コウキ等の動向
搾り取られた事を知らないコウキは胃を破壊されずせこせこ働くのであった。
「エマ!」
「分かってる!!」
弾薬補充を行いつつの戦闘スタイル、優の方の隠し兵器とやらの支援があるものの、足りない、微妙だ。
「不思議と気分が良い、ペースを上げられる。・・・良し。」
刀を引き抜き回し、構えを変えた。
居合、彼にとってはあまり特技とは言えない、単純に経験の少ない技。隙間を通し、一糸を紡ぐ。
「機関銃、けっこういけるね。」
「バレル交換がやっぱ手間だな、しかし威力は捨てられん。」
「水冷式の提案もあったけど、やらない方が良い。ああいうのをやると現場の兵士は交換や兵站の不足で水を飲んで冷却水に糞尿を入れ出して衛生環境が最悪になる。」
「・・・ああ、確かに。」
「現場でどうなってしまうか、そういうのも考えるべきでしょう?」
「臨床試験、テストプレイ、デバッグ。そういう作業を怠った時にムービーが長くて作業も面倒な癖に大して面白くないアップデートをした即サ終ゲーか粘り続けるだけの面白みもないゲームかになる。」
「ド直球恨み言・・・。」
「数字で誤魔化す為ならどんな事でもしてしまう、数字は幾らでも嘘に出来るのに、数字に罪は無いと主張し続ける。面白みの無い欠陥を抱えた存在である・・・何より、数字は自由を与えない。言語ではなく、自然物だ。」
「怨恨が理論と知性に支えられて敵意を向けている・・・。」
「そういえばエリさんは?」
「退場・・・魔女としての力が機能していないから、情報だけでも聞き出して再現性を得るべく努力してる。」
「・・・自分が弱かっただけだ。」
「そう?正直、魔女の力なんて全員それなりにヤバい事に使ってるから、因果応報って内心思っているわ。」
「・・・ならば尚更だ。」
「・・・そうなんだ。」
第五波が終わり、切り傷を塞ぐ作業に取り掛かった所、空に違和感があると思いつつも、作業を優先していた。別段変化は無いが、鳥を主とした野生動物の動きは若干怪しい。方向性が無く、規則性も無い。パニック状態にあるのだ。
目を洗うと、その違和感に漸く気付く。
「・・・曇ってあんなにあったか?」
「え?」
「・・・首が痛てぇ・・・負担が掛かり過ぎたのと先のアレが原因で忘れてた・・・。」
「大丈夫?」
「運が良けりゃあ・・・。」
「雷なら高さで一掃出来るね。」
「最悪なら竜王が来る、下手すりゃ死ぬ。」
「耐衝撃系のシールドね、簡易的だけど今から作る。」
「いやぁ流石にこの短時間は無理じゃないかな。」
「壊れたのを集めてたけど、話によると汚染されてるから使うなってさ。」
「(話だけは聞いてるから止めておこう。)」
「ヘカテーはどこ?」
「アスタルトの拘束に使ってるから前線に居ない。」
「衝撃波とか神経にダメージがある攻撃に耐性があるから手を抜けるんだけど・・・。」
「心拍数無理矢理上げて保つ。」
「なら良いか。」
エマを引っ張ってでも寄せ、休憩地点として使っていた、持ち主の熊の妖精と共生中の洞穴に戻る様促す。
「・・・何か来るぞ。」
「仕方無いなぁ。」
「並の災害なら止める筈だ、その予兆すらない、ギリギリで泊めないといけないものか、反撃。少なくとも自分達に向いていないなら、大した被害にはなるまいて。」
「・・・そうね。」
突如、背後が鳴動を起こす。
倶利伽羅剣は上空から音速で地面に沈む。一振だ、たった一振で、王国の地盤が歪む。王都の地下は崩落し、柱だけが浮いて残る。王都地下の奴隷等は全員死んだ。鋼鉄大質量が遥か先で落とされ、その余波が遥か先にも、空を裂く様な天彗として星に衝突し、映像が誤認する程、空気と化学法則がエフェクトを付ける。
