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継承物語  作者: 伊阪 証
王国騒乱

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24/74

真夜中に抱いた忠誠

王都はそれでも平穏だ、金属は当たる迄に魔術を使えれば良い・・・人を括り付け、空に放置する。魔術によるエネルギー生成を行い、元は取れる様にしておく。地下施設に回せば馬車馬の如く機能する。

「・・・遂に居なくなったか・・・余の信頼も地に落ちたな。」

エルヴィン・ジーメンス。彼は中央十字のトップにして暴言のカリスマ、魔術の改革者。実力が伴うが故に暴力的な行為の一切がひた隠しにされる人物である。

互いの干渉を頻発させ、組織としての形態と損害の軽減を考え、人を駒として使い続ける帝国とはある意味真逆である。駒の価値の差があまりない帝国と価値のある駒以外は破棄する王国・・・どちらが良いかは、その実態によってしか決まらないのだが。

「・・・。」

彼には仇名がある。それを発言した愚か者は肉片となり、腐敗までエネルギーを掛け、神経を生かし続け、苦しめる。

「・・・ルナ・・・。」

彼の仇名は・・・寡夫ジーメンス。次々と女を亡くした男だ。普通はそれで多少罵倒される事はあれ、本心からは言われまい。

ルナを落下死させた放窓事件の犯人、それが彼だ。彼さえ居なければ、ソロモンは最低限の平穏を、ジョーは最愛の女と一緒に過ごす事が出来た筈だ。

夜叉という人を改造する最低な魔術に手を出し、聖女の呪いという自分が未だ好意を寄せる相手への実質的な侮辱を冠した奇形児大量発生事件。・・・その他諸々、彼は自分の行動で様々な罪を犯していた。地下の騒動も聞いた、リーツィアの話も・・・彼も騙された一人であり、英雄誕の在処を教えた張本人である。

彼は若年・・・未だ百も数えない程若い。三十満たずの生涯で何度も女を失った。

地下の遺体安置所、魔術による冷気は絶えず溢れ、それを奴隷に行わせる。もし少しでもミスを起こせば、他の場所で働く家族を殺す。

「地下の生産状況は。」

「五十を越えました、凄いですね、エリニューエスの作り出した方法。」

「犯罪者の流用に最適だろう?屈辱だが、そうせざるを得ない、幸福にしたんだ、それに何の間違いがある。」

王都の異常性は上流階級から中流階級に絞った人口構成、それと範囲だ。城壁は端から端までを見渡せない、王都の最も高い場所で漸く見渡せるのだ。地下はそれを支える為に脆い部分は改造され、いつしかそこは地下も機能する都市になった。何時崩壊するか分からないが、魔術による管理で神経を常時張り巡らせ、憧れは何時しか呪いになり、憧れの負債だけが伸し掛る。

「この技術を封じ込める、その為に徹底抗戦を行え、それが出来ないなら全員生産に回す。ダブルミーニング・・・だな。」

笑ったが、すぐに乾き、戦争指示を継続させる、人手は足りている・・・。

「災害を呼んで正解だったな、代償は高くついたが、王都には関係無い。」

そんな外道な人間だ・・・。



エリニューエスとロタールの会話の中で、ジーメンスの話があった。

「・・・神官がトップ、宗教的な腐敗か?」

「どっちかと言えば現を抜かした様な人、アイディアは奇抜だけど、貴族優遇を敢えてしている。」

それから手を伸ばす様に余談に流れた。

「・・・私の第一の罪は、ジョーを助けれなかった

事。そして第二の罪は・・・。」

胃痛を起こすように、若干姿勢が崩れた、恐ろしい吐き気がするが、我慢して話し始める。

「・・・王国の産めよ育てよに加担した事。」

そこまで言い切ると、加速する。コウキについてだけは早く説明した。重苦しくもない言葉で語り、手を伸ばす。

「コウキに最初に説得された時、火が宿る様に変わったんだ。」

彼女は語る・・・そして、同時期にアルトリウスはその奴隷を使役する場所・・・多少離れた施設に突入していた。説明しつつ、彼の状況を話そう。

「・・・ん、ああ、誰だ?」

「王国を元王国にしに来た奴だ。」

テロリストの様な自己紹介だが、堂々と刑務所と言う風に書かれており、政治犯の多い場所として隔離されている。政治犯は十人程度を地下に封じ込め、一件当たりの人数も減らす。とはいえ襲撃の危険性が高く、ガッツリ拘束されている場合もある。彼女の場合はそうではないらしい。

