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継承物語  作者: 伊阪 証
王国騒乱

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31/74

無慈悲な英雄

AC三日で終わった。逆に言えば72時間かかった。

魔術とは、エネルギーの錬金術である。用意と結果の過程をカットし、そのエネルギーを使用可能とする。計算して自分に引っ張って来て、射出する。複雑ではあるが、発電機に近い。現象を起こし、現象から都合の良いリソースに変換する物を動かし、新たな現象に作り替える。それを魔術では身体をコンバーターにして行うという訳だ。

爆破物を発破、そして魔術を行使する。爆炎は対象にノータイムで突っ込めるのだ。

帝国の脳筋共は気付かれる前にぶっ殺すので活躍しないというのもあるが、それはそれとしてリスキーだ。夜叉の様な低性能コンピューターを搭載した人間が観測手として必要なのでは、とも考えている。

「・・・相手の寿命をカットするには制限がある、か。」

生産に流用していた部分が些か不明であった。それが一番最初の察の疑問、条約で定められた兵器の様に一見使えるが、『何故欠ける?』という疑問が出てきた。ナーフされたとか、そういう運営的な思想が現実にある筈がない。

縛られている・・・だろうな。

・・・死んだ人間からは・・・可能?

夜叉のコンピューター不適合者・・・とかか?

最も妥当と言える部分はそれ、しかし検証は出来ない。多分そうなる、で案を出すしかない。

直ぐに優から連絡が届いた、考えている途中だが、緊急と付与されている辺りで即座に開いた。それ即ち先の内容である。

「帝国内の裏切り者・・・?」

『後で狂とすり替えてその間十分程度で確認する。』

「・・・ああ。功績に加えれる様に努力する。」

「何かあったの?」

「アランの武器を使いこなしている人物が居た。」

「・・・本当?あの武器、仕組みはよく分からないけど継承しない限り再現性も無さそうなのよね。」

『医療の記録も、設計の記憶も総合するとどっちも王国が持ってる。』

「・・・どうするべきか・・・だな。」

以上で一旦締めた、向こうは向こうで戦闘の合間にやっているらしく、心配無用と支持され、さっきの光は隠し芸だと明かしていた。

自分は裏切りという言葉に関して、何となく引っ掛かった。答えは出ない儘。

「・・・あ。」

記憶に埋もれていたリーツィアが紐解かれる。彼女の記憶が開かれ、その中には様々なものがあった。

半分の記憶であった、自分が見殺しに、走ってその何処かで発生した出血が死の起因だった。その結果、彼女を殺していた。必要があってもう片方に渡していると彼女は記憶に残していた。

彼女の立場と、家庭内での差別。とはいえ彼女は優秀、物心が満ち足りた頃には逃げ、最低限しか顔を見せなくした。脅し材料を持ち、悪女と揶揄されていたが、強かだ、としか自分は思えなかった。

彼女が本題として見せたのは人々であった。

自分は最初、王国は差別的なイメージを持っていたが、祝祭の時はそう思わなかった。リーツィアはそれ以外の時の差別等を緻密に見て、上下と差別を見ていた。

半数以下だ、王国民の半数以下しか差別に協力・加担していない。それでも多いとは思うが、良心はそれ以上に多かった。

一握りではあるが、守る為に追い出すというのが多々散見され、差別されたから戦うというのがそれを隠したものではないか、そう苦痛になる。

錯乱した記憶を、彼女が直していく。それで少しはマシになった。

「(誰かの為・・・か。)」

自分が生きるのに精一杯だった昔とは違う、家族も、金も無い過去でもないのだ。だから、改めて確認しよう。自分はどうやって他人を救える?その根本が出来ていないのだ。助けた僅かな喜びの悦に浸り、その行為を繰り返している。その程度しか自分は知らなかった。享楽的に人を救っていると言えてしまうのだ。

『・・・私の為、だね。うん。』

「それ以外にもある、解決出来ない事への不安の原因が分かった気がする。」

『誰かの為なんて、不安ばっかりだよ。慣れる迄の話だけど、実際の所頼り過ぎる人も頼り過ぎない人も誰にでもそんな感じじゃん。』

彼女は割り切っていた、それは自分とは大賞的で、軽率で、快かった。

『成所作智、今出来る事をしよう。自分の課題を終わらせてから、そういうのはやろう。言い方を変えれば自腹を切らない方針で人助けをしよう・・・になるのかな。』

「そういう方向に持っていくなよ、良い価値観なんだからよ。」

『んふふ、分かった。』

彼は一旦すべき事を果たす。戦略を練った。彼女が竜王を止め、その間にフクマツの拘束或いは討伐。その後合流して最低限弱体化させる。北部への逃亡阻止が最優先である、と優の方が指定していた、彼には彼なりの計画がある、とはいえ少し不安である、止められる気が最初っからしないのだ。