自分はエマを庇うと、しかし衝撃波で飛ばされ、彼女も地面に転がされる。その場所に這い、彼女を再び庇うと、それに合わせて蹲った。
「・・・大丈夫だったか?」
「ええ、何とか。」
「・・・しかしなぁ・・・これ以上進めないぞこれ。」
傷口が再び痛むが、それでも目の前の光景は目に入る。耳が治り切っていない影響で、塞がずとも被害は傷だけで済んだ。感覚は直ぐに戻り、戦闘に支障は無い。
王都北部、壁と柱を残して崩壊し、家や道は崩れ、ほぼ衝撃の余波だけ、しかし、垂直の落下であるにも関わらず下手な隕石の数倍の威力を出していた。
後の観測において数十万平方kmにおいて木々が消失する被害となった。
「・・・臭う、有毒ガスだ。・・・こんな所に?」
「・・・多分だけど、今の、キャリントン・イベントレベルのもの。ガソリンでも同じ事が起きる。似た様な資源があるとか・・・爆破物に注意・・・うえぇ・・・。」
「一旦離れてかすり傷が無いか確認、多分あるから消毒する。」
「私多めに持ってるからこっちの使うべし。」
「助かる。」
「直ぐに山火事になるでしょうね、どうする?」
「最短で抜け出す・・・従来のルートを大きく外れるがな。」
「・・・えー、ルート知らないや。」
「多分住処が消えた奴に聞いてみる。」
一度意識を集中させ、消毒用アルコールに苦悶しつつも意識は届く。死の数が多い程埋没する可能性がある。その時はその時だ。
「ジョー、聞こえるか?」
『ああうん、何となく。』
「なら良い、精神面上での会話って結構難しいな。」
『脳の可動域の影響・・・が大きいでしょうね。』
「まぁ良いさ、情報は何か無いか?聖女の呪いって言われてるが。」
『彼女はそうしない人間だと言うのは分かっている筈でしょうに。』
「エリさんだよ、俺が疑っているのは。」
『エリニューエス・・・ああ、恩人ですか。』
「恩人?」
その疑問を一度確認し、概要だけでもと聞くが、全編解説されて途中から半端にしか聞かなかったが脳内に垂れ流されて結局無意味になった。感覚が鈍いと映画館に居る気分にされた、図書館の様な、空間が集中を半強制的にさせる空間で聞かせられた。
『王国の地位があるのは外科手術を行う技術と安全に済ませる技術の同時保有からです。私が持ち込んだ医学大全の影響もありますが・・・。』
薬物の発達はかなり初期からあり、医学の主流として各国の最先端を行った。鎮痛剤を転用して麻酔の配合を定め、鎮痛剤の当時で言えば副作用に当たる中毒性や快感を防ぐ目的で作られた注射器という物が合流し目論見とは外れてそれ等の症状が悪化・・・と薬学は発達させなければいけない学問となり、そのカバーとして医学が発展した、即ち医学は副薬学とも言えるのだ。・・・信頼性が低いが故に、自ら身を落としていただけだが。
王国も同じ流れで医学が成立、医者である彼の父は疎まれつつも暮らしていた時、表向きは忌み嫌われ、国が裏側で保護しなければ失われていたであろう外科手術が存続した訳だ。
『私の父は、私が全身火傷を負った際、外科手術を行いました。』
内容としては肌の移植、火傷による死を最低限防ぐべく、その手法を選ばざるを得なかった。・・・その箇所が問題だった。
『しかし、傷が無い肌は少なく、一箇所を除いて存在しました。それが尻です。』
尻は肌としては面積があるという点においてかなり優秀で、衣服で覆われている事が多い(個人差アリ)ので傷が単純に付きにくい、元からある程度強度と厚さがある。
『尻の肌を顔に移植し、一命を取り留めた・・・父は其の儘疲労で死に、私が記憶を継承しました。』
恨みと言える感情はなく、淡々と、淡々に留める様に話した。
『あの顔は自分への呪いかと思いました、目が上手く見えなかったり、単純な面でも不便でした。』
