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剣聖エアリスとパーティーを組む事に

「ありがとうございます……助けて頂き、この御恩は一生忘れません。私は剣聖エアリスと申します」


 少女は語り始めた。少女の名はエアリスというようだった。それに剣聖と名乗っていた。剣聖。剣を極めし、剣に秀でた者だけが名乗れる称号であり、職業だ。


「先ほども名乗ったが俺の名はルイドだ。付与魔術師【エンチャンター】をしている」


「付与魔術師【エンチャンター】。そのお力でドラゴンを倒されたのですか!?」

(!?)


 エアリスは俺の事を羨望の眼差しで見ていた。


「そうだが……なぜ君は一人でドラゴンと闘っていたんだ? あまりに不用心ではないか? 普通ドラゴンはパーティー単位で討伐に当たる強力なモンスターだろうに」


「それは……その通りです。私はこのあたりで剣の修行をしていたのです。私って結構周りが見えなくなるところがあって、いつの間にか危険な地帯まで侵入してしまっていたようです。それで幸運なのか、不運なのかドラゴンに遭遇してしまって……」


 幸運なのか……と彼女は言っていた。ドラゴン相手に遭遇する事を幸運かもしれないと思える彼女の神経は些か異様であった。


 剣聖とは剣を極めんとせし者である。そういう人間はどこかしら頭のネジが外れているのかもしれない。魔術師だってそうだ。


 頂きを目指す者はやはりどこか逸脱している。


「遭遇してしまって?」


「生きるか死ぬかの状況になり、だったらドラゴンを倒し、生き残ろうとしたのです。そしてその事がより剣の頂きへと到る為の試練なのだと思ったのです!」


 彼女は目を輝かせていた。生きるか死ぬかのあの状況すら、この少女はどこか楽しんでいたのではないか。俺はそうだとしか思えなかった。


「……そうか。だが、今回のような無茶はおすすめしない。今回は偶然俺が通りがかったが、次も運よくこうなるとは思えない。これに懲りたら大人しくパーティーに加入してクエストに挑むんだな」


 俺はそう、忠告をした。


「質問をしてよろしいでしょうか?」


「なんだ?」


「パーティーを組むのが得策なのでしたらルイド様はなぜお一人で行動されているのですか?」


「……それは」


 この出会ったばかりの少女にどこまで話していいものか。パーティーを追い出されたと正直に言っていいものか。些か恰好が悪い気がするが、何となく嘘をついて誤魔化すのも憚られた。


「俺はパーティーを追放されたんだ。付与魔術【エンチャント】しか使えない無能は必要ないって」


「私は付与魔術【エンチャント】なる術についての知識がありません。私は剣聖、剣に生きる者です。ですが専門外の私ですらルイド様の使われた付与魔術【エンチャント】が凄いものだという事は理解できます。追い出すなどという愚行をするなど正気の沙汰とは思えませぬ」


「ありがとう。お世辞でもそう言ってくれて嬉しいよ」


「お世辞ではありません。私は正直に思った事を言っただけで。そうだ!」


 手を叩いて、エアリスは喜んでいた。何かを思いついたようだ。


「どうかしたのか?」


「良い事を思いつきました。ルイド様が私とパーティーメンバーになってくれればいいのです」


「俺がパーティーメンバーに?」


「はい! その通りです。私は時々周囲が見えなくなってしまう事があり、それでパーティーメンバーから疎まれ、敬遠されてしまう事が多かったのです」


「はははっ……」


 俺は苦笑する。確かにそうかもしれない。こんな危険地帯に一人で侵入してしまうなんて。俺も人の事は言えないかもしれないが。


「ですがルイド様なら、なんだかんだ私と付き合って上手くやってくれそうです。それにルイド様の付与魔術【エンチャント】は今後きっと必要になってくる。そんな予感がするんです」


 俺の付与魔術【エンチャント】が必要か。用済みだの、無能だのあの勇者ライアンに罵られて追い出された俺としてはエアリスのその言葉が胸に染みた。心が強く打たれた。誰かに必要とされるというのがこうまで心温まる事なのか。


「いかがですか? ルイド様さえよろしければ」


 俺の答えは決まっていた。


「いいよ。エアリス。君とパーティーを組もう」


「本当ですか!? ありがとうございます」


「こちらこそありがとう。パーティーを追い出されてから今後どうしていけばいいか思い悩んでいたんだ。君とパーティーを組んで行動していくうちにきっと何か自分のやりたい事が見えてくる。そんな気がするんだ」


 俺はこうしてエアリスの手を取った。


 こうして俺達は新しいパーティーを結成したのである。


 そして俺の、いや、俺達の新しい人生が始まっていくのであった。



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