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黎明殿の巫女 ~Archemistic Maiden (創られし巫女)編~  作者: 蔵河 志樹
第3章 憧れに至る道 (姫愛視点)
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3-13. 探知の訓練

私たちは戸山ダンジョンに到着した。柚葉ちゃんは、スマホでどこかに連絡してお願いをしているようだった。

「では、愛子さん、ダンジョンに入りましょうか」

「ダンジョンの中でもアイマスクするの?」

「はい、そうしてください。訓練ですから」

「分かりました」

私はダンジョンに入ると、ヘルメットのライトを消してアイマスクをした。そして探知を使いながら歩き始めた。きちんと周囲の状況が把握できなくて、途中何度か足を引っ掛けて転んでしまった。そこで、足の周りの探知を念入りにすることにしたら、足を引っ掛けることが無くなった。やっぱり、実践で慣れるのが早道なのかなぁ、と思ったが、柚葉ちゃんの思考に毒されてしまったか。

「そうそう、愛子さん、ここまでは割と近接探知の方を使っていたと思いますけど、ダンジョンの中では遠隔探知にも注意を払ってくださいね」

「遠隔探知で魔獣を見つけるってこと?」

「それもありますけど、魔獣が群れているか、戦っている最中に別の魔獣が近づいていないか、他の探索している人たちに近づいていないかにも気を使って欲しいんです」

「他の人には近づいちゃいけないんだね」

「ええ、他の人には見せたくないので」

「確かにそうだね」

そう、こんな訓練やっているところ見られたら、ヤバい奴だと思われちゃうよ。

それで、私は遠隔探知も使いながら中に入っていった。

「魔獣がどこにいるか分かりますか?」

「全然分からない」

「では、奥の方に進んで行って、魔獣らしいのが居ると思ったら教えてください」

私はそのまま奥に進んだ。しばらくは魔獣らしい気配を感じなかったので、どんどん奥に進んで行ったら、あるところで反応があった。

「この先に魔獣がいるみたい」

「どんな魔獣か分かりますか?」

「分からない」

「それなら、種類の見当がつくまで進みましょうか」

いまのところ、探知だけで種類が分かるような気がしていないんだけど。そう思って近づいていったら、種類が分からないまま、魔獣にかなり近づいてしまった。

「まだ種類が分かりませんか?」

「そうだね。背が低そうという程度?」

「では、感覚を覚えて欲しいのですけど、いま視えている魔獣はトラみたいなものです」

「分かったけど、それで目隠ししたままこの魔獣と戦うの?」

「ええ、そのために来たので。いままで覚えたことを、フルに生かしてくださいね」

「はい、お師匠様」

私は覚悟を決めた。剣を握って魔獣に近づく。もちろん、体に力を巡らして、いつでも対応できるようにしてだ。

魔獣まで15mほどのところまで近づいた時、相手の方に動きがあった。私が近づいているので警戒しているようだ。

私はトラみたいな魔獣との戦い方を思い出しながら歩いていった。相手の間合いに入ったとき、いきなり飛び掛かってくるような気配を感じたので、左手で防御障壁を張りつつも、剣で魔獣の攻撃をいなすように動いた。そして、敵の攻撃を躱すと同時に、身体強化で力を底上げして、魔獣に向けて剣を振り下ろす。目には見えていないけど、きちんと攻撃が入った感触があった。いや、少しずれたか。

再度の魔獣の攻撃を同じように躱して、今度こそ魔獣の首筋に剣を振り下ろす。しかし、まだ倒れない。倒れなかったが、魔獣の動きが慎重になった。いままでのようにカウンターでの攻撃ができなくなってしまった。

仕方がないので私の方から前に出る。逆に私の方がカウンターを受けそうになって、慌てて避ける。私の体勢がぐらついたのを見て、すかさず攻撃してきたので、最初と同じ要領でカウンター攻撃を仕掛けた。

