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継承物語  作者: 伊阪 証
ループマン・ウォーキング

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46/74

動揺

調整で八話使って終わらせるのを残り五話に省略します。

一話でお膳立て、三話でアルトリウスと黄金錆殺し戦、残り一話でリコ・ルドルフ戦です。


コウキの戦い、災害の存在。それには武器が必要だ。鉄と炭、鉄分の調整が出来るので純度100%にも出来る。・・・しかしその場合ATPを消費した方が効率が良い、保存したエネルギーよりも外部にあるものの方が都合が良いので、そちらにした。

「リーツィアの遺体を使う。」

彼は背負った彼女の紐を解く。

「この遺体を燃やし槍を作る。一日、良いか?」

このまま放置すれば、災害へ戻ってしまう。だから殺せと・・・自分は彼女から伝えられた。災害としての彼女の記憶から、明確に指示されたものだ。

「・・・気になるな、見させてくれ。」

丁重に寝かした後、火を付ける。祈る間は無い。

初歩は全てエマに教わった。技術は実用的なラインまで引き上げられた。

「・・・片脚、思い切り斬ってくれ、直ぐに再生するから引き剥がせ。」

火を入れる準備は終えた。脚は直ぐに治るがこの痛みにも慣れてきた。

「この脚を打つ、そして、遺体を火に入れる。」

コウキは覚悟をした。英雄としての誓いを。

「度々あるのさ、火に人を投げ入れると良い刀が出来るって。」

覚悟と希望、勝利の道。

「干将、彼は妻を火に入れ、刀を作り上げた。」

苦難は続く、だが、最早面白くあった。自分は彼女の死以降、全てがどうでもよかった。

「俺の日は続く、槍を作る為に一身を捧げる。」

彼は結局、一人だった。一人の方が良かった。

自分に迫れる人間がおらず、その結果がこれだった。高過ぎるが故に同じ強さの者は敵となるのだ。

「・・・懺悔し、打ち続け、治し続ける。」

パブロというアルトリウスを狙う者。偶然味方となった人を通して未熟と幸運を知った。同時に世界の広さと無謀さを知った。

「・・・人間を捧げ、作った代物だ。」

だから共に居た幸運を今は使う、過去と決別し、先に進む。自分には都合の良過ぎるあの世界を取り戻す為に。

「誓約を破り続けなければ自分は英雄になれないと知ってしまった。そして、この世界は天国でないという事を。」

一日が経過し、打ち続ける。硬さの限界を突き詰め、違和感が少しでもあればやり直す。

「災害の時には分からなかった、無条件に他者を幸せにするこれでは、見えなかった世界を見たのだ。

偶然、質の良いものが出来た。これは向こうに渡そう。

「スケールが常に調整されているだけで、全ての陣営がある程度の協力をし、滅亡を防ぐ。」

ヒトは信用出来ない、いつだって奴らは裏切ってくる。

「人類の進化は必然だ、俺が居なくても起きる。だが、ペースが緩やか故に下克上が出来る。それで相手を殺すのさ。」

期待も、予想も。

「国内の協力が甘く、道徳も未熟、統率も取れなければ核のスイッチを押す覚悟すらない。戦わなかった結果滅んだ国が日本だ。」

そして、同族も。

「連鎖的な滅び、アメリカは世界の支配者を漸く捨て、決定力を失った。それが最大であろう。金融の視点で見ればもっと悲惨だろう。そして、国家以外が権力を握り始めた時、核兵器は使用された。企業とテロリスト組織だけが残った。」

歴史はこうして終わった、有史は終わり、記憶だけが知れる時代となる。

「インターネットは成立しなくなった、我々は直接の関係でしか信用出来なくなった。」

その言葉に、彼女は言った。

「心配すんな、私達だけで頑張れば足りる。」

それは、自分を疑問視する自分にとってはありがたい言葉だった。

「・・・そうだな。」

顔を向けずに言い切り、槍を渡した。



少し昔話をしよう。

西暦を把握しきれなくなり、新暦を採用した。それが一万年以上前の出来事。

コルネウス・ユリウス・カストゥス、彼の父の名である。とはいえ正確な父母では無い、彼は父母を知らぬ儘生まれ落ちた頃から戦い続け、西暦も新暦も数えていた。この頃に彼は数百年生き、それでいてまだ生物の仕組みを経験則でしか知らない人間だった。