衛生的に問題無かったという点は先ず評価出来よう。しかし、生かされてしまったという奴だ、苦しむ結果となる。
『そこでエリニューエス、彼女が手を貸してくれたのです。彼女無しにルナの出会いは無かったでしょうね。ルナは動物嫌いですし。』
「(ルナの事あんま知らねぇのに言われてもな。)」
『エリニューエスは親友の話・・・貴族の娘でしたっけ、年下の優しい子らしいですが、見た事は無いですね。』
彼は一度考えた、だが、考えるまいとした結果、煩悶は振り払われた。
「・・・無いか、エリさんの話の限りじゃ。」
そう諦めたが、どこか光は一糸留め、反射光として他人にも目視可能なものとなった。
撤退と報告・・・そして、優側との連絡。賄賂(猥賂)を用いて確保した夢魔を用いる。
『・・・そういうトラブルがあったか』
応じた所、狂もいるらしい。闘以外は来ているらしい。・・・というよりその個体だけ行方不明である。
『狂と入れ替えてアルトリウス戦闘力の考察材料を手に入れる。テキトーにイチャモン付けてやれ。』
「俺のするべき事は?」
『立場の維持の為アリバイを作る。敵の偽旗作戦に仕立て上げる。彼奴も連れ出しておけ。』
「ヘカテーに観測される、合流禁止だ。」
『・・・南部は合流禁止、と。将は減らせるだけ減らしておく・・・以上で良いか。』
「ああ、エマが来る、後は任せた。」
一旦其の儘拠点に帰り、彼女を拾いに行く。ヘカテーも確保し、ヘカテーに元々依頼していた『彼女自身への情報収集』『その後のコウキの記憶に関して』等を揃える。
コウキの偽物が存在する様に仕向け、戦功の受理を終えた後に下手に動員出来ない様にしておこう。とも考えている筈だ。
というのも将校との交流不足、準備不足とデバフありとはいえ彗星に敗れている記録もある。
「・・・これから功績を稼ぎ、王位と王城を獲得、ヘカテーの抑えられる範囲に留め、活動出来る拠点を作る。」
「分かった、でも功績はどうやって増やすの?」
「将、災害、竜王、狂団、どれでも良い。・・・愛狂が手の内をバラし、どう利用すべきか提示した。嘘かどうかも診断し、一応対策として現在陵辱監獄に居る。」
「何それ。」
「陵辱監獄は男女問わず一ヶ月、生存や生活に難は無いけど全裸で拘束され、思考も思春期頃に戻される・・・真偽を確認するのがメインだけど基本やり過ぎな監獄よ。スパイとして活動していたけど最初は裏切りを勝手にしたし、犠牲も出している。・・・当然の事ね。」
「この国って凄い変な文化あるよね。」
「集団が長く続けば変な性癖が広がるだけだぞ。大陸だとSMが発展しやすいと聞くな・・・奴隷も便利だから利用されたが最初が性癖とか有り得るかもしれん。」
「私も目覚めるのかな?鞭持ったりして。」
『おいバカ止めろ。』
「はーい。」
「(ヘカテー、変化は無いか?)」
『(特に無い。無さ過ぎて怖い。)』
「(・・・優の依頼で頼まれたが、理想的な結果にはならなさそうだ。)」
各々の意思疎通が済んだ所で、彼等は駆け出す。鄭和の救出と竜王の阻止が追跡し易く、一番最初にすべき問題だろう、そう確信して走り出したのだ。だが、全員が理解している。相手は恐らく、敵の中で最も火力や破壊力が高い存在、盾を彼女に、攻撃を自分と分業で行う等の諸戦術も搾り、役目を一貫させると決めたのだ。
狂側との連絡を行い、作戦を伝え、指針の再確認後、目星を付けた場所に待機する。
「狂と入れ替えてアルトリウス戦闘力の考察材料を手に入れる。テキトーにイチャモン付けてやれ。」
『了解、察は引き離せたか?』
「合流禁止の連絡が来てる。奴だ。」
『彼女か、そうだろうな。』
「アスタルトは居ないがバックアップに観測されている可能性がある。狙撃部隊も解体しただけで斥候に組み込んである。」
