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継承物語  作者: 伊阪 証
はじまり
5/74

戦争又は非戦争

退屈するかもしれないので最初の戦争はちょっと早回しで行います。七話あったのを二話まで短縮。

別に最近彼女の黒マスクが気に入らないからって彼女の周りにマスクを使って五条悟のモノマネをしているという嘘を広げているのに時間を使い過ぎた訳じゃありません。

ほんとだもん。

彼は強かった、だけど、決して殺しをしなかった。


彼女の名はアリア、カナダ人、元を辿ればウクライナとフランスの混血で、ラテン系とスラブ系の中間。父は刑務官、母は医者、ちょっとした出会いがあって知り合い、彼女もまた愛された。

治安が悪くなる前までは・・・。


「学校でテロ?銃乱射?・・・警官が十人犠牲って相当よ。貴方も気を付けて。」

「アリアはどうした?」

「今日は体調崩して家よ、ホームステイに来てる高校生・・・ああ、コウキ君が看病してくれてる筈。」

「・・・言ってないな、刑務所を狙う可能性もあるから今日は帰らずにいる、良いか?」

「ええ、分かったわ。」

電話は切り替わり、アリアの母はコウキに電話を掛けた。

「コウキ君・・・彼女を守ってね、お願い。」

「・・・ああ、分かった。」

ロシア・東アジア系テロ組織、難民の中に紛れた復権派。死刑の大量執行からか死刑判決を受ける前に政府を崩すか、最低一個の州を支配する事が目的になる。

子供という先進国では軒並み希少な存在、それを人質にする事で徐々に影響を与える。カナダは西側として、また、民族的にウクライナに近い影響もあり、より強く敵対していた。

「・・・コウキ・・・。」

「分かっているよ、俺達だけの秘密だろう?」

「・・・いや・・・ダメ・・・。」

「・・・狙いは俺だ、アリア・・・政府の交渉に有利だからな。」

「・・・私を置いてかないで・・・。」

彼女が立ち上がったのにも関わらず、扉は閉ざされた。固められ、開けられもしなかった。

「・・・どうして・・・。」

その言葉を聞き届け、自身は準備を始める。散弾銃二丁、バックショットでチューブ式、拳銃はワルサー、少しアンティーク気味だがアリアの父の趣味にとやかく言うつもりはない。

バリケードは作った、扉からしか来ない状況にしてある、それで十分だ。

「学校の近くは便利だがろくなもんじゃねえな。クソっ・・・。」

ノックは聞こえない、ショットガンの音対策に耳栓をしたが少し慌てているかもしれないと感じた。

「・・・二発目・・・よし。」

立てた机の影に背面に向かい、腕を上げつつトリガーを引いた。先頭の一人はライオットシールドでそれを防いでいたらしい。

「・・・無駄だったか。」

五人の足音がする、全員が盾を持っている訳では無いらしい。

リビングに向かい、ソファーを足場にバリケードの上に飛び、細いスペースから落下し蹴りを入れる。そして二発目は放たれた。



王国に技術はない、しかし、彼処には魔術がある。特に気を付けるべきは爆発、従来の砲弾より威力が高く、範囲も広い。効率は不明だが、城内に入ると火災で燃える。防衛には若干不向きなものだ。

エネルギーの変換、同等のエネルギーを発射する事で攻撃手段にする。避雷針を雷の中で設置すれば雷の分の火を発射出来る。強いて言うなら範囲が狭い、凡そ10m以内しか変換できず、対象の他に向くエネルギーも封じてしまう。呼吸の為の分子の物理が特に致命的だ。そこを指定出来る様にしたソロモンの改革が無ければ無用の長物だったであろう。範囲が向こうでの才能というのも、害になりうるというのを持ち上げるのは異色だが妥当なのだ。