結末は知っての通り、父も母も食らったという話だが、それは実際と大きく異なる。そんな事知ってる人間の記憶が削除されていない事が衝撃だ。記憶は段々棄却されるもの、遺伝で捨てられるものがあるのと同じだ。

アルトリウスは地下から掘り出された。公爵や王の数人は知っていたらしい。しかし救出には効果が弱まる時期でなければ自分達も死のリスクがあった。

ほぼ廃人となった彼に、人間としての生き方が出来るまで教え、共に生きた。

コルネウス、帝国左大臣。皇帝に次ぐ権力者。公爵や王、騎士団長など独立した勢力でない、つまりは腹心であった。母は右大臣、名をディアーナ・クラウディウス・サリエリ。夫婦というよりは、気の合う友人。

子供は居なかった、興味が無かった。アルトリウスを養子として受け取り、精神を健常に戻す努力をしたのだ。父は私達を殺した冷酷な人間と刻んでくれ、四人の公よ・・・と遺言を残した。

自分は四千年の苦痛をまた味わう、これが支えだった。

途中で声が掛かった。

「準備は出来た、こっちはスイングバイするまで維持するが加勢は必要か?」

「ああ、健闘を祈るよ。」

片や宇宙、片や地下。

四千人を収容した一都市サイズの宇宙船、その片方。

「自動操縦で組んであるからもう片方も直に飛ぶ。材料も全部調達してくれたからな。群れる渇望に感謝だ。」

彼は戦いにほぼストック無しで挑む、人間換算で100人のクローン、寿命も短いだろう。

「・・・パブロの阻止と、災害からアイテムを奪取する。」

殿は自分一人、カルナとマノン、ハルノブは次に乗せる。パブロも加えるべきだが、いかんせん奴は言う事を聞かない。何らかの目的がある。殺害を互いに認め合い、ただし人類の存続と維持に関しては協力するという協定がある。

継承による暴走か、或いは、警告か。

彼は永劫回帰をしていた。超人の周期性、同じ事であると認識し、深く向き合う一瞬があった。

「・・・息子はそれでしか体裁を保てぬ善人だ。嘘を言って、悔やんでしか繕えないカリスマしかない、善人なのだ。」

数分の話で、同じ言葉で、永遠にしがみついて来る。

「愛しい息子アルトリウス、辛い旅路かもしれないが、どうか健やかにあってくれ。」

群れる渇望の不在が起こした継承不良、記憶の喪失や寿命の消耗、使命に関しては恩恵が多かった。使命の目的だけはイマイチ不明だった、誰のを見ても理解出来なかった。

「・・・ローガン、私達の記憶は分割し王の支えとなれ、そして、棺桶の子が目覚めるその日まで待っていてくれ。」

その思い出は苦痛だ。

「それまでの間は偽物の王で誤魔化し、それ以降は彼女に託せ。」

その思い出は至福だ。

「次はかような病に負けじと願う。未熟な己を恥じたい。達者でな、お前達。」

その思い出は補充だ。

「アルトリウス・・・先に逝ってすまない。お前を辛くさせてしまう。全て仕方のない事だ。」

その思い出は努力だ。

「・・・この大馬鹿者が・・・せめて罵倒・・・。」

その思い出は唯一だ。

「・・・上手く心すら騙せたなら、それ程嬉しいものはない。」

『思考とは非アルゴリズム的なものであり、無意識こそアルゴリズム的なものである。』

ロジャー・ペンローズ著『皇帝の新しい心』より。

これが事実だとすれば、自分の母は自分で望んで、本来存在するアルゴリズムを無視して選択した。

「だから協力しなかった。分かるだろう?カルナ。」

「まぁ、納得は出来た。」

マノンとカルナは後で接触を果たしていた。王ではないが故のフットワークの軽さ、核戦争の中心地であるのにも関わらず千人以上の文明を保つ名手、自分抜きでもかなり優秀だ。

