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黎明殿の巫女 ~Archemistic Maiden (創られし巫女)編~  作者: 蔵河 志樹
第3章 憧れに至る道 (姫愛視点)
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3-14. 変化

水曜日は仕事だ。いつも通り、撮影の後で陽夏と食事に行った。

「姫愛さ、コンタクト止めた?」

「うん、止めたよ。無くても不便しなくなったし」

「まあ、しなくて済むならその方が楽だもんねぇ。それって、視力が良くなったから?」

「そうだね、良くなった。そう言えば、陽夏はコンタクトしてなかったよね?」

「そう私、結構視力良いんだよね」

以前から陽夏はコンタクトや眼鏡を必要としてなくて、羨ましいと思ってたんだ。まさか力を得たお陰で目が良くなるとは思ってなかったので、素直に嬉しい。

「それでさ。姫愛って目だけじゃなくて、動きも良くなったよね」

「え?そうかな?」

「周りの人達がどう思っているか知らないけど、私は反応速度が上がっているって感じたよ。位置取りなんかも、早め早めに動いているよね?」

「あー、それは見える範囲が広がったからかも」

「目が良くなったせい?」

「え?あ、えーと、陽夏、おまじないしてる?」

私は最近、危ない話題になりそうなときは、陽夏におまじないしているか聞くようにしている。何故か分からないけど、おまじないしているときは、巫女の話題をしても陽夏は怒らないからだ。

「ああ、ごめん。ちょっと待って」

陽夏はバッグを開いて何やらゴソゴソしていたが、直ぐに顔を上げた。

「うん、大丈夫、おまじないしてあるよ」

「ありがとう、陽夏。それでさ、見える範囲が拡がったのは、探知を使っているからなんだよね。探知使っていると、目では見えないところも視えちゃうんだよね。それで、先の予測がつきやすくなったって言うか」

「何か凄いね、姫愛。でも、動きが良くなっちゃうと、意外性って言う面白味に欠けちゃうのが問題だよね」

「そうだね。仕事に支障出ないと良いんだけど」

「まあ、そこら辺は上手くやるしかないよね。どのみち姫愛は姫愛なんだし、キャラぶれ起こさなければ大丈夫じゃないかな?」

「ありがとう、陽夏」

うーん、確かに色々視えてしまうと不意打ちを受けにくいんだよね。まあ、不意打ちを受けたくないから探知してるんだけど。

そうは言ったって、相変わらずホラーは苦手だし、そこら辺は変わってない。そう言う変わってないところをアピールするかなぁ。

「他に何か私の変化で気が付いたことってある?」

「うーん、まだ大丈夫だけど、戦ってばかりだと、そう言う雰囲気が態度に出ちゃうから注意した方が良いと思うよ」

「雰囲気?」

「そう。例えばだけど、それまでゆるふわキャラだった人が、きつい感じの人になっていたら驚くでしょう?」

「確かに、そうだね」

「まあ、姫愛の場合は元気良いキャラだから、少し剣呑なところがあっても目立たないとは思うけど。ほら、良くテレビであるじゃない?何の気なしに後ろから肩を掴んだら、反射的に反撃されて驚いちゃう奴。そう言うのはやらない方が良いんじゃないかなって」

「なるほどねぇ。うーん、でも、そう言うときに、上手く振る舞えるか自信がないよ」

「姫愛はさ、とても強くなったと思うから、少しくらい何かされても問題ないんじゃない?だから、日ごろはあまり構えてなくても大丈夫だよ。そうやって余裕持っていれば、雰囲気も自然と柔らかくなるだろうし、良いと思うんだ」

「分かった、やってみるよ。でも良く思い付くね。私には考え付かなかったよ」

「まあ、ちょっと想像しただけだよ。でも、そう言う振る舞いをする話と、周りを警戒するのは別だからね」

「え?緩く振る舞うだけじゃ駄目なの?」

「当たり前じゃない。何が起きるか分からないもの。例えば、建物に何かが爆発するような仕掛けがしてあるとか。自分はともかく、周りの人達が巻き込まれないかとか、気にしないといけないことはあると思うけど」

