星になったハムチャとひまわりの種
かっていたハムスターのハムチャが、ぼくがようちえんに行っているあいだにお星さまになった。
星は夜じゃないのかな
なんでおひるなのに星になれたの?
パパに聞いてみたら、「おひさまが明るすぎて見えないだけで、おひるも星はあるんだよ」と教えてくれた。
ぼくは空をさがしてみたけれど、水色の空と白い雲しか見えなくて、ハムチャの星は見つけられなかった。
『お星さまになったハムチャは、きっとコウ君を空から見守ってくれているよ』
ぼくはそれを聞くたびに、その日1番キラキラしている星をハムチャだと思って「ハムチャに会いたい」って星に話しかけてみる。
でも星はとっても遠くにあるから、聞こえていないのかもしれない。ぼくの声が届いていればいいな。
「ハムチャが流れ星になったらお空から消えちゃうの?」
ぼくは、ようちえんのマキ先生が、今日は“りゅうせいぐん”だから、流れ星が見られるかもしれないよ、と言っていたのを思いだして、ママに聞いてみた。
「きっと流れ星はおうちに帰るだけよ」
「ほんとうにほんとう?」
「きっとね」
その日の夜、少しだけ夜ふかししてママと流れ星を待つことにした。
もしかしたら、ハムチャはここに帰ってくるかもしれないから、こっそりひまわりの種もポケットにいれて。
「今日のハムチャの星はあれかなぁ」
「ママはあっちだと思うな」
ベランダで、ママと星を見ながらシートの上にねころんで、ハムチャの星を探す。
その時、空に光の線がスーッとななめに横ぎった。
「あっ!いまの、ながれぼし?」
「え? 見えたの!? ママ、みのがしちゃったー」
「もしかしたらちがうかも……」
すぐに消えちゃったから、やっぱりちがうのかもしれない。でもあれがハムチャの星だったのなら、もう会えないのかな。
「もしかしたら叶うかもしれないから、心の中で願いごとを言ってみたら?」
ようちえんの先生も言っていた。流れ星にねがいごとを言うと、ねがいがかなうかもしれないって。
「う、うん。」
――流れ星さんおねがい。ハムチャにあわせて
ぼくはポケットのひまわりの種をギュッとにぎっておねがいをした。
―――――――――
おい、おきろ! いつまでねてるんだ。
(だれ?)
おれだよ、ハムチャだよ。こうすけ。
(ハムチャはハムスターだからしゃべれないよ)
これはゆめだから、はなせるんだ。目を開けて見てみろよ。
ぼくは、なあんだゆめか、と目をあけてみた。
目をあけたら、目の前にハムチャがいて、目を細めて笑っていた。
(ハムチャ!!)
「おう、久しぶりだな。ハムスターの国にようこそ」
「ハムスターのくに?」
「夢をみているあいだだけ来ることができる国だ。ポケットにひまわりの種があればいつでも来られる」
ぼくはうれしくて手をたたこうとしたら、なんとぼくもハムスターになっていた!
小さなピンク色のて。茶色と白のふわふわの毛。短いしっぽ。
「ぼくもハムチャとおなじ、ゴールデンハムスターになってる!!」
「せっかくハムスターになったんだから遊ぼうぜ」
ハムチャはこっちにこいよ、と走り出す。
ぼくはあわててハムチャをおいかけた。
ハムスターの国は、ハムスターしかいなくて、みんなあなの中に住んでいた。
ハムチャも自分でトンネルをほって家をつくったんだって。
ハムチャとぼくは、追いかけっこをしたり、木をかじったり、トンネルをほったり、たくさん楽しいことをした。
もう走れない、というくらいあそんだところで、ハムチャは「またこいよ」とぼくのあたまをなでた。
ぼくはとても眠かったけど、がんばって目をとじないようにして「こんどは負けないぞ」とハムチャに言った。
でもねむくてねむくて、もうがんばれなくて、ぼくは目をつぶった。
―――――――――――
「こう君、寝ながら笑っていたけど、たのしい夢でも見たの?」
あさおきたら、ハムスターのくにじゃなくて、ぼくのうちにもどっていた。
ぼくは、ハムチャとあそんだことをママとパパにはなした。
「願いがかなったのね」
「パパもハムスターの国に行きたかったなあ」
それから、ぼくは毎晩パジャマのポケットにひまわりの種をいれて寝ている。
小学生になった今もかわらず。
あれから1度もハムスターの国に行けていない。
お母さんは、
『きっとまた星に願えば会えるよ。でもハムチャを忘れたら二度と会えなくなるからね』 と言った。
ぼくはハムチャのことを忘れないよ。
ずっとずっと忘れないよ。
そうだ、ハムチャ! お父さんとお母さんもパジャマのポケットにひまわりの種をいれているんだよ!
ぼくにバレてないと思ってるみたい。だから次は流れ星に3人で行きたいってお願いするからね。
みんなハムチャに会いたいんだ。
ハムチャもぼくたちに会いたいって思ってくれているといいな。