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黎明殿の巫女 ~Archemistic Maiden (創られし巫女)編~  作者: 蔵河 志樹
第3章 憧れに至る道 (姫愛視点)
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3-7. 魔獣討伐訓練

日曜日、学校に入れるか不安だったけど、校門が開いていて入れるようだったので安心した。校門には誰もいなくて、早く着き過ぎたかなと思って待とうとしたら、制服姿の柚葉ちゃんがやってくるのが見えた。

「柚葉ちゃん、おはよう」

「おはようございます、愛子さん」

「今日は、よろしくね」

「ええ、こちらこそ」

「それで、これからどうする?」

「まずは部室で着替えてから、いつもの訓練ですね。あとランニング」

「分かった。じゃあ、部室に行って着替えよう」

部室で、柚葉ちゃんは学校の体操服に、私もTシャツに短パン姿に着替えた。

着替えた後は、校舎の裏手に行って、柔軟やって、それからランニングに出た。

「柚葉ちゃんたちは、決まったランニングコースがあるの?」

「そうですね。特に決めているわけでもないけど、大体いつも同じような道を走ってます」

そうして、柚葉ちゃんに導かれるまま、学校の周りの道を五周した。まだ、そんなに体力作りが出来ていない私は、それだけでへばった。

「柚葉ちゃん、休憩」

「ちょうど体が温まってきたところなのですけど、まあ、良いです。少し休みますか」

ありがとう、助かったよ。

休憩して回復した私は、いつもの訓練メニューをこなした。それから、柚葉ちゃんの体当たりを盾で受け止める練習や、柚葉ちゃんに木剣を打ち込む練習もした。木剣は、柚葉ちゃんに当てればアイスを奢ってもらえると言われて頑張ったけど、結局一度たりとも掠りもしなかった。柚葉ちゃんの身体能力が高いのか、私がまだまだなのか。ミステリー研究部のメンバーも清華ちゃん以外はまだ誰も当てたことが無いと聞いて、私だけが駄目なのではないと知り、少し安心した。

そうして基礎訓練をやっていたら、お昼になった。


「やったー、お昼だー、お腹が空いたぁ」

「愛子さん、良い大人なのにはしゃぎすぎ」

「いやなんか訓練やったという達成感がね。お腹空いたからお昼はがっつり系が良いかなぁ。牛丼とかスタミナ定食とか食べたいな」

「愛子さんの好きなお店で良いですよ」

「ありがとう、柚葉ちゃん。今日訓練に付き合ってくれているお礼にお昼奢るよ」

「良いんですか?ありとうございます、愛子さん」

そして私たちは近くの定食屋に入った。私はかつ丼のサラダと味噌汁付きを食べてお腹一杯になって満足した。柚葉ちゃんはから揚げ定食を食べていた。

「それにしても、柚葉ちゃんはどこで戦い方を覚えたの?」

食後のお茶を飲みながら、柚葉ちゃんに尋ねてみた。

「故郷の南の島でですね。島では皆戦うのが当たり前でしたから」

「そうなんだ、戦うのが当たり前の土地もあるってことなんだ。知らなかった」

「まあ、私の生まれ育った島は特殊だったのかも知れませんけど」

「戦士の島ってこと」

「いえ、普通は農業やってますよ。ただ、人数が少ないので、いざという時には皆で戦えるように日頃から訓練してるんです」

「ふーん、どういうところなのか、一度行ってみたいかな」

「何もないところですよ。でも、空気も海も綺麗です」

何もないって言っているけど、島が大好きって顔をしているよ。

「今度の夏休みに帰ったりするの?」

「いえ、いまのところ、帰るつもりはないです」

「え?寂しくないの?」

「まあ、寂しいこともありますけど、目的があってこっちに来ているので、それをやり遂げるまでは帰らないつもりなので」

「目的って」

「んー、いまは内緒ですかね。そのうち話すことになりそうですけど」

どういう意味なんだろう。そのうち教えてもらえるってことかな?

