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継承物語  作者: 伊阪 証
はじまり
2/73

軍人街

暫くは設定整理回…。

枯葉上に吹き上がる。火の粉は山火事から来たものと聞くが、そうでは無さそうだ。

「・・・奪い返す・・・奪い返えしてやるよ・・・。」

アランは地に足を、火傷を晒し、それでも絶えない涙を・・・。思い出す度に悲痛な心になる。

「・・・私が平和を実現する!それによってあのクソ共を使い物にならない様にしてやるよ!!」

そう叫んだ時に、呼応する様にアルトリウスが手を掴んだ。

「良い心意気だ!俺も手伝うぜ!」

という煩い奴がアルトリウスであった。そう記憶していた。


アランは腕を下ろし、疲れたと机に突っ伏す。

「・・・鼓膜には気を付けろよ。」

「ん、大丈夫。」

「大丈夫と思った瞬間程危ないものは無いぞ。」

アランは感染症対策や傷の修復箇所を見るべく何度も触りつつ、出血箇所に異変があるかどうかも確認する。

「記憶はあるし、本で読む知識もあるが、経験に乏しいか。」

「何か吹き込んだらすぐにやってくれそう。」

「良いか、このスケスケ戦闘狂、そこら辺の小説タイトルまんま女、究極進化マゾヒストは全員ろくでなしだ。もしもの場合は私に相談しろ。」

「うん!」

「詰んだぞアルトリウス。」

「俺をスケベ組に入れるな。」

「いやお前の年齢と趣味を考えたらスケベだ。」

「は?趣味?」

「いやそこら辺は触れないで・・・。」

「お前何隠そうとしてんだ嫁相手に、おい、おい!」

「全力逃走アーンド窓破り!」

「五発は耐えれるから撃つか。」

「建物が先に死ぬ。」

コウキは目を背け、感情を知的な言葉で味を着けただけの奇妙な話を無視し、布団にくるまった。


ローブで隠された儘街並みを往く、チェルノボグに手を引かれ、疲れると彼女がコウキを抱き上げ、彼女の心臓に近い部分の温もりを感じ取る。若干、共鳴している様な感じがした。

ここ軍人街は学者クリストフ・イェスタ・マルシリオ伯が嫌々推薦されながら作った街で、彼は軍人街として作った訳ではなかったが、兵器を製造する事だけでなく医療技術を有しており、守るために敢えて軍人を住ませている。

妖精と人間の混血、テュライユール所属の軍で、強行突破に使う事が多く、荒くれものが多い。マリーンズが一番近い。

肉料理の街でもある、同時に人が大体臭うので鼻栓は必須である。

「食材の買い込みと生理用品、そして拾得物の真贋判定だな。テロも有り得る。」

「皆隠してるのにコウキの方を見る、壮観だねぇ。」

「前見て歩けよ。」

「転ぶ前にアルトリウスが走ってくる。」

「無茶させんな。」

アランが少し隠せと目配せならぬ手配せで示す、

「はいはい、アルトリウスは結局何処に?」

「研究室だな、クリストフの癖を一番理解しているならそこに行く筈だ。」

「アルトリウスも慎重ね、頼りになるわ。」

「私達の英雄さ、奴は。・・・な?」

「うん!」

「良い返事だ。」

然して宿から離れた都市北部、王を迎える地であるそこに向かう。アランは声による確認を中心に、コウキ自身の姿は隠し通した。


アルトリウスは彼なりにやる事をやっていた。元々王族の末子として生まれ、姉達に可愛がられていた結果、こういう専門以外は人に頼るという事を欠かさない。戦闘、乗馬、政治、料理という戦闘以外はピーキー過ぎる所しかないが。ただ、アランやチェルノボグ以外にも同じ貴族や王から長きに渡って信頼を得た人物でもあるのだ。世界史的に言えば、ダヴーの様な単純なシステムで二倍の敵を粉砕、ロンメルの様に人を化かす奇襲、太公望の様に拮抗も可能で、ウェルズリーの冷静さ、バイバルスの様な幸運を持つ類い稀な、極論彼に全権を渡せば国境を維持する事も可能である。・・・攻撃や彼の性格には合わないが。・・・彼は、理解すればする程恐ろしい人物だ。