「目が死んでいた、敵になった以上の恐怖だよ。」

茶を飲む手が酷く震えていたが、ストックホルム症候群に近い何かがあった。

「・・・あれに手を出そうとは到底思えない。心苦しい。」

だから、手を出さないと。



戦いの火蓋は徐々に捲れ上がる。

夢か意地か、因縁が解けていく。

「・・・良し、これで後は逆向きに別れるだけだ。問題無いな。」

「ああ。」

「・・・じゃあ、行くぞ。」

コウキは同じく災害、パブロは同じく人間へ挑む。

彼等の戦いは別の場所で、別の目的で始まった。



アルトリウスと見え、彼女は理解した。

「・・・マノンが手を貸さねぇ訳だ。そりゃ嫌だな。」

槍を後ろに、そして走り出す。

「・・・コウキから話を聞いといて良かったな、ありゃ完全に別物だ。」

帝国から女傑と英雄が消えた。その時、戦国時代は始まった。

アルトリウスはジュデッカの影響で時間が正しく戻っていない・・・引きが悪かったか、或いは、奴自身が本能的に引き寄せたか。

彼は戦国時代、父と母を食い、英雄として完成したと言われた時。

精神を摩耗し、一番暴力的で、大国と言える大国を軒並み潰した。そんな時期だ。タイムパラドクス耐性自体は無い、精神が不安定な状態で送っているのだ。

「・・・逆に攻撃的じゃねーかバカがよ。」

豪速の槍、遅れて風切り音が聞こえ、色が若干変わる。

攻撃は通用する、しかし膨大な強さ、傷から血一つ出ない。届かない。

戦国に凡ゆる猛者が居た、しかし彼を越える者はいなかった。

彼はある災害を殺す為の決戦兵器。その目的を聞けば今の強さすら甘いと言える程の大義だ。

『破滅の日照』の殺害。一秒以内でシリウスに匹敵する恒星を破壊するエネルギーと攻撃手段を持っている。

ここは山が連なる場所だった、そしてアルトリウスは到着して半日も経っていない。

全てその剣で切り裂いた。山も川も、そこの文明の破片も。

それがアルトリウスの力だ。

「・・・かなり威力は上がっている。」

だが、パブロは群れる渇望に接近し続けた。

その恩恵は凄まじい、元がかなりの猛者、振れ幅も大きい。

恒星を破壊する存在、それが怒りで我を忘れて普段と違う攻撃性を見せている状態。

群れる渇望と共に居た、世界最高峰の英雄。半分以下の強さでも災害を赤子の様に扱う実力者。

勝者以前に、周囲に生き残る存在はいるのだろうか。

棒から槍へ持ち替えた。折れず曲がらずの鋼鉄製。

その剣が振るわれた時、軽く受けて返し切った。

刺突を狙い四発、しかしそれは剣で円を描き振り払われる。

「対等だ、今までで最高のポテンシャル、心臓が爆音を奏でている。」

あのヘビィメタルには心を打たれた。

「対等・・・か。」

その時、アルトリウスは惑星を蹴って動かした。

全人類が一瞬、遠心力で浮いた。

「・・・!?」

・・・必要な遠心力、八十四分に地球を一周回転させる。地球の自転速度、その17倍。

「笑わせるな、一撃すら遠い。」

普段なら、絶対しない攻撃。

第三者の被害を抑える彼にしては珍しい、強引な攻撃だ。

「・・・じゃあこっちも出力全開、見せてやるよ。」

爆心、濁血、伝導。ヒトの究極と別の究極。

人であって人でなし。

「・・・MTか。」

「アンティーク野郎がよく分かったな。」

「いや、お前対策は苦労する。だから妥協はしない。」

そして呟いた。

「・・・来るぞ。」

一部の凍結、大気圧の減少。引いた所で急に気温は逆転した。

「オゾン層の破壊と重力の軽減、新たな文明が築かれる日があるならこの程度は些細なものだ。」

紫外線、それだけじゃない。スペースバブルだ。それに色素を混ぜて反射している。低コストで鏡を再現し、それを掃射しているのだ。

「空気の希薄と凍結はお前にとっての天敵だ。」

自転が遅くなっている、気温の斑が存在する。

「お前の弱点は光だ、速度において絶対的に不利を被る。」

「・・・不利か。」

小細工に頼るとは、らしくない。しかし時間経過次第で不味い事になる。耐久力が高い上にジリ貧を強いているのだ。

「物理学のある問答だ。」

息を吐いて教え、そして戦いを改めて見直す。

「光は粒である、ニュートンの主張。・・・それに対し、光は波である、ホイヘンスの主張。」

パブロの音は槍を通して地を這い、天を濁した。

「光は実験を介さなければ粒にしか見えない、同時に弱点になりにくい。」

そして、右に構える。無音の音が彼を蝕む。身体能力、特に速度においては対等となった。神経的な乱れが止まり、比較的安定して戦える。

「波として見ると、音の方が優秀だ。光は熱を代表とする様々な要素に分解してようやく機能する。効果として乏しいのさ。マクロの世界なら尚更な。」