「ベルトラム、情報共有次第リスト化頼む。」

敵地潜入では基本応答に関してジェスチャーに限定する。声を出さないという特殊な前提を作る事で乗っ取り対策や、声による偽装作戦が封じられる。その為一定以上の位かつ現場の最上位でなければならない。

それを怪しまれ次第殺すつもりであった、スパイ疑惑を晴らしていない状況、そうそう信用は出来ない。

「・・・一つ、頼めるか。」

「どうした。」

「俺の妹を助けてくれ、そっちの方が大事だ。」

『これが変えられた前のリスト、絵にもしている。』

「・・・何があった?」

刑務所なのは間違いない、厳重な堀を泳いで渡り、水没した扉から入った。地上階から行ける場所は一箇所しかないが、その階段を壊されるどころか一個一個を石で固めてコンクリートの様になっていた。

「ここは衛生的な幽閉地、そして風俗の名所さ。ここに居る女は様々な事件の犯人で、男女構わず魔女に変えられた。筋肉を薄くし、子宮を正常に、体調や思考も切り替えられた人々しか居ない。」

一度脱いでいたが、果たしてそうする必要があるのかは分からない。なんだそれ・・・程度にしか思えないのだ。

「貴族の性欲を解す場所・・・って訳だ。お前もどうだ? 子宮が疼くんだ。」

「不審者みたいな事を言い出したぞ此奴。」

「(不審者で済むかなぁ?)」

「誰が不審者だぁ?美人のお姉さんだろう?」

「いや多分お前元男やんけ。」

「なんだバレたか・・・とはいえ思考はもうそれに染まってる・・・アンタが誰かは知らんが・・・。」

奇妙で気味の悪い話を聞いた、可能性があるならやるしかないという合理主義或いは猪突猛進と言った所か。

さて、彼の顔は都市伝説程度の物に過ぎず、存在がイマイチ疑われている状況では流石に分からない。

「俺はアルトリウス、ここを燃やすかどうか考えていたが政治犯は解放しようかと考えていたんだ。」

味方以外が全員引いた、昏倒や卒倒、敵意に対しては銃を向け、殺されたいか問う、昔なら其の儘であれただろう。

「・・・マジで?」

「マジね。」

取引を持ちかける。

「元に戻す事や、他の体に戻す事も出来る。」

「・・・そりゃ無理だ、快感を求めて、もう妊娠と出産の快感を代用出来るものがない。第一に望む事は妊娠で、第二に望む事は双子であって欲しいというものだ。」

その説明が追加される度に嫌になる、最早呆れさえした。エリニューエスは集中してもそうはならない。魔術を用いた物理的な洗脳かもと考えた。物理的な洗脳というワードはしっくりくるのに違和感が凄まじい。

「麻薬と同じだ、取り除いてもカバー出来るものがない。ヤケ食いして早死ルートだろうな。」

麻薬の依存性は基本的に快感を求めるもので、快感を意図的に引き起こす以上、本来とは別ルートを開拓する訳で・・・そうなると取り入れた物質で解決出来るならと仕事をしなくなるのだ。機械化進めたらニートが増えたみたいなもんである。

「排卵日も自覚出来るぞ。ヴィクシーでも買いに行こうか。」

「(こんな所にもあるのか・・・。)」

たまーに生き残っていた現代の人間は過激な連中だけは間引いて治安を維持している。そして実質的なスパイを兼ねており、技術の維持、保管、そして防衛を行わせている。・・・だからといってそこまでのニッチ需要を満たさなくても・・・。とはいえ薄い布で稼げるというあたり物質の値段次第で良い手と考えられる。

