奪われるもの、奪うもの
王国編終盤に向けての準備と他設定も解説しないといかんのじゃ。間に合わねぇ(いつもの)。
フォコメリアの多発、それを揉み消し、出生率はゼロとなっていた。聖女の呪いとも言われたそれは、思っていたよりも深刻な疑惑があった。内面である記憶の歪みが矯正されていない場合、大した記憶を奪っておらず、大した量も信頼されない、そんな侮蔑を向けられるのだ。
自殺とは賭けだ、よりよい見た目やより良い仕組み、より良い人間関係を総取り出来る、そしてそれを意志で耐え、肥やしにするか。そんな賭けである。身体の奇形もそうだが、性格の奇形、異端も又、フォコメリアと訳されるのだ。王国で昔書かれた小説の一文、『性格の歪みは身体の歪み、即ちフォコメリアの一分類である。』から来ているそうだ。
「捕虜の記憶の検証を行った結果、動物や虫、人体の一部等だと判明しました。」
「・・・なんだそりゃ。」
「一人の人間を見て、その人間と恋や愛を向けた時、人間になる・・・なんとも童話的なものだそうです。」
「王国民は蛆虫・・・と。良し。」
「酸欠や酸素濃度の低下は?」
「地震、国内情勢共に揺らぎなし、着々と追い詰めています。」
「・・・そうか。」
「メッテラ王、夜叉は製造法があるそうです。。その夜叉は複数おり、一体一体は脅威ですが爆風等で弾けるので空に送ってやるのが適切と第七師団が発見、空に順次送っております。」
「第十二師団を編成変更、前線で実験を行う。必要最低限の爆破行動方法と空が維持されるかどうかの検証をしろ。」
「はっ!」
「王としてはどうなんだ?」
「夜叉・・・即ち妲己だ。」
「妲己・・・ああ、欲をかいて実力を忘れた愚かな女の話か。」
「理由はある・・・長くなるから省いて説明するか。」
夜叉の原型は分かり易い所で言えば薬師如来信仰、インドではそれが薬師如来の原型、ヤクシニー信仰として存在していた、その際に残虐性が存在しており。ダーキニー信仰とも言われ、妲己に繋がる。夜叉信仰もヤクシニー信仰から生まれたと言えるのだ。
「残虐な女というのは製造後じゃなくて製造者の評価だろう。」
「毒親の育成失敗といった所でしょうねぇ。」
「ユルバン、ヴィクトラン、アンセルムに二十番台指揮権を付与する。参謀本部長ベルナール及び通信兵長デジレに伝達せよ! 今はその位しか打つ手は無い。」
「エドアール、マテュー、デルフィーヌ、アリエンヌ、フレデリック、ファビアン、ラファエレ、ジョゼ、トリスタン、マニュエル、エリック、ジェルマン、アベル、ロランは引き続き攻城戦と。」
「攻城戦、通信、兵站、建築、撤退、研究の班に分業を制限して統帥権を解除する。」
「自由攻勢?」
「ああ。」
この軍事作戦は収奪で賄う事を考えれば、凡そ三年は持つように設計されている。保存の効く食料を中心にした為栄養系に支障は出る。最初ほどハイペースで進むと予想し、ペース増加と班変更を予め予想しておく。
「調べれ調べるほど良い、決戦にて終わらせる。それ以外は全て準備だ。」
なんてこった、軍法会議には本気という訳では無いが実質的に本気である。傍迷惑な状況だが、頑張るしかない。
リーツィアは目の前のコウキの奇怪な行動を終始目撃する。終わってはいないが。
「・・・何してんの?」
「魚釣り。」
「良い?魚釣りって走った馬車の上からするものではないのよ?」
「釣れた。」
「・・・そう。」
「人が。」
「人が!?」
「そんな事もあるだろ。」
器用に針を使ってリリースしている。マグロ釣る用だアレ。確かにマグロだが。
「いやぁ、都会って闇だね。」
「貴方が田舎の人なのは分かりますが、普段からこんな訳無いでしょう・・・。」
「そう言えば目的地って?」
「国立図書館、閉架に良い物があるの。」
「・・・というと。」
「英雄誕、脳に干渉せず、心臓にも干渉しない、記憶形質を様々な部分に組み込む事で継承されない英雄を再現する道具。」