「生まれの親は死んでない、また、誰かが関わった形跡もない。兵器の信憑性が増すな。」

マルシリオ卿に加え、技術を商業化しようとした商人会、チェルノボグに支えられている為アルトリウスにも頭が上がらない連中である。

そんな彼等はコウキに関する情報交換を済ませる。彼が安全かどうかの確信は取れないのだ。

「産まぬ人間は絶対的美貌、写真で見るとそうはならないが実物と対面すると美しいと思わずにいられないという性質がある・・・人魚とか八百比丘尼伝説近しいものがあるな。」

「攻撃性も防御性も緩めてはいかん、チェルノボグの治療はティアマトに任せるとして、彼奴の精神力は強かったが間違いなく攻撃性を緩めた。・・・俺は殺すつもりで接しているから全然受けないし、アランは疑問に思って踏みとどまっている。」

「・・・どういう存在であったとしても・・・か。カルト教団を作り崩壊を導く・・・って事で良いのか?」

「チェルノボグは大丈夫なのか?我々の保険に支障をきたすなら契約は止めさせてもらうよ。」

「まだ彼奴は14だ、誰の記憶も持ってない14の少女に無駄な苦痛を負わせるな。変に攻撃性を強くするとどっちが被害を受けるかなんて目に見えて分かるだろう?」

「・・・そうか、早とちりした、私も娘が生まれて負債は発生させたくないんだ。」

「は?さっさと言えよ。」

「お前には絶対やらんぞクソったれ。」

「武勇に優れてるとかの話は?」

「肉食獣を締め殺してた。状況を説明すると武勇より怪奇に近い。」

「追放された勇者とか言う奴は?」

「もう実験に使って女をあてがうから薬漬けにした。・・・アレは最初っから廃人だな。・・・なんか臓器の一部が死んで壊死する未来が見えてたから安楽死の亜種って事で。」

「そうか、軍事的な期待は出来ない。」

彼等は音に気付いた、コンコン、と少し変な階段の音。アランから予め聞いた来た際の合図。

子供の聞き耳は侮れないと、あまり本筋から違い過ぎない会話、彼を肯定する言葉で入ってきた彼等に示した。

「産まぬ人間は洗脳によって瓦解させるとかそういう説があったが、実例は一度も無いしな。・・・まぁ、研究価値はある。・・・な?お嬢ちゃん?」

「そいつ男だぞ?」

「そりゃ失敬、水飴ならあるぞ?貰ってくか?」

「いらない。」

「味は木苺だ。チェルノボグには推奨する。」

「どういう事だテメェ。」

商人サイドが安心と同時にジョークを入れた。その茶々に和みつつ、チェルノボグの胸とか腹で視界が埋まったコウキを無視し、ジェスチャーで会話し、問題無いと伝える。

「じゃあ、約束通り調合した薬を。」

「なんです?それ。」

「媚薬を薄めたものだ、惚れ薬だな。睡眠薬でもある。あと過剰摂取してもODしにくくした。」

「それを?」

「夢魔が存在するなら良い塩梅で行えばセラピーを円滑に出来る。ヒトの癖というタガを外し本能呼び覚まし、夢魔という便利な存在を利用する。・・・これで薬物中毒の解消が出来るんだよ。スゴくね?夢魔の実力かもしれないが。」

コウキが若干震えている、何か嫌な気配を察した様に。

「ここにもお注射あるの?」

なんだそんな事かと彼は見過ごす、気にする事もないなと一旦落ち着くが、その一方で、頭も抱えた。

「注射はケシから誕生したと言っても過言ではない。鎮痛剤として代用が効かなくて、ケシから中毒性を無くすという方向性を探る中で、口からの摂取じゃなければ良いのではとして生まれたのが注射だ。逆効果だったが。」

