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黎明殿の巫女 ~Archemistic Maiden (創られし巫女)編~  作者: 蔵河 志樹
第3章 憧れに至る道 (姫愛視点)
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3-8. 単独での討伐

私たちは戸山ダンジョンに向かった。B級ライセンスを取るのに、特にダンジョンの指定はないので、近くて良く知っているところということで決めたらしい。

ダンジョンに入ると、まず私が戦闘に慣れることと、ミステリー研究部員の復習を兼ねて、私が礼美ちゃん、百合ちゃん、佳林ちゃんと順番にペアを組んで、魔獣と戦った。中型の魔獣だと、二人一組での戦いは、そんなに難しくないと思った。大体は、どちらかが盾を使って気を引いている間に、もう一人が横なり背後から攻撃することを繰り返せば斃せたからだ。

その三体を皆で分担して担いで入り口まで戻り、魔獣買取窓口に出したあと、今度は一人ずつやってみることになった。

最初に佳林ちゃんがやってみた。礼美ちゃん、百合ちゃん、佳林ちゃんと私の4人の中で、一番戦い方が上手いからだ。相手は中型のイノシシのような魔獣だった。佳林ちゃんは、盾で魔獣の突進を受け流しながら、隙を見て剣を突いて反撃する、というスタイルで戦って、見事に魔獣を斃すことに成功した。

「柚葉さん、斃せました」

佳林ちゃんが嬉しそうに報告していた。

「うん、できたね。でも単独討伐は、斃した魔獣を入り口まで自分で運ぶところまでやらないといけないから。魔獣をこの袋に入れて、担いで行ってね」

「はい」

「私が手伝いましょう」

清華ちゃんが佳林ちゃんを手伝って、二人で魔獣を袋に入れて担いだ。

「じゃあ次だね。愛子さん、やってみる?」

「うん、やってみる」

次に見つけたのは、トラのような中型魔獣だった。このタイプの魔獣は、すばしっこいし、爪が鋭いので要注意だ。盾よりも剣を使って相手の攻撃を躱しながら、反撃する方が安全だ。習ったことを思い出しながら、慎重に戦った。そして、二人で戦うよりよほど時間が掛かったけど、何とか一人で魔獣を斃すことができた。

「柚葉ちゃん、やったよ」

「おめでとう、愛子さん。これで一歩前進だね」

本当だ、あと19体だ。

「清華、悪いんだけど、二人に付いて入り口まで行って貰っても良いかな?」

「ええ、良いですよ」

「じゃ、お願い。あと、これ、二人の魔獣単独討伐証明書。書いておいたから、受付で渡してもらえる?」

「分かりました」

清華ちゃんが、佳林ちゃんと私を連れてダンジョンの入り口に向けて歩き出した。

「そういえば、清華ちゃんも柚葉ちゃんみたく武器も防具も持っていないけど、大丈夫なの?」

「はい。柚葉さんほどではないですけれど、私も武器が無くても魔獣と戦えますから」

そうなんだ。女子高生強いなぁ。妙に感心しながら清華ちゃんに付いて行くと、すぐに入り口に到達した。そこで単独討伐証明書を出してもらいつつ、魔獣買取窓口に魔獣を出した。

それからしばらくその場で待っていたら、柚葉ちゃんが礼美ちゃん百合ちゃんを連れて戻ってきた。礼美ちゃんと百合ちゃんも魔獣の入った袋を担いでいたので、斃すのに成功したらしい。

礼美ちゃんたちの手続きも終わったところで、柚葉ちゃんが全員を集めた。

「これで全員、中型の魔獣の単独討伐に成功したことになります。今日は、あと一体ずつ斃してもらおうと思います。そして、あとはこれを繰り返せば、B級ライセンスは取れます。でも、絶対に一人でダンジョンに入ってはいけません。まあ、単独討伐の証明には、指導員かA級以上が二人必要なので、一人で入ることは無いとは思いますけど、そうでなくても危険なので、一人で入るのは駄目です。良いですね?」

「はい」

「愛子さんも良いですね?絶対ですからね。一緒に行ける人がいないときは、必ず私に声かけてくださいよ」

「柚葉ちゃんの言う通りにします」

柚葉ちゃん、また私に付き合ってくれるって言ってるんだ。本当に優しいなぁ。

そのあと、また皆でダンジョンに入って、一体ずつ単独討伐して、その日の活動は終わった。



翌日の火曜日も、いつもの訓練のあとに戸山ダンジョンに行き、一人二体ずつ魔獣を斃した。これで四体ずつになった。しかし、残念ながら、水曜日からは仕事が続いてダンジョンには行けない。

