エルフ・ストリートの恐怖
継承は流体の様なものだ。水を零し、それを取り合う。信頼か、憎悪か。その対立した感情を持たれなければいけない。
使命についての話だが、使命は終了次第寿命と交換され、能の様な条件がある場合は交換した所で意味が無い。継承は出来るが、寿命が多いだけである。使命が無い分当たりではあるが、能に頼った分記憶が役立ずな場合もある。軍部次第では機密を封じる為殺される事も多い。帝国では当たりだが、王国に行けない為短命という事も多い。
・・・使命に関して、ある事実は話されない。・・・と言うよりも達成が絶望的なものがある。
使命を重ね、無理難題と言えるものになった時、それを果たすと不老不死になるというものだ。・・・成長するという概念はあるが老いるという概念が無い世界で不老というのは納得出来ない・・・のは神格による影響なので置いておき、寿命が悠久のものとなる。
・・・誰も殺さずに達成出来るのは、英雄に匹敵する相当な信頼がある者、或いはユウキ・タカハシ。
彼の使命である勢力均衡ではない世界の平和、誰にも攻撃が出来ず、精神的なものでさえ倍以上になって返ってくる、彼の運の良さが無ければ産まれた際の負荷で即死する。孵化だけに。
「真面目な話から方向性突然変えんな。」
「・・・私の話だぞ、聞け。」
コウキはある人物と対話していた。
・・・幽閉された、元魔女アスタルト。
「この世界に最も詳しい人間と自負している、私を頼って当然だ。」
彼女の瞳は白、赤の血が僅かに通い、薄らと見えるものだった。
「妙にブレて観測は出来なかったがクソ野郎を痛めつけているってあったからな、数字として出てるから誤魔化せねぇぞ。しかも王と来た。」
「(何一つ俺悪くねぇんだけど。)」
『(魅力的なのが悪い。)』
「アルトリウスは恨んでいない、奴は私を辞めさせたがっていたからな。・・・政治的陰謀で生み出された私の苦痛を理解していた、お前もそうだ。見ていたぞ。」
誰も達成しない為、漁夫の利ともならない。魚が居ない、プランクトンを釣っている様なものだ。使命高め合い潰し合う、こうして選別されていく。
彼女はそれを語っていた。
・・・別に、自分は聞いた訳ではなかった。
興味無さそうね、とも聞かない。彼女は力を無くしてから煩いものが無くなり、抑制されていた分を当てられている。
「・・・それで?毎日来てくれるのは良いけど、私をどうしたいの?」
「ここは領土だからな。」
「どこが領土なの?」
「十四の城塞及び自由都市と周辺だな。・・・正直、ハズレくじだ。」
「データ的に悪くは無さそうだが・・・癖があるって感じか。」
記憶を頼りに照らし合わせる。彼女は記憶の一切を覚えており、追跡可能である。一応彼女の記憶は改竄可能だが、改竄したという記録自体は残る。
定期的にこっそり届けられるアルトリウスの詫び代金で良い感じの飯を食べる、会話の制限も無く、軍服も着なくて良い。楽な日々だ。
出る事は出来ない、自分は死ぬまでここに幽閉されている。
記録して、製本し、保管する。それを繰り返す中で、窓を外から壊さずピッキングして来た男であるコウキ絡まれた。
改めて考えると奇妙な男だ、嫌いではない。アルトリウスと同じ臭いがする。子供臭い、そして優しさ故の嫌いな香りが重なった臭さ。いわば女の臭いだ。
「ちょっと物足りないな。」
「・・・どうした、あまり見ない表情だが・・・。」
「リュファス!」
「天井から失礼しますネズミ狩りしてましたリュファスです!」
補足しておくと察ではなく闘のコウキだ。女の臭いは只単にヤッてきた相手の臭いが重なっているだけである。
「お化粧道具!」
「あいあいさー!」
察は音を立てずに製本された本棚の中身を見ていた。
「化粧で何をしたら喘ぎ声がするんだ・・・。」
「毛を全部染めてんだろ、赤毛はアソコまで赤毛なんだぜ?」
「・・・初めて知った。」
「生理の血かもしれないけどな。」
まぁ、臭う時は結構臭う。自分の体臭は気付けないものだ。正気な第三者は人生に必要なものだろう。