遅いが故に領域を支配する、攻撃が実質的に防御となり、選択肢を奪う。

「駆逐艦の開発が一時期盛んだった。しかし技術の向上と共に巨艦巨砲主義へ、それも過剰だったからと終わったがな。だが駆逐艦に返り咲きは無かった。」

本人が音響の性質を最も理解し、計算し切って殴りに来る。一発、と侮ったら命の終わり。ブレが全てを奪っていくのだ。

「波は混ざり、溶け込む。しかし音は微小でも価値がある。」

脳震盪を強制的に起こし、平衡感覚はほぼゼロになる。それこそ音の究極であり、無音で忍び寄る恐怖である。その名を・・・。

「『鬱蝉』」

その音は世界を揺るがすものだった、物理的に揺れ、地震として機能し、崩れ、時に割れる。



地球の異様な回転が起きた時、驚く事無くコウキは適応し、相手の心臓を射抜いた。

異常性・・・災害は防御等を備えているが、防御力と再生力に全振りの産まぬ人間や群れる渇望は攻撃性をほぼ全て捨てて成立する。柔軟性があり、敢えて被弾し克服する。

刀の様な力を加えて動くものよりも溶岩等触れている間永続的なスリップダメージを受けるものへ強く出られる。

攻撃性と防御性は反比例する。

・・・この災害は、極めて攻撃性が高い。悪意の玉座を上回るものだ、だが、それといったものはない。

その災害は異常だ、その災害は奇妙だ。

「高度な幻覚か。」

五感が狂う、そんな代物。

幻覚は修復に時間が掛かる。認知が難しい、その為治癒のトリガーが稼働しない。災害として練度が高く、意識的に治癒を調整する実力者がそれを越えられる。

治癒した所で記憶に変化は無い、つまり修正した所で問題は増えていくのだ。

戦術を変える。幻覚を無かった事にする。

足を強く叩き付ける、そして地面を砕く。

「・・・ピンポイントに絞っていたか。」

感覚以外に変化したものは特に無かった。物理法則に乱れはない。

「倶利伽羅剣。」

理論上、不死やアルトリウスを断てる剣。

抜刀すれば迦楼羅炎がたちまち上り、殺しの為に燃え始める。

裁きの時間だ、この剣の強さは強敵にこそ発揮される。一言で表せば、一振が永続的に同じ・・・どれを相手に切っても同じ様な切れ方をする剣なのだ。重いという欠点故、当てるのは難しい。むしろ固定して相手を動かす形になるだろう。

相手の全容が見えていない、直感だけで差し切ったが災害相手で通じているとは思っていない。攻撃が乏しく防御性能が高い方だと予想出来るからだ。

物理にブレがない所を非幻覚とし、怪しい所を幻覚とする。・・・だが、緻密ではない、分かり易いが数が多い。戦い慣れているやり方だ。

相手の顔も知らない、だが、生命反応がある。

攻撃理由には十分、攻勢を続ける。

「『悪辣の極意』」

声とは、人の警戒を最も誘える行動である。

咆哮だと人は怯え、嬌声だと人は気を抜く。

声、スタンダードなそれは情報を大して与えない。

論理的にしてやっとそれは価値があるものになる。

「『偽りの王者』」

群れる渇望は言葉を用いて全身に行き渡らせる必要がある。伝達が難しく、慣れていないものは合図を用いて行う。

これは、三段階で組まれた技術。悪意の玉座を更にカスタマイズしたものである。

「『夜叉の闊歩』」

全て、夜叉に変えた。夜叉の本質を知っている彼は、その耐久力を知っている。魔術を使い、ダメージを無くす。しかし脳がほぼ停止している為同時攻撃に弱い。延々と失血し、青ざめた怪物として殺しに来る。

悪意の玉座は人を操れない、しかし相手を認知している為、基本的に愛情という関係で結ばれ害意を持たれないのだ。

群れる渇望は愛情という関係性を持たないが、進化でその様な事は起きない。しかし成長の為に仲間割れを起こす可能性があり、安全ではない。

夜叉は彼にとって最も都合のいい形態だ。

爆散、夜叉の硬い破片を叩く音で散らし、全方位から覆い被さる。

群れる渇望には、準備が必須だ。

「『輝ける七つの海』」

これは擬似的に体内で海を生成するものである。ハビタブルゾーンの数を示し、それが宇宙に七つ存在すると。人類は零落的な矮小である。だからこそ価値がある。

何が来る、何が起きる。

出てきた、人の形をした・・・。

影は捲れ、人となる。そして・・・。

「・・・アラン!?」

『構うな!』

「分かっている!!」

森の木々を薙ぎ倒し、血を凝固させた槍で叩っ切る。

ウイルスと細胞に施した進化、進化=生存特化、逆に言えば殺傷力は乏しくなり、感染力が増える。しかし同時に個体数も増える。数十万種類存在するウイルス以上の存在が同時多発的に襲ってくる。