「アスタルト、挑発はこれ以上は難しい。通常の手段であれば。」

「ここ二十年そんな感じっすねぇ〜。人数も露骨に少ない、案外南北にも手を回しているんじゃ?」

「以前馬の数を調査しただろ?その時事を考えると繁殖させてから受け取って他の国を通り侵略するだろうな。兵站が維持出来なくなる。」

「顔が特定出来たのでスクルドにやらせますか。」

「構わん、どれにやるかだけは言ってくれ。」

「あの見た目が良さそうな奴。」

「そんな・・・私に死ねですって!?」

「お前もう黙ってろ。」

「スクルド、薬漬けのを用意してヘカテーの入れる状態にして。いつものやるから。」

『了解、嫌だけどやったげる。』

「・・・誰に生かされてると思ってんだあの女。」

「落ち着け、普段は黙っているお前の方が見た目は良い。」

「お、分かってきましたねぇ。」

「動き始めたな。」

「そうですね、死んだ彼はメルリウスによるとクソ野郎だそうです。」

「そりゃあ被害者はこっちに流れるから次は別の奴に当たり・・・と最終的には互いを潰し合うからな。案外普通の光景に出来るのさ。」

「問題がヘカテー次第なのでどうも言い難い・・・という所ですかね。」

「皆には辛い思いをさせている、これしか出来ない以上、最低限で済まそう。慰めを有難う。」

「・・・感謝し過ぎも罪なもんだよ。」

「気にするな。」

暫く眺めて数十分、継承を用いた感覚の破壊、戦場で苦しんでいた若者を拷問の後に狂わせた後に自殺を選ばせ、その際に誰か一人を考え続ける様にする。

見ていられない、一人が崩れた所、その取り巻きが離れようとした、コウキやユウキには到底見せられない。警備は遅い、銃、旧式のものだ。ガス排出機構等がほぼなく、割と短い。

「・・・もう完成させたか、誰が加担している?」

スタンガンの様に雷を発したのを見た、無力化がされただけ、つまり相手を殺してはならない人物と看做していた場合にこうなる。

「予備の用意、二人をランダムで行い潰す。ハズレだ。」

そして下の方で着々とトーチカ内で準備を進めていた彼女に言った。

「チェル、始末は任せた。」

「おうよ、頼まれた、ダーリン。」

「(いつもよりカッコつけてるなアイツ。)」

リボルバーのスナイピング用装備、ストック、バレル、スコープ、冷却装置。それらの中間にリボルバーを仕込む。

「対象までの距離凡そ10000m、目視確認終了。」

「風向き確認、再調整を。」

「再調整完了、ヘカテー、確認。」

『問題ない!』

「了解、発砲許可を出す、セーフティを解除しろ。」

「ラジャー!」

弾速凡そ900m/s、弾の威力は最大値、一発の弾丸に圧倒的力が込められる。10km地点まで潜入しているのでかなり近い。とはいえ本来狙う様な距離ではない。

「弾速遅くなる分貫通しないから悲惨にならないかアレ。」

「・・・まぁ、必要な犠牲さ。」

弾丸が撃ち込まれたと思っていたら、そのまま貫通し身体のパーツが蒸発、建物に当たり、3階建て建築が周囲の建物を巻き込んで倒れた。木っ端微塵というか、災害対策をしていた分ドミノの様になったと言うか・・・。

「終わったな・・・この手段はクールダウンとして最低二年は禁止する、良いな。」

「成功ですか?」

「ああ、彼処がダミーだって分かった。」

「ダミー?」

「先ず人の服に統一感がない、その次に建物の高低差が曖昧。」

「そっちじゃなくてダミーなら攻撃するかどうかって話の方が聞きたい。」

「捕虜確保に使う、拠点にもするが十分警告する。・・・記憶の回収も完了した。」

「警戒されたんで早かったですね。」

「いや、粗方把握した。十分だ。」

「マッピングはしておく、都市制圧をメインと誤解させるのに要るだろう?」

「ああ。」

司令部に撤退するべく用意を指示、凡そ二十人が準備を始めた。

「それにしても・・・魔術王は何をしている?」

「まだ王都なんですよね、見る限り。」

「どこで?」

「さっき見えた都市の管理施設みたいなとこを分析したらありました。」

「・・・中央十字の連中が一枚噛んだな。」

「え?」

「こっちの国襲うのに王国のエンブレムとか使うか?・・・ありゃ利権だ。鎧に国が認めたという印の旗を義務付けた。」

「ああ、よくありますね。」

「権力争い中なんだよ、彼奴ら。それで無理にでも利権を得て、結局狂団に利用された。」

「・・・馬鹿な奴ら。」

アスタルトが笑わずに目を逸らす、心当たりがあるからあの様なぶっきらぼうな態度を取っているのだろう。

「捕虜とか言ってたけど、他の目標は?」

「ソロモンを引っ張り出す、そろそろ姿を見せなきゃ国民が信じはしないだろう。先代王が過激だったから尚更だろうな。・・・普通は出てこない盤面だ、遷都のサボタージュを二十年続けた、先の狙撃で殺せる事も明らかにした。後は運任せだ。」

「しかしこの中じゃ溺死者も出るでしょう、深入りするより一転攻勢を基本にした方が容易では?、とか言われそうだな。」

「防衛はどうも言えんな。」

「向こうは防衛が結構強いですからねぇ、準備掛かるから防衛と攻城戦しか出来ないみたいな所もありますけど。」

「そうだな、面倒になる可能性を教え込むのも、勝つ快感を教え込むのも十分なリターンがある。男女比を確認する、基本的に性別は統一して扱え、軍隊の動物は一律でそうしろ。」