「それは分かったけど、警戒しているのに、その素振りを見せないとか、私には高度すぎるよ」

「日ごろから意識して訓練するしかないんじゃない?」

「うー、訓練することが多すぎるよ」

「だってあなたがそうなることを選んだんでしょ?」

「まあ、そうだけどさ」

何だか柚葉ちゃんだけでなく陽夏も私に厳しいと思うのだけど、気のせいなのだろうか。

「じゃあ、それで怪しい人とか見つけたらどうしたら良いかな?」

「マーキングじゃないかな?」

「マーキング?」

私が疑問を呈したら、陽夏があっという顔をした。何かあったのだろうか。

「あ、いやぁ、何と言うか、目印かな。怪しい人には目印を付けておいた方が良いじゃない?あとで見つけられるように」

「目印が付けられるの?」

「うーん、付けられそうな気がするかなぁって」

「え?どうやって?」

「それはぁ、姫愛に力の使い方を教えてくれる人に聞いてみるとか?」

「あ、藍寧さんに聞いてみるってことだね」

「そ、そうそう、そうだよ」

「お師匠様も、藍寧さんに探知陣のことを聞いてみてって言ってたしね」

そこで陽夏が興味を持った顔をした。

「お師匠様?探知陣?」

「ああ、お師匠様って、前に話したと思うけど私にダンジョンのこと教えてくれた女子高生ことなんだ。私に色々力の使い方を教えてくれるんで、お師匠様って呼んでるの」

「え?ちょっと待ってよ。その女子高生って力が使えるってこと?」

「そうだよ。だからお師匠様なんだし」

「そうじゃなくて、あなたが力を貰う前から知り合いだったんじゃないの?」

「そういえば、そうだね。でも、お師匠様は先を良く見ているから、こうなるって分かっていたのかも知れない」

「どういうこと?」

「どうやってか知らないけど、お師匠様は、私が藍寧さんから力を貰うことになるって予測していたみたいなんだよね。それに、これからどうなるかも分かっているみたいだし」

「どうなるって?」

「成長の壁にぶつかるだろうって。体と力の相性が悪くて、力が余り出せないかもって」

「そうなんだ」

陽夏は、少し考える風な顔をした。

「それでそうなったときは、どうしたら良いかお師匠様はアドバイスしてくれたの?」

「うん、藍寧さんに相談しろって」

「藍寧さんに?」

「そう、藍寧さんならその問題を解決してくれるだろうって。でも、どうやってかは教えてもらえなかった」

「姫愛は、お師匠様が方法まで知っていると思ったの?」

「何となくだけど、お師匠様はそこも予想が付いているんじゃないかと思ってる」

「そう」

陽夏が何かを考えている。

「陽夏、どうしたの?」

「いや、何でもない。それでさ、探知陣って何?」

「探知をするための作動陣だって言ってた。お師匠様も知らないけど、きっとあるだろうって。それで、それを使う方が効率的だろうからって」

「効率的?」

「そう。体との相性で力が出なくても、効率良く力を使えば良いだろうからって。ただ力で探知を使うより、探知陣を使った方が効率が良いだろうって」

「それって、効率が良ければ、同じ強さの力でもより多くのことができるってことだよね?」

「うん、そういう風に言われた」

「そうなんだ。それで探知陣はあったの?」

「まだ聞いてない。藍寧さんに会って欲しいってお願いはしてあるの。だから今度藍寧さんに会ったときに探知陣を教えてってお願いしようと思ってる。それから、目印の付け方も教えてもらえるようにお願いするつもり」

「藍寧さんに教えてもらえると良いね」

陽夏が私に向かって微笑んだ。でも、その微笑みにはちょっと陰りがあるように感じた。何かを悩んでいるんだと思うんだけど、こういう場合は私から尋ねても絶対に話してはくれない。そういうところ、水臭いと思うんだよね。頼りないかも知れないけど、せめて悩みくらいは共有して欲しいなと思う。

試しに言ってみようか。

「あのさ、陽夏」

「何?」

「言いたくなければ言わなくて良いんだけど。陽夏、何か悩んでいない?」

「え?別に悩んではいないよ?」

「そう?さっきから何か考え込んでいる風だったからさぁ」

「そうかな?何も問題ないよ?」

怪しいけど、やっぱり話してはくれなさそうだ。

「それなら良いんだけど」

だけど、話して貰えないのは寂しいかな。


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