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継承物語  作者: 伊阪 証
ループマン・ウォーキング

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49/74

本領発揮

第二形態とかの最終形態よりも前の方が強い奴居るよね。アルトリウスお前の事だよ。

あと最近抗鬱剤変えたのが結構影響出てるので間は別の方を更新します。

それだけではなかった。

災害を相手する以上確実に精神を砕き、勝てない植え付けて終わらせる必要がある。

「折角だ、もっと嫌なフィールドにしてやるよ。」

腕を掴み、数メートル吹っ飛ばして合図をする。

「銃撃開始、各重機関銃残弾数5000、アサルトライフルと同じ弾だが、一秒でビルの壁を破壊し倒壊させられる。」

耳を塞ぐ、それを見て耳を塞いだアランが地面に手を着けなかった事を利用し、防御を突破して腕を切った。相手側からの動き、自分の予想した通り向こうの方が攻撃性で上回っていた。手首がヒリつく。

「当たるかどうかは彼奴らの腕次第だ、運ゲーだ。」

煽り、そして空に蹴飛ばす。

これで打ち止めだ、これ以上苦しめる必要は無い。

「ヒトに、進化の喜びを知らない存在はいない。」

銃弾と迫撃砲の中、人の身体で歩く。肝が据わってる通り越して気持ち悪い位だ。

「お前は進化を諦めた、俺は進化を信じた。ヒトは生に縋り、戦い続け、命を紡ぐ。」

耳を塞ぎ続け、しかし相手を睨み続ける。

「それがヒトの美しさだ。」

口の端は吊り上がっていた、全て果たし終えたという顔で笑い続ける。

「さらばだ、進化をする生き物を信じた俺に遠く及ばない只の災害。」

次の言葉に関しては彼の笑みが止み、怒りと後悔で満ちた顔にて相手を蔑む。

「未練は確かに人の心を弱くする。だが、それを理由にするほどみっともない人間がお前だ。」

膨大な銃声を聞きつけた彼等が、仲間達が迫撃砲で堂々参戦する。

続々と砲火は増える、再生を越え、身を蝕む。

コウキも疲弊し、倒れかける。

その隙を狙った最後の災害爆縮。狙いは右半身、絶縁刀を持っている方、話している時に肩に乗せていた方。

対応は間に合わない・・・その筈だった。

だが、これは手抜きだ、対応力不足ではない、完全な罠だ。

十字の傷口が瞬間的に七つ刻まれた。

「誰だ!?」

コウキの答えは嘲笑を込めた、無知を嘲笑うものだった。

「・・・優しくて、死なねぇ奴だよ。」

走り去った跡があった、自分は彼女と並々ならぬ仲であり、信頼出来る相手だった。

彗星が一人・・・ここまで語ればこれ以上の説明は必要あるまい。

背後に立ち、霧を解き、剣と刀の姿を見せる。それは想定の真逆、攻撃こそ優れているが防御に劣る刀と、攻防一体の不変の剣。・・・医者としての能力に引っ張られた。

「人間の動きに注目し過ぎだ。倶利伽羅剣を肩に置いた時違和感を持たなかった確信した。」

諸刃作りの刀、自害をしない限りそんな馬鹿げた行動はしない筈だ。

倶利伽羅剣を先に、次に絶縁刀を叩き込む。

無遠慮で、不躾な刃。一直線に入る傍ら、背では地割れの様に連鎖的な崩壊を起こす。

完全勝利、自分は戦いに満足した。

横たわったそれを群れる渇望の根元に置き、取り込む準備をした。

「・・・無念だ。」

アランは息も絶え絶え、災害から見捨てられ、段々と意識が薄れるだろう。彼は根本が善人であり、排除されるのも時間の問題だったろう。

「ユウキの事だろう?」

怪我を縛り止血、ティアマトの血が混ざってはいるが止血は自力でも出来る、一分一秒も警戒を怠るなと優の言う事に従った。

「・・・ああ。」

彼から伝え聞ける機会、何かは理解していた。

「足りない、アルトリウスと戦うには足りないのだ・・・。産まぬ人間、群れる渇望の様な不死やそれに代用出来るものが無ければ・・・。」

「心配するな、ユウキは使わせねぇ。」

「・・・なら・・・良い。」