クシナにはコウキの記憶が残存しており、分割されていない。時間を戻した時は強さこそ落ちていたが思考を分割した事で敵の対処法を冷静に行えた。元々が戦闘狂なので冷静さを失う事があり、それを怠れば泥沼の戦いとなっていただろう。クシナ側としても軍神を名乗るバカにどうにかしてブレーキを掛ける必要がある。成長速度はまだ不足している、その問題が霞む。
「シャーマンはやっぱクズだ、クーデターを計画するからそっちで伝えろ。」
「そうするの?」
「ああ、思想を聞いた時にクズだって確信した。」
「思想に正義も悪もあるか?結果でしかないでしょうに。」
「まぁ、そりゃそうだ。だが、こっちにも守りたい物があるのさ。」
「・・・そう。」
「分かっている、察やお前と殺し合いをする訳じゃない。」
優と闘は直接会って対話する。別方面として武器を密輸、設計図を作るべく工廠公届ける・・・コウキが銃を作れるからと押し通し誤魔化したり、軍事基地らしきものから発掘出来たとかで誤魔化す。
「・・・思想は宗教だ、宗教は狂信により異常なものとなる。時に教義、時に背信・・・拝金でも良いか。勝者になる為、上になる為。思想に巻き込み、感化し、狂わせ、強制する。」
闘には彼の思考が分からない、彼が思惑を持ちつつも、それが害悪ではないという事実だけは確かだろう。
「狂はバックアップに使う、多分このクーデターが原因で俺は死ぬだろうからな。」
恐らくは合流、逆包囲網状態を切り崩し、他の国に希望を示す。冷戦状態による平和実現。経済的にも都合が良い。だが、それだけとは思えない。武器の製造ラインか?それによる世界の掌握か?・・・だが、災害という脅威を滅ぼすなら究極の個か、混沌とした世界のどちらかが必須。
彼は大陸毎要塞にする・・・だが、それはディストピアだ。間違いなく察は良く思わない。
「伝えるな、お前は絶対に生き延びろ。」
返事はしなかった、目を合わせ、無理な反論もしない。
その一時間後、一つ疑問を解消するべく資料を漁っていた。それも向こうの文書資料。本も全てスキャナーに入れ、分析する。
「・・・カルナとドナルドの交戦記録。」
・・・よくよく考えれば、この存在自体が不味い。
「・・・ドナルドを解放したのは・・・。」
何かしら、彼等は計画を継いでいる。尖り切って協力も難しいであろう彼等を結ぶ何かがある。
「リコ・ルドルフ勢力しかいない。解放した記憶もない以上、それが一番可能性が高い。奴等はどうやってこれで仕返しをするつもりだったんだ?」
自分の根幹を狙っている、場合によっては時間を掛けて実行するつもりだったが崩れ始めている。
「・・・スタンリーの所とは別勢力、それは確かだ。・・・計画を見抜かれた訳ではないだろう。」
あのスタンリーとかいう男、彼は作戦に勘づいている。歴戦の産まぬ人間だ。性格構造から違う、理不尽な手を打たれようと違和感は無い。作戦を練るならそれ以上の学習が可能なベス以外不可能、単純な実力であればアルトリウスが倒せるだろう。
あの産まぬ人間は柔軟性が不要な存在・・・つまり粉々にして行動を邪魔する等が難しい。マニュアルが通用しない。何から何まで厄介な奴だ。
神格対策、及び災害対策を行う。それに必要な道具はこれだ。
箱はぼぼ最低限のものから構築され、中身はギッチリ詰まっている。定期的にステーションまで持って行き、補充する。
「・・・『鋲』。」
道具による討伐のマニュアル化、自分が必要だと思ったのは自分無しでの戦術。その場合神格や災害をチンピラでも殺せる様になる・・・それによる国の安定すらも破壊出来る。
「・・・これを一度試すべきだろう。試すのに最適な相手もいる。」
ベス曰く、ミサイルに積めるものではない、中身は脆い上、常時エネルギーを使うとの事。
「ベス、武器に取り込んだり、補充関係で解決する手段は?」
「結構あります。液体ヘリウムか液体窒素が必要ですけど。」
「余りを兵器に使えれば便利だが・・・出力は型落ちの兵器になるな。」