幻想にも等しい話であった、奇妙と思う一方で、そんな馬鹿な事があるかとほくそ笑み掛けた。しかし破られた条約の中で取引の違和感があり、それが間にあったのではという推測もする。核兵器級の代物であれば尚更だ。ダ=ヴィンチにAiと量子コンピューターを渡したらどうなるだろうか。電気の話は兎も角、少なくともヘリコプターすっ飛ばしてブラックバードを作って世界中が一国に変わるだろう。
「史上で様々な国に影響を与えた人物の死んだ証・・・死亡診断書も兼ねているわ。」
死亡診断書・・・にしれはピンポイント過ぎるが、アルトリウスを積極的に挑発する王国は不安が原因で行動起こしていたのかもしれない。無謀ではあったが、戦力が強い内に・・・それでも、個人が強いかどうかと軍隊で強いかどうかは話が違うのだ。帝国民は個人単位で覚悟が違い、記憶を奪われるものかと死に物狂いで戦うのだ。その差別や後々の恐怖を和らげる為に必死になる。同じ思いや屈辱を味わわせる為に、本気で粘る。・・・それはあまりに見ていられない、酷い光景だ。殺しを効率化した帝国軍と、それに応える事で復讐と恩義によって忠誠を形成する帝国・・・それと比較すればこの宗教性、神秘性は歪に見える。理屈的と感情的が上下それぞれに振り分けられ、そしてそれが何処までも真逆にいる・・・というのがこの英雄誕という特殊な道具なのだ。
「兵器という側面も強く、少しも活用出来ない様に情報は制限されているの。」
「・・・秘密兵器と言うよりは・・・あまり使えない?・・・盗めば良いか。」
「ソロモン王の物を奪いに行きましょう?というのが計画、ドレス着てスラム行くみたいな運用法も出来るわ。」
「やった事あるのか?」
「無い。」
どうやら、ソロモン王のものは未だ使われていないらしい。
「使っていないもんなんですかねぇ?」
「記憶には意志がある・・・敵だと尚更反応する。だから誰も使えないのよ。」
そうであろうかと思慮を馳せると自分の自我の強さが分かる・・・根本的な疑問はあったが、それの重みが減り、安堵する。
「あと一冊につき同じ体積の金と同じ価値があるわ。逃亡資金調達って所ね。」
「懐かしい、拘置所暮しを思い出す。」
「十代満たずにして殺されかけるってどんな事態よ。」
「腹回りが今の33%だった頃パン盗んできた。」
「・・・聖書一冊分?」
「骨だけだったなほぼ。田舎だったから教えに従い処刑されかけた。首吊り紐から耐えて神様と勘違いさせて貢がせた。ついでに水周り改善して『トイレの街』と言われる迄にした。」
「不名誉にする為だけにそこまでの善行するのは世を見渡しても貴方だけよ。」
「軽く馬鹿にして、助ければ良い。・・・あの時の失血死しかけの時も助かったが・・・ショックで忘れてた。」
「遅い!」
「エリさんの説得時に使えば良かったな・・・。」
しかしリーツィア側も忘れるのは違和感があった・・・普段からそうしているのか?とさえ思ったのだ。
「エリニューエスとはどんな感じ?そこそこ良い感じ?」
「きゅうりの中?」
「旧知の仲ね、お腹すっからかんじゃない。」
「呂律が悪いだけだ。身体側も結構痺れる。」
「風の周りが悪いのが原因ね、空がアレだし。」
「酸素濃度かなぁ・・・。」
「魔術があれば酸素濃度とか関係なくエネルギー取り込めるけど・・・貴方魔術使ってませんものね。エリニューエスは以外でしたけど・・・あれだけの威力を隠し持っていたら魔女って呼ばれて差し支えない・・・。」
「エリニューエスとはどんな関係なんだ?」
「城で懲罰受けてる頃に毎日会いに来てくれた人。」
「・・・あれ、でも、仲が悪かったじゃないか。」
「ちょっとした恨みよ・・・すぐに分かるけど、あまり触れないで。私の過ちではあるけど・・・。私にはどうにも出来ないものだったから。」
嘘の様だが、それは心当たりがあり過ぎる様な・・・満場一致のパラドクスに近いものだった。逆に疑えなかったのだ。
「エリさんは許してくれるさ、俺も謝るよ。無茶ぶりとか、勝手に昼飯のポテト貰っていった事含めた三十件余りは。」
