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黎明殿の巫女 ~Archemistic Maiden (創られし巫女)編~  作者: 蔵河 志樹
第2章 友情の涙 (清華視点)
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2-30. ダンジョン大会当日

次の土日は、ミステリー研究部の皆で東京ダンジョンに行きました。

東京ダンジョンは、日比谷公園にあります。東京にあるダンジョンの中でも、一番大きい大型ダンジョンだと言われています。

私たちが大会で使うことになる東京ダンジョンの一層の地図は、そこのダンジョン管理協会の売店で売ってしました。実を言えば、単に地図だけであればネットでも公開されていたのです。でも、売店で売っていた地図は、濡れても大丈夫で、破れ難い丈夫なものでしたので、ダンジョン探索に丁度良いと言うことで、部の活動費からお金を出して買うことにしました。

それからリヤカーの運び方が悩ましかったのですが、そちらは結局、三枝先生が学校の軽トラで運んでくれました。

そして潤子さん達は、土日それぞれ、午前中に2回、午後に4回45分間の魔獣狩りに挑み、2体は確実で、たまに3体という成績を残しました。

「今の方法では、3体が精一杯だな」

「そうですね、それでも随分と慣れて来ていますけれど、移動時間を考えると4体目まで行くのは難しそうですね」

潤子さんと礼美さんが顔を見合わせていました。

そして次の週の木曜日、三枝先生に呼び出された潤子さんが部室に戻ってくると、皆に嬉しそうに報告してきました。

「三枝先生が、探知器の改良について、検討してくれたよ。そして、これを貸してくれた」

潤子さんの手にはサングラスのようなものがありました。

「潤子さん、それは何ですか?」

「レミー、これは網膜投影型ディスプレイと言って、パソコンの表示を直接網膜に当てて見えるようにしてくれるものなんだ」

「網膜に直接ですか?」

「そうだ。物は試しで、掛けてみてくれないか。私は既に試したよ」

「分かりました。貸してください」

礼美さんが潤子さんからサングラスのようなものを受け取って、眼に掛けました。サングラスのようなものからはケーブルが出ていて、タブレットPCに繋がっています。

「あ、なんかパソコンの画面が見えますね。凄いです」

「そうだろう、そして、探知器のソフトも先生がバージョンアップしてくれたよ」

「そうみたいですね。人のところに、マークが出て、距離と大きさを表示してくれます。そして、視界の外だと画面右側に右方向に何体、画面左側に左に何体って出ますね。前より使いやすそうです」

「私たちのコメントを聞いて、先生が考えてくれたんだ。これなら私も最初から戦いに参加できるし、時間短縮にも役立つんじゃないか」

「ええ、潤子さん、とても良いと思います」

その週の土曜日、この新装備を使って東京ダンジョンで試してみたところ、大体コンスタントに3体を斃すことができるようになりました。

そして、日曜日、ダンジョン大会の本番の日が来ました。



ダンジョン大会当日は、10時に日比谷公園に集合ということにしていました。開会式が、その10時で、10時半から魔獣狩りの最初となる中学生の部が始まることになっていたのを考えてのことです。

その日は、最初からダンジョンに入れるように、皆がパンツ姿でした。柚葉さんと私はダンジョンには入れませんが、皆に合わせてパンツを履いてました。

「皆、時間通りに集まってくれてありがとう。今日はいよいよ本番だ。これまでの練習の成果を活かして、良い成績が取れるように最善を尽くして欲しい」

潤子さんは、皆を見渡しました。皆の方も潤子さんに最高の思い出を作ってもらえるようにという気持ちで一杯です。

「潤子さん、今日は精一杯やりましょう」

礼美さんが代表して、潤子さんの言葉に応えました。

さて、潤子さん達が出場する高校生女子の部は、中学生の部の次で、11時15分開始です。まだまだ時間はありましたが、潤子さん達は集合場所に行って、柔軟などやって体を解していました。そこには、中学生と思われるチームや、私たちと同じ女子高校生のチームが、準備運動や型の練習など、ダンジョンに入る前の下準備をしていました。

