1. 夢?それとも…
………
「知らない天井だ…」
……………
!?
ガバッッ
「って何処ここ!?」
起き上がりあたりを見渡す。が、6畳程の見慣れない部屋には今まで寝ていたベッドが一つと、小窓の下に木でできた机と椅子が一脚、それと窓の向かいにドアが一つあるだけだった。
机の上に手紙のようなものがいくつも置いてあるので読んでみようとベッドからおりようとして布団から身体をだす。
………
あれ?
なんか
縮んでない??
あれ?
私もう30をとうに越えたいいオバ……もといお姉さん…だったよね?
あれ?
手も足もなんかちっちゃいんですけど…
あれ?
そう言えばさっきの自分の声も子供みたいに高い声だった……
あれ?
寝る前は、動画サイトで動画見たり、音楽聴きながらゲームして、たぶんいつも通り日をまたぐ頃に寝落ちした…はず……
曖昧な事もあるけど、自分の名前も思い出せるし、家族や親友も思い出せる……
あっ!
分かった!
明晰夢ってやつだ!
今まで覚えている限りでは夢を夢と気付いた事はないので何気に初体験だ!
よく分からないがなんか少し嬉しい。
なんだそうか。
さっきまで寝てたベットは硬くて寝心地もあまり良くなかったし、さっさと当初の目的である机の上の手紙を読んだら目を覚まそう。
なんてったって今日は誕生日だ!
親友とカラオケ行って、話題の映画を観て、しゃぶしゃぶ食べ放題に行くのだ!
寝坊は出来ない!
学生時代からの気が合う親友とは、変な夢を見た日はいつの日からだったかお互い教え合っている。この歳でも箸が転がっても笑い合える親友だ。
あの手紙の内容がくだらなかろうが意味がわからなかろうが、それすらもきっと面白がってくれるだろう。
置いてあった小さな靴を履いて少し高い机に向かい、椅子によじ登る。
「いや何通あるんだし!」
20通以上ある手紙の宛名は全て私の名前だ。
[ 咲良 詩歌 様 ]
「はぁ……よし!読もう!」
全部は覚えていられないかもしれないし、夢自体忘れてしまうかもしれない。
でも覚えてられたなら今日の話のネタにもなる。
少しだけ気合を入れて、一番手前にあった手紙を手に取った。
ビクッ
すると突然目の前に人が浮かび上がった……
土下座をして……
[ごめんなさい!
私は転がってきたあなたの魂玉に気付かず、足に当たった魂玉を蹴り飛ばしました。
知らなかった、気付かなかったとはいえ、本当に酷いことをしてしまいました。
お詫びにはならないでしょうが私からはスキル《テイム》と《念話》を贈らせていただきます。
まだ下位の神ゆえにユニークスキルは贈れず、レベルも低いものとなってしまいましたが、少しでもあなたのお役に立てればと思い私の贈れる最上のものを選びました。
これから私も他の神々と一緒に地球の主神の所へお詫びとお願いに伺います。
再びあなたを地球に戻せるよう尽力します。
どうかそれまでこの世界で生き抜いていて下さい。]
「…………………………えっ?なにこれ?」
天界?
魂玉?
スキル?
まるでラノベのような夢だ。
昔から漫画やアニメも好きだし、ラノベも読む。
「………まさか…ね…」
頬をつねってみる。
ちょっぴり痛い…が、目は覚めない。
刺激が足りなかっただけかもしれない。
なんせ私は寝るのが好きで一度寝たら中々起きない。
机の角にでも足の小指をぶつけてみようか。
現実世界でよくやる涙が出るほど痛いやつだ。
これで痛くなければやっぱり夢だ。
でもこれで痛ければ……
怖いなぁ。
意識的に足の小指をぶつけるなんてした事ないからなぁ……
よし!やめた。
とりあえず手紙全部読んじゃおう。
夢だろうとラノベ展開だろうと、読んでからまた考えよう!
よし!そうしよう!
ポジティブなふりをしたただの逃げである。