土曜日の仕事帰り、仕事でずっとダンジョンに行けていないことを陽夏に愚痴ったら、逆に怒られてしまった。

「姫愛さぁ、夢に向かうのも良いけど、まずは生活をきちんとしないとでしょ。仕事無くしちゃヤバいってば」

「まあ、そうだよね。それは分かっているんだよ。だからせめて愚痴らせて」

「はいはい。でもそれ言うの、私の前だけにしなよ」

ありがとうございます、相棒様。

「それにしても、明日も仕事が入ってしまうとは」

「だから、そっちの方が本筋でしょう?」

駄目だ、呆れられた。大丈夫だよ、仕事はきちんとやるからさ。そして、基礎訓練とランニングは、毎日欠かさずやっているしね。私だって、努力できるんだよ。

そして、月曜日と火曜日は、放課後に学校に顔を出せたので、そこで二体ずつで、計八体にまで到達した。礼美ちゃんたちは、順調に数を伸ばして十四体だった。そのペースだと、今週中に二十体単独討伐達成だねぇ、良いなぁ。

それからまた、私は仕事の日々となった。誤解があるといけないけど、仕事は仕事で楽しい。それは間違いない。でも、それ以上に、夢に向かって進んでいる実感を持ちながら、ダンジョン探索する時間がたまらなく素敵に感じるのだ。

金曜日の夕方、喫茶店メゾンディヴェールに行くと、最早それが当たり前かのように柚葉ちゃんがカウンターに座っていた。実は先週も柚葉ちゃんはいたんだけど、土日とも仕事で埋まりダンジョンに行けない私は、その悲しい思いを柚葉ちゃんに伝えただけだった。

私は柚葉ちゃんの隣に座ると、琴音さんに今日のパスタが何かを尋ねた。

「今日は、イカ墨のスパゲッティです」

「じゃあ、それを一人前で。珈琲はキリマンジャロをください」

「はい、畏まりました」

注文を終えた私は、柚葉ちゃんの方に笑顔を向けた。

「愛子さん、嬉しそうですね。明日か明後日、仕事が入らずに済んだんですか?」

「いやー、そうなんだよね。日曜日、オフになったよ」

「仕事が減ると収入も少なくなるんじゃないですか?大丈夫ですか?」

「一日くらい減っても大丈夫だって」

「そうなんですか?」

柚葉ちゃんに目を細められたよ。一応、計算はできているから大丈夫だって。ん?先のことは考えないのかって?大丈夫、きっと何とかなる。

「それでさぁ、柚葉ちゃん、明後日の日曜日、一緒にダンジョンに行って貰えないかな?」

「良いですよ。ただ、一つお願いがあるのですけど」

「何?私にできること?」

「ええ、でも、それはダンジョンに行くときに言いますね」

何だろう、直ぐに言ってくれないとか怖いんだけど。

「ま、まあいいわ、日曜日に言ってくれれば」

私の顔が引きつっていたかも知れないけど、柚葉ちゃんはお構いなしに話を進めた。

「それじゃ、日曜日の集合は10時に学校の校門で良いですか?」

「良いよ。それでお願い」

話が決まったところで、珈琲とサラダが出て来た。

「そういえば、柚葉ちゃんは夕食は家で?」

「ええ、まあ自炊もしますけど、適当に買って帰って簡単に済ませちゃうことが多いかな」

「あれ?自炊?一人暮らしなの?」

「話してなかったでしたっけ?そうですよ、一人暮らしです」

「えー、だったらここのスパゲッティ食べたら?美味しいよ」

「そうですね、今度一緒に食べましょうか。愛子さん、いつも美味しそうに食べてるから、私も食べてみようかなって思うことはありました」

「うん、美味しいからね、本当に」

「あら、愛子さん、ありがとうございます」

気が付いたら、琴音さんが横に立っていた。

「あー、いやー、どうも。でも、本当に美味しいので」

「そう言っていただけると嬉しいです。はい、今日のイカ墨のスパゲッティです。どうぞごゆっくり」

美味しそうながの出てきました。

「はい、いただきます」

柚葉ちゃんとの会話は中断して、食べるのに集中した。

「本当に愛子さんは美味しそうに食べますね」

柚葉ちゃんが私を見て笑っていた。いいじゃん、本当に美味しいんだから。

私は良く味わいながらスパゲッティを平らげ、一息つきながら食後の珈琲を楽しんだ。

「それじゃ、私は仕事に行くね」

珈琲も飲み干すと、私は仕事に向かうために席を立った。

「はい、じゃあ、明後日の朝に」

「うん、よろしくね。琴音さん、ご馳走さまでした」

「はい、またいらっしゃいませ」

私は明後日のダンジョン行きのことを楽しみにしつつ、店を後にした。


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