ダンジョン大会の会場となっていた日比谷公園には、野外ステージが設置されていたり、食べ物や物販など各種の出店が出ていたりと、お祭りを盛り上げるものが並んでいました。ですけれど、魔獣狩りが終わるまでは、それらはお預けのようです。

10時半になって中学生の部が始まりました。中学生は30分ということになっています。チームの数は、高校生女子の部と同じで10組ということになっているらしく、それぞれにダンジョン管理協会の指導員が付いて中に入っていきました。

そして、ダンジョンに入ってから20分を過ぎてから、ぽつぽつと帰還してきて、9組が戻ったところで30分を過ぎ、最後の1組は残念ながら時間超過で失格となっていました。9組の成果は1体で、2体斃せたチームは1組だけでした。時間からしてあまり奥までいけないので、この結果は仕方がないともいえます。優勝したのは2体を斃したチームでした。

「中学生の部が終わりましたね。次は潤子さん達の番です」

「何度も練習してきたと言うのに、いざとなるとやはり緊張してしまうな。カーリン、リーダー役をしっかり頼む」

「はい、潤子さん、皆で頑張りましょう」

「佳林、あなたが一番の経験者だから落ち着いて皆の様子をきちんと把握して行動するようにね」

「任せてください、清華さん」

佳林は、この大会に向けた練習中、いつもリーダー役をやってきたためか、頼もしくなった感じがします。

「礼美や百合さんも精一杯やってね。だけど、安全第一だからね」

「柚葉、分かってる」

「柚葉さん、見ていてくださいね」

礼美さん達はリヤカーを曳いて、集合場所であるダンジョンの入口の方に向かいました。

そして、高校女子の部が始まりました。11時15分、それぞれのチームが中学生の部と同じようにそれぞれ指導員を引き連れて、ダンジョンに入っていきました。

「ダンジョンの中でどうなっているのかは、外からでは分からないのでヤキモキしますね」

「そ、そうだね」

ん?何でしょう、この反応は。

「柚葉さん?」

「清華、どうしたの?」

私は柚葉さんをジーっと睨みました。柚葉さんは何でもない風を装っていますが、心なしか額が汗ばんでいるように見えるのは気のせいでしょうか。

「柚葉さん、何かしてますか?」

「何もしてない、まったく全然」

必死になって否定しているような様子は怪しさ満点でしたけど、周りに人もいますし、追及するのは止めておきますか。私は柚葉さんをもう一睨みしてから、ニッコリと微笑みました。

「分かりました。柚葉さんを信じます」

柚葉さんは、私が追及を諦めたのを見て、ホッとしたようでした。まあ、いまは黙って引き下がりますが、いつか問い詰めてあげましょう、と心に誓いました。

それからもしばらく、ダンジョンに入ったチームがどうなったのかとやきもきする時間が続き、35分を過ぎた辺りから帰還するチームが出始めました。流石は高校生か、時間管理がしっかりしていて40分より前に戻ったチームは2組で、残り8組は40分から45分までの間に帰還していました。各チームの成果は、大体2~3体のようです。

全チームがダンジョンから戻ってくると、審査員による結果の確認が始まりました。3体斃せたのは4チームあって、重量測定の結果、1位は地元の日比谷学園の女子ダンジョン部に決まりました。私たち督黎学園は残念ながら2位の結果に終わりました。

表彰式は、審査結果発表直後に行われ、潤子さんが代表で準優勝の盾を受け取っていました。そして表彰式が解散になったあと、私たちは盾を持った潤子さんの周りに集まりました。

「皆、今日は良くやってくれたな。結果は2位となってしまったが、斃した数は1位と同じ3体だったのだから、運が無かっただけとも言える。元々4月から始めたばかりの活動で、今日ここまで出来るようになったことが一つの大きな成果だと私は考えている。皆、ありがとう」

「潤子さんが、皆でやろう、って引っ張ってくれたお蔭ですよ。胸を張れる結果が出て良かったと思います」

礼美さんの言葉に、皆が同意するように頷きました。潤子さんは、ちょっと涙ぐんでいるように見えました。


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