自分もこれを選択しなければならない、結果次第で犠牲者は計り知れないものとなる。今迄の失敗が霞む・・・寧ろ実感が無くて変わらない儘かもしれない。

「・・・だから、殺したのか。諦めたのか?」

「いや、諦めていない。」

顔を覆い、座った儘言った。

「今は・・・エマを助けれず、リーツィアを殺した自分を嫌いになっているだけだ。」

「・・・いつか、その話を見せてくれ。」

「・・・ああ。」

災害の戦いは終わった。

彼等の願いと夢の分ち合いも。



もう一方の戦いも終わりかけていた。

「全然万全じゃねぇよ・・・それでも戦わなきゃいかん時があるってものさ。」

「マノン辺り呼ぶと思ったが目論見外れだな。」

「彼奴を心配させねぇ様に啖呵切っただけだ阿呆。」

血の海が出来た、疲弊は回復しない、精神も何も摩耗しない。疲れ、倒れるまでの戦い。相手が動けなくなるまで斬り叩く戦いだ。

「死を知らない英雄、そんな者が強い筈が無い。」

後ろに仰け反る、前に倒れる事はなかったが背中が痛む。

「家族の死、他人の死、恋人の死、友人の死、善人の死・・・そして、自分の死。」

揺れながらも口答えは止めない、そして槍を真上から落とす。

「死を知らないお前は、英雄として劣る。」

サイケデリック・ロック。

破壊的な音、無秩序な騒音、しかし音楽としての形状は保っている。

これは人の体、その周波数すら破壊する。

体温の急激な上昇、血圧、心拍の上昇、水分の蒸発。

大嫌いだが、サイコーだ。

急激な出血と充血が起き、爆発しかけた箇所を抑える。

「・・・残念だが、お前の様な実力者相手に俺は手を抜かん。心臓を真っ先に潰されると知っている。そこに決め手を仕込む事も。」

これは悪足掻きだ、そう知った上でどちらも立ち向かう。アルトリウスが優勢なのは分かっていた。

「死なぬ事も、また死を理解する事だ。決死なお前、そして、決死な俺、どちらも生を続ける為に努力した存在だ。そこに何の違いも無い。強いて言うなら戦略や戦術に影響がある位だ。」

アルトリウスは思想戦において仕掛けた、それは驚愕を誘い、簡易的であるが為に意見を出し易いもの。思考を本格化させて脳のリソースを潰す狙いがあった。

「人類史は因果と反響だ。狭いキャンバスを塗り潰し合うものだ。どれの影響を最初に受けるかで決定されるものだ。」

「人類のバリエーションを塗り潰す?」

「人類は大体が調整される、それは相手が自分よりも賢いと確信し、敗北を認める等の行為によって起きる。・・・ある程度は許容出来るのさ。」

トラウマ等は無い、だが嫌な予感がする。

毛が逆立とうとし、血の気が引く。

「お前は俺の事を何も分かっちゃいない。」

「逆だ、顛末を分かっているからお前にそれは出来ないって言ってんだ。」

彼が言った。

「全人類に不老不死の災害、そして俺の記憶、使命、寿命、意志、それ全てを分割し内蔵式Aiにする、理論上最も平和を実現するものだ。」

・・・血の気が引いた、彼を理解していなかった。情熱的だが、狂信的だった。

「お前、死の重みを知らねぇだろ。死の重みは継承によって理解出来るものじゃない、自分が死んで初めて理解出来るものさ。」

パブロは槍を引き、そろそろ切り札の準備が出来る、カルナへ依頼した通り、保険を賭けておいて良かった。

「いや、何も知らないのはお前だ。生は劇的だ、その光を知らんなら全ては無駄だ。」

だが、それを覆す可能性が最もある男が前に存在する。この地球は彼の正義感と気紛れによって生かされている。いつでも壊せる、切り札は下手すればすぐに破壊されるだろう。

「死を重く見過ぎだから弱い、そう私は言った筈なんだがなぁ。」

・・・槍の姿勢も全て解いた、近接戦闘、音響も、全て解く。

全ては、一撃の為だ。

「『指弾』『レッド・ヘリング』」

レッド・ヘリング。直訳で赤のニシン、魚の缶詰の事だ。偽の事柄によって本物を隠すテクニックである。指弾を活用した高度な催眠術。疲弊すればする程効き易いが自分は慣らしたのと好みではないからと無意味なものと思ってしまう。