騒がしき王、奇怪なる剣、貴方への愛。三つの災害が悪意の玉座を形成する。「人の支配」「軍事転用」「繁殖行為」の三つを行使し、その結果、先の二次災害に変化する。

貴方への愛は所謂妖怪に近い、取り憑き、人を直接操作する。災害としては地道で、増やして食い潰させるのを一人一人やっていく、理論上は出来るが規模が小さ過ぎてプラスにしかなっていない。群れる渇望に次ぐ、人類に恩恵を齎す存在だ。

「本当にそうかな?」

「と言うと?」

「貴方への愛は雀に近い、益でも、害でもある。」

それが、既存の愛情を歪め、法律制度を滅茶苦茶にし、余りも出すし、性別、異種族も問わず行わせる。宗教的権威は全て失われ、愛と情欲に生きる様になる。

ハドリアヌスも、その取り憑きの対象である。

本来の愛情を歪め、誰かの為に充てるべきそれを彼に向けてしまった。彼女が偶々相手が居ないだけで、そういう人間でなければ大問題になっていた。

Forではない、Ofだ。OfはOffからの派生で、それだけを抽出するというニュアンスがあり、『男の中の男』等の表現にも使える。その他一切の愛を遮断する、繁殖行為をしようと子供を愛さず、直ぐに捨てる。経済的合理と合致するだけの最悪だ。だから人類に恩恵がある、いや、恩恵がある様な人物が上に立てる社会故にそうなったのだ。

手を取らなければ死ぬ、だが、手を取ればどれだけの被害となるか。そうなるだろう。

その災害が相手取るは今日が初仕事、ダガンである。彼女の手の内はほぼ全て明かされていない。そもそも見えなかったから、今武器が明かされた言葉自体、大きい話題となっていた。警棒と軍用斧、予備の獲物二振。

この勝負は、一分で決着する事になった。



災害二体と対面するは英雄、災害は相性こそあれ、ステータスを総合すると基本的に同じになる。産まぬ人間は圧倒的に防御特化、それ以外を攻撃に回されると思って良い。そして攻撃は雨や風、地震等、危険と言えない物を過剰に起こし、危険な状況にする。

騒がしき王、原子も可能だが、電子以上の動きの操作、即ち電流。音響を極めた末の攻撃手段。一方で奇怪なる剣は所謂魔剣、それに断片だけ付着させて繁殖させ、最優の剣を最優の個体に持たせ、それ以外にも魔剣とし、兵士を作る。地道なスカウトが必要な以外欠点の無い軍隊である。問題があるとすれば、極論アルトリウスにも付着可能である事。パワーバランスを一気に壊せる可能性がある存在だ。

そんな二つの災害が組んでやって来た。防御の剣と攻撃の王。その分業で彼に対抗しようと言うのだ。

更に偶然、ウランの同位体が大量に場に存在しており、それを遺憾無く利用する。ある意味、意趣返しと言えるだろう。その汚染された原子を固体化し、空気抵抗ほぼゼロ、寧ろ動きを加速させて飛ばす。抵抗無し、故に無音のレールガン、質はメルリウスのあの攻撃にも劣らないであろう一撃が飛ばされる。物質として有り得ない挙動をしながら、理論上を突き進む。

だが、相手が悪かった。

「多分だが、今のは見切られた。予兆も無いのに、直感だけで握り締めやがった。」

「・・・マジか。どうする?」

「二射目で確認次第、近接に変える。」

二射目を装填する、人差し指と中指の間にウランの塊を配置し、形を整える。不可視のバレルがバレた時や妨害された時、空気抵抗を予め減らし、高速弾狙撃銃程度の精度になるという保険が必要だった。一々形成する事になるが、手を抜ける箇所ではない。