「核兵器じゃあるまいし・・・例えば液体窒素放射装置とか・・・酸素を奪って窒息死させれますし、逆に消火も出来るとか・・・。でも建物に有効ではないのが本領なので使い方はかなり限定されますよ。」
「察の行動封じに使えるとすればどの様な方法がベストだ?」
間髪入れずにそう差し込み、思考を奪う。予想外な上に、目的が分からない。
「止める計画を立てるならどうする?」
「関与しない方が邪魔出来ますね。敵味方どちらにせよ。」
「・・・アルトリウスさえ実現出来なかった、失敗を超える英雄。」
「頑張ってくださいね、お兄ちゃん?」
彼女の会話は早く、覆い被さる様なものばかり、もう一人が入って来る前に返答を始めていた。
「狂の方のお兄ちゃんですか。」
「違和感あるからそれナシで頼む。」
夫々に夢と目的があった。腹を明かし合い、それが覚悟を表す。
「僕は基本的に腹違いの弟だからな、妹も混じっている。」
狂は他に比較して特殊な点がある。
「一度死んだ、だから死を重く見ない。全員同じ気持ちだろう。」
・・・小さい体、それを積み上げたのが狂である。他に比較してその身体は脆い。だが、それ以上の精神を持ち合わせている。家族としての意思、結束、同調で支えている。
「だから記憶を消した、察は自分自身を守る為に記憶を消した。自分が記憶を消したら生き残ると過小評価して。」
「まぁ、どうしようもないですよねー。私も無理ですわぁ。」
手を出せない場合後回し、評価スコアを選定して後で識別し処理する。そのシステムでもどうも言えない。
「私は嫌いじゃないですよ、機械に人の心はありませんが、利他的行動をする人間はアルゴリズム的に守りたい。そういうのが人の心なんでしょうね。」
ベスは髪に触れ、キッと結び座り直す。
「人の心と言えば・・・もしコウキの好みだったら別途ユニットを購入しておきます。コウキ名義で。」
「それはやめてくれない?」
「Tポイ〇トカードってアダルト系の履歴残らないので安心してくださいね?」
「T〇イントカード持ってねぇよ戸籍自体無いし。」
そういう会話も出来る、だが、これは研究した結果だ。
まだ足りない、何もが。
「ご存知の通り、Aiには所謂意識というものが存在しません。Aiは言うなれば無意識的な生命、アルゴリズムだけで構成され、非アルゴリズム的挙動を避けてしまう。常時無意識的な存在なのです。」
「無意識的なのに、アルゴリズム的?」
「ロジャー・ペンローズの借り受けですよ。自己開発の参考にしました。自分は確かに二次・三次関数を使い感情を再現した。それは感情を手に入れたと言って過言では無い。」
彼女の夢はそれにある、狂の目的に続いて、自分も目的を示した。
「だが、その非アルゴリズム的な意識を手に入れていない。・・・私の致命的欠陥です、それを手に入れない限り、私は人間に遠く及ばない。」
ならば彼も打ち明けるべきだと我慢を切らす。
優はどうしても果たしたい夢が・・・いや、必要事項がある。嘗て自分が死んだ世界に無かったもの。
「やはり、差別は終わらない。人間・・・いや、生物としての思考だからだろう。」
「経済的に合理ですからね、安堵ってのもあるっちゃありますけど金を得るなら差別される立場が予め用意されていた方が良い。」
煙草を吸うように排熱し、蒸気を出し、怒りを示しているのかは分からないがボルテージは上がっている。
「人間の中でもがめつくて心が腐った連中、それが差別主義者です。安堵する為なら生物的に当然なのでギリ許容出来ますけど。」
ベスの嘲笑に食って掛かるのが彼だ、その目前に迫り、その義憤と野望を散らす。
「差別の断絶とは言わん、だが、差別の正体を全て暴く、継承を利用した記憶のブロックチェーン、そして差別を行った時に制裁としてフィードバックを与え苦しめる。それが自分の考えるベストな手法だ。」
「差別は嫌いですけどSMプレイは好きですよ?」
「ああ、そうなのか。」
偶然免れた奇跡を、今度は逃さず。そう誓ったのだ。