この曲が、切り札だ。

自分の知った気持ちを、知る限りの知識で彩った。

クラッシック音楽・・・もっと言うならカノンやG線上のアリアに近い。子守唄の様でありながらどこか不安を抱えている奇妙な曲だ。

・・・太陽フレアを曲にしたものや、アポカリティック・サウンドと同じ、核兵器の起こした音で作られた奇跡の曲だ。磁気の歪みがこれを産んだ。

意識を削げれば良いと思っていた。

だが、予想を上回った。

彼は口を噤んで、泣いていたのだ。

「・・・意外と可愛い顔してんじゃねーか。」

アルトリウスは1580年産まれ、ブリテン島ロンディニウム出身の人物だ。本名は無く、喧嘩で生き延び、何時しか戦争に踏み込んだ。負けはあった、何度も負けた。だが、彼は連れ戻されるまで撤退せず、立ち続けた。

・・・彼は傭兵として後の時代にも秘匿して生き続けた。彼が長となったのは人類の崩壊後であった。

そこからは現実時間四千年の虚無と一万年の栄光の人生であった。

最初の400年においては彼は人と言えないものだった。だが、栄光に至ってからは心が徐々に満たされ、善人であり、英雄であり、欲望や野心のある、情熱的で人間的な人間となった。

人らしく泣けて、苦しめる様になったのだ。

遂に自分の心は鈍り、太刀筋を乱した。

「・・・間に合った・・・。」

槍を刺し切り、音響を一気に放ち、心臓の30%を爆発させた。再生が鈍り、硬さも落ちた、骨を折って問題無い範囲に入った。

「・・・勝った!私はアルトリウスに初めて勝った!!」

首は落とさず、つい彼を抱き締める。

「離れろ馬鹿。」

「もう再生してんのかよ勝ったってのによぉ。」

「負けで良いさ、今度勝てば良い。」

「そうだな。」

再生の為に少し眠りかけると五月蝿い大笑いが響く。

「見込んだ甲斐があった!最高だ!群れる渇望が惚れ込んで力を託すのも納得出来る!」

「・・・だが、立てはしないだろう。」

肩を支えられ、別の戦場に向かう。

「優しいな、誰に似たんだか。」

「・・・俺には分からん。」

少し歩いた時に悲しげに言った。

「・・・私はコウキの女だ、失われるって分かっていてもこういう馬鹿な事をする女だ。」

彼女の顔を見直した時、笑えなかった。自分は同じ表情を見た事がある。だから聞き入れずに居るつもりだった。

「・・・このまま死なせてくれ。辛い思いはさせたくない。」

「・・・辛い・・・か。」

自分も分かっていた、こうなるだろう、こうするだろう。同じ様な奴だと。

手は離さず、腰を下ろした。そして寝かせて姿勢を楽にする。

「約束通りだ、俺の言った事キッチリ守れよ。」

「『災害は敵ではない、共生するものだ。』だろ?」

「・・・なんだ、覚えていたか。」

隣で寝転び、暫くは見ない空を存分に楽しむ。自分の余波で見える雲一つ無い空。勝利の証で、何よりも自分が好きなもの。

「・・・未来の話をする。お前は今より遥かに強く、立派らしい。」

「・・・そりゃあ、嬉しい話だ。」

顔も向けずに会話を始めると、自分の話をせずにくだらない事を言っていた。

「お前の求める『心優しき産まぬ人間』が現れるのは遥か未来だ。間違えて殺すなよ。」

その言葉は自分の生きる支えだった、覚悟も見透かされていた、殺すつもりは無かった、また生かされた。

「ああ。絶対だ。」

「満足した、また会おう。」

表情を締め、伸びをして、意識が薄れるのを我慢していた。

「コウキという人間に、いや、英雄の資質がある人間に言ってくれ。支える為の言葉だ。」

パブロという人間を理解していなかった、その事は後悔している。もっと自分は良くなれたとも思う。

「『人の不幸を背負う英雄であれ。』」

だが、緻密な関係の上で成立した奇跡であり、巡り逢いだそれを否定するつもりはない。

「『群れる渇望の愛される力は、不幸を背負う力だ。』」

段々と顔から笑みが無くなり、涙に満ちていく。

「『それは呪われた力ではない。』」