「みみっちいけど数え役満してない?」
「14ドラ位はあるだろうな。」
案外ゲーム関係は揃っている・・・娯楽に関してはどこも発展しており、戦後は旅も良いかもしれない。
「コウキはさ、エリニューエスが良いか、私が良いかで言ったらどっち?」
「どっちも取りたいが、その人の前ではその人の事を語りたい。」
「えー、ずっるーい。」
「そんなものさ。」
「恋心はあるけど耐性は無いって感じね。うんうん。」
「そこまでガチで分析されてるとはな・・・いかんいかん。こういう隙が敗北になる。」
「好意う好き?」
「やめろ、ねじ込むな。」
「他に何かある?」
「ある、魔術とか。田舎にはねぇんだよなそういうの。」
「契約出来てないのかなぁ。・・・ちょっと後で時間を貰うわ。使える様にしてあげる。微弱だけど貴方の実力なら体内の構造に干渉するだけで強くなるでしょ。」
「契約が必要と・・・。」
「魔術は物質の変化の過程を抽出したもの、その落差を転用出来る技術。変化は残るけど、その分の時間は無くなる、火は消え、木は炭になる。範囲が定められ、その次第で才能が決まる。」
「才能の基準は範囲・・・。王国だしな、カリスマを求める訳か。」
「私は基本的に無いわ、と言うより女性には発現しにくい。そういう人でも生き残れるというか・・・無くても大丈夫っていうのが一般的だもの。」
「(進化論的な発想か・・・あまり触れないでおくか。)」
「モテるかどうかの道具ね。所詮は。」
そんな身も蓋もない言い方しなくても・・・。
「魔術は使命の中にある能を混入させる事で引き起こすもの。だから脳や心臓に影響がないから魔術を使える様になるって事。」
だから、と始める前に、流石に彼女は警告する目で示す。
「・・・少し手を貸して。」
腕の血管を一本、縦に切り裂かれる。が、彼女が自分の腕で先にやっていた。痛覚の僅かな刺激を悟らせない事には感嘆したが、すぐに塞いでしまおうとさえしていた。
「ダメ、もう少し、もう少し長く、ね。」
「(ジョーの使命・・・はどうしようか。彼女を匿って帝国に逃げるか、功績を仕留めて撤退しよう。彼女の回収・・・の手段はエリさんと交渉してからだ。)」
「・・・はぁ・・・んっ!」
「(やはり毒的・・・刺激が強いのか?)」
「・・・ええ、何となく察せた・・・。素晴らしいわ、使命が殆ど残っていない・・・世界を平和にするとかいう難しい使命除けば、ね。」
「・・・なら、良いか。止血はどうする?」
「お願い、舐める?」
「寝る時にでもやっておくよ。」
縛った後に魔術を少し試す、ATP周りが操作し易く、水中作業に関してはかなりのプラスがある。エネルギーの供給は出来るので問題無いが、簡易的な試験を頼りに出来る程自分は呑気では無い。国立図書館の中にあるかもしれないと思い、尚更行く気になってしまう。
国立図書館の手作りマップを貰ったが・・・強いて気になるといえば、漁業が少なく、日本で言えば蚕の辺りを養蜂に変えた感じか。
「魔術の本は貸し出せない、だから直接潜入するしかないわ。王都の北には隠し入口があるの、ここが図書館のダクト。だけど脱出口でもある。」
「(それはもう通路じゃないしそもそも出口じゃねぇかな。)」
「(手当り次第言ってる感ある。)」
役に立ててる興奮が伝わってくるのがどうも気味の良いものになる。エリニューエスは変装して店主の居ない店から物々交換で物を貰う。ちょっとだけちょろまかすが。
「・・・警備とかつけない時点でだいぶ無警戒だけど、水道と警備の常駐が地下にあってそれをギリギリ回避出来るわ。」
「まぁ想定していないと言うより、長くして対策してるとか?」
「酸素濃度からして王国民しか入れない・・・というのもあるわね。」
拗ねそうな後ろの人にも話を聞く。
「もしもの場合の切り札も用意出来る・・・やってみる?」
「もしもの場合の切り札?」
「男女問わずに使えるけど・・・デメリットが重い。」