「問題無い、新人も教育は最低限受けている。」

「宗教関係は流れて来ないからな。」

「識字率はあとどれ位だ?」

「10%で完璧です、人権範囲が広がる迄に軍報がやってくれれば良いんだがな。」

「それでも王国民は識字率が高いというか・・・教育整備が以上じゃありません?」

「人権の排除でも簡易化による全員の足を引っ張る方式でもない。間違いない、こっちで言えば記憶漏れ対策を転用したものだ。」

「記憶漏れ対策?」

「予想はつく、アレは純粋種の人間ではなく吸血種の人間。チスイコウモリの妖精だ。

お前に分かりやすく言えばユダヤ人みたいなものだ。」

「はぁ、銀行でも運営しているんですか?」

「利子利息はないが必要無いものを勝手に貰っていくのかもしれないが、現状推察出来るのは血を一日Nml貰ったら翌日Nml返す、それがチスイコウモリだ。」

「それをどうすれば記憶漏れ対策に?」

「寝ている間に処理をする、寝ている間の記憶なんて普通探らないし、記憶を深く体験しようとすると同じ様な感覚になり、精々夢を見るのがオチだ。

記憶を奪っても意味は無いが、使命や能は継承される。」

「なるほどぉ。」

「こっちにサキュバスいるから今更感はあるが、クラウドストレージみたいなもので過干渉は出来ないしな。」

「自慰の時間を夜間に行う便利システム。私もお世話になってます。」

「カレンもチェルも待ってるのに、俺には出来ないな。」

「司令はロリコンと。」

「俺より年上なんて聞いた事がねぇ。」

「何度目ですかねぇこの会話。」

「お前からは24度目だ。」

「おや、覚えていてくれましたか。」

「ああ、覚えている。」

「アスタルト感激、じゃあ私はまた籠っているので呼んで下さいね。」

「ああ、報告として纏めれたらもう一度知らせるよ。」

「はーい。」

彼女等は帰る、スパイや諜報を懸念し一度毒物を撒く、三日後が雨なのでその日に薄まる様にしてはいる。だが、念の為見ておこう、何時が最後になるかなんて分かりはしないのだから。



コウキに色々と戦略を語り継ぐ、軍隊は和気藹々としている、余裕があると言うよりは、追い詰められていない感じがする。

「勝率にムラを出し、スパイを拒む構造にする事でアルトリウスを空想の人物とする。」

「できるのー?」

「いや、ここまでの変な事をするのは転生者が騙っていると考えるんだよ案外。そうした方が指揮が落ちない。王都が焼けるよりもアルトリウスの出現の方が恐ろしい。そして各公がアルトリウスを名乗って突撃する。そうすればアルトリウスの正体を隠せる上人々は逃げ、戦いを減らせる。」

「怖いですよね、他国ではアルトリウスの亡霊に食われるぞという伝承がありました。」

「うん。」

「酷くね?」

忌み嫌ったものに富はある、宗教の異端であったり、道徳の外道であったり。褒められるかどうかは未来次第である。

アルトリウス帰投、他元帥集結。指揮官の面々を見れば、これ以上ない面子である。い

「敵勢力調査終了、作戦提案の総括を。」

「大雨の盤面内で選別した馬を用いて叩く、新兵動員数と被差別階級が多い分、仲間割れは容易だ。数師団は新兵を中心に構成、地獄を教えてやれ。敵には地獄すら生温い、分かっているな? 楔を打ち込んだ後は防衛に徹しろ。全元帥が単独で将校を討つ。」

「作戦名の命名を。」

「この作戦、プライスロード作戦としよう。」

「プライスロード作戦の実行布陣に。各位命令。」

淡々と物語は進む、準備の邪魔はない、勝ちを確信した彼等は、地図を大きく書き換える事件の首謀者として、また、英雄として名を馳せるべくその武器を持つ。剣、槍、銃、弓、大砲。種類は様々だ。そこには鉄と火薬の臭いしかない、それだけだ。