『どうする?』
「根元から処理だ。」
武装の電源供給をオン、そしてレーシングに切り替える。
「制御ユニット、補助運用的パワードスーツ、外付けパワードアーマー、蘇生装置、心拍制御装置、演算機、電磁誘導グローブ。」
これだけあれば身体は十分、確認を敵側に移行させる。敵の魔術についてだ。
魔術の中で最も使い勝手が良い『収奪』という技がある。相手の生命過程を破壊し、死まで飛ばす。しかし魔術はエネルギー管理という面に関してかなり厳しく、自分に備蓄される事になり、相手の強さ・・・いや、しぶとさを見誤れば酷い結果になる。
それを簡易化した『拘束』はそれに比べて動体視力がある程度あれば実現出来る、相手を殺せる訳では無いが、相手は結果だけを残し、それ以外に別段影響を与えない。その認識ラグを利用し、少なく見積もる事で相手の脳にラグを起こす、そういう代物だ。実験や検証の短縮の為生み出された技で、明確に世界のバグと言える。本来存在してはならないとまで言える複雑なシステム上にある、それが魔術なのだ。
察の方はこう残した。
「魔術は第二の力学法則だ。次元的に異なり、既存の物理が完璧には作用しない、世界のバグとも言えるが、自分にとって最もしっくり来る文で例えるなら、『世界そのものを持ち込んだ』だ。」
狂は直感で雑に言った事はこの様なものであった。
「魔術は許可に近い、条件、そしてトリガー。それぞれが独立している。しかし使用に当たっても難しい。意図的に事故を起こせる銃って事だな。・・・神様が選民思想持ってて優生思想もあるってこったろ。・・・銃や肉体に都合が悪いのに対し、魔術は悪いどころか恩恵さえある。それも怪しい所だ。」
彼は考えた、本来その技術はもっと単純なものではなかったのか?という事だ。秘匿の末に爆発律並の証明不能要素を備えた技術になったのでは・・・と。
「紐解いて誰でも使える技術にすれば、簡単にテロの多発を起こせる。」
「・・・まーた良からぬ事を。」
「五人位、この周辺にはシャーマンの国を壊しかねない存在が居るからな。根元から壊せば拠点として再利用出来る。最低でも共倒れに持っていくのさ。」
「本の量産体制も申請するか。印刷機作って刷らせる。違法薬物も多いから麻使って紙にする。・・・インクをどうするかだな。曲亭馬琴よろしく出版社しか儲からないシステムだから違和感も持たない。」
「警戒するなら国家より個人・・・ですよね。」
「アルトリウスの手の者が分からん、それが一番危険だ。・・・取り敢えず戦う時以外は偽名を考えておこう。カバーストーリーも渡す。」
予め作っておいた資料を渡されると、タッチパネルコンピューター横にあるスキャナーに設置され、書類全体が読み込まれた。
「夫婦関係ですか。」
「新進気鋭のラブレース夫妻が田舎から王国に赴いてあるものを探しに来た!・・・まぁ使う予定も無いが今回二カ国間条約に基づいたビザ発行してそこに記入してある、これをコピーだけ複製し落とす。これで半端にヒントを出せる。」
「ヒントは切り捨てるものじゃないですからね・・・狂も持っていたりするんですか?」
「ほぼ同じ物を持たせてある。私の方がジョン・ラブレース、兄という設定で奴は弟のトム・ラブレース。双方にマリア・ラブレースのビザを持たせる。」
「ドラマやってんじゃねぇぞ。」
「いや、その女性を探しにヒントとして持っている・・・という事で期日をズラしておいた。妄想は控えろ。」
「・・・。」
「邪魔は出来ないし、邪魔しにも来ない。寧ろ守りに来る可能性もあるが、まぁその場合は気絶させて捨てとけ。」
「おっけおっけ、やりたい事は分かった。」
「多人数でやると厳選したメンバーじゃない限りこういうのが出来ない。・・・試験運用ってこったな。」