「躊躇いがあるんだな。」
「『英雄降ろし』英雄誕とは別のものね。」
ティアマトの技術にして最もマイナーと言われた学問・・・と言うより彼女が完成させてしまいそれを研究する意味が無いのだ。
「男女の差異はホルモンバランス、100%の器をどう満たせるか、満たさない場合や溢れた場合は発達障害として現れたりもするわ。」
ホルモンバランス次第で小学生女児がIカップ超えて手術で摘出したとか、突然身体が女性になっていくとか、そういう事件は存在するが、基本的に本人が公開しない為知られない事が多い。スピリチュアル的であるが為に興味を寄せられるか、一切信じられないかに分かれてしまう。
「男100%、女100%は基本的に失敗する。」
「周りの人で例えて。」
「それ聞く?そんな貴方は8:2。
アルトリウスは7:3。ダガンは2:8、メッテラは6:4、私は5:5、ティアマトは4:6。私は確率で女になっただけでもう少し男っぽいのだけど・・・見た目も心もガッツリ変えた。検証の末にこうなっちゃっただけ。」
「だから胸が小さいのか。」
紅葉が一枚・・・。
「その女性性の中から母性を引き出し、男性性と組み合わせて防衛機構にする。・・・親の素質がある程効果のある強化方法。」
「(ヘカテーがいるという場合、ある程度は出来るのか。)」
「代償として男女問わず年齢問わず子宮の急成長と妊娠、一時間ピッタシで産まれて英雄を産む不敬によって死ぬ。人体グレネード。解除も出来るけど引っ込まない。」
「クソ過ぎないか?」
「私は中絶出来る、ティアマトやデメテルは自分側を強化させる事で抑え込める。」
「エリさん依存性?」
「どっちかと言えば脅迫とか強迫観念じゃない?」
そして追加で彼女は語る。
「魔女の条件は不可思議な技術もそうだけど、英雄降ろしを起こした際の強さ・・・母性があり、戦力に出来るならという条件がある。」
何となく合点が行くものがあった。例えば・・・。
「・・・そりゃあ、魔術師なんてしないでしょう?」
「・・・そっすね。解任の意味が変わっちまう。」
ご懐妊と解任、そこにあるのは誤解だった。瓦解と和解程度には違う事だが、少々似過ぎてはいないだろうか。
暫く通路を渡る、馬と貴族は保管した状態で置いておく。ロタールという警備が王都に手を出した瞬間国が終わりそうだが・・・。上の事は置いておき、先に進む。
「言うのを忘れていたけど入口は自動ドア式よ。」
「(紀元前仕様かぁ・・・。)」
火を灯すと、水と滑車が動く迄暫く時間が掛かる。つまり・・・追加で二十分待機するのだ。
この図書館は閉架・・・というよりそもそも開架が無く、言葉を訳した際に発生した閉架という言葉は不適だったかと直す。そして司書が指示されて取りに行くという形式で、他人は入れない。
司書を気絶させ、拘束し、ついでに本で囲って埋めておき謎のオブジェを棺代わりにする。印刷技術はあるが古い本は価値があるもので屋敷一冊分にもなるので手を出せば給料が借金行きになるだろう。よって手を出せない。
「エリさんはこれを人にくっつける事は?」
「出来るね、動物の皮で作りが甘い。」
「(これでも可能か、敵襲時に長期戦は期待出来そうだ。損害も補填出来ない可能性が出れば本を人質にしているも同然。英雄誕は制限されているものだから近衛騎士レベルしか出て来ないだろうな。)」
「何してるの?」
「即席トラップ、本棚が崩し易い仕様だから簡易的に相手を嵌められる。」
到底地下とは思えない広さ、酸素濃度的に見れば確実に地下なのだが、本棚は手の届くものとは到底言えなかった。だがある程度は脆く、隠蔽する事にリソースを割いてしまい、それ以上の事は出来ていない。エリニューエスで解決出来るが、頼らない辺りにも権力による縛りの臭いがする。
「時代遅れは過去を賞賛する狂信者と現代しか見ない間抜けに与えられる称号だ。・・・すげぇ本だな。王国史にしちゃ偏見が・・・貰っていこう。」