魔術王も準備を終わらせた。陣を用意し、部下を並べる。

「鳥は逃げたか。」

全員が跪く、そして全員が彼を見る。

「鳥は逃げたか、と仰せだ。」

「鳥も、何も。馬も訓練出来ませんでした。」

「良い、全て順調だ。」

彼は副官と話す、副官は彼の次の言葉を合図に喝を口にした。

「反転攻勢を開始する。」

「者共!行くぞ!!」

「「「応!!」」」

落ち着きのある王と、昂る臣その差は決して埋まらない。



それぞれの大将が言った。

「さて、ソロモン、お前は何分俺を楽しませてくれる?」

「さて、盤面外に仕込んだ駒は何個有効に使えるか。」

彼等はどうあれ、戦争をする時は没頭し楽しむのである。



アルトリウスの視点に戻そう。

「今後処理するリストだ、此奴らを二十年以内に始末する。」

「・・・世界的有名人しかいませんね。」

「狂団から流出したリストだ。奴らは集団自殺によって同時に狂わせる、その為に互いが殺し合って記憶を蒸留している。存在が不確かになっている俺、殺人を多く経験した人々であれば問題は無い。」

「・・・大戦争の準備は整った、ということですね。」

「今回は三人始末する、ソロモンに関しては深手に追い詰めれば上々だ。」

「・・・了解しました、各元帥に指示します。」

「迷うなよ、知った名前があるんだろ? お前の出身地だもんな。」

英雄はダンディーで生意気な態度を止めた、彼は新人、その筆頭であったジマーに期待していた。少し女の様に扱い、立場や役目を思い起こさせる。

「役目は果たせ、責任は俺にある、良いな?」

「はい!」

彼は素早く出ていった。

「アランの提案、結構成功かもな。結果次第で採用しよう。ヘカテーもありがとう、メルリウスより器用なお前がいてくれて助かったよ。」

『そうね、私も良いもの見れたわ。』

「・・・考えを読むなよ?」

『失礼ポイント+2、あと10ポイントで悪夢を見せるつもりだけど。』

「プライベート削がれまくる俺の気持ちになってくれ。」

『私をもっと褒め讃えれば良いの。』

「そうなのか。」

『あともう一つ伝言があるわ、王国海岸の上空に何かあるってアスタルトから連絡があった。』

「現段階で気にする必要は無い。」

『国境の遥か向こうだし・・・って事?』

「ああ。」

『一応見てくる、状況次第で対処する。だけど・・・。』

「フォーリナー、或いはアウトサイダーだな。・・・向こうの被害調査をアスタルトと行ってくれ。各王に任せた方が良い。」

『分かった。』

「・・・関心関心、あの年取った童女共より大人な会話が出来る子供がいるって事にね。」

『ありがとう、でも、彼女達は周囲を歪めるからずっと乙女でしかいられなかった・・・。』

「分かっている、私の性格が少し悪かった、次は控えるよ。」

『そうね、そっちの方が格好良いし。』

ヘカテーと少し遊んでいる一方で、向こうの海では排煙と轟音の擬似的な曇天が出来ていた。

彼の名はアルバート、単独行動で王国又は帝国へ容赦の無い攻撃準備をしている。外見で見れば誰一人生き残らせないつもりの。



「分かっている、程よく抑えるさ。」

「貴方がやらかしたら私の首が飛ぶんですよ?分かっています?」

「不確定要素に出来る工作はした。ダガンの協力もある、行ける行ける。」

『大気圏突破。』

「準備は整ったか。」

スパゲッティ型ロケット十機、ワイヤーに吊り下げられた戦艦五機。

『続いて重巡・軽巡を配備、突撃陸上巡洋艦の移動を開始。』

天を覆う黒の三角、真ん中に球体の穴がある。そこには予備の船が存在する。

「浪漫と蹂躙、両立してこそ男って奴だよ。核兵器なんざ浪漫に欠ける。時代はいつだって4.2t砲弾さ。」

『オーウェル』『キューブリック』『バレンタイン』『ウェルズリー』『アームストロング』『オコンネル』『マクドナルド』『ウィルソン』『マディソン』『マクミラン』『スペクター』

『出陣用意良し。』

「飛行要塞カリフォルニアに指令、前進せよ。」

アルバートは遥か西より飛来する。人々を蹂躙し、破壊し、原型を程よく破壊し、BBQ後の肉とドッグタグだけを残していくのだ。



議会制による戦時中の安定は軍人位である貴族が不在である為下院に一任される。

故に皇帝は機能していない為影は薄い、しかし彼は財政家として唯一の存在であり、上位の貴族程明確な経緯を払っている。残念ながら財政家や外交官が重要であると理解するまでに時間が掛かる人材は多い。

不穏を信じ、警戒は怠らず。故に将として確実な勝利と最小の犠牲で済ませる、表面上の最高。・・・裏まで考え、犠牲を多くして教育コストを減らす等、非道でないという意味合いもある。