「じゃあ、今迄と同じで良い。」

「本当にそれで行くつもりか?」

「元政治犯なんて信用すべきじゃないぞ。」

「自信があるなら話は別だ、取るに足りない相手よ。」

「はー?こらとら近衛騎士なんですがあぁぁぁ?」

「ちんまい近衛騎士なんざ矢避けにもならんわ胸も背もでかくしてから来い。」

「一応名前を言っとくとヴィートス・フッテンだ。」

「アルトリウス・カストゥス、帝国公爵位第一位、粛清剣の称号を持つ。」

「・・・その辺のは?」

「俺の部隊から引き抜いた最小限だ。」

「良い趣味してんじゃん?」

「強さとスペックだけだ。見た目なんて後で選べばいい。」

「それもそうか、見た目が良い奴には多くものがある。そして乗っ取られ易くなる。」

「世界の仕組みに期待しちゃいけないさ、新手の社会的排除って奴だ。」

「まぁいいや、煮るなり焼くなりしろ、敵対する事に利益は無さそうだ。他の連中も引っ張り出してくる。」

「船がある場所に馬車で行く。そこまで護衛も必要か?」

「弓が上手く引けない位・・・あと魔術も殆ど使えない。」

「嘆いてしまう位弱いな。」

「魔術は体内を弄れば制御出来る。血液の移動もアリだが、拒絶反応覚悟でやるべきだ。」

「思ったより魔術が飛んでこなかったのは・・・。」

「奪われて使えない・・・魔術を制限して追い出し部屋にするのと権力の変化を抑える為だな。」

「聞けば聞く程気分が悪くなる話だ。」

「簡単に近衛騎士になれるぞ?あ、あとこれ亡命用に。」

「このタイミングで渡すな。」

古ドイツ語の資料を受け取ると、内容に目を通す。

「ベルトラム。」

『はい。』

資料の内容はかなり多いので概要だけ述べると、地形記録から導き出す戦略、王都住民リストと弱点、王都地図仮説、夜叉の製法研究等だ。

「夜叉の製法・・・か。」

「夜叉の如くと揶揄される人物っているだろう?先ずは怨霊志望者であり、其の儘数十年生を全うする。」

「崇徳天皇とか・・・。」

夜叉ではないが夜叉と比喩され、生前から怨霊となる事を望み、国を傾けた。滅ぼさない塩梅まで上手く調整したとまで言える歴史。推測上、夜叉は今後一切の生存等を放棄し、短期決戦用の兵器にしてしまう手段、魔術を突き詰めた結果である。

「ゴットヴィーンは死んだのか?」

「・・・王都の地下で同じ末路さ。死刑よりもスタンダードな刑だしな。」

キリスト教圏は昔から大体刑罰が処刑だった。斧で首を落とし続け、時に平民を、時に王を殺した。・・・それよりは有意義で、利益的な手法であった。エリニューエスがジョーを守る為だけにここまでの行動をした・・・彼女は少し誠実が過ぎる・・・。

「一つ話してなかったな、出産した子供についてだ。」

触れたくないのかと思い触れていなかったが、そもそも日記の類も禁じられており、この資料を持ってきただけでかなり凄い方である。証拠物品は倉庫に保管され、武器以外は置いてあった。火薬も仕込まれており、もしもの時は吹っ飛ばす為だろう。更に察されない様に酸素濃度が元から低くなるように設計されている。脳の回転を悪くする事で判断を鈍らせているのだ。

「子供は危険因子として扱われ、人権が無い。殺されるだけならまだいい。実験動物、食糧、エネルギー、想像しうる最悪ばかりをする。目の前で何度も同じ光景を見せてきた刑務官もいる。悪魔の処刑と称し火で焼き尽くしたりな。」

聞くに絶えない言葉であった。中世的な感覚というものが出てこない程清潔で王城の一箇所と言われても違和感の無い部屋に、大扉を開ければ黒焦げのベッドだけが置いてある部屋があった。