当の英雄誕についての本を探す。彼女の話は良いが、少し物足りない所がある。
「・・・いや、二冊明らかに欠けてるな・・・順番から考えれば・・・。」
その本は、自分が過去に見た数々のものもあった、だが、王国には技術が無い・・・と言うより、封じ込めた。ルネサンス以前の発想をここに抱え込んでいるのだ。
「盗まれたか・・・或いは・・・未だに、生きている?」
それが結論であった。アルトリウスもロタールも存在しないものの、明らかに無いと言えてしまうものがある。英雄に成れなかった可能性もあるが、そう考えられない様な人物であったからだ。
自分は間違えて啓発本らしき本を手に取った。見た事ない代物だが、理論は嫌という程見たものだ。
自分にはヤケに合ってしまう、だから嫌なんだ。洗脳される様に歪むこれらは、毒にしか見えない。
「・・・はぁ。」
「どうしたの?」
「自分のやり方がおかしいのか迷っている。自分は助ける事と殺す事のどっちがやりたいのか・・・いっそ、狂った方がマトモだったかもしれない。」
コウキの記憶に刻まれた不殺は後悔によるもので、彼女を殺した事から来るものだ。それは分かるが、彼女を守れない気がした。そして、自分は妙にドライだ。怖い漸く覚え、コウキという存在は如何に異常か知る。・・・しかし、それでも殺すのに躊躇いがある。割り切っても人に刃物を向けられないのだ。
「人間の心は分からない、いや、動物の心自体が分からないものだ。些細な事で傷付くものなのに、その些細な事を警戒する人間はそうそう居ない。そしてその気遣いばかりすれば自分は追い込まれる。」
自分の変な気持ちを包み隠さない時の言葉は、この様な物にしかならなかった。
「その否定が成長を停滞させるのに、その我慢が面倒事になるのに、その気遣いが他者を変えられるのに。」
それが最も己を貶す事だとしても、それが最も自分に向いていて、心を削るものであったとしても、歯を噛むようにダウナーに伝える。
「分かりかねる、良いじゃないかエゴイストで、行動に悪意、害意が無ければ、そのつまらない人生を憂さ晴らしの数々で埋めつくした方が面白いだろう?」
馬鹿にしているが、敬意を感じる、つまり失望である。これが彼の持つ感情で、それが節々から見て分かる。人間らしくないが、それ以上に人を突き詰めた狂人性があった。ある意味、誰よりも正気だった。学者が最後に祈る様な暴挙であるが、確率はあって当然なのだ。
「コウキはそういう人間だ・・・だがそれがどうにも腑に落ちない・・・。」
気が狂いそうな時、彼女へ気持ち集中させ、心を抑え込む。神経はそれでも研ぎ澄まされる。コウキは普段からリストカットを行う、それは意味合いとしては再生の度合いと、超回復を狙ったもので、筋トレの一環である。その張り巡らされた神経は過敏で、空気に色を見出してしまう。
「・・・リーツィアの敬意は分かった、だから、一つ・・・。」
自己の確認・・・それが自分の渇望だ。自分が信用ならないなら、変えてしまいたい。変えてしまえば自分は安堵を得られるだろうと確信しリーツィアに縋る、だが、彼女は答えるだろうか、自分を信じれない奴が、浅慮を他人に期待する。それが半端なものと知って、それが然るべきと言えるであろうか。
「名前を・・・付けてくれ。」
エリニューエスを抱き締めた時の様に、自分は踏み留まる様に馬鹿な事を言った。無駄で無理のある行為だが、そうでもしないと自分は気が狂いそうだった。その狂気から逃れる様に粘った。
「名前・・・。うーん・・・。」
本棚に凭れて彼女は考え込む。名前なんて考えた事が無い。失望や失意は彼女も理解しているものだ。彼の気持ちはよく分かる、だからこそ、止めなければいけないと踏み留まった。
「そのまま、コウキ・タカハシで良いや。」
気を解そうと彼女が考える。
「でも、私はリーツィア・タカハシに改名するね。」
「・・・成程?」
「これで私は貴方のもの、支配しているのはどっちか分からないけど。」