「へ〜。」

アランが話に懐かしそうな反応を見せる、少し忌む記憶であっても、彼は平然と笑い話の様に語るのだ。

「オピオイドが将来なんかしら汚染を起こすと勧告した論文・・・研究途中で燃やされたなぁ・・・。」

「貴方の時代にさっきの話からして鎮痛剤を使う事の警告って・・・文明がある程度ある場所でしょ?」

「アメリカだ、保険が発達してないから鎮痛剤で我慢するのよ。人間に正義と秩序を両立させた奴なんて誰一人もいないのがねぇ。」

「自由を盾に蹂躙した結果よ。・・・努力を認め、その価値を払えていないのに努力不足とか、人間は如何なる時の努力も認めるべきで、過去からの遺産はピケティとやらが否定した筈ではないか。」

「互いが互いを騙し続け、隠し続けた悪意の果てだ。強いて言うならば得た者は失った者と違い罰を受けていないのだから処罰されて然るべきである。」

少し小賢しい話でコウキから興味を無くさせる、子供騙しと言えばそうだし、結果ではなく最低限やって参考になるかどうかを見ておく。ローリスクローリターンの時に行動を起こさないのは人間として遅れてしまっても仕方ない。

「そういえばダガンは?」

「ずっと居るけど。」

「ペンキ掛けても無駄だぞ其奴。」

「水飴で代用して固めようぜ。」

「ゴルゴーンみたいな趣味してんなお前。」

「ゴルゴーンってなんだよ。」

「カルロスだろ。」

「違うぞ。」

「ダガンはダガンで今回の動きをどう見る?」

「コウキを狙った動乱だね、あの魔術王が動かない筈が無い。だけど中央十字の分派が過激な行動を抑える傾向にあるから大軍勢ではなくゲリラ戦と挑発が多発するだろうね。遠征公を真逆に派遣すれば希望が薄くなって抑えれるんじゃない?」

「人数減ったらそんだけ攻撃の危険性があるだろうな・・・人心を掌握出来る奴で尚且つ相手を生かすのに定評のある・・・。南部王の部下にいるアイツは?」

「南部王が彼処から出す訳無いだろう。」

「取り敢えずは俺が見て回る。」

「一番安心出来る。」

「一番安心出来るのがこのバカってのがねぇ。」

「何で?何でバカのイメージついてんの?」

「いやだってお前の考えてる事って理解されない事も多いもん。」

「軍事的直感です。」

「血の匂いで追跡の亜種だろそれもう。」

兵器開発の訂正案を軽く書き、マルシリオに提出していた。ダガンの方を見て商人の一人が言った。

「兵器開発出来るのか、殺人癖なだけかと。」

「それはそう。」

「そうなんだ・・・。」

「コウキ君、あのオジサンは性格悪いからああいう事言うんだよ?」

「ダガンが追放されたのは王国でスチームカタパルト、脱出ポッド、変換兵器BBを開発し嫌悪されたからだ。中国軍はさぞ悔しいだろうな。海軍どころじゃ今のレベルじゃ水軍がせいぜいだ。アメリカに独占されたスチームカタパルトの開発が出来りゃ艦船開発が大きく進展する。後者2つは紛れもなくろくでなし機体だが。」

「おいそれ以上話すな。」

「分かるか? 変換兵器BBはブラッドボム、魔術を使える王国民、奴隷であっても問題ない。そいつをポッドに入れてカタパルトで射出、BBで爆破。血液系感染症や破傷風で相手は死ぬ。爆破範囲も広い。爆破魔術と同等の範囲だから10m以内は身体中にダメージを負い死ぬ、20m以内は病気で、それ以降は弱い人間なら確実に、一発で半径50mの爆破物が出来る訳だ。巡航ミサイルの様な運用出来ないがスモーク兼対人爆撃に使えるから王国民の捕虜は高額取引される。大体一人十五万ドル程度の価値がある。」