「だからもう一つ、頼んで良いか?」

フッテンの頼みは苦悶に満ちた声に絡まって伝えられる。

「王国民という餓鬼を皆殺しにしてくれ・・・暴力と性欲で俺等を作り、破壊し尽くした俺等を・・・。あの魔女は忌々しい・・・だが、一度子を産んだ時に分かったんだ・・・彼奴は、同じ目をしている・・・脅されて、苦しめられていたんだと。」

そんな話を聞きながらも、彼は大して慌てない。気怠さも見せず、誠意とプロ精神だけが見せられる。

「最低限は信用する、そして望みも叶える。家族で助けたいリストを纏めてくれ。」

とはいえ、それを見せるのは表だけ。証拠部屋の隅々を漁るべく一人部屋に戻った時にボヤく。

「エリニューエスは何を取引したらそうなるんだ・・・。」

魔女のメンタルケアや信頼の獲得による国の運営への貢献を行う立場としては耳が痛い。彼女の陰を暴くべきか、というラインに立たされる。

やると決めた事だけはやっておこうと必要なものを取り、若しかしたらこれはエリニューエスを裁く事になるかもしれないが、全て消す可能性もある。

「・・・こりゃあ所謂腹上死って奴だな、気を付けろ、腹上死の苦しみ方は尋常じゃない、体内から行われる凌遅みたいなもんだ。」

「肉食動物は長く楽しむって話もありますもんねー。」

「そのボロきれみたいなのは人・・・なのか。」

「人ですよ、怨嗟の臭いがします。」

「お前ら何やってんだ。」

「この人は割とお人好しの刑務官ですね。いや、でしたね。」

「そういう調査はしてやんな。」

「はーい。」

王国は降り掛かる問題に対策を採っていた。しかし魔術便り、あの図体のものが速くないとすれば、大質量落下が被弾しない事になる。研究班の調査により、足りないと知った。

「王国は生産を重ねそれを様々な手法で転用し永久機関化行おうとしているのか・・・空の要塞すら破壊する為に。」

・・・そして、それを帝国に降らせる。どちらに降っても構わない。それだけで被害は甚大になる。無重力状態も王国が作ったのだと断定出来るのだ。

「さぁ、主よ。今我等には選択肢が二つあります、馬車に乗せた彼等を全員消し飛ばすか、助けるか。」

部下はそれを迫る、王国の裏切り者を信用すべきか。彼等の陰謀に対抗するべく必要と判断するべきか。

・・・まぁ、答えなど決まっている。

「そんな事を悩む必要はあるか?ティアマト管轄でやれ。」

この後、亡命者として生活費を全て皇帝にツケた。ヴィルギルの胃が痛む事以外、特に事件は無かった。



帝国海軍、海は無いので海運だ。水軍程度だが。英語で言えばネイビーよりマリーンの方が近い。水没都市ムベンバ、雨の都カシモを拠点とし、兵站を最も扱う舞台である。

「・・・温度の上昇かぁ・・・樽の質とか大丈夫かな・・・。」

「火船もちょいちょいやってるけど分断には至らん。」

「夜叉の処理法も確立したから次は処分法を設定しなきゃなぁ・・・。」

「夜叉の処分法と言ってもねぇ・・・サンプルは作れないし拘束は無駄と・・・どうしろって話よ。」

「・・・黄金錆殺しを利用する、とか?」

「・・・出来ると思う?」

「・・・彼は地下でも問題無し・・・寧ろ私だけで済ませれば上々ね。」

隻腕公ダグラス・ローガン・レセップスがそこの指揮官である。古き王の直系子孫、部下を助ける為取引で腕を切り落とし、その上で相手に圧勝。その功績を称え、平等公は己へ平等を適用しないが為に隻腕の名を与えられた。

「公!見て見て〜。」

「・・・良いんじゃないか?」

又、出番が無いというのは別にして、最も軍隊の死傷者が少なく、労災は一年一度あれば良い方だ。また、一番規律が緩く、軍隊のプロパガンダと少年兵の取り入れを行い、ステップアップをする為の場所となっている。