「それで?将を狩るんじゃなかったんですか?」
「ああ、早速取り掛かる。場所の目星は付いている。」
「・・・あ、一応新開発の武器を作っておいたので私だと思って持っていてくださいね?」
「愛撫しながら一発一発使うよ。」
「(あれ?私より待遇良い?)」
「じゃあ行ってくる。」
「行ってらっしゃい!」
第一の手、電磁誘導グローブを放出に切り替え、鉄パイプを屋根に根ざす。そう数は無いが、これで十分だ。
輸送用パワードスーツ、輸送用と言っても空軍仕様、空軍が戦車を空輸する際に位置を微調整したり、車の位置を大幅に動かす、戦闘機を傷付けぬ様に空母の甲板で着地を補助する、攻守に欠点無しの代物、一台三億の価値はある。
穴を塗って扉が出来る、そして、漸く将が現れる。
「六人か、少ねぇ。」
音響兵器が仕掛けてある、察知の速さを考え、フラッシュバングレネードを射出する。
「(耳塞ぐのに使ったな。耳栓は無し、動きが最低でもクソ早い奴が居る。)」
来るぞ、来るぞ。動体視力を懸念し、一旦手を止め、それ以外から攻撃が来るかを待つ。当たったら掴む予定で動く。
「・・・夜叉!?」
上手く通じていない、血が流れ込み、濁流となる。
「・・・。」
『陶器の様な不死。』『砕けば再生しないが砕く手段が分からない。』その事前情報は存在した、察の対策法は現在不可能、砕く手段を見つける、今は攻撃あるのみだ。
薩摩示現流、蜻蛉の構え。速さと片手に絞った誘導性に富む一文字。最短準備で最短火力、次発も即座に仕込める一撃に切り替える。ダンプを投げ飛ばし、海上のクルーザー位置調整に使えるパワードスーツの油圧と排熱が大きく唸る。知恵は捨てぬ、割り切りもせぬ。無知蒙昧でないから、その一撃は意味ある物となる。
一刀にて斬り伏せられぬ、1mm以下のズレが起きた。間違いない、結果迄進んだのだ。魔術を使用されたと確信し、射程の短さか、騙しているのかを再考する。
「・・・ああ、分かった。」
恐らく夜叉は魔術を利用した、一定以下の数字なら計算出来る装置、ある程度火力が高いと計算出来ない。範囲も狭いから攻撃にあまり転用出来ない。だが防御には回せる。
「・・・メモリがMB基準の超低スペPC以下だぞそれ・・・!?」
知っていれば知っている程、そんな馬鹿な事をするか?と疑問に思う。手抜き工作にも程がある。だが、その様な技術を使っている国民も居ないし、漏洩もしていない。帝国かシャーマンの二択に絞ると、間違いなくシャーマンだ。・・・或いは、エレン・レセップス、それか、他の文明人。
「・・・複数の出力を同時に当てる、それが良い。」
フラッシュバン、グレネード、音響爆弾。それ等を防光防音ゴーグルヘッドセットとライオットシールドで防ぎ、同時に動作させる。
「さぁさぁ!!」
盾を夜叉にめり込ませる。出力処理を目視不可、音響遮断と触感も邪魔をした。これで行ける。
ライオットシールドで突進し、手を離して更に盾越しに蹴り倒す。
煙と光を切り裂き、演算前にその剣で彼は夜叉を打ち砕く。紙を裂く様に容易く、切断したのだ。
「おっと、残念だな。」
案外単純だった、恐らく体内に小型PCと電力供給ユニットを搭載し魔術を遠隔操作する。血を一定時間配給する事で人工心臓として機能させる。心臓を止めて記憶形質を僅かに代用させる。適当な脳の部位に損傷を多少与えれば実現出来るか・・・謎はあるが、やりたい事は分かった。
「(一回試してみるか。)」
呻き声の様なものは度々あったが、脳の奥底にある言語野を鎧通しで射抜き、どう話すか確かめる。話さないのは流石に違和感がある。
「・・・行ける!」
脳天から掌底を、直線に言語野を射抜く。「タン!」と言えば当たった証拠になる。人にはそういう機能があるのだが・・・。