「十五万ドルって幾らなのダガン。」

「現在のこの国は金多いからチェルノボグの芸術品保険最大限度額位?」

「お・・・俺の年収。」

「お前は還元し過ぎて金持ってねぇだけだろ。」

「良いじゃん別に。」

「誰が生活費出してやってると思ってんだ?」

「靴舐めるので勘弁してください。」

「舐めるな子供の前で。」

「お前も14だろ!?」

「寄るなロリコン。」

「お前の母親に言うべきだろう?」

「知らん、母親の性事情とか興味無いし知りたかねぇよ。」

マルシリオがくだらない事情や情事に一旦話を止める、アイコンタクトで良いかを次の言葉と共に示した。

「まぁまぁ、落ち着け、本題に入るぞ。」

「ああ、分かった。鑑定結果を。」

盾と鎧、剣に槍を数本出し、見せてから言った。

「この傷、ほぼ同じ形状で奥底に絵の具で線を描いている、これが少し特殊だが、狂団のものでは無い。武器を脆くする危険性を理解している軍人連中だから銃の類いならまだしも旧式武器を使う事は無い。火薬の製造技術は持っている。」

「ダガン、後衛に居たか?」

「居た、けど訓練不足なのか統率は取れてたけど直線への命中率が50mで40%、低い数値。」

「アラン、こっちの軍でベテランはどれくらいだ?」

「50mなら60%位だな。」

「ふむ、そうか。」

「機関銃の導入で下がる予定だ。ブローニング式が一番理解しやすいが水冷の運用がキツいかもしれない。」

「その見解は?」

「水分確保が今後の攻撃戦では厳しい、海までは分断されているのもあって糞尿を水冷として使う連中が出てくるだろうな。臭うし伝染病とか考えると空冷式に絞りたい。ヴィッカースのガス式、ブローニング、バレル交換式の電ノコとか。現代でも採用してる所あったし再現出来る人間を探す。」