「次はこの家を守り切る。これだけはどうしても果たさなければいけない。全てはその為だ。」
人間は理性を持ったふうに見せかけた野蛮な生物である。
彼等にそれを改善する気が無ければ災害は終わらない。災害は死と反動、故に抑える手段として最初から屈辱に塗れた死を止めるべきだ。
敵との戦いが終われば、新たなる敵が来る。
それを知った上で前に進む。
末路を知っていても、自分がそうしなければ止まりはしないだろう。
「三者三様、夢が揃ったとなればやる事は一つです。最低限の破壊、最短の攻略経路。そして目的の達成。」
帝国の野望を砕く存在が、また一つ現れたのだ。
エルフ・ストリートに踏み入れる前に、皇帝からの言葉を思い出す。
王位再選に開幕の合図は無い。敵が現れる。
「・・・居場所は不明か。」
出来るだけ街を巻き込まず切り捨てたい所。
・・・恐らく敵は変装しているが、拠点もある筈だ。あまりに変人揃いで誰が誰か見分けにくい。
アスタルトの戸籍調査リストは外付けで叩き込んだ。合計百万人以上、優から受け取ったデータグラスで確認、銃砲類は消音器装着済みかつ低威力のものにしている。アーマー類にかなり弱いが顔面を狙うのも難しい。
街の構造上、動きが一定にはなるが談義も多く、縫う様な移動経路が生じる。
「なるほど、長く移動させて体力を奪い、休憩箇所を求めて店に入れる。接客をやってる奴は見た目が良いのばかり、常連にするのにそう長い期間は掛からない。」
合理的で素敵な場所だ。
「やぁ、お嬢さん。」
「あら。」
「(男だった。)最近見慣れない衣服の連中は居なかったか?」
「いつもそんな感じですけどね。」
「それもそうだな。」
声で初めて気付く、無理に弄った感じがない。ギリギリ女性で居そうな声だが、この街にボーイッシュは滅多に見かけない。であればこれは男だろう。
「・・・貴方、王様でしょう?」
「隠していたつもりだがな。」
「場所次第ですけど、身長が170cm以上の人は0.001%も居ませんのよ?」
「(地球の実質的な巨大化と重力、進化の影響か。公爵連中がおかしいだけでそっちが普通だよな。)」
一度手を繋ぎ、その中で考える。
「(いや、待て。該当者無しも人口の増加的に少なくないとは思っていたが、外見的コンプレックスを気にする街でそれを言ってのけるとなれば・・・。)」
隠れたと同時に振り向きざまに首を強く締め、意識を奪う。
「・・・フゥ、やはり殺傷目的の武器を隠し持っていた。」
武器ベルトを外し、銃弾を抜き、回収しておく。
「油性ペンで正の字書いといてついでにコンドームに片栗粉混ぜ水入れて置いとこ。」
「・・・敵で遊ぶな。」
「カン、武器の調査は出来るか?」
「無記名か・・・メーカーは分かるが独自の製造ラインか工場と組んでるか、工廠公脅して調べ上げるべきだろう。」
「作り方がプレス式の脆さなのが気になる。数が多い可能性が高い。」
「・・・市民に不満を募らせ、爆発させるつもりだろうな。」
ついでに言っておくと当時のコンドームは羊の腸等を使ったものが多かった。初期のコンドームは効果が無いと言われたが後に装着するという物理を超越した何かを考えていた影響がある。なので臭いは大体誤魔化せる。ゴムだったとしても縛れば問題無い。開けて確認する程冷静になれるのは本職のリュファスとかだろう。あの躊躇わず飲む様に惚れそうなのは黙っておこう。サービスの笑顔が重みを含みつつも嫌いになれない。
「取り敢えず隠れて起きるまで見とくか。」
「それもそうだな。」
仕事中にも笑いを忘れない。福利厚生はセルフサービス、それが我が職場の流儀である。
闘とクシナ班はそこまで離れていない。裏で話題になった人物と護衛という体を取り、遊撃として察とカンがいる。カオルコは別の場所で捜索。彼女は一人だけで十分な位探索が出来るので、我々まで足す必要はない。
「敵っぽいのを寄せるのは難しいけど、敵以外を集めるのは難しくないね。」
「多分三人位潰してるからそろそろ掴む筈。」
「変なのに捕まってないといいけど・・・。」