「(・・・無かったな。呻き声だけだ。)」
ロボトミー手術着想の脳の損傷説は否定された。脳震盪はやはり狙えない、PC側で全て制御していると確定した。
「(目には何も仕込んでいない可能性が高い。ケチり過ぎだが、バレなきゃ普通に便利だ。100均で将来的に並ぶ可能性も否定出来ない。)」
情報収集はそこまで、将の一人が騙されず、一人の敵だと確信し、実力からか調子に乗って挑んでいる。
「随分と舐められたもんだ、反吐が出る。」
「誰だ、お前。」
「コウキ・タカハシ。一番優秀なコウキだ。」
「無価値だ。」
「お前はマイナスか虚数だな。以下だよ以・下。」
隠し持った散弾銃は回避された。勘は良いらしい。アーマー側の銃は十発でリロードにはドライバーが必要、50口径セミオートのものがある。それに掛けるのも良いが、今の体勢だと予備動作が必須となる。
殴り合いでどさくさに紛れ撃つのがベスト、そう判断して取っ組み合いに切り替える。パワーはあるがスピードは落ちる。それの埋め合わせは出来ない、そう難しくは無い筈だ。
「(早くなっている。)」
取っ組み合いを繰り返すとその様な違和感があった。恐らく能持ちだ。初めてマトモな能持ってる奴にあった。ジョーみたいな地雷のイメージしか無かったが、強者の独占で見ない可能性が高い。神への捧げ物、王国の教会に捧げる為、使命の達成に最も近い王国に集合する・・・早めに暴かないと面倒な事になるぞ。
「(・・・継続して戦うと火力が上がるとかだな。・・・攻撃を元から封じた方が良い、思考の主導権を奪うべきだ。)」
アーマーが破壊されると厄介だ。出来るだけ早く仕留めるべき、その中で少し早いがさっさと決めるべきだと、ナイフを構えて今迄より深く踏み込む。ギリギリ刺す事は出来たが痛み分け、顔面に食らって、体勢は維持出来たが数メートル後退した。地面に着いた儘数メートル動いたのだ。装備品の重さがあったから出来たが、バランス次第、つまりケチったらやられていた。
「(使い捨て銃を見せた、その情報はある筈だ。知識もあるらしい。・・・ベスに持たされた武器の出番だな。)」
小型の大砲と勘違いする事を祈り、布に隠されたその武器の正体を見せる。
「・・・スティンガー!?」
「知識を持ってるのか、じゃあ処分確定だ。」
「何のッ!!」
トリガーを引くと、思いっ切り笑った。外しただろうという顔をしている相手の希望を粉々に砕く様な笑いをしていた。
「あーあ、残念。これスティンガー対空ミサイルじゃなくて改造したロックオン通信機・・・衛星兵器のな。半端な知識で違和感を考えれない低脳のする事だな。」
念の為、集合した所を叩く事でバッテリー時間の短い事を暗に示し、黙そうとしたが必要無かった。世界の軍隊からして真っ先に浮かぶスティンガーはバッテリーが本当に短く、その癖ロックオンに時間がかかる。
衛星兵器はナイフに先端に付着したチップを埋め込み、通信機で位置と範囲を決め、様々な手段で攻撃する。今回はレーザー、人口エメラルドを通して増幅された光が、首以外を落とす。・・・衛星兵器ならやはり気付かない、空においては角度的に隠されるのだ。雲は予想外だが、雲無しでもバレないという前提の戦略にある。
「一人、次はどいつだ?」
光で漸く気付いたアホ共に絶望を見せ付ける。同僚が数分で消しクズと首の上の方になった。そしてその首を髪で手提げにする強敵が居る。諦めすらあったが、不意打ちでやったのだと確信され、再び襲ってくる。だが、守りの夜叉も無い。弱点を把握していない彼等にとって、夜叉が破壊された事は大きなショックであった。