進化は強制される、そして内側から食い潰す。

「・・・固い。」

悪意の玉座は防御性能が常人並・・・攻撃性が強く、そして自身の攻撃に対する耐性としては低酸素状態においてもパフォーマンスを維持する程度しかない。・・・その逆、内側から食い破るにも相手が硬過ぎる。

「戦い方をスペイン流剣術に切り替える、切断ではなく打撃主体にする。」

『・・・待て、先ずは分析だ。防御メインにしろ。』

優の指示通りに防御メインにする。

・・・真正面からそれは来た。

一度に心臓ギリギリまで届く不可視の光線。

光以外何もそれに届かなかった、その事実が目の痺れの言葉だった。

防御性能を丸ごと攻撃に割り振った、盾を用いて殴った、鎧を来て突進した。それと同じ事を行ったのだ。

「『胞撃』」

強さとは、完璧か、究極かの二択である。

であるとすればこの対決は攻防ハイスペックの完璧と言える災害と、進化により道を極め戦い続けた災害。才能と努力とも言える構図となったのだ。

だが、相手は例外だった。

だが、全ては予想外が打ち砕くのだ。

相手は複数の災害を取り込んで尚変化しない、二次災害に変態しない生物だった。二次災害への条件は指定の災害を取り込み、変化した方が強ければ其方になる。・・・相手は一時災害の儘の方が強い。

そして、それ以上に災害を食っている。

質が違う、全てが違う弾丸。災害の制御をほぼ完璧にこなした攻撃。被弾の度に体が動きにくくなる。

二次災害は継承を用いて発生する、言うなれば、自分の罪だ。

被弾は構わずに前に出る、足を撃ち抜かれようと前に、腕を砕かれようと掴む。



災害は基本的に進化を続ける。傾向に名称があり、それが災害の識別名だ。進化途上が別物であるケースも多い。

災害は進化する、逆に生存する為に何となく同じ傾向を有してしまう、故に進化しない事は逆に強力である事を維持出来るのだ。二次災害となる事でリセットするという手もある。

基本的に自我はどれか一人、他は排除される。選定条件は仮想通貨の様な『強い経歴』だ。それは災害になってからも続き、新しく自我を仕入れる事も出来る、心が折れた時の保険となる。

あの時、雨としてアランに侵入、そして災害となった。

元々人間だった黄金錆殺しは、分解され雲の中氷漬けとなり、一万年さまよった。何をされているかも分からず、目と脳は別々に置かれ、雲の中であった。全ての神経が反射的に理解していた、氷を解かせば死ぬと。血肉は再生を保ち、雨として降り続ける。それが災害として残り続けた。

アランは何かを予感していた。雲の向こうにいる竜王だ。それを確認するべく撃ち続け、それが被弾した。偶然であった。

・・・心臓を落とし、それがアランを貫いた。

雨よりも早く、空気抵抗が無いかの様に落下し、音もせず貫いたのだ。

血肉は危険こそあれ、滅多に起きず、口に含まなければ問題は無いし、極論水で無害になるまで薄める事が出来る。・・・それでも花粉症の様に発生してしまう事もあるが、例としては存在しない。

見積もりが甘かった、天空から高速で飛来し分解された数だけ災害を産む可能性がある。

・・・それが、彼の経緯だ。

既に攻撃されている、確実に敵だ。複数の災害を有しているなら尚更討った方が良い、それは確実に敵である。あくまで人類に対し温厚な種類があるだけで人類を必要とするものではない、それは自分でも理解している。だが、人類を殺す災害は強迫観念に駆られて殺しに来る。クシナがどうやって抑えているかも分からないが、感情の面で明らかな負けが存在する。