「・・・重要人物を重要人物にぶつけ、決意を揺るがせる。・・・本当に出来るのか?」

「中央十字の言う事をまだ信じているのですか。我々はシンイセツ教に従う者であり、ジュを中心に築き上げた筈。」

「・・・宜しい、失敗の担保を差し出せ。ならば認めよう。」

「聖剣を貴方に捧げましょう。これでこの国が滅ぼせようとも、貴方の命は守られる筈。」

「承認した、では、健闘を祈る。」

「よろしい。・・・うむ。」

帝国の儀礼的な交流を交わし、軍服同士、ある種の平等下、立ち位置の違いだけで人を分からせる。

「存分に戦え、負けは許さぬ。」

「御意!」

渇望と野望を以て彼は行く、携えた仲間の精鋭たるや、彼の想像を絶する。サルマナザール朝の皇帝として、アルトリウスとの約束として。


敵に攻勢の兆し見えず。

そうなる様に誘導した訳だが。

「アラン、敵の様子は。」

「魔術砲塔が少ない、100門程度か。準備できていないらしい。」

棒サイズから大砲サイズの砲塔と言われる攻城戦の天敵があった、それに関してを少数精鋭で叩き潰し、その次のフェーズに移るという方式で行う分、少ないのは幸運と言うべきか、撹乱に使いにくいというべきか。

「総力戦か、コウキとユウキの監視は任せた。」

「分かった、引き続き狙撃の用意をする。」

「総員、突撃戦戦闘配備最終確認。」

「点呼良し、問題ありません。」

「アルトリウス卿、五軍団配備良し、元帥指揮系統確認。」

「目視確認、位置に着け、反撃される前に瞬間で潰す。」

「命令伝達良し、承認を確認。」

「地図に未確認の退路を数箇所確認、突貫工事かと。」

「敵軍の兵糧は?」

「未確認、恐らく現地調達かと。」

「森林狙いだ、奴等は食事を不要とし、娯楽としてエネルギーを口から食っているだけで兵糧を無くすと見せかけ、短期決戦を仕掛けるつもりだな。ストレスを与える戦術に切替える。将校以上には長期戦を想定する様に命令、だが初動は大打撃にする。

新人が多い事を知った上でやってるだろう。そっちには伝えるな、混乱に繋がる。材木を燃やす事でそのエネルギーを使用、そして土砂災害を狙い、それを第二波に転用。・・・二王制時の片方が死んだせいでまだ馴れない。そんときの兵卒は狂団にいやがる。この状態と仮定するが各将校に現地で対応を変えろ。」

「参謀本部からの残弾は100との事です。」

「都市レベルの決戦じゃないなら当然さ。」

「では、残りは任せました。総大将アルトリウス。」

「心配すんな、満足の出来る戦いをしてやるよ。」

彼は馬上に跨り者共に声を掛ける、人を割って入り、その威光を知らしめる。彼は英雄アルトリウス、殺戮と破壊、そしてそれ以上に救済を行い、信頼されるが為にほぼ悠久の時を生きる様に強制され、その中で心を折らずに生き続けた。

今日もその一端と消え、勝利はエンディングロールの僅かな間に消えるだろう。・・・そうであったとしても、大事と彼は忘れない、一端に落とすからこそ英雄であり、忘れないからこそ英雄なのだ。

「カストゥス家の名において敵軍の殲滅を行う!者共!進軍せよ!!」

大歓声が上がる、空気が変質し、戦場は熱気に包まれる。敵の準備は最早無いに等しい。

アルトリウスが伝説的なのは知られていないだけでなく、見た敵を全て殲滅しているから。常勝不敗の名将が障害をいつも通り壊しに来ただけだと、心理的余裕を与える。



敵は恐らく一転攻勢を狙っている、動きが見えない。そして此方の変更点としてサラブレッドの導入、実質的な新兵器を仕入れた。凡そ従来の倍の速度で突撃する、見た目の華奢を馬鹿にすれば、蹴られ踏まれて次の日は見ぬ。一転攻勢の準備すらさせない。

「騎兵切り替え、第二陣に備えろ。」

「全箇所損害4桁満たず、敵将逃亡。」

「ダガンが行った、問題無い。」

「了解。」

数時間だ、数時間過ぎてもアルトリウスは動かない。露出した敵将を各方位に配置した元帥で殺す。

「第三陣か、もう一度行こう、馬は変える。」

「ダガン少将からの連絡は不明。」

「・・・そうか、手間取るとは珍しい。」

「戦況をどう見ますか?」

「戦況外の方が問題だ、この戦争が本命とは思えん、挑発をするだけの理由もあるだろう。出来るだけ戦力を削ぐ、合流を謀られたら厄介だ。」

天幕の中で双方が考え続ける、英雄とそれ以外、ストレスを感じ取るのに少々差があり、自信過剰を相手に切り札、デメリット付きの手が忌み嫌われる。

「敵が慌て始めた、将の強さを思い知ったな。伝令用意。」

それがこの一手である。・・・継承と洗脳を重ねる事で伝令を行う、死を経験する為に訓練を受けなければ対応不可である。

「・・・伝令、分かりました。」

多くは捕虜、確保された子供を用いる。元々は王国の行いであり、やがて批判され、使われなくなった。

外交を行えない様にして、攻め続けられる帝国。歴史の詐称と徹底的な差別は、英雄或いは怪物を産んだ。彼は善意で世界を滅ぼしうる逸材であり、最大の善として人間を選別する。