小粋なジョークで一人笑うが、彼の鈍重を前に弾かれている。それを考えて、最も近寄る。それでもダメかぁと、背中から感じられる。もっと、自分の本心を込めなければいけない。私が思っている以上にコウキは未熟であり、それと同時に不可解である。
「・・・私、コウキと出会えて得る物、多いなぁって。」
彼女は笑い、捧げられた機会に応え、それでも少しムスッとなる。・・・それもそうだ。彼女は何の為にあの言葉を言ったのか、それが上手く伝わっていないらしい。
「だから・・・もう歳の差なんてどうでも良いかなって・・・王国は終わっちゃうけどさ・・・私には忌むべき場所でしかないから・・・。」
首筋を貫く様にナイフが立つ。
「ごめんね、騙されたフリをしていたの。」
状況は二人、他には居ない。・・・それでも、自分は戦わなければいけない。・・・助けると誓ったが、相手の殺意がどうも自分を拒む。
エリニューエスが眠り、動けない他に敵がいる可能性もある・・・手を出すのは、難しい。
自分は脱力した様に刃物を制せなかった。避けたは避けた。・・・それ以上に胸に伸し掛る重みを、やり過ごさなければいけないとしても。
戦意が上手く沸き立たず、このまま死んでしまいたかった。
彼女の嘘など何処にもない、それは時に信頼として支えになる。それでもと奮起する、立ち上がり、そして、失意の中で怒る。
「ひでぇよ・・・クソッ!クソッ!ひでぇったらありゃしねぇ・・・俺の身体が・・・。彼奴を守る為にあるのによぉ・・・。」
らしくもなかった、戦いたくもなかった、だが、彼女を助けようと決める。
「・・・やってやる、終わらせる。」
絶望的な話だ。生死に干渉するか、自分が支配するか。理屈を理解した時、より刃物を持つ手は緩む。酷く心が傷んだのだ。
「・・・英傑のフリしたドブカスが、覚えてろ。」
彼の顔は怒りに変わる、覚悟と誠意が拳の一個一個を適切な位置に戻される、傷が何を言おうと、自分は何時ものやり方で行く。
リーツィア更生する理由が分かんないと来ていたが更生は前からだし今の所更生どころかヤベー事しかしてねーぞ。
でも心を許すとちゃんと対応してくれたり、なんてツンデレだ!
あと過ちの部分は嘘です。
デジレくんメーデーとか言いながらドア連打したりジョークが上手い頭とか持ってるかもしれない。
鉱物は希少故に信仰される・・・という余計な話。人によっては余計ではないが。
あと進化論と男女の話は根幹に関わるので思想問題としてではなくストーリーを解き明かすヒントとして覚えろください。
群れる渇望
自然発生した災害で、当初は小柄で頭の数が無いだけのシャム双生児、大半の内臓が倍になって詰まっていた。もう一人は既に取り込まれており、新中絶技術の失敗が重なり発生した。内臓を減らした際、細胞の一個一個が大きくなり、数が減少。その様子は共食いと言われる程血塗れで、不気味なものだった。結果突然変異の要件は整った、細胞に他生物が介入、凍結や発火への克服、それは段々と元の生物の姿を失わせた。
最終的には以下の様にまとめられる。突然変異を多発させるミュータント遺伝子で構成された人型。全細胞が内臓の役割、筋肉の役割、骨の役割と切り替わりどれを切り取っても再生する。IPS細胞が一番近いが、人類既存の技術では再現性が無い。
生物的にどれよりも上位互換であり、思想も捻じ曲げる。平伏させ支配する。それこそこの災害の圧倒的な強さである。
存在するだけで周囲の進化速度を歪め、心理的な変化や肉体的な変化を起こす。
肉体は修復力が高く、産まぬ人間よりも早く、即座に修復される。男女は存在しない、強いて言うならどちらにしても行使可能だが、突然変異の多発により高確率で中途半端な遺伝を引き起こす為、単為生殖以外は想定されていないと思われる。
その個体はただ一人。コウキ・タカハシその人である。
今日の話。
わー友「男でも名前にセナは居るぞ。誠那でいける。」
私「ガタッ」