魔獣の動きが鈍くなったが、手負いになったときほど危ないものは無いので、慎重に相手の下半身を狙い、動けなくしてから止めを刺した。

「お師匠様、やりましたよ」

「愛子さん、おめでとう。無理かもと思ったけど、一人で斃せましたね。凄いです」

無理かもと思ったのなら、やらせないで欲しいんだけど。

「じゃあ、次に行きましょう」

「え?魔獣は放っておいて良いの?」

「ああ、これは転送します」

柚葉ちゃんが何かをしたらしく、斃された魔獣の気配が無くなった。

「どこに送ったの?」

「私の協力者のところです。上手く魔獣を処分してくれることになってます」

「運ばなくて良いのは助かるけど」

「すぐ次と戦えて嬉しいでしょう?残念ながら、入り口まで自分で運んでいないので、討伐数には含められませんけど」

「もしかして、このまま連戦なの?」

「ええ、今日だけでもあと4~5体はいけますよね」

行けるとは思うんだけど、ハードですね。そんなこと柚葉ちゃんには言いませんけど。

そして結局、あと5体斃しました。最後の6体目を斃したら、柚葉ちゃんが今日の訓練の終了を告げました。

「お疲れさまでした。今日はここまでにします。アイマスクを外しても良いですよ」

おお、やっとアイマスクが外せますよ、と思って外したら真っ暗でした。

「お師匠様、真っ暗なんですけど」

「それはダンジョンの中ですからね。灯りは無いですよ」

「アイマスクする意味あったんですか?」

「そうですね。気持ちの問題でしょうか。アイマスクしていれば、視覚には頼ろうとは思わないでしょう?暗くても視力を強化すればある程度は見えてしまいますからね」

「まあ、そうかも知れませんけど。お師匠様も、探知だけで歩いていたんですね」

「ええ、そうです」

柚葉ちゃんにとっては何てことないことなのでしょうね。真っ暗なダンジョンの中を二人で入り口に向かって歩いた。歩きながら、柚葉ちゃんが教えてくれた。

「探知ですけど、探知するものを絞れば絞るほど遠くまで探知できます。つまり、コツをつかんで効率良く探知できるようにならないといけないんです。そのために、探知は日ごろから使い続けてくださいね」

「何をやっていても、ですか?」

「はい、何をやっているときでも、です。あと、さらに効率を上げられると思う方法があります」

「何でしょう?」

「探知陣を使うことです」

「探知陣ですか?」

「ええ、力の使い方に作動陣を使う方法があるのは知っていますよね?」

「はい」

「作動陣の一つに探知陣があると思うのです」

「思うんですか?お師匠様は知らないんですか?」

「ええ、知りません。けどきっとあると思っています」

「お師匠様が知らないのをどうやって知れば?」

「愛子さんには教えてくれる人がいるでしょう?」

「え?」

「藍寧さんですよ」

「ああ、藍寧さん」

「そう、彼女ならきっと知ってます。遠隔探知陣を教えて貰ってください。教えて貰ったら、私にも教えてくださいね」

「分かりましたけど、探知陣を使った方が効率が良いんですか?」

「予想でしかないですけど、多分合ってると思いますよ。基本的に作動陣を使った方が効率が良いんです」

「そういうものなのですね」

「ええ、まあ、正確なことを知りたかったら、それも藍寧さんに聞いてみても良いんですけど」

「教えてくれますかね」

「物は試しです」

はい、おっしゃる通りです、柚葉ちゃん。

話をしているうちに入り口に辿り着いた。外に出たら明るかった。

「愛子さん、帰り道でもアイマスクしていきますか?」

「いえ、今日の訓練は終わりですよね、お師匠様。でも、探知は使い続けますよ」

探知も使っていると、目で見えないものまで感じられて、日頃見ている景色とは違うものを見ている気分になる。柚葉ちゃんは、ずっとこんな景色を見て来たのだろうか。



柚葉ちゃんと別れて、私は藍寧さんに念話で連絡を取って、会いたいことを伝えた。藍寧さんは平日は大体仕事があるらしく、次の金曜日の午後なら私の相手が出来るということだったので、金曜日の午後に会うことにした。

そして翌日の火曜日の放課後も、前日と同じように学校の裏手で探知と治癒の訓練をした。ダンジョンで魔獣と戦ったことで感覚が養われたのか、自分でも上達しているのを感じた。そして、剣に力を乗せる方法も教えてもらい、柚葉ちゃんと二人で戸山ダンジョンに潜って、魔獣を7体斃した。剣に力を乗せると、魔獣に与えるダメージが大きくなって、より斃しやすくなった。

そして水曜日はいつものように仕事に出た。


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