本来は、全ての敵を殲滅するつもりで彼は立っているのだ。捕虜はさっさと殺すべき、本心が言えるならそう言っただろう。

「不能公、蒼髪公、壮麗公、遠征公、敵の左翼を破壊する。」

道の荒れ方から、進行方向を理解する。己等がすべき事を理解し、排除の為の筋道を立てる。一心不乱の大戦争とは、粛々としたものでは無く、犠牲を最大限に仕立て手上げたものである。

「逃げられる前に敵将だけは始末する、少しでも期待された様な奴から片付ける。」

復讐の種火が音を上げる、理性と感情が共存し、少しづつ彼は狂う。・・・だが、彼の仲間が全ては代行するだろう。故に、気にする必要は無い。



魔術の最奥を見せよう、地を沿い白の円と球体上の三角を重ねる。

「風・雷を天に起こす、然して顕現するはワイルドハント。」

血は使わない、周囲には八つの火、森、山の山頂で一人立ち、風を戦がせた。三点での支えはすぐに崩れ、森は燃える。

「・・・地を呑み、血を引き、彼等の終焉を。」

指先には天があった、雲の最中に一筋の光。熱だ、熱が起きた。雲が溶ける、水が飛来し、晴天とその同じ色が降り注ぐ。

「我が名はソロモン、ソロモン朝第三の王にして最高傑作。」

彼に差し向けられたのは理不尽極まりない英雄、伝承を作るに生涯を掛けても足りない、相手にするのは先ず不可能、勝負になれば未だ良い方だ。

「その名に答えて扉を開け。」

そして彼は覚悟を決めた。

「・・・地を揺るがす、レセップスの名を再び聞かせよ。」

王という権威を失墜させてまで、彼は剣を向けるのだ。



当然だが、その光景を崖上で見ていた人物もいる、突撃用意中に異変が起きたと察知し、各自で我慢していた。

「魔術は火選ばないもんなんですねぇ。」

「そりゃ火事のダメージなんて大半爆発とセットの破片の飛散だからな。爆発も大した威力にはならない。酸欠は向こうもリスクある。」

「私、クロポトキンは泳げるので頼って貰って良いですよ〜?」

「雷は指示役や将軍と言った高い場所にいる人物や馬上の人物に誘導される。有効だ、見事だ。消耗が凄まじいから釣り合ってはいるだろうよ。」

「周囲を槍兵で固めたらそれ終わりじゃ。というか私感電死しちゃう。」

「そりゃそうだ、回数制の避雷針と思えば良い。」

「耐える前提ですかね?それとも使い捨て?」

「使い捨てが基本だ、耐えれても使い捨てだ。」

そして指先には光がある、彼が指したのは水に濡れた王である。・・・そして、目を細めて殺しの方法を定めた。

「良い戦術眼をしている、騎馬兵が同一人物が多いと見抜き、武器の多種多様さに誤魔化されなかった。・・・兵数の誤認は失敗、武器が多い分そのリソースによって害を与えうる嵐。選択としては最適だな。」

クロポトキンは位の高い軍人ではない、戦場のノウハウを知ってもそうする理由や、分からないものや仕組み、マナーによる科学や理屈の無視。・・・それを解せない。

此奴はすぐに死ぬ、自然淘汰は邪悪と邪悪の中で嘘と知能が高い人間を選別するものである。

「明日友の一人がいないと思え、明日元恋人が一人いないと思え。残酷な世界を作った神を恨め、無神論を掲げる俺にそんな希望は最初っから無い。」

これが最後である、誰の糧になるかを選択させるべく声を掛けた。真意を解せないなら、お前は死ぬだろうと。



馬上にて剣を持つ一人、東方にて領土の拡大なら彼を越すペースで行える人物はいない、機動と短期戦のプロフェッショナル、相手に嫌がらせを続けるという幼い頃の癖が最終的にはこの様な究極に進化した。疾風怒濤という異名が似合うと思われたが、いつの間にか電光石火と、風から光へ変化した。知らせが先か滅びが先か、不安が準備の外になる程に。