「(撃ち返しやがった!)」

威力はチェルノボグ越え、戦艦を破壊するどころか、威力が高過ぎて前から後ろまで穴が空き、一周回って被害が小さくなる程の威力。

音速を優に超える一撃が、漸く音になる。

大きく逸れた弾丸、目が合った、位置と攻撃手段が今のでバレた。

「複数箇所を狙う!フェイクありで試す!」

制御によって軌道を作る。その空間が短縮され、全ての物が加速する。どれも金属音と共に弾かれ、自分の神経に追えない可能性すら考慮された。

「・・・!!」

自分の体内を加速させる、外側から制御し、無理にでも身体を動かす。指示を二重に出すと、強ばったら致命傷というリスクが脳裏にチラつく。それでもやらねば、今死ぬのだ。

「操作に上限ナシか、威力的には連射する用。対軍兵器ではあるが、緻密さに欠けるな。手足が前に来たら全て防げてしまう。」

「(普通貫通すんだよ!!)」

真空の位置を調整し、再び撹乱を行う。しかしその方向に直ぐに向かれる。そこには何も無い。攻撃手段を露呈させれば耐久戦に持ち込める希望がある。相手は侵略中、良いハンデだ。

「(相手が速過ぎるという事は無い。パワプル通り越して致命傷ばかりが飛んでくる。当たらない事最優先だ。)」

剣が確認用に一人弱いのを仕向ける。隙を作れば四肢が数秒もせずに分離、その間武器すら使わずに相手していた。

「・・・不味い。」

手の内がバレている。普通弱点である首から頭部を落とすとか、魅せるなら腰部分を切る筈だ。それが出来る実力でやらないのだ。

・・・先代個体の死因か。対災害のエキスパート、条件を付けずとも戦えば最強であろう男。

「(話は聞いている、仕組みが確かなら、確実に突破出来るのは自分だけだ。)」

低速化、それの原因は氷結に類似した現象。目視した変化が無いだけだと指摘された。その場合、真空を通して攻撃可能になる。時間に干渉するとも聞いたが、その場合の手段も用意している。

「(時間への干渉とはいえ、世界全体の揺らぎではない。範囲が存在するなら、攻撃範囲だ。)」

残弾は五発、それ以降は威力的な期待を出来ない。防御の突破を試みる。

姿勢が下がった、腰を下ろし、突撃の構えに入る。思考を読め、穴がそこにある。

「(鉛玉を同位置に重ね、射撃を数箇所同時。累計二十発。一直線と思わせて軌道を問わない弾に切り替える。狙撃を逆に特定する、カウンタースナイプ。あの技術を見る限り狙撃に関しての知識があり、前線に立つ気質なら狙撃銃が直線的に動くというバイアスを抱えている筈だ。)」