「後五分ありゃ墓参りの質が向上するなぁ!一度に二人とよ!さぁさぁ!来い雑魚共!俺に勝てるなんて思い上がってんじゃねぇぞ!!」
将以外にも人員が居たが、将ですら正直有象無象にカウントする彼にとっては、大した脅威では無い。しかし、脅威とは別に自然と目に入る物があった。
「・・・うん?」
中折式上下散弾銃、滑車を利用し、弾数が無制限にあると仮定すれば一分に千八百に上り、次から次へと弾を飛ばす。大阪の舞台芸人の散弾唾より次々に飛んでくる。・・・弾速自体は早くない、狙撃用の方じゃない、狩猟用のスラグ弾だ。
「(あの武器、記憶に違いなければアランのと同じだ。)」
小声で通信を謀る。
「ベス、遡って録画。」
『何かありました?』
「帝国内に裏切り者が居た可能性がある。」
『他にする事は?』
「・・・全員手に入れて仮説を立てる、それで事足りる筈だ。もう少し待ってろ。」
すべき事は決まった。
裏切り者の排除を功績とし、次の攻勢に備えるのだ。
順調に進む王国崩壊、いや、最早確定事項だ。
怨恨の喝采は帝国にて起きる。
捕虜の護送車が横転し、王国の兵士は串刺しにされる。
当然だ、出番が来たと言わんばかりに迫害、何もかもを奪い、時に家族さえ奪って追放、戦争し、家族を殺した相手と刻まれているのだから。
そうしなければ晴れないと信じて、また一人、また一人と殺した。血で血を洗う、戦争だ。
国の意志というトップが狂っただけで犠牲になりに行かなければいけない、普段は徴税で苦しめて兵士としては高い給与を払う、マッチポンプ。簡単に高い給与を払えるあたり、どこまで搾り取っていたのかが良く解る。
国家がどれだけの幻想を語った所で、上のストレスや負担は結局下に行く。そして意地でもそれを崩れない様にする。
責務も果たせず責任も取れない、その薄っぺらく図太い人間であるからこそ、周囲を蹴落として権利を握れた。
人は過去の体制を批判し、その意義を忘れる。
民主主義も、やがてその一つとなる。王という立場を作る事で、その図太いだけの逃げる人間ばかりにならない状況を作ろうとしていた。
結局はどちらも薄っぺらで、どちらもそれ等を忘れ、次の代になり、何となく争うものへ変貌してしまったのだ。
だから戦争は止まらない、暴力と統計でしか、止まる事を知らないのだ。
勝利条件は片方のほぼ100%を滅ぼし、人名で把握出来る位まで減らす事に変わった。
くだらない先祖の争いが、くだらないトップの諍いが、守る為ではなく、どちらかが滅ぶ為になってしまったのだ。
戦争に必要性は無い、だが、虚構の必要性と日常の不満によってそれを起こす事は出来る。人類最大の錯覚にして、人類が最も成長出来なかった点だ。
そんな理論上の言葉を信じた彼等は、残酷に貫かれ、平和が虚構であると真に知るのだ。何も信用しないと知り、記憶は復讐心を育むのだ。
「戦争を選ぶ、それ自体が罪だ。だが、罪を背負ってでも救世主になりたいと言うのなら、そうしろ。生半可な覚悟ではいけない、だが、それ以上に平常心と平等性、一貫性が無ければいけない。・・・俺が求める相手なら、俺は味方する。」
半端な知識で違和感を考えれない低脳は世界の九割以上に刺さる一番平等に近く最も事実に忠実な悪口かもしれない。
将達は後で話処理するけど先に殺しても問題無いかの精神で向き合ってます。
悪意の玉座は魔術使えないだけのアレイスター軍団。
今から十人体制で交代しながらACやってくる。
追記:全員発売日を間違える。
何気に超重要情報ですが私の前作である「死屍涙々」は継承物語でオチを回収した方が良い、それぞれを別の終え方にする事で美しくなるだろう、という事で本来の終わり方から大幅に変えています。
今テレビで瀬名という徳川家康の妻の話をしてるんだけどマジで心臓に悪い。