だが、言い切った。自分には出来ない事だ。・・・それを賞賛したい。一番の賞賛を示すべく、自分はそれを心にそっと仕舞う。

「『私が惚れたのは私自身の勝手だ。それを否定するつもりは一切無い!』」

英雄になれる方法、それを人間は渇望する。

もっと言うなら、簡単に英雄になれる方法だ。

数字を英雄とする、それが本質を覆い隠した。

素質があった、かくあるべしと運命は敷かれた、そして、最後に彼は導かれた。

「・・・コウキはどんな人間だった?」

「『優しくて馬鹿』だな。苦労するだろうな、お前みたいに。」

「よせよ、苦労なんて他の人間もしているだろう。」

目を逸らすと、そりゃ当たり前だが、お前は常識外れだと僅かに言っていた。

「・・・一回殺されなきゃ分からん事も多かった。部下の一人だったが、見る目が変わった。」

性格もな、なんて言えなかった。最初からそういう人間だった可能性もある。

「・・・英雄になっちまうんだな、本当に。」

「・・・ああ。」

「・・・コウキ・・・あと、ユウキ。そしてもう一人・・・櫛奈か。・・・守ってやってくれ。」

「自分の命を狙う奴でもか?」

「英雄には、それよりも多く英雄を作る奴が必要だ。極論英雄が不在でもそれは作れる。・・・だが、作る奴は必須だからな。」

「・・・自分が一番知っている。臣下、民だからな、千差万別で愉快な連中だって。」

「・・・群れる渇望は災害ではない、優れているが故に排除されただけ。・・・災害と言い続ければ本当に災害になってしまう。それだけは止めてくれ・・・。」

「・・・ああ。」

丁重に棺に入れ、アルバートの追加回収地点に置いて、残りの仕事を終わらせる準備をした。

「俺は未だ出会うべき人が数多く居る。生きるなら導き、死ぬなら看取る、俺だけが残れば良い。タイムリミットはあと二時間か。」

今日から地球は長い午後を迎える。

「・・・アルトリウス卿、準備は整いました。」

自分にとっては二度目の地獄、地球に降る隕石を破壊されない速度まで落とし、定着させる。自然と生態系の維持は全て任せ、自分は守る事に尽力する。

「・・・ああ。」

一万年、整えて生態系を安定させ、自然災害を落ち着かせる迄に必要な期間。自分はそれを抑えるべく、水と土の時間を遅延する。。

「ジュデッカ、地球全域に有効化、グリニッジ標準時間の更新時迄に準備。そして、最低一万年は解くな。」

地下に向かう程時間は遅くなる、自分の救助は如何なる手段であれ一万年以上必要だ。効果が解除されるまで待たなければいけない。

「アルバート、皆を任せた。」

「本業だからな、腕が鳴るよ。」

これから、長い午後と溶けた鉄の雨しか見ることは出来ない。そして、逃げ遅れた人間がいるかどうか分かりやしないが、居ないと信じて待つ一方で、居てくれたらどれだけ良いかとも思う。

孤独を忘れるべく、早く広げようと思った。

「貴方が・・・アルトリウスね。」

知らない声だ、時間に余裕があるから一度緩めよう。

「・・・誰だ?」

「レイチェル・タカハシ。」

自分の再生が遅く、目や耳は曖昧だった。だが、その自信が付きたての未熟さが分かってしまう。

「・・・そうか、名前自体は知らんが・・・きっと善人なんだろうな。」

自分もそうだった、精神的な成熟をした人物は軒並み死んでしまった。それを引き継ぐ為に生まれた継承、しかし若さを嫌う理由にはならない、そして同時に殺して良い理由にもならない、自分は守る事に対し向き合う必要がある、一筋縄ではいかないものだ。

「隕石が押し寄せる、アルバートが方舟であるカリフォルニアを使い、全員を乗せた。」

「貴方は?」

「残る。」

質を理解していた、先代のデメテルに近い女だ、ならばどの選択をするかも。自分は生かされている、男にも居るはいるが、女はこの手の助け方をしてくる。本当に大嫌いだ、恩を返すのに手間を掛けさせて来ては、辿り着いた所で受け取るつもりも無い。

