だったら二人は隠せるだろう。

「色欲の魔女、リリトゥ。彼女は如何なる事があっても殺す事が許されない。怪我を負わせた場合、皇帝でさえ位を大公に譲って処刑される。人類のバックアップだ。」

一言不穏なものが混ざった、ノータイムで彼女の全身に触れて確認、別に人体として異常は無かったのでホッとする。

『何やってるの?』

「いや、この見た目で綿菓子機みたいな感じになってるかと・・・。」

『熊の綿菓子機じゃないんだから・・・。』

少し離れるとおおらかに受け入れてた。やはりあの系譜だ。

「コウキ、彼女は死人を扱う事はない。」

「・・・。」

「そんな所だろうとは思っていたが、彼女はもっと神話的、新たな個体に限定される。既存の組み合わせではない。」

リーツィアの影響は未だに大きい。優衣の様な満足感は無いし・・・彼女の場合互いにいつまでも生きている信頼がある。それが成立する程の期間が無かったのだ。

「彼女は精液の保管、妊娠期間の短縮、出産の連続化に関して特化しており、ティアマト、デメテルに並んで重要な存在だ。人類が滅んでも彼女が存在する限り人類は蘇る。」

・・・納得は出来た、というのも各国でも彼女の様な女性に手を出すのはやたら罪が重かった。飛脚に並んで殺した場合の罪が重く、それに合点がいった。

「彼女自身が自殺を選ぼうとした場合の為に自分の腹心だった一人が彼女に継承されている。彼がすぐに自我を乗っ取り抑える事が出来る。だが、痛みに耐えられる精神力は本人でさえ無い。自動的に行われている間精神的な仮死状態になる。・・・まぁ、一度別の奴で失敗していたのを拾ってこの国に居る。」

懺悔する様に、しかし目は細められ、チェルノボグも笑っていた中で彼が話す。

「魔女を名誉にしたのは、俺だ。そうする必要があったからそうした。魔女が一人でも権力争いに加担したら帝国は崩壊する。そのリスクを抱えてでも留めた。メンタルケアに失敗したら・・・ああ、間違いなくこの国は終わる。」

あの皇帝も該当する・・・と思いながら見ていたが、確かに単純な性格をしていなければ衝撃は大きい。利己的であればまだしも、死ぬ様な人間、殺される様な人間は利他的な方が多い。中間的であっても、利他的な要素が大きいので利己的というものはかなりマイノリティで、傾向はあっても傷にならない事は無い。

「こんな爆弾、誰も抱えたくないだろうな。昔はメンヘラばっかで結構刺された。公爵の死因現在でも不動の第一位な位には多い。」

「やっべエリさんに刺される。」

『私もエリちゃんも別々の意味で信頼されてる・・・。』

魔女は前例がアレとかアレとか、ヘカテー以外あまりマトモじゃない。チェルノボグはギャン中、デメテルはポールダンスで超高速回転するし、エリさんは素朴だけど外見趣味が全員美少女なら良いなぁという性格だ。科学者でもある魔女は結果として天才かつ変人の枠組みに突っ込まれてしまうのだ。