「そのうち?」

「ええ、多分、そんなに遠くないうちに」

柚葉ちゃんがニッコリ微笑んだ。この話はここまでってことね。

「分かった。じゃあ、そろそろ学校に戻って続きをやろうか」

「そうですね、そうしましょう」

私たちは定食屋を出て、学校に戻った。


午後は、魔獣の斃し方について教わった。いくつかの魔獣について、複数人のときにどうするか、一人のときにどうするか、セオリーのようなものを教えてもらった。そして、その型を柚葉ちゃん相手に何度も繰り返し練習させられた。

「うん、まあ、こんなものかな」

二時間くらいぶっ通しで練習させられて、私はへとへとになっていた。柚葉ちゃんもずっと私に付き合っていたのに、全然疲れた風に見えないのは何故なんだ。

「柚葉ちゃん、疲れたんだけど」

「そうですね、休憩にしましょう」

「え、まだあるの?」

「ご希望であれば、いくらでも」

「い、いや、今日はこれくらいってことで」

「何だ愛子さん、根性がないですね。まあでも、一日に詰め込み過ぎても良くはないですか。今日やったことを家に帰ったらきちんと復習しておいてくださいよ」

「はーい」

何とか訓練の続きから逃れられたみたいだ。体力の限界に近づいていたので助かった。

私たちは部室に戻って着替えた。

「やっぱり、そう簡単に魔獣を斃せるようにはならないかぁ」

「そうですね。力任せにやってやれないことも無いかもですけど、効率は悪いし、危険ですし」

「まあ、そうだよね」

柚葉ちゃんの言いたいことは分かる。

「とは言っても愛子さんも上達してきてるので、明日からは部の皆と一緒にダンジョンに行きましょう」

「おー、ようやくダンジョンに行けるんだ」

疲れているけど、やる気が湧いて来た。

「はい。だから、今日は訓練の復習をした後は、ゆっくり休んで明日は体調を万全にしてきてください」

「おっけー、任せておいて」

「では、そろそろ出ましょう」

部室を出ると、柚葉ちゃんが鍵を閉めていた。その鍵を職員室に戻しに行くのに付き合って、そのまま一緒に校舎の外に出た。駅までの道の途中で柚葉ちゃんと別れ、電車に乗って家に帰った。柚葉ちゃんからは復習するようにと言われていたけど、とりあえず休もうかとベッドに入ってしまったら、気が付いたら翌朝だった。


「良く寝てしまった」

起きた時の第一の感想がそれだった。夕食まで一眠りのつもりが、まさか一晩寝てしまうとは。取り敢えずベッドから出てシャワーを浴び、着替えて家にあるもので朝食を取った。

今日はバイトは入れてなかったので、本業の方のボイストレーニングや、昨日の訓練の復習やランニングをして過ごし、部活動の始まる放課後に学校に行く。

「こんにちはー」

「あ、愛子さん、こんにちは」

部室の扉を開けて中に入ると、既に皆揃っているようだった。

「あれ、私が一番後になっちゃったか、遅くなってごめん」

「大丈夫ですよ、皆来たばっかりですから」

礼美ちゃんが教えてくれた。とは言え私も急いで着替えねば。

「それでなんだけど」

私も含めた皆が着替え終わったところで、柚葉ちゃんが皆を見回して言った。

「そろそろ皆もダンジョンに慣れて来たので、皆にB級ライセンスを取ってもらおうと思います」

え、私だけではなくて、皆にもB級ライセンスを取らせようというの?

「あのう、質問良いですか?」

「はい、百合ちゃん、何?」

「B級を取るには、魔獣単独討伐20体達成が必要ですけど、単独討伐の証明には、指導員に見てもらうか、A級の人二人以上が確認することになっていますよね。その確認はどうするのでしょうか?」

「ん?何も問題ないよ。私、指導員だから」

「え?指導員ということはA級なのですか?」

「そうだよ」

どうやら、柚葉ちゃんがA級で指導員であるという事実は、誰も知らなかったようだ。皆が驚いたような顔をしていた。一番早く立ち直ったのは、清華ちゃんだった。

「そうですね、柚葉さんの実力なら、A級ライセンスを持っていて当然でしたね」

「うん、遠足のときの魔獣との戦いも凄かったものね」

「遠足の時?」

思わず礼美ちゃんに尋ねてしまいました。

「4月の遠足の時に、中型の魔獣12体の群れに襲われたんです。その魔獣の群れを柚葉さんが一人であっという間に殲滅しちゃって」

「それってどういう戦い方だったんですか?私も見たかったです」

佳林ちゃんの目が輝いているよ。私も気になるけど、魔獣12体を一人でって、なんか次元の違う強さだよね。だからA級なのか。

「えーと、盛り上がっているところ悪いんですけど、そろそろ訓練してダンジョンに行きたいと思います」

柚葉ちゃんの言葉を受けて、皆は話を切り上げて出発の準備を始めた。剣と盾を持って校舎の裏手に行き、柔軟をして体を解した。

そしてダンジョンに向かう。いよいよ魔獣との戦いだ。


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