「ああ、分かった。」

「盾とか鎧の開発がキツめ、ライオットシールドは作れるが戦争向きじゃない。」

「まぁ、こっちだとチヤホヤされないし、褒められた事をやっている側じゃないしな。」

「戦争をする国において正義があると思うな、悪と悪の戦いに悪質さの差があるだけだ。」

「そりゃそうだ、連絡伝達法とかデタラメなソースで言っていたが事実だしな。」

「チェルノボグ、コウキに話すなよ。」

「・・・そうだな。」

少し抱き直す彼女を他所に、八人は只管話し合う、その際に紙資料を見せ合いながら比較しつつ、最適な行動を示し、マルシリオに差し出す。

「これは議会に出しておくものだ、任せた。」

「ああ、分かった。・・・給料未受け取りで五年分の奴は?」

「巡回騎士団にでも渡しとけ。」

「分かった。」

そしてアルトリウスは立ち上がって扉の方に向い、一礼して言った。

「じゃあ次はアダム級要塞フィガロの方に行く、連絡は不要だ、無駄にするには勿体ない。」

「私の馬も借りていくと良い、シャスティフォルとマルミアドワーズ。彼奴らどうせ生垣に顔突っ込んでるだろ。」

「食い意地の張った馬か、そりゃあ良い。」

「勝手に帰ってくるし。」

「すげぇなそれ。」

「早めに着く見通しだから近くの自由都市に行くか。」

「果物ついでに買ってくか。」

「金だ、孤児院に渡したら貸せないように身体の奥にねじ込んでやる。」

「それはそれで駄目だろう。」

「36.5度の温もりは案外癖になるぞ。」

「残余感ある温もり・・・。」

「人類の道具がまた一個増える・・・。」

「歴史書を抹消してでも消した方が良いと思う。」

「不都合かどうかはともかくトピックに抽出されるのは嫌だね。」

一旦そこで別れ、晩飯の為に買う物を探す、野菜類は輸送関係が整っているこちらの方が揃えれると言い、別々の場所に進んだ。


コウキがふとした瞬間に若干石膏レンガの街並みにいる彼等を見た。真鍮製アセチレンランプを見掛けて疑問に思った為、袖を引っ張る。

「なんでアセチレンランプがあるの?」

「川があるからそこに魚を集める為だな。看板代わりみたいなものだ。」

「それじゃああの人達は?漁師?」

指先は少し残酷にも、コウキが興味を持った様な感じはなく、寧ろ不気味なものを見る様に顔だけこちらに向けていた。怖いのかもしれないが、真実は隠さずに言った。

「・・・妖精との混血、軍隊用の人間だ。流刑地でもある。九歳位の知性と理解力はある。一般的に悪魔と呼ばれる存在は道具の使用法とその解決手段を有した十二歳以上の知性があれば認定されている。この過酷な世界で文明を築くのは至難の業だからな。」

「・・・。」

「汚れ仕事は誰かに回ってくる。格差社会は押しつけによってなってしまうものだ。・・・アルトリウスは英雄になった、だが、汚れ仕事である事に一切変わりは無い。アレが少しでも良くする一手だ。」

少しでも良い話にしようと話の方向性を変える。端的で単純な話を、若干ズラして重ねる。頭の良い人間ばかりと話している奴は、こういう事が出来ないと医者としての実力を自負するアランは声のトーンを落ち着かせて言った。

「憧れを作った人間の実力は、妄想ばかりの人間と全然違うものだ、君も誰かに憧れると良い。」

いつもはカルテを書き込んで終われば良いが、今日は逃げる事も終わらせる事も出来ない。少し手の握りを強くしてしまい、コウキに謝る。だが、そこら辺を理解しているのか、少し屈んだ際に、頬にキスをされた。あまり調子に乗っちゃいかんと小突くと、恥ずかしがりめと煽られ、何か嫌になって二度目はナシにした。


メルリウスの部下でマルシリオの弟子、イェスタ・ブルボン。貴族の子ではあるが家を継げないがために彼等の下にいるらしい。そして、彼等は接触した、コウキの詳細を調査していたのだ。

「貴女は分類としては夢魔の類と仮定すると。ふむ・・・宮廷のメルリウス卿なら分かるでしょうから、暫くはそのままという事で。インキュバスではないのに男・・・これまた不思議な事があったものですねぇ。あ、あと純粋な人間ではありません。多少手が加わった歪な人間です。稲の品種改良とは話が違います。」

少し頭に触れ、ダイレクトに情報を送る、実質Bluetoothみたいなものだ。様々な媒体を通し送り込み、彼は続けた。

「夢魔信仰、軍隊の強化を行った為に四千年も続く教義の一つですね。インキュバスやサキュバスら五兄弟、長女を除いたその五人が信仰され、吸血種の竜種といった種族との交配で御伽噺の叶わぬ恋を果たすという生き方が一時期話題になる程でした。」

少し頬を赤らめて、空を見て言った、優しげな顔はしているが内心どうでも良さそうに変な事を考えていると、話を切り替えられた。

「・・・あまり一般には知られていないのですが、その血の配合が原因で罹らない筈の病気も発生、互いが互いを助ける結果になり友好関係が進みましたが、元の原因は互いが互いに疫病で全滅させ乗っ取ろうと画策していたり、闇の深い話でもあります。」

姿勢を変えた、すると、彼は少しトーンを抑えてそう言った。

一通り終わると話を止め、小声で言った。

「アルトリウス卿・・・貴方が本気でするなら止めはしません。ですが、それは・・・罪を背負い進み続けるという事ですよ・・・。」

愛おしいと思い、悲しむ。無条件に助け、功績を納め、弱いとは到底言えない格好良さを見せた彼、それを見た大半は彼に魅了されてしまっている。絶望の底に落とされた人間が多くいるこの国であれば、尚更そうなる。彼もまた、英雄に魅了されている人間なのだから。