「敵将は逃亡していないし、不在でもない。・・・間違いない、こっち側にいる。」

「・・・なんだって?」

遠征公ロタール・ティベリウス・サルマナザールとその副官は前線の中で悠長に会話をし、その間に剣を振る。 サーペンタイン式のソードオフ・スラッグ・カービンライフル、短い騎兵の武器として合間に振るえるという流行を示す。

「誰が敵だ? それは分からずともアルトリウスが懸念していたから俺等を呼んだと考える事は出来る。」

「あの挑発行動、その時に侵入したんじゃないか?」

「それ以前は無いのか?」

城塞の壁を見る、相手は誰だ、戦況の遅さが気に掛る。相手の行動が後手後手・・・脆弱な部分は狙わてているが先手を打ってくる事は無いのだ。一転攻勢を徹底的に潰す、馬を定期的に替えて剣と銃を錆つかせる、その中で退屈すら感じていた。

「アランだろ、全部監視出来るのは彼奴だけだ。」

「・・・彼奴か、いけすかねぇとは思っちゃいたが。」

「乗っ取りも有り得るから殺しは全部委ねた方が良いだろうな。こういう処理はメルリウスが来るまで出来ない。」

どこにいるんだ、あのクソビッチと面倒そうに切られた。そう責め立てられても仕方ない。アルトリウスの長年の友好関係がこの国の人材を築いているのだ、難はあって当然だろう。

「どうやらこの戦争、目的が想定よりも大きく違うらしい。」

「だろうな。」

「・・・三日、俺の不在を誤魔化せないか?」

「ああ、分かった。」

遠征公は戦いから姿を眩ませた、気付くかどうかを上手く執り行い、そして経験則から全く違う場所に行く。空白を狙った、危険から逃げた、だが、その恥晒しに指を向ければ、剣を刺されている事を忘れていた事に漸く気付くのだ。



アルトリウスはそれを察し、自身が察した事を口実にある点に気付く。

「敵軍司令はアランを乗っ取った。尋問前は以上の様に判断し各元帥に遊撃命令を出し、休憩中の軍から用意を始める。

迎撃命令対自軍:パターン狙撃部隊を発令。50年以上の古参は準備しろ、絶対だ。」

彼が姿を眩ませたものの連絡が無い、つまり彼に能力が無い状況で、他連絡は滞りなく起きている。

敵軍は正反対の国に対応をしていた遠征公の顔を知る筈がない。・・・その程度の連絡能力という時点で落胆するものがある。

「狙撃部隊に強制力Vの撤退命令発令。」

「了解。」

「・・・面倒事は手荒に処理させてもらおう。」

アルトリウスは馬を呼んだ、生き残った訓練された馬。雨をも躊躇わぬ車に等しい馬。そして敵の名を言った。

「『脚曲がりの彗星』・・・か。」

片脚骨折の中、金属製の専用器具で固定し、魔術による脚へのエネルギー変換。伝令兵、暗殺者としての双方を担い、今回の作戦の要になっている可能性が高い。

そもそも彗星と呼ばれる位は身体の頑丈さと柔軟さ、赤血球の数、スローペースな心臓と適切な不整脈、フィードバック無効化と最低限の知能を持ち合わせた神経、身体の空気抵抗。それらを満たした異名であり、十人位いたが何人殺したか覚えていない。そして今回の相手は中佐と訳されていた、前線に出る様な奴じゃない。

「・・・ユウキ狙いか、彼奴の思考は誘導出来る上、俺に仕向けれる。・・・タカハシを狩れる実力者の可能性か、エリニューエスの加担か。・・・未知数だな。メルリウスに任せるのが最適だな。」

アルトリウスの無力化、それに最適な相手がユウキだ、アランを殺す事で更に確実にする。・・・成程、筋が通る。

「アランの記憶が無い、未だ殺されては居ない筈だ。」

彼は至って冷静であった、微動だにせず、顔も強ばらない。気楽にしつつも厳格、自然体に移っていった。



新兵のふとした一言が、将の耳を動かす。

老雄の異名を国レベルではないが地方ではそう呼ばれる女、マリアンヌ・ラグランジュ・サルマナザール。将間では新人、可愛がられる対象であり、久しい感覚に少し恥じらいつつも、安堵を覚える。・・・その温もりが奮い立ったが故に答えた。

「アルトリウス卿の部隊の強さが分からない?」

・・・少し手を動かす、それを見ることは無かった、メモをした軍報は新人らしい、歴史を知らぬもの、ただ高給に惹かれた赤と黒。

そんな彼には分からないだろう、自分は既に長期戦のストレスで髪が真っ白に染まった。見た目には気遣えと黒に染めたが、どうも自分にはどこか勇気に欠けるのだ、新人相手でも臆せず、怯えさせない様にしようとしたがそれは打ち破られた。