「・・・知っていたさ。君が犠牲になって俺を生かす事も。」

「知っているなら、大人しくお願いね?」

「・・・ああ、今度はちゃんと助ける。」

だから少し気楽だった、これは幼い男女の約束の様なものだ。つい飾ってしまう会話なのだ。

「コウキを宜しくね、アルトリウス。」

人工的な風に髪を靡かせ、夜明けに涙を隠した笑みを見せる。自分は歩かずに見た、この距離は犠牲の距離、生きる気持ちが違うと分かる。

「これは色んな人類の記憶、貴方の今迄の道程を完成させる為の一つ。感情や思考を丸々写したものって事。一万年じゃ足りない位量だから安心して?」

「スキップメニューとか倍速再生とか出来る?」

「・・・。」

「おいお前フル再生させるつもりだろ!おい!」

少し笑ってしまった、彼女は何か目的があってこうしている。敵味方は分からない、だが、悪意は無い。これを止めた時、自分は取り返しのつかない事になると思って手を出さない。

「・・・誰だか知らんが、守り通すよ。」

ぶっきらぼうに笑いながら言った。

独り言を言い始めた。

炉心、それと災害を混ぜ合わせたもの。生きてはいない。標本みたいなものだ。

「災害を事前に分別する技術があった、類人猿は災害を駆逐し、己の種からは出ない様に出来た。だが、産まれていた間は地面に埋めて処理をした。」

人間の遺伝の中に混じった災害因子、それは攻撃性となった為、逆に犯罪者として摘発し易かった。

「・・・自分が時間を稼ぐ、数があまりにも多い。数体ですら世界の危機だ。だから、世界は失意に満ち溢れている。今はそれを僅かに凌ぐしかない。」

自分が必要と言われた事を軽率に行ってしまった。それは確かに貢献出来た。だが、間違いであるとも思っていた。

「俺は世界の富裕層を全員殺した。乗じた連中が倒れ、連鎖的に崩壊した。」

だから、代わりを果たす。

「ジュデッカ、最大まで出力を上げろ。」

俺は、理解していた。

パブロの手の鈍りは自分の心を傷付けた時のものだった。以前よりも確かに強かった、だが、それ以上に心が強くなっていた。

「・・・皆に、感謝を。」

改めてジュデッカの最大出力を行使し隕石を耐える程遅くする。その結果、自分は何も見えず、何も聞けず、そのまま四千年を耐える事になる。

「・・・それでも。」

彼は耐える覚悟をした。彼は美しい物を見た。

アルトリウスだけに戦力は絞られた。失う物は何も無い。期限は一万年、群れる渇望によって生み出された人類種だけが生き、災害と共生する世を作る。

・・・彼女の為には、これが最も良いのだ。

正体不明の災害、ラプラスの悪魔を有する存在。

それの有無で今後の情勢が大きく変わる。それだけが心残りだった。



別の場所で、一人取り残された人物が居た。・・・いや、寧ろ取り残した側だ。軽さ故に大きく吹っ飛ばされたのだ。自転の高速化に巻き込まれたのだろう。

「・・・コウキ?」

空気の変化に彼は勘付いた、群れる渇望はジュデッカを越えて真上に成長する。スピードはかなり遅いが、食虫植物の動きよりは速い。段々と鈍っているが、準備だから遅いのだろう。