宿と言うよりは、伯の家。その道程の中で、少し演説とは違う、青空教室の様な場所を見かけた。

「この国は存在しないスピリチュアルの否定を掲げている。魂だとか、神だとかは特にそうだ。」

彼は熱心に語る。彩りがほぼ虹である彼等に唾を飛ばし、大阪の漫才師の様に語るのだ。

「そも、神という存在は構造自体に欠陥があるし、それを利用する人物も多い。カトリック神父が少年に対し性的暴行とか、マスメディアの存在とか、悪質なカルト教団とか、政治家とか。」

右に左にゆっくり歩を刻んでいた、一人一人に目配せをしているものの、それはアイドル的なもので、愛情の類は一切無い、義務をこなし、精々感謝があれば良い程度の顔をしていた。

「正義を一貫するならまだしも、正義とも言えない行動ばかりする連中を信じるのは無理がある。我々は神を否定し、現に活性化した経済を得た。国の格差は明確に存在するが、最低限の生活を保証出来る上に関係ない種族の保護、人間以上のコストを掛ける事さえ可能になった。さぁ、君はどうだい?神を信じるかい?」

それを目を細め若干不穏を抱えつつ見ていたら焼きリンゴで視線を逸らさせられ、そのまま前に歩いて転びそうになった所、しっかりとキャッチされた。

「気にするな、妖精に神を教えているだけだ。」

朝だから耳障りに近い感じもあったが、内容が透き通って聞こえるが為により邪魔であると感じた。

宿(公式設定)に到着した後、部屋分けは以外にも、と言うよりは貴族間のお見合いの様な人選になり、変な目で英雄を地で行くような彼を見た。

その話はすぐに終わり、アランとダガンが暇な自分を連れ出していた頃に、残った彼等は少し呼び出した後に小声で話していた。

「チェル、コウキが彼奴と会話しているだろう? 内容次第で発砲許可を出す。」

「よし分かった100が出るまでやっとくよ。」

「リセット効くの単純にズルくない?」

「ヒットアンドアウェイ最強格だろうね、どう考えても。威力100を最適な距離で当てられるとメリュジーヌの翼が根元から吹っ飛ぶ。弾速が少し遅めでペレット数がラット位はあった方が良いけど。」

「爆破範囲とかは開発したてなんだろう?」

「弾種は通常弾、カスール、ホローポイント、烈光、ラット、バックショット、スラッグ、フラグが現在対応済み。壊したら二度と使えないけど。」

「射撃能力単品で見れば十分だろ。」

「ラハティ39とかいう生産し易い対盾兵器も開発されてるっぽいから研究費用も足せたら足しとくか。・・・運が良けりゃこれもお役目御免かもしれないな。」

「・・・そうなる事を祈るよ、お前が生きていないとこの国が危うい。」

「そうだな・・・もしもの場合は、私に捧げてくれよ。」

「頼りにしてるよ、本当に。」

「建国と救国の英雄に頼られる14の少女とか、本当、名誉な生き方だよ。」

「話すなよ?敵対される可能性がある。」

「わーってるわーってる。」

「俺を殺そうとする奴なんて幾らでもいる、最低数千年の命が確実になるからな。」

世間話を挟み聞いても誤誘導を起こせる様にしておく、そうして彼は去り、溜息の後に全く・・・と諦めつつも何処か嬉しそうな顔をしていた。あれが幼少期を若干維持した結果である、そこから産まれた母性が、母親譲りの性格が変に悪さをする。・・・残念と言うには無理があるが、持っているネームバリューが重過ぎる彼、生きているのにも関わらず伝説が盛られる様な人物だ。その苦労は計り知れないし、自分はその内輪にいようという感じにはならないのだ。

