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黎明殿の巫女 ~Archemistic Maiden (創られし巫女)編~  作者: 蔵河 志樹
第2章 友情の涙 (清華視点)
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2-1. 新学期の転校生

春休みが終わり、私たちは高校2年生になりました。今日は、高校2年生の始業式の日です。

「あ、清華(さやか)、おはよう」

「おはようございます、礼美さん」

同じ学年の梁瀬礼美さんです。部活も同じミステリー研究部に所属していて、名前で呼び合う仲です。髪はミディアムで、前髪を後ろで留めるポンパドールの髪型が、良く似合っています。

「クラス分け、もう見た?」

「いえ、これからですよ。礼美さんはもう見ましたの?」

「ううん、私もこれから見るところ。一緒に見に行こう?」

「ええ、そうしましょう」

ここ督黎学園高校は、毎年クラス替えがあります。初日は、掲示板に張り出されているクラス分け表を確認して、そのクラスの教室に行くことになっています。

私は礼美さんと掲示板のところに向かいました。

「えーと、梁瀬は…と、あ、東護院って2Bに書いてあるね」

「そうですね、私は2Bのようですね」

「私は、隣の2Cだね」

「あら、同じ理系選択でしたけれど、分かれてしまいましたね」

1年生の時は同じクラスでしたので、別のクラスになってしまって残念です。

「まあ、クラス替えなんだから仕方がないよね。お隣だから、休み時間とかに会えるよ」

「ええ。選択授業で一緒になるかも知れませんしね」

「じゃあ、クラスも分かったから、行こうか」

「そうしましょう」

礼美さんと私は、一緒に昇降口に向かいます。下駄箱には、既に名前が張ってあったので、持ってきた上履きを履いてから、自分の名前が貼ってあるところに靴を入れました。

中に入った踊り場の壁には、クラスの案内図が貼られていました。2Bも2Cも二階のようです。

「教室は二階ですね」

「じゃあ、右に行って階段を上ろう」

二階に上がると、隣のクラスの礼美さんと別れ、自分のクラスの教室に入りました。

「おはようございます」

「あ、東護院さん、おはようございます」

何人か、知った顔があります。

教室の正面の黒板に、席次表の紙が貼られていました。どうやら、アイウエオ順になっているようです。自分の名前が書かれた席を見つけて座りました。

「東護院さん、また同じクラスになったね。よろしくね」

「ええ、遠野さん、よろしくお願いいたします」

私の後ろの席に座っていた遠野さんは、1年生のときも同じ1Bで、新学期の最初のときは同じように私の後ろの席でした。

遠野さん以外にも1年生のときに同じクラスだった人たちは何人もいて、その人達と挨拶をしていたら、始業式の時間が近付きました。周りの皆が移動し始めたので、私も始業式の会場である体育館に移動しました。

始業式では、有難いけど眠くなる校長先生のお話を伺ったり、担任や学年の先生の紹介を受けました。今年度の2Bの担任は、須賀先生でした。


始業式が終わり、体育館から教室に戻りました。皆が席に着いたところで、女性の先生が教室に入ってきました。一年生のときに国語を教わった須賀先生です。

「これから一年間、このクラスを担当する須賀です。教科は国語です。一年間よろしくお願いいたします」

「よろしくお願します」

皆、挨拶とともにお辞儀をしました。それが終わると、先生が話の続きを始めました。

「それで、新学期早々ですが、このクラスに転校生が入ることになりましたので、紹介します」

先生が教室の扉を開いて、外に向かって「入って下さい」と言って、一人の生徒を迎え入れました。

その生徒は、背は平均より少し高めでスラリとしており、皆と同じ制服に身を包み、髪を後ろでとぐろのように巻いて簪を一本挿しています。

「転入生の南森さんです。南森さん、皆さんに挨拶して貰えますか?」

「はい。皆さん、始めまして。南森柚葉です。沖縄から来ました。これからよろしくお願いします」

彼女は、ぺこりとお辞儀をしました。

皆、拍手で応えています。

「南森さんは、沖縄からこちらに来たばかりで、この学校のことも良く知らないので、皆さん教えてあげてくださいね。南森さん、席は黒板に貼ってある席次表の通りですので、確認して席に着いてください」

「はい、先生」

柚葉さんは、先生の指示に従って、席次表の通り窓際の席に座りました。

そのあと、明日からの連絡事項などを聞いて、ホームルームが終わりました。


教室から先生が出ていくと、クラスの人たちが転校生のところに集まって「沖縄のどこから来たの?」やら、「どうして東京へ?お父さんの転勤?」やら、色々と質問攻めにしています。柚葉さんの顔を見ると、少し困った風でしたので、助けてあげようかと思って柚葉さんを囲んでいる集団に近付きました。