「・・・んー?」

実際は違った、群れる渇望が吹っ飛ばされた彼等を受け止める事は出来なかったが治していた。

「良かった・・・。」

自分の知らない名前、神崎銓。それは自分の本来の物で、記憶が忘却されてそうなったらしい。

「・・・何時か、貴方に似合う良い人になれたらいいなぁ。」

その言葉を微かに聞き届け、文明の地を作る。

群れる渇望が変質を起こした。知らぬ他者に力を貸した。

一方と、もう一方。

天と地にそれぞれは分かたれた。

文明は徐々に埋められ、アルトリウスが発掘され、地上に戻し、昏睡から目を覚ます。

銓は埋められた、水の流れ込んだ地底に。コウキが目を覚ますまで待った。

・・・だが、一万年を超えて目覚めは無く、四千年の内に記憶を徐々に忘れていった。

神格としての仕事をし、縁切りを続ける。

高炉に哀れな屍を落とし、二度の不幸を味わう事が無い様に祈る。



優の嫌な予感は的中していた、一番戦いたくない奴とまで言っていた。位には強い奴だ。・・・寧ろ此方の為にカオルコを呼んだまである。

災害を払うのは、別の災害だった。

「期待外れも甚だしい、残念だがここで終わりだ。」

「裏切ったか!」

「裏切った?」

日の色をした髪、それより下を見る事は叶わない、だが、存在の根本は察した。

「(こいつじゃないけど黙っとこ。)」

「どうしたの?コウキ?」

「占い師は自称が付き物だ。」

「私とコウキは結婚する、予言ねこれ。」

「自称妻とでも言っておけ。」

向こう側は向こう側で抵抗虚しくアランは殺されていた。

「裏切ったというのは上の言葉だ、お前の様な下の存在は裏切ったとは言わん、損切りと言うのだ。」

彼女とは質が大分違う、災害として自分は理解出来る。

「魍魎の課題、散れ。」

言わずとも自分から正体を明かす、前に進んで嘲笑うように見下した。

「デヴィッド・スタンリー、災害が危険な物と認知される原因を作った産まぬ人間だ。」

闘、優、狂は間に合わない、一人では相手出来ない。倶利伽羅剣は問答無用で有効だが、それ以外に足りていない要素が多過ぎる。

「少し話をしよう、お前はアルトリウスがどの様な人間か知っているか?それ次第でお前を殺す。」

何の話か分からない、しかし剣を抜いて構え続ける、何も語らずに居ると、誠意と忠実さと受け取って話を再開する。

「アルトリウスは神秘を用いて産まぬ人間を殺せる様にした、陰陽思想の根幹が一つ、生贄の力。」

それは知っていた、次の話の最後の方に未知の部分があった。

「神に食われる事で、神の一部となる。それを誰でも使える様にした。そしてそれに選択性を持たせ、災害を薄める事さえした。」

自分はその意味を理解した、数と体積を逆算し、そうすれば足りる。必要最低限を満たすと。

「アルトリウスは産まぬ人間を十人手に入れるだろう。それで足りる筈だ。」

答え合わせと共に何かが迫っていた、速い、非常に速いのは確かだ。最速の不意打ち、産まぬ人間は攻撃手段が乏しい、それなら攻撃手段を誰かに任せてしまえば良い。

「・・・不味い。」

攻撃を通すには群れる渇望の方が合っている。

手持ちの武器で足りるか、不明だ。

・・・悪意の玉座の攻撃性を全部防御に割り当てた、そう言って過言ではない。火力も群れる渇望を破れる程度にはある。

片山伯耆流 居合剣術 応変八極 正眼

「倶利伽羅剣は消えた技術の結晶さ。正にな。」

どうせ再生する、だが、一応は問題無い。

「盾と剣、間違えない方が良いぞ。」

来る、奴が来る。そう確信して居合を解かない。

「好機!これを逃す事は出来ない!!」

居合を押し返された、打ち返された。

「首の皮一枚留めてギリギリやって来たぜ糞餓鬼!!」

銃、銃剣、刀、両脚をフル稼働させてギリギリ渡り合える。寧ろ妥協しているとも思えた。

「お前が騙されるまでキッチリやったさ、そして、アルトリウスが消耗し、パブロも不在。ハルノブは冷凍保存中!」

ジュデッカによる時間の振動及び凍結、対処不可になるまでそう長くない。

「タイムパラドクス耐性は俺も持ってるのさ、そして今からお前を失敗させる。リコを殺せない様にな。」

絶縁刀が追い付かない、倶利伽羅剣であれば山勘でギリギリ対処出来る。

「俺の足を舐めるなよ!!」

地球の時点を足で加速させたのだ。彗星の最大出力、文明の全ては破壊される。だが、時代は進む。彗星の最大値。

地球の自転の17倍速で回された場合、ほぼ全てが遠心力で投げ飛ばされる。人間体に戻ったのが不味かったか・・・。

焼き直しだ、彼女は警戒して追い付いた。

「脚曲がりか!」

「心は曲がらず!舐めるなぁ!!」

優、闘、狂もすぐに追い付くだろうが、今は彼女と二人で何とか渡り合えるだろう。

「・・・素でここまでの速度・・・?」

自分の予想を超え、彼女は剣を入れ続けた。若しかしたら彼女の改造は体が耐えれないから・・・という意味もあるのかもしれない。

自分を手本に見様見真似で剣を打ち落とす。

「群れる渇望だ、群れる渇望は相互的、愛し愛される関係程強く導く。」

彼女が自慢げに言う、ハイテンションだとリミッターを外して自分に深手を負わせた・・・累積ダメージなら彼女が一番と言える。

「思考と行動のラグが無い、矢継ぎ早に繰り返すのが特技。技自体も質が良い。・・・弱点はある、いや、未熟な部分か。」

自分はよく分かる、アルトリウスに圧倒されたの彼が丁寧な戦い以外に、野性的な戦いも見せた所があった。丁寧故に対応出来る。自分はどの技も知っている。目的が分かってしまう。