・・・彼女にとっても、コウキよりアルトリウスの方が遥かに大事らしい。

伯の客間を借りていたが、彼女は同じ部屋にいた。

ただならぬ関係である事は分かったが、ある種洗脳の様にも思え、断ち切るべきと少し心の中に刻んだ。


翌日の事だ。

ダガンはハーブ香る肉を存分に楽しんでいた。焼いていた所を見ていたら、後ろにいたアルトリウスが受け取り、味わった後に問題無いだろうと言ってこちらの分も渡した。

「今迄何してたんだよ、一晩も不在とか。」

「言葉には二つ目的がある。一つ目は私の正しさを証明すること、二つ目は私以外が間違っているが為に言い訳をさせるという猶予を与えることだ。」

「何処からその自信が湧いてくるのか。」

「でなければ神は私を殺す筈だ。私の前に居た数多の生贄共は既に食われたのだから。」

「証明ガッタガタじゃねぇか。それ言ったなら俺もお前と同等の保証が可能になるぞ?」

「私はその程度の事に屈する事はないさ。」

「あとこれこの辺で一番オススメの肉料理。」

「香辛料採れるのかこの辺。」

「塩漬け肉より遥かに美味い。放し飼いにした畜産動物達が落穂を存分に食べ質が良い肉になっている。湿気は多くないからそもそも動物が集まり易い。」

「天然の罠・・・少し物足りないがほぼ同じか。」

「妖精の混血で多少知性が移って言語を交わせる動物程此方に来やすい。」

「言語を交わす動物がいるのか。」

「いるぞ、録音した『逃げろ』という音声を国境跨いで全然違う所で流したら本当に逃げた猿とかいるし。」

「そんな奴が・・・。」

「人間だけが特別だなんて思わない方が良い、だが、特徴はしっかり把握しておけ。」

「ああ・・・嫌という程知っているさ。それはそれとして、コウキ、旨いか?」

「うん、美味しい。」

わしゃわしゃと髪を掴みつつも、多少の乱れで抑えて撫でていた。ダガンの肉を食べるスピードが少し上がっていたが、気にかける事はなかった。

「オリーブも集めといた、凄いな、チェルノーゼム。何でもかんでも生えてくるとか。」

「アボガド植えると拳が飛んでくるぞ。」

「そりゃ地下水消費しまくって他の場所に害をもたらすあれをそう易々と植えるのはダメだろうよ。」

「一国レベルで問題になる事もあるから布告はしておけ。妖精とか野生動物も増えなくなるとこれが食えなくてガッカリする。」

マルシリオはルーティンに従って走るルートにしていたそこで彼等に遭遇した。

「何をしてるんだお前さん達青姦は程々にするんじゃぞ。」

「ダガン脱ぐなよ。」

「脱いでねぇよ。」

「コウキは脱ぐな。」

「はーい。」

マルシリオはその冗談の後に幾つか連絡があるとして提示した、隠す事はなかったが濁す様に言った。

「テレパシー研究計画が捕虜の奪還作戦成功により再開された。」

だがその言葉の背後には彼の罪悪感が隠しきれていなかった。余計なものを抱えているかの様に、悲しげに言った。そうすると肉を齧って飲み込んだ男が言った。

「テレパシー研究・・・面白そうだな。」

「・・・ああ、うん、面白いと言うよりは安堵すら感じる。」

「分からんでもない、そりゃあな。」

「楽しくて戦う事はあるが、楽しくて指示を出した事は無い、いつだって争いは最高の快楽だ、恐怖の先にある合法の殺し、童貞には分からんよ。」

「童貞いたっけ?」

「ユウキとコウキ位だろうな。」

アルトリウスは少し目を向けた所、マルシリオが言った。前々から進めていたかのように、だが、どこか待ちくたびれたかのように。

「ユウキの目は覚めた、コウキと良い友達になるんじゃないか?」

少しは笑顔を見せてくれたマルシリオ、だが、その目は閉じており、細めたとは解釈しがたい顔であった。