「仲良くしましょー・・・と言っても難しいなこれ・・・。」

そこで一手思い付く。対策方法はやはり同じ位の変人になる事だ。

「うん、じゃあ脱ごう。」

『一週間寝てないからってこうなる?』

「皇帝と合わないの同族嫌悪じゃねぇかな。」

「割れ鍋に綴じ蓋、パズルのピースだな。」

目的は二つ、体裁を繕う為に普段は見せないもの。治してはいるが、エリニューエスが死なない為に形だけ残し、恥と刻めと怒られたものだ。

「フリーメイソン式の信頼の得方、恥をかく事で信頼を得る。」

そして、全身の傷を見せる。銃創に、裂傷、軌跡とギプス。痛々しいが変色はしていない。名誉の傷であり、恥ではない。

「・・・これは一人の女の為に捧げた傷、これは未来の娘の母探しの為の傷。全て意味があるものだ。」

心臓を抉りうる、見ているだけで心苦しい痕。

それを笑わず、同時に信頼を置いた。

彼は、魔女の為に戦う事を躊躇しない。

彼は、善悪を問わず信念に向かって生き続け、その上で善をある程度果たす。

「ちっさ。」

『使い過ぎだからね。』

「え?胸の話だけど・・・。」

『比較サンプルある程度に事例知っててその上で大きさ比べてるの?』

リリトゥだけは変な目で見ていた、地下にいる理由が守る為だが、社会性も無いのではないかと思ってしまう。・・・数千年閉じ込められれば狂うか。

自分は馴染むのに時間がまだ掛かっている、少し抑えてテーテュスの方に目を向ける。

「どういう対応がお好みで?」

「程よい距離感・・・店員みたいな距離感が良い。」

「アルトリウス卿彼に何があったんですか?」

「皇帝直々に絞られてる。」

二人はかなり絶望した顔で言う。

「一番性悪・・・そりゃ皇帝だろうな。」

「・・・それはそうだな。」

魔女一同、皇帝の裏の顔にドン引きしつつ、共通の敵から生まれた友情関係に憐憫を覚えた。



一方その皇帝は戦えない分、軍部の頂点としての実力を見せた。世界帝国の一つを築き上げた人間を継承した後継者、歴代最高と評されて申し分無い。

「各地に潜入させた諜報員、そして囚人として入れた合計十万人。軍隊の基本は現地調達。兵糧不要、通信一つで全ては決定される。」

外道に、邪悪に。戦略の基本は外道な手段を尽くし、そして同時に対外関係でそれが否定出来る様に組む。大国の味方になる事は大国を敵に回すよりも危険である。

「十万もあれば世界の治安を崩壊させるのに十分だ。先ずは偽札、偽装貨幣、偽造文書全てを行使して仲間を増やせ。善であれば復讐心が煮え滾るまで落とせ。悪であれば利益ある存在と唆せ。」

その目的はすぐに明らかになる。

「短期間で済ませて短期間で話題に挙げろ、暗部王に擦り付ける。奴が行動する前に全て封じ切る。治安維持の為に帝国に縋るのだから我々のせいには出来ないだろう。」

割れれば十分、権力を絞ったツケを味わわせる。国民はその流れにおいて味方になりはしない。



問題は帝都の近くで起きた。予測は出来ていたから聞いているが、ここまで単純だと失望してしまう。

「リュファス?」

「不味いです・・・主人。」

息を切らした中で水を飲ませ、意識をハッキリさせた上で正しい情報を得る。

「暗部王からの対談申込、前仲間にした連中の一人に爆薬を埋め込んでいたとの事・・・。」

「リュファス、お前はエリさんの所に行け。」

「りょ、了解。」

「慌てるな。」

「朝腰砕けて疲れてるんですよ!!」

「それは普通にごめん。」

「控えて下さいね?」

「少しは我慢するさ。」

そして他二人も呼び出して命令する。

「カン、全員待機と調査、影武者を送ってくる可能性が高いから殺し合いにはならないだろう。」

「十分か?」

「挑発はする、影武者であれば挑発に乗らないのは難しいだろう。忠誠心が無いって事だからな。」

「よし来た。」

「周辺住民を問答無用で退避命令、邪魔をしたらカオルコが殺しに行け。」

『もう見てる、二人は殺っといた。』

「二時間でケリを着けるからタイムリミットに合わせて動け。」

頬を叩き、戦いに備えて目を細めた。だが、先ずは交渉。絶望を存分に叩き付ける。

魔女の名前は神から取ってる。本人等の出身に合わせて決めてるけど語呂悪かったり違うと直感したら近いので代用してる。


アーノルドを略してアノちゃんって言うのやめろ。

暗部王との会談まではちょっと内緒にしますがろくでもない過去である事は約束します。

取り敢えずシュバちゃんかシュバちで大丈夫だろ。


チャーリーは強いけど基本戦わないタイプの子です。本人の性格的に戦い慣れや基礎の戦闘もなってないタイプ。つまり癒し枠。

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