「コンスタントに強い、長期戦に強いというのが一番の特徴だな。精鋭の多いこっちには確かに使わないケースが多い。」

とはいえ嘘は良くないと興奮交じりの惚気を抑えた、兄を褒め讃える妹・・・という珍しいものが一番近いだろうか、彼女は世にも珍しい存在と経験ある数人が意表を突かれる。

「伝説の戦争・・・二千年前なんだが、南で戦争を仕掛けられたんだが、その話を大半は知らない。昔だからとか、そんなのではない。」

一人は恐る恐る聞いた、トラウマが改善を起こしたのではないか、その様な懸念があった。・・・実際はそうではない、という確信が持てなかったのだ。

「・・・もしかしてですが、全滅・・・?」

そう返すだろうという自分の昔を懐かしむ様に口角が変になる。つい、本当についなのだ。うっかり、彼女は良さを流布してしまった。

「逆だ、三百人誰一人欠けずに残った。そして相手も殲滅した。相手に生き残りはなく、味方は信頼をここで確認し、偶然もあったが完璧な戦術や戦局であった事から機密漏洩を防止するべく一切が伏せられた。」

少し下を向いた、生き残ったという言葉が使えない、死というものが戦争において端数と扱われる稀有な例であった。

「・・・儀礼にでも使うかの様な神聖を宿す部隊、それがアルトリウスの軍だ。予め捨てる命を数え、どこまで減らせるかを試す残酷な将。・・・そしてそれを覆す兵士各個。将の隣で戦える事こそ本望とする精鋭共。・・・完成された軍、そう言って差し支えないだろうよ。」

天衣無縫に話は続く、応えるは期待の眼差し、迷いも憂いもなく、彼女は引き込む。

「・・・私は妊娠して子供を産むまではそこに所属していた、唯一の女だった。強ければ出世してしまうし、弱ければそこまで来ない、変人だった訳だ。」

そして、そう締められた。

ソロモン

本名メンドゥーサ・フランコ、スペイン出身のカルト宗教団体を創立し、同時期にイスラム系過激派騒動と難民問題で防波堤として活動した。しかし国際勢力図が変わり国際的に糾弾され、第一の殉教者になると思われたが、ある科学者に協力し、現在もまだ生きている。

王国に乱立する王位継承者の一人で、有力候補でもある。治安最悪の国の王が一人な訳ねぇだろスタイル。五人以外は使い捨てる予定です。


ヘカテー

幻想の魔女、死んで以来霊体の儘になる。使命を研究する一人で、産まれた時に特殊な使命を持っていた為魂だけの存在となった。離別の魔女という先代の娘で、彼女の呪いを解くべく日々活動する。

彼女の使命はジョーのものの亜種で、彼女には救いが無かった。アルトリウスは殺された事を憐れみ、復讐を遂行した彼を好み、果たせなくしてしまったという後悔を抱えている事により深く好意を抱いた。魔女を惑わすが為にアルトリウスという位は支えられる。・・・老獪な彼には、その面影は無いのだ。それでも尚愛される実力が、愛着があったのだ。故に最も子供らしい魔女である。


離別の魔女

本作品では登場予定が無い。貴族の一人で、夫を失った未亡人である。彼を求めて残された子五人を深く愛したものの、錯乱し、一人一人殺してしまった。

追記:ごめんやっぱ出るかも。


アルトリウスが負けた相手を覚えていないのは記憶を掘り返す事自体を辱めと思っているからです。

『脚曲がりの彗星』の元ネタは米三冠馬アソールトの異名からです。他に候補名が十一個あったので十二代目にしました。蟹脚の彗星はねぇよ過去の私ぃ。

帝国には歴史書から名前を用いるという伝統があるので歴史の人物から名前を引っ張ってきている場合が多いです。記憶の一部があるのは血の繋がりがあるよりも安堵できるのじゃ。

特に数字に意味は無いけどアルトリウスの犠牲者リストと等号だと思ってください。

この中の描写で左翼を叩くのは敵の武器と盾の持ち方が理由だったり。軍事的に遅れてるっていうお話。大体アルトリウスが殺しまくったのが悪い。あと利き手問題とか。

狙撃部隊が独立しているのはまだライフリングやミニエー弾が高コストだからです。技術自体はある。フリントノック式もありますけど剣の方が確実だし誤射の危険性が少ない。銃身長いし鈍器になるし。


魔女の性格どうしようと割と困っている件。

・・・私のリアル周りは大体ギャグ要員だからですかね?

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