「先の先を考える相手に弱い、引き返す事が出来ない。」

引き返す事が出来ない、全て未来に塗り替えられていく中、居合を決行した。

「これで脚は切った。お前自身、その感覚自体は作れていない。思考がまんまだ。」

カオルコのブラフ、そして自分の本命。肉の加工機械の様な合わせ技であった。半分は切ったが、落ちてはいない。

「技の質が良い、評価可能なもの。つまり既存の体系にあるものだ。暴力的なスペックで別の体系作るのが正解だった。他者に頼り、それを怠った。その結果がこの甘さだ。」

攻撃するよりも、リコに頼るしかない。そう思って脚を動かす。

「ハイリスクを信用出来ない弱さがあった。」

そう結論付け、

「いや、お前を殺せば勝ちだ。」

「やってみろ、勝負は既に決してるのにな。」

警戒していた、対策するのは難しいと断念した。作戦はあるが、どれも未知数。決行して成功すれば何とか生き延びる事が出来る・・・位か。群れる渇望として生き長らえた身であるから確率としては充分過ぎる程だ。

「・・・逆だ、最初っから生かす作戦にしておいた。だからお前のその行動は計画外だが都合が良い、利用させてもらう。」

自信満々、威風堂々と寧ろ挑発する。

「一万四千年待つのも苦ではないが仕事はさっさと終わらせたい。」

記憶注射を用いて残りは処理する。リコ・ルドルフの仕事を増やしまくって影の英雄に仕立て上げる。しかし味方には出来ん。保険を掛けている可能性が高い。

・・・これから殺す、今は殺さない。

「これで十分か、殺すのは俺じゃない。俺の作戦だ。」

クソみたいに完璧で、嫌がらせに満ちた陰湿な作戦。吐き気がする程卑怯だが、つい笑ってしまう。

「・・・あ?・・・。」

「誰だかは存じませんが、殺させていただきます。」

リコ・ルドルフは彗星を刺した。全ては丁寧に片付けられた。

「予備の手を使うまでも無かったな。」

リコ・ルドルフはコウキに頭を下げ、目の前にいる走るだけで時間を捻じ曲げる存在を見下す。

・・・記憶を消し、擦り付けた。奥の手は多くするに越したことはない。

「・・・よし、記憶の処理とタイムリープへの妨害は済んだ。生存次第始末する。」

完璧に決まった、喜んでカオルコを抱き締めた所二人して腰をやってしまった。

「こういうのがしたかった・・・だろう?」

「ええ、そうね。」

五人+一人、帰還した。タイムパラドクス耐性の影響で自分達はあまり変化が無い。全て組み込まれていた様に物語は終わった。

さぁ、最後はリコ・ルドルフが記憶を取り戻す前に殺し切ろう。

正しさは兎も角、リーツィアの為に復讐する。王国の禍根を全て消し去るのだ。

じゃあ簡単に倶利伽羅剣のメカニズムを解説しましょう。

熱力学第二法則を先ず用意してください。

エントロピー増大=時間の方向性

それをエントロピーが増大しないという状況にします。

それを実施すると確率が分かれなくなり、一度目の試行と全て同じ結果になる状況が誕生します。

エントロピーが増大・縮小をせず時間が振動するので炎が維持され、斬れ味に再現性のある技術が誕生します。

正しく握るのは難しく、相が違う箇所が持ち手となり、そこを握ると剣の重さが己に牙を剥く。再現の為に実用可能な範囲まで重量を上げた武器である。

地球の構造をベースにした時間の遅れを用いるジュデッカと物質の相を利用して斬れ味を底上げする倶利伽羅剣は似通った剣と言えよう。



陽より早しの簡単な倒し方講座

彼はマッハ3なのでICBM打ち込めば余裕で死にます。ICBMはマッハ17位なので普通に届きます。

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