「パパ・・・じゃなくて公!もう!」

「・・・。」

「ねぇ少し恥ずかしがってる!」

「えー?」

あと圧倒的に女性率が高い。戦場実績や持ち込み物が多くなる懸念、心理の持ちようなどを懸念した結果である。部下思いのダグラスは評価が高く、退役軍人の様でもあるが実力は足りると判断されていた。

「・・・アルトリウスからの連絡は?」

「全軍問題無し、撤退ついでに上下の国をぶっ壊せるとの事です。」

「・・・問題無いな。撤退船の整備業務を始めてくれ。」

そうだ、ダグラス公は喉が壊れており、最初の方の声が掠れている。部下を庇った傷しかない・・・という罪悪感の象徴であり、それでも抑圧されないが為に償うべきという気持ちで働き続ける。

「捕虜と保護対象送るが、保護対象は別の船で送り、ヴィルギル下で管理するとの事です。」

「・・・問題無い。」

「保護対象に政治犯あり、注意されたしと追記されています。そして第二の作戦開始指示を受けましたが・・・何の事ですか?」

「・・・奴の解放、捕虜にしていた彗星を解放し登用、現在狙撃班が各地に待機し裏切りを観測次第射殺する予定だ。」

「アランさん居なくても案外問題無いですね。」

「・・・撤退兵の処理役が適切な軍になっただけでも功績だ。・・・それでも味方処理が多い分、嫌われる軍さ。」

「ダグラス公のアランさんへの評価は?」

「・・・全く。アルトリウスが肩入れした理由は技術だけだ。それ以外に価値は見出していない。あわよくば英雄になれば良かった程度だ。・・・だが、もっと危険な予感がする。一筋縄じゃいかなそうだ。」

「そうなるんですね・・・。」

「・・・アランは良い奴だ、だからくだらない理由で死んだ。いや、諦めたから死んだ。くだらない生となったのだ。誰もが物語の様に死ねると思うな。人類の生死はもっとくだらないものばかりだ。」

目を背けた、下を見るように語り掛ける。

「・・・全員例外ではない、恐らく惨たらしく死ぬのだ。・・・だからこそ想定外に対するアプローチと自身の人生の打ち止めが大事になる。」

軍に対する注意を重ね、そして手を緩めぬ様に語る。

「・・・後悔して死ぬ事は無い。それが我が軍第一の目標である。それを忘れるな。」

彼の言葉は重く、厳しい。しかしそれと同時に優しさに満ち溢れていたのだ。



夜叉は横溢し、限界に達する。

「・・・製法を覚えている連中が軒並み死んだか・・・察しが早い。」

帝国勢力は殺した分から片付け、自殺や他殺を防ぎ、一人に集める。対策をことごとくすり抜けて終了させられているのだ。

「・・・侮ったか・・・。」

夜叉の製法には記憶が足りない、増産は絶望的だ。英雄誕を用いるべきか迷ったが、あの危険物はとても許可出来ない。

「・・・。」

いや、出来る手段は知っているが自分には打てない手だ。

「旦那様・・・。」

「気にするな、やるべき事は全て終わらせる。」

「・・・はい。」

「ルナは私が最後まで守る。その時まで、ここに居てくれ。私にとって君が失われる事が最も辛いのだ。」

「・・・。」

勿論本物のルナではない。偽物の、シャーマンとの契約によって作られた一年きりのクローンだ。一年毎に貿易の実績次第で身体を用意出来るという理由を聞いており、仕方ないものだと受け入れていた。それは事実であるが、自分はその死を何度も見なければいけない。

「一年の終わりは何時だ?あとどれだけある?」

「二ヶ月でございます。」

「・・・そうか。」

「どうか・・・されましたか?」

彼女は彼の不安を察していた。気分の悪さすら読まれていた。

目の周りに惑いがあった、苦しみというものが日に日に浮かんでいた。騒ぎ出した頃にはもう遅い。

「すまない・・・一人にしてくれ。・・・どうしても知られたくない事だ。」

「・・・はい。」

「本当に・・・すまない。」

「・・・旦那様・・・。」

彼女は出ていった、そして一人になった。

「彼女を殺した事はそれ程の罪なのか・・・?」

数十人の女の死体は、全てルナのクローンである。

そして、霧散してしまわない様に氷漬けにした。

「・・・どうして・・・。」

何処から何処迄後悔している?