専門的な職業に居たとして、偏見を抱えた時にミスを起こす。それを誘った。他人の記憶であれば、差し出されなければ彼の範囲になり得ない。

「命中。」

命中した、体内にめり込んだ、奥深くに進み、血が強く吹き出る。

「(心臓と脳幹、大脳に耳・・・どれも致命傷部分に当たっていない・・・?狙いは確かだった筈だ。)」

だが、倒れはしなかった。二歩三歩と、進む度に姿勢が正しく戻っていく。

「(・・・ライフリングだ、回転とライフリングで大きく位置がズレた、そして体内中は未だ適用されていた・・・!?)」

正解か?不正解(ブラフ)か?そう迷った所で相手は進み続ける。アドレナリンで一時的に奮い立って直ぐに死ぬ可能性もあるのだ。

耐えろ、分かるまで耐えろ。それが今の最適解だ。

「久々に効いたぜクソガキがぁ!!」

一度吹っ飛ばされた後、急接近され、巨木に沈められる。奥に叩き込まれ、巨木の下敷きとなる。

「全っ然効いてねぇ・・・どういう事だ・・・。」

「外付けで運と再生と進化が補完されている、準備不足だな。」

防御にどれだけの精を出そうと、英雄は意図も容易く踏み躙る。人類の最高峰は何もかもを踏破していくのだ。

「完全☆勝利!またの挑戦に乞うご期待!!じゃあな!!」

ハイになった相手に撲殺寸前まで追い込まれる。

王がそうする中、手を打てども阻まれる剣は、嘔吐を堪える。

「・・・これが帝国の神秘、『カニバリズム』か。」

嘔吐を堪えると、嫌気が事実を導く。

「(核だ・・・災害に効く・・・相当な威力。太陽にも匹敵する・・・。)」

個人でそれ等に該当する何かを彼は持っている事になる。

「どうした? あの雑魚生産装置を呼べよ、三!二!一!時間切れだ!!」

腰を切り、胴体から下を引き裂き、周囲に撒き散らす。剣の残骸、核廃棄物を仕込み、混ぜて飛ばす。カビの細胞膜が破壊され、霧散する。

「来る迄準備しとこう。」

木材にナイフを、血肉を間に挟み十字架の様に刺す。

「メルリウス!居るんだろう!防御弱いから倒れていたが隠しとかあるんだろう!?」

彼に声を届かせると、応える。

「どうしたんだい?我が盟友。」

「カビ退治だ、忙しいぞ。」

メルリウスには聞くべき話があった、寧ろ彼の目当てはそちらだと言えよう。近代魔術結社の残党として、彼は変化の真っ只中に居たらしい。それに言及せず、話を進める。

「魔術という縛られた技術、災害を倒す為に圧倒的火力を叩き出せるシステム。それが突如後付けの様に演算や仕組みを組まれ、使い勝手がかなり悪くなった。」

彼は何を知っているか、その疑問が広がる。立場が未解明の状態、王国の魔術の原型に近い物。その知識は王にも剣にもない。ガワの知識にもない、無謀な戦いに移行していくのが確定した。

第一の質問は、全く理解できないものであった。

「さぁて、王国の君達は何の神格を封じた?」

「神格って何だ?せめて他の言語で示せ・・・。」

『月光』

精神に干渉する強い光、視覚を奪い、映像を代入し、五感の半分以上を支配する独自の魔術である。

その月光を浴び、脳の意識が攪拌される。目眩と吐き気で吐瀉物が盛ると思えば、それは実際の所血であった。

「王国側に付いた君達も例外ではない。」

『日照』

軽度の物の場合、恩恵の方が多い穏やかな光。出力を上げると、一定以上の数字で脱水、帯熱が起き、最大出力の場合発火や融解を起こす。レンズ等を通す事で軽度の物でもかなりの威力に変化させられる。

身に覚えが無かった、というのも彼等は形態としては悪意の玉座から、冤罪を丸々着せられているのだ。冷酷と非情に対抗したとは思えない声質で反論した。

「関係無い、俺等は北欧から来ている。んな事言われも知らねぇよ。」

「なんだ、尚更邪魔だよ。」

『雷光』

水気がある場合は此方で、水気が無い場合は『霹靂』となる。電力による攻撃手段。スタンガン程度の威力から全身火傷の威力まで出せるが、真価はその誘導性にあり、必中と言っても過言ではない。全身火傷に至るまでの間でほぼ確実に心臓麻痺を起こす。

「元々人の世からは邪魔な存在さ、俺等も、お前等も。」

「いいや、全然違うとも。」

『日没』

先の三つの現象を無かった事にするというもの。一度使用すると二十分程度のクールダウンがあり、十分以上の記録は修正出来ない。各魔術のフィードバックをロンダリングするという手法を用いている。流石にやり過ぎた時はこれで無かった事に出来る。

彼は、やり直しの手段を持っている。生物としてやり直しが可能である場合、その倫理観は緩くなる。無限の宇宙だとか、ループとか、死後の世界だとか。そういう概念が無ければ人は自らの死を苦しみとの計算式で決定させる筈だ。絶望が死を与えるのは同じとして、他に希望という物を与えるリセットが存在するが故に倫理の箍は外れる。その心理を得た、悪夢を見せる魔性・・・それこそ夢魔である。メルリウスは人外だ。人であったとしても人外として忌み嫌われる価値がある。逆鱗に触れた時、災害の原型は見えなくなる。

「それはね、君自身ではなく君の目に聞いている。最初っから応えるとかそういう期待はしていないとも。」

「・・・成程。王都外れだ、完全にミスっている。」

「アンブロシーヌの丘、と言ってもこの場所を覚えている人物なんてほぼ居ない。」

アルトリウスは止める様に察した。記憶の残りを利用し、水分の移動で考えた。妙な動き・・・普通は気にしないものでも、動けない今やそれは最大の疑う要因となる。死後の微動を蘇生と錯覚するが如き、それを実用化してしまう観察眼と判断力、それが災害を何とか救った。