そして、後ろからルーティンついでに多少運動させて問題無いかを確認し終わった一人の少年が、

「ユウキ・タカハシです、怖い見た目ですが、怖がらなくても大丈夫です。

貴方に手は出せないので。」

真っ白で、色が血の色以外見当たらない、反射により妙に神秘な色をした少年。自分より僅かに小さいが、髪の量で少し越される程度のサイズ、ふわふわの衣服に身を包み、抱き心地が良さそうな・・・。

見るだけで、なんとも面白い少年であった。いや、白い少年であった。

人物紹介 ただし写せる所まで

コウキ・タカハシ

タカワシ家の末裔と考えられる人物。武勇伝で童話に親しまれるタカワシは現存し、その生き証人である。生物は上位者程子供を産まず、単為生殖で十分だったり、そもそも繁殖しなくなる。その究極系の一つ。肉体の固定性がある、その為に筋力や成長は難しく、高い防御の反動が明確に存在する。故に性別等の区別はなく、年齢も存在しない。(カルテより)

以上は偽造で、産まぬ人間を国外に隠す為のものである。

見た目は、きっと誰かの趣味であろう。



チェルノボグ

特殊な学者である魔術師や魔女を指す人々の一人、実験の副産物。本来人間の干渉出来ない場所へ干渉する、使命を利用した対人外への兵器。ギャンブルに強い一方で、その報復もある。それを利用し、「船が沈んだら金を払うが、沈まないなら金を一定期間で貰い続ける」という賭けによって株式の保険会社を設立、入れば確実な安泰を得れる為に必須という事が多い。あくまで彼女に害とならないというのが条件の為、時間的に損を発生させるというものでも接触させれない様になっていたりもする。また、彼女の夢を叶えるという方向性には間接的なアプローチしかしない。

遺伝子工学と魔術の一部を用いた『幸福の呼び込み』を行う事が出来て、専用武器『Siege of Castles』を持っていて、塹壕戦には弱いがボールペンと同じ仕組みで回転式拳銃でありながら使用感はほぼ自動。中折式でヘビーバレルとレンズが装備されている。

威力は1d100、1の時点で結構な火力があり、拷問時に有効な非殺傷拳銃程度の威力がある。100になると巡航ミサイルを迎撃したりヘリをテイルローターごとへし折ったり、ビルや家を粉砕出来る。

実際の銃で収まる範囲で言えば、プレデターのパルスライフルが100以下、ミニガンを数百発詰めた状況とほぼ互角。10がMP7の5.7mm弾1マガジン、20が試験段階の6.8mm弾1マガジン程度?、30が7.26mmを長距離戦様にバレルをカスタムした状況での1マガジン、40がHMGをスナイパーとして運用した程度を数発同時にした威力、50が6ポンド砲十発分、60が88mm数発程度、70はチヌのロケット発射を数度行うのと同等、80は380mm砲弾(陸上で運用するものでは無い)数発、90が4.2t砲弾の威力になる。100は当たりどころが悪いと原子力空母を一発で沈めれる。甲板に撃つとかなり凹む。程度の威力になりうる。弾速もロールに依存するので極端に落ちる等は無い。

体感的に説明すると2.7mm弾が世界最弱の実弾でガラス片を刺した程度、9mmは非殺傷弾の範囲、弾速次第だが全身に若干の痛みが走る。割と耐えられる。5.7mm弾は対アーマー想定なので多少の誤差の変わるが人体への損傷が大きい。

やってる事ほぼマ〇オカート。


通信方法は超度し難い方法なのでお楽しみに・・・まぁ現在開示されてる情報だけで何かは予想出来ます。


量が多くなるのを避けて描写は最低限にしました。

この物語300万字以上の予定なので・・・。

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