自分はどうしてこの選択をした?

自分がどれだけ間違っていた?

罰がどの様な結果になるかなんて分かりやしなかった。多くも、少なくもあった。

「ルナ・・・お前は何処にいるんだ?」

彼に正気は無い、故に残虐非道の限りを尽くせる。どうやっても救われない彼女の筋道から浮かんだ、無数の自分が作った悪業。それを振り返る様に破壊し尽くした。

神を信用する事は無くなった。空を破壊し、神を殺してしまえ。

もう終わらせたいのだ、世界位道連れにしても問題は無い。全員殺せば、ルナは何処かに存在する。片割れは胸に宿っているのだ。後は人を一匹残らず殺すのだ。

「上空の浮遊物を帝国に叩き付け、帝国を自壊する状況に追い込む。」

魔術の用意は出来たか。

「足りる。決行準備だ。」

無重力圏を移動させ、帝国側のそれを解く。

「はは・・・ははは!!まさか私一人で数千年の悲願を果たすとはな!」

あとは背中を押すだけで良いのだ。



ルナのクローンは、日記を手に取る。今迄の全ての記録を記述している。そこに違和感があるとすれば、ジョーに向く分を全てエルヴィンに充てたという事だ。

「・・・これでよし。」

違和感の正体には気付けない。エルヴィンの罪悪感にも。彼女等は無垢であり、殺された事を知らず、死んだが為に想い作られた、善意で自分のやり直しをしてくれる、善人。

「・・・旦那様はどうして私の事をそこまで・・・。」

彼女は知る由もないのだ。



広く観測し、平等に采配を下す時・・・。

「・・・正直、関与はしてないんですけどねぇ。」

無所属、無関与。全くの蚊帳の外・・・しかし全てを破壊し尽くす事も出来るワイルドカード。

『統計上の神』

竜王という神格、神の否定という行為により破壊を決行せり。

「剪定公マノン・デュ・バリー、ここに。」

「王国に罰を与える必要はあるか?」

「いえ、アルトリウスがい居るなら問題無いかと。」

「・・・ならば良し。」

「しかしこの人が溢れる状況は・・・。」

「災害勢力の拡大は良くない。南から杭を打つ。」

「仰せのままに。」

「よろしい。」

息を巻く少年はコウキの真なる憧れであろう。人を無傷で押さえ込み、改心する様に調整を個人個人に変える罰則等・・・。

因果において、彼は因で、それ以外を果とすると、彼は最も神に近い。奇跡が多発し、その存在に信仰は依る。

故に、統計上の神である。

そして・・・。

「災害勢力の拡大は不都合だ、回収が難しくなる。役目を定め、元に戻す。」

彼は災害の被害を止めつつ、それを駆逐する訳では無いらしい。

敵か味方か分からぬ第三勢力、それらが注目した王国の存亡。

それが今回の王国の戦争である。嘗ての大国か、新たな大国か、それに漸く終止符が打たれるのだ。

「・・・凄まじい演技です。確と見なければ。」

ユウキは敷衍すべく目を張り、一方は目的に干渉し過ぎない様に目を張る。

・・・さぁ、戦いだ。王都を滅ぼす武器を揃え、王国を焼き尽くそう。陰謀を止め、帝国の破壊を阻止する為に。

一々情報を頭の中に流す為パワポ作る夢魔という文字にすると中々にシュールな光景。


夜叉の元ネタは人柱です。黄金錆殺しで硬まる奴とは別。そこまで硬くない。あとイタリア方面に人の石化技術があったという話も元ネタの一つ。


レポートを書いた際にWordで一番修正された理由『旧仮名遣い』

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