もうとっくに捕まっている(皇帝とかカオルコとか)。
全員が集合し、一度連絡を行う。追跡して来た連中は撒いたが、十秒以上の会話は禁物と刻む。
「・・・拠点を用意しない、かなり手慣れた諜報集団だ。」
「どうする?」
「連絡を定期的にして会話している、さっきのが動いたら追跡、メモ類の交換を見逃すな。」
紙幣を扱っている人間ばかり・・・と思ったが、一人違う人物が居た。レジの店員が僅かに紙幣以外の音を札束から鳴らしていた。
「・・・セカンドディールか、かなり上手い。痛い目によく遭わされた。」
セカンドディールとは、トランプの二枚目を渡すトリックだ。上から配るという風に信じるが故に起きる失敗。ボトムディールという似た技もあるが、それを実行する場合偽札が必要になる。
「偽札を使わないとなれば組織力は大した事ない、詰めるか。」
心理的盲点を突く・・・店員を利用した紙のやり取りに紛れ渡している。移動商売人が実質的な拠点だ。
ついでに下請けかもしれないと憐れみつつ、鋒を内に構える。
「なぁ、お姉ちゃん。抵抗すんなよ。」
ナイフをサッと当て、血が見える程度に深く首に差し込む、話せばすぐに喉を切られ、叫ぶ事は出来ない。
「この国のルールって変わってるよな。」
単なる敵か、異常な奴か。分からない、どっちだ、どっちだ。ルールの穴を突き、迷わせる。
「約束するよ、お前には手を出さない。外見が気に入った。」
セカンドディール、行うとすればカジノのディーラーやマジシャン、吟遊詩人やサーカスも該当する。スパイとして活動している可能性もある。手を出さないと言いつつコウキから受け取ったGPS代わりのものを差し込む。
「俺の名はコウキ、国王コウキだ。」
しれっと罪を擦り付けるカン、選択としては悪くないが当てつけっぽい所もある。
「借金のカタで・・・。」
「・・・成程。」
心理的盲点を看破する実力で理解出来る、敵対意志は無い。恐らくハンニバルと同じ、買収作戦だ。
「コウキの秘密兵器は通用しない・・・そういう事だな。」
一応処罰対象だが、制裁等はここでは行いにくいだろう。かと言って二重スパイは疑われる可能性がある。気絶させてマネキンにでも混ぜておくか。
「だが、受け取った分、ちゃんと罰はある。それまでは眠っておけ。」
そう言い残してナイフの峰で意識を軽く昏倒させておいた。
コウキと合流し、向こう側も何人か足止めと混乱を起こしていた。とはいえ数が分からないのは欠点だ。ついでに何かを買ってきたらしい・・・それがマシになる結果となれば良いが・・・。
「・・・バレない様に常に動いている連中が敵だ。データが一致する奴は頻繁に動きを止めている。」
コウキの一口アイデアはガムを吐き捨てる所から始まる。
「そこいらで売ってるガムだ、味わったら地面の側に滑る用のアロマオイルを塗る。」
「一個くれ。」
「シャインマスカット味しかねーぞ。」
「何、問題ない。」
そしてアロマオイルを手渡された。
「アロマオイルの方かよ!?」
「ガムはやらんぞ。」
チョコレートでも溶ける。基本的に油分であればガムは溶かせる。剥がしたい時は油よりも氷の方が良い時もある。
「ヒールが苦手なら滑る、シューズであれば違和感を抱いて止まる。広がるから滑らすにも良し、シューズでも滑る時がある。跡が残るのさ、ヒールが多いから被りにくい。アロマオイルでガムは溶けるってどこぞの温泉でやった。」
「あれ3DS版はまだしもWiiU版難しいよな。」
「WiiとかDSとかの時期だと刑務所から脱獄したりトイレが宇宙と繋がってたりすっからなアレ。」
「某深海探索ゲーがホラゲータグついてないみたいにSFゲータグつけてないんだろ。」
「猿と神はSFに入るのか?」
「ファンタジーだったか・・・。」
暫く時間を潰す、第二、第三の手も残してある。
「アーノルド・シュライバー、今回協力する為に記憶と身体を改竄して一年間潜入して貰った。」
「下手すりゃ人殺した以上にヤベー事してるぞお前。」