王に宣言する。

「お前はとっくに死にかけていた。アドレナリンで無理に身体を動かしただけで無事には程遠い。死ぬ間際程気を付けるべき場所はない。お前はそういう基礎が足りないのさ。いや、知っていても使えていないだけか。そういう場所に漬け入れば災害は直ぐに倒せる。」

意趣返しで文句を垂れ、単純な敗因にし、心を折る。そして選択肢を迫る。

「降参か、死か。選択肢をくれてやる。賢く使えよ?」

実際の所選択肢等無い様なものだ。一次災害の一個、二次災害の一個という特例・・・産まぬ人間と『究極の勇敢』を除けば全て不死身ではない。

人間程度の死に方では死ねないだけで有り得ない程攻撃すれば死ぬ。四肢をもいで腰を切って置いてあるおいたら一時間程度で死ぬ。それが災害の生存能力である。その間に脱出出来るか、希望として託さざるを得なかった。



少し離れた場所、それも7km程度。

災害の耐久力に関して、目を張るものがあるなと驚きつつ(見えてはいないが)、狂と優の連絡が行われる。

「・・・盗聴器仕込んでおいて正解だったな。」

『だろう?アリアが推奨してきたからな、その通りにした。』

「この情報通り、魔術の神を盗難するか?」

『あと五人片付けたら行くつもりだ。』

「了解、じゃあこっちは捜索と奪取に関する計画を立てる。」

魔術の神、神格という存在を知っている為、あまり詰まる事はなかった。

『あー、そうだそうだ。追加で一個ある。』

「何かあるのか?」

『コンテナが積まれた場所がある、陸地にあるが旧軍港・・・そこに面白いものがあってだな。ベス端末にデータが残ってて開けられる筈だ。』

「面白いものってなんだよ。」

『丘の場所はベスが捜索中、見つける迄はトレーラーの中で待機しとけ。』

「はいはい・・・っと。」

狂のコウキはもう一つ仕事がある。アルトリウスと他勢力を分断する事だ。一番簡単なのは、人質作戦。この場合相手が脅しをものともしない等で突破される。

「察の提供情報が少ない・・・一個前準備をしてからその目的を果たそうか。」

念には念を、と彼は懸念を重ね、目的を完遂するべく精進した。

「援護射撃はしておこう、こっちに気を向けられる前にな。」

狙撃銃を構え、王を解き放つ。そして直ぐに再生するが、ハイになって上手く戻れないアルトリウス、カビ退治を進めるメルリウスの盤面をほんの少しだけ弄る。脳の損傷も直ぐに回復し、抵抗も出来る筈だ、と。

「・・・。」

「未だ吐かねぇか、カビの洗脳は相当だな。」

蹴たぐりを入れようと、相手はカビが本体。痛覚を支配しているか等は知らないが、研究する価値はある。

「・・・あん?・・・マジかよ。」

王が解き放たれた、損傷は治っていない、心臓部が破壊されない限り問題無いが、動けなければ死と大差無い。

彼の考えは確定している。それ以外の行動は現状不可である。

「逃げない、降伏する。神格について知識がどれだけあるか確認しなきゃ始められない。」

良い感じに目を逸らす材料が出来た所で、通信をカット。その後沈黙させる。これで気付かれる事は無い。そう打ち切り、撤退する。

「俺等は災害と言っても人側だ、人類の敵じゃない。」

災害の話が始まった、今迄知られていなかった情報。災害を倒した所で継承は起きない。それを乗り越えるのがカニバリズム・・・正確に言えば、『陰陽道』である。そこにおける生贄の文化がカニバリズムへ繋がった。アルトリウス視点での答えとしては、嘘という可能性を考える必要があった。その状態で聞いてみるしかない。

「神格には、『和』と『荒』が存在する。」

「初耳だな、どこ由来だ?」

王は他人にあてつける様に言い放つ。

「・・・極東の神域『大和』だ。」

一瞬の空白、それが過去にあったことにリンクした。

「・・・続けてくれ。疑問があるが話は中断したくない。」

「・・・荒の部分が危険、和は恩恵、危険を防衛手段や目安に使う事で実質的に恩恵になる。神格はそういう構造になっている。」

この話自体は聞いた事がある。日本は大和で確定した。だが、神域の真意は不明、地理的に、尚且つ災害の量、幻想の魔女の一件で一度調査したものの、その時に核の汚染で土地として機能するものはなかったのだ。人が住まなければ、神も住まない、住まざるを得なかったか、生き残りか、進化種か、群れる渇望の影響か。選択肢自体は多いが、可能性としてはどれも決定打にならない、非現実的なものばかりであった。殺される為の嘘を考えるかと問われれば、これも微妙である。