そこに悲しむべき理由は無い、惜しむべき理由は無い。あったとしても、それは今は無しと伏せるべきだ。

「誰だ、お前。」

「見れば分かるだろう。」

「だからこそ誰か聞いている。信用ならんからな。」

剣一つで狙いつつ、しかし当たらない、当たっても修復される。倶利伽羅剣の弱点・・・武器として強力だが、武器の想定外である切断の修復には弱い。防具等には強い。災害をここまで容易く切れるのは評価出来るが、相手は全てにおいてそれを上回っている。

「災害同士の叩き合いでお前はそんな未練がましい事を言うのか?」

「未練がましいとか、女々しいとか、確かにその通りだ。その通りさ。」

コウキはそれでも切り続ける。

殺す道を選んだ、自分は歪んだのだ。

「本来の身体の持ち主に用がある、お前は邪魔だ。」

災害は内臓構造が違う、そして致命的な弱点が無い。首から上を切っても会話は出来る。小さくバラバラにしても機能はある程度保たれる。流石にドックフード並に小さくされたら無理だが。

災害との戦いで最も重要なのは精神だ、不意打ち、重圧、それ等が齎す諦めの感情。そうすれば災害は持ち主を見限る。

「『輝ける七つの海』!」

コウキは再び群れる渇望を使用する、次は範囲を広げ炭素に切り替える。二酸化炭素を生成し、濃度を上げ、徐々に攻める。低酸素空間での戦いなら此方の方が上、酸素濃度が少ない中でも回せる程度に訓練している。群れる渇望は量子以上であれば動かせる。ミクロ世界の法則をマクロ世界に持ち込める程度に緻密な状態で、実行可能だ。

「水素か。」

「いや、もっと先だ。」

水素が爆発を起こした、その爆発は脅威にならず、平然と耐えられる。

「窒素酸化物、自然にも発生する有毒ガス。工業で発生する。少量でも危険だが、体内で生成して打ち込んだ。」

これはロタールの技、毒を主に使うと言いながら愛用する戦術は酸素を奪って行動をさせない事だった。自分の逃げ戦術と相性が悪かった理由が分かる。

精神、それ即ち脳の回転。

それを破壊し、段々と機能を奪う。

・・・この時点で精神を破壊した、そして主導権は変わり・・・アランか、他の災害に変更される。

剣を収めた、その甘えを許さず、手が体を貫く。

「・・・なっ・・・。」

ヘカテーが一番驚いていた、脳の一部が硬直、それをすぐに引き戻す。

アランだ、ヘカテーはアランだと確信した上で、攻撃を理解出来なかった。

間に合わなければ、パブロが死ぬ。戦いの余興に自分は苦しめられている。そんな事があっていいものか。

殺意は恋よりも相手を意識する。コウキが人間向ける感情の一切が宿らない目つきで睨む。奮起し立ち上がったのだ。

精神はより頑強に、錯乱混じりに彼を襲う。

そして剣を引き抜き、振り下ろして砂埃が舞い上がる。

「・・・もう結構だ。容赦は要らねぇな。」

先までは妥協案しか使わなかったが、以降は全て殺す為の戦術。パブロの事は忘れ、確実に仕留める。

生かす必要は無い、相手の首を落とすまで剣を振るい続けよう。コウキのポテンシャルは、公爵を超えた王、その本来の姿であり、世界でそれを上回るのは数少ない。

「『輝ける七つの海』」

そして、彼は元のラインに戻して操作を行う。腕と首を自ら切り、そしてタンパク質操作のギリギリを攻める。

「『結逸(ゆいいつ)』」

首が噛みつき、腕が組みかかる。本体の再生は終わり、そして剣を元の向きへ戻す。

「『侵徴捌墨(おかめはちもく)』」

嘗て様々な拷問を行ったその身体には、様々な危険物が入っていた。死体ではあるが、それは災害として形を留め続けた。

精神的動揺を重ねる、一部を飛ばし、爆散させ、更に毒物を散蒔く。

「・・・本当に不愉快だ。」

その意見は、互いに一致していたのだ。

「・・・狭い、もっと広い場所でやろうじゃないか。」

敵の真下から爆発が起き、散らされると同時に半身を吹っ飛ばされる。すぐさま焼けるそれを修復しつつ、内臓の傷を抑える為の筋肉の壁と人の肌、その二重で覆い隠すのには時間が掛かった。

私は髪と爪を入れた説の方を支持してるから割とイヤイヤ書いてる。


コウキ「生えるなら何回切られてもいいか。」

エリ「ダメに決まってんだろうがしばくぞ。」


MTはあるグループを略した名前です。

別に本編絡まねぇけど。でも代用が効かんかった。

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