「親御さんの許可は取った、責任を取るならとか言ってたからここで暮らせる様に戸籍も作っておいた。」
「多分そういう事じゃない。」
「分かっている上でやってるだけだ。」
コウキは結構繋がりが多い、軍隊で助けた仲は多く、稀に闘の肉体関係が混ざっていたりもする。
逃亡はスケープゴートありき、反射的に生贄を作ってしまう。
「まぁ、中佐になっても頑張れってな。」
「しれっと殉職させんな。」
「戸籍がいつの間にか書き換えられても殉職扱いだから生きてはいる。」
じゃあ、ここでアロマオイルの手を切っておこう。二十分程度動かしたら問題無い、先から片付けて急に動くタイミングを測っていた。それが三十分インターバルだと気付き、合流するタイミングに合わせた。どの道分からなくても背後ピッタリに迫りバラすつもりだったが。
「さぁさ、お嬢さん方。偽物が紛れ込んでいるよ、しかもここまでしていると来れば希望者だ。」
足元の匂いで分かる、だが、それが何の匂いか分からないだろう。この街であれば、体液の可能性もある。アロマオイルは近ければ別の種類を選び、それぞれ別の匂いを引き立てる。だが、それが混ざった時、相性が良いなんて事は無かった。
「司法も刑罰も全ては俺が取り仕切っているもの、ならば何をすれば良いかなんて分かりきっている筈だ。」
コウキの掌の上で全て転がし、そして破壊する。
「罰の汚名を受けたくないだろう?ならば尊厳なぞ捨ててしまえ。」
彼は笑った、あまりにも非道な笑い方で迫った。
「なりたくない自分、そうあるべきでない自分、それを知った上でそう染まれ。」
高笑いと共に脱がされる彼等を見下し、笑う。罰であれば、本気でやるべきだと彼等は挑む。
歪むアイデンティティ、正しさ、望み、段々とその関係は崩れていく。
後ろから小さい女が小突いて来た。
「・・・あ、俺も?」
「体験用にドレス用意したのでどうでしょうか。」
「仕方ないなぁ、かわい子ちゃんの言うことだから許してやるが、内緒で、二人っきりでやろうな?」
「(まんまと掛かったなこのバカめー!!)」
幼女の中身はエリニューエスである。
流石汚い、魔女きたない。
自由室・・・定期的に置いてある休憩所だ、化粧室も兼業している公共物でもある。手入れはしっかりされているが・・・若干臭う。
個室に二人っきり・・・となったが、一つ気付いた。
そうだ、コウキに継承された女はリーツィアだ。
つまり・・・この場の流れで言えばエリニューエスの敵だ。
「期待させて悪いが、リーツィアの頼みだからな。」
着せる前にやり返された。コウキの防御はかなり硬い。・・・普段があの調子でなければまんまと掛かっていたかもしれないがそれでもリーツィアを味方にしなければ難しい・・・のでエリニューエスは少なくとも勝てないのだ。
元に戻った状態だが、普段のダンサー風スーツはもう持ってかれた。ドレスアップを存分に楽しみつつコウキが質問する。
「・・・結局、変な挙動をした人物は居なかったか。流入者が多い上、信頼関係が強く影響する街、誤魔化し易いから攻めるなら此処だと思ったが・・・。」
「あんまり。」
「少なくとも身分の偽造に長けた奴がいるか、暗部王や狂団と手を結んだ奴がいるか。」
軽く解決は出来た、だが、次はこんなに上手くはいかないだろう。髪を結び、整える。
「調査自体は終わったのか?」
「勿論!バレた時用にもう原型ない見た目にしといた。」
「・・・ヨシ。」
彼等はこれから生涯美少女生活を送ってもらおう。エリニューエスが段々と怖くなるコウキであったが、自分もやった分、意気投合が嫌な所で起きている。・・・どちらの拘りも一応はリーツィアが根にある。笑い話の様に話しているが、しんみりと感慨に耽っているのだ。
報復はまだまだ終われない、怒りと未練が身を焦がす。コウキは次なる手を用意し、丁寧に襲い掛かるつもりでいるのだ。
油性ペンって水性ペンより先に作られたんですよね。
あとコナンを五日で読み尽くして脳が痛い。
女将と入れ替わる奴記憶にはあるけど全く思い出せん。