「自分を含めた数種は、和の災害だ。神の断片、いや、臓物と言った所か。」

「・・・。」

「災害が人類を殺そうとするのは人類が支配している種だからだ。そして特に危険視されているのは大和だ。数が少ない神格という存在に大して興味を持つ事は無い。」

話を聞いているが、やはり先の大和の存在に匹敵する情報は無い。聞き出す必要性もあないし、想定外に陥る前に潰しておきたい。

「全生物平等に攻撃するのが災害だ。・・・古いタイプの災害である地震とかは平等だったろ?対人類とか悪意の塊、結果的に人類を害するとも全く別問題。殺戮特化連中以外なら何とか出来るってものさ。」

正直、それに関しては知っている、問題はその発生要因であった。素材と手法を食い止める手段があると尚良い。

「その人類を害する災害の多発原因は・・・いけ好かねぇ連中が突然命令を人類殲滅に切り替えやがったのさ、それに反発して徊っていた所、神の居る場所って言われて殴り込みに来た、抵抗はしたが限界はあるし、せめてって事で落とそうとしただけだ。」

期待していたものとは多少外れた為、生かす優先順位が落ちる。

「・・・俺等は災害だ、相容れねぇし、殺し合う。」

贖罪する様に言うが、特別な感情を抱くことは無かった、その言葉に関しては上っ面なものだというのが否定出来ない、先制攻撃=殺傷義務というのが自分における災害の対処だが、それにおいては殺すべき相手。

「生き残る為に必死で、進化が遅い生物なんだ。」

「(完璧に信用出来る訳じゃない、死中に活感は否めない。)」

「俺は大和の計画である狂信者によって神格を支え、数の有利で世界を掌握するという計画の暗部、副作用だ。」

これ以上触れられると困る、打ち切ってしまおう。情報は惜しい、災害の為継承も機能しない可能性がある。それでも、決行しよう。

「情報提供感謝する。」

法律上の宣言を守り、礼儀を保ち、彼を相手した。

目的は終えた、そして、最後に後処理を行う。

砲撃が目の前で展開された。彼等を全員、容赦無く叩く。

「(対策済みの自分は問題無いが、カビの方はどうするべきか。一応の答えとしておこう。)」

焼夷用砲弾が何度も撃ち込まれる。二人の穴を空け、何度も繰り返される。

「嘘が突貫だ、逸らされるのを活かして感覚を奪うのは良いが目の情報を封じなかったのは不味い。」

およそ一分の砲撃、周囲一帯を焼き尽くされ、死に掛けの存在等尚更生きられないであろう。

「残弾がポケットにある、打ち解けたら姿勢を崩すのは良いが、関節がどう歪もうと弾の形は見える、そういう基礎を忘れるのは御法度だ。さっきまで無かったからな。」

彼は見逃さなかった。その僅かな膨らみ、しかし特徴的な外見を。

直ぐに原型は無くなる、いや、形があればまだ良い方。消失した量が多過ぎる。最低限残れば良いと割り切っているのだ。

「バラバラだ、肉片集めて氷漬け保管にする。・・・爆破物が仕込まれている可能性がある、多分極度の冷却適応機能は無いから液体窒素チャンバーに直に入れておけ。」

「隻腕公より追加戦力が欲しいとの事。」

「災害抑える用か・・・、直ぐに調達して追わせる、先に退避しろ。一番フリーな戦力は西部王下に居る、輸送船を取り替えてそれまではロタールと護衛。」

「了解。」

彼は一仕事終え、漸く熱が覚めたのだ。

「(不味いな、嘘の範囲が分からない。メルリウス相手に神崎銓の一件が露呈するのは不味い。あの力は実力者なら大体は欲するであろうもの。)」

英雄もまた、思惑を抱える。都合は悪い、だが、それは誰も同じ状況であった。


星のカービィとの差は吸い込みのスピードですかね。


盗聴器おきっぱにすると音の違和感でバレて詰むのじゃ。


次回は今回しなかった盤面の確認から。

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