「ほらほら皆さん。初日からそうせっつかないであげてくださいな。困っているではないですか。これから毎日会えますから、今日のところは控えてあげてくださいね」

私の言葉に皆さん渋々と言った風でしたが離れていきました。

「ありがとう、清華」

「いえ、どういたしまして」

柚葉さんと私はこれが初対面ではありません。柚葉さんが東京に来るという話をしにお母様と一緒に私の家にいらしたことがあって、そのときに、ここの高校を紹介したりしていました。お互い家同士の付き合いで、苗字で呼ぶと誰のことか分からなくなるので、最初に会ったときから名前呼びすることにしました。柚葉さんには呼び捨てにしてもらっていますが、私自身は呼び捨てすることに慣れていませんので、さん付けにさせて貰っています。

「そういえば、制服、サイズが合うのが見つかったのですね」

「うん、そう。3月に卒業された人のものでサイズが合うのがあって。私、少し大きめだから、合うものがあるのか心配だったんだよね」

「見つかったようで何よりですね」

柚葉さんは、2年から編入するにあたり、制服をどうするか悩んでいました。そのまま沖縄の高校の制服で登校することも考えていたようですが、卒業生が制服を学校に預けて欲しい人に融通する制度があったので、それを使ってみてはとお話したのでした。ちょうど合うものがあって、良かったです。

「それで、明日は入学式でお休みだよね?清華はどうするの?」

「明日は入学式ですけど、私は学校に来ますよ。部の勧誘活動がありますので」

「入学式から部の勧誘?仮入部期間とか、この先にあったよね?」

「もちろん、仮入部期間はありますが、この学校では入学初日にアピールして勧誘するのが普通なのです」

「それはまた凄い力が入っているね」

どうやら、柚葉さんの前の学校では、入学式の日の部の勧誘活動はなかったようです。

「よろしければ、一緒にどうですか?私の所属しているミステリー研究部の勧誘活動に参加するのも面白いと思いますよ」

「そうだね。何だか面白そうだから、参加したいな。お願いして良い?」

「ええ。では、明日朝の集合場所でもある部室にご案内しましょう」

「清華、ありがとう」

私は柚葉さんを連れて、部室に向かいました。


部室には、先に他の部員が来ていました。明日の勧誘のためのチラシ作りなどをしています。

「潤子部長に礼美さん、お客様を連れてきました」

部室の中に向かって声を掛けました。

「清華くん?お連れ様はどなたかな?」

「同じクラスに転入してきた、南森さんです」

「2Bの南森柚葉です。よろしくお願いいたします」

「この部への入部希望かい?」

「あ、ごめんなさい。まだ決めていないのですけど、明日の部の勧誘活動に興味がありまして」

「あー、なるほど。構わないぞ。私がミステリー研究部の部長をしている、3年生の寺前潤子だ。そして、こちらが2年生の梁瀬礼美くん」

「梁瀬礼美です。2Cです。よろしくお願いいたします」

「お隣のクラスなんだね。よろしくお願いします」

「私は1年生のときは清華と同じクラスでしたけど、今年はお隣です」

潤子部長は、ミステリー研究部唯一の3年生です。髪はショートにしています。

ひとしきり、挨拶が終わったので、部屋の中を眺めてみます。

「何かお手伝いできること、あるでしょうか」

「いや、もう明日の準備はできたから、大丈夫だよ。明日はここに8時15分には集まるようにしてくれたまえ。新入生の受付は8時半には始まるから」

「分かりました。ではすみませんけれど、私は柚葉さんと先に失礼しますね」

「ああ、明日はよろしく」

「皆さん、明日はよろしくお願いいたします」

目的を果たせたので、私は柚葉さんとともに部室を離れ、下校のために昇降口に向かいました。


柚葉さんは、南の封印の地を護る南森家本家の娘で、巫女の力を持つ夏の巫女。私は、東の封印の地を護る東護院本家の娘で、同じく巫女の力を持つ春の巫女。柚葉さんがなぜ東京に来たのかはまだ詳しくは聞けていないのですけど、これから何かが起こりそうな予感がします。例え何が起きても皆を護るのが私の役目。私は柚葉さんとの下校の道すがら、心の中でそっと再確認したのでした。


第二章の開始です。柚葉視点のお話を望まれていた方すみません。いずれ柚葉視点のお話も出て来る予定です。他の視点のお話も楽しんでいただければと思います。

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