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黎明殿の巫女 ~Archemistic Maiden (創られし巫女)編~  作者: 蔵河 志樹
第3章 憧れに至る道 (姫愛視点)
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3-31. 出現場所の絞り込み

喫茶店メゾンディヴェールで、琴音さんの作ったウニのスパゲッティを食べたあと、珈琲を飲みながら念話で藍寧さんを呼んでみた。

『愛子さん、どうかしましたか?』

『突然ですみません、藍寧さんに聞きたいことがありまして』

『何でしょう?』

『渋谷に魔獣が現れたときなどで、藍寧さんが出現場所と時間を絞った方法を教えて貰いたくて』

『柚葉さんに聞きましたか?』

『はい、間違えてました?』

『いえ、合っています。でも、念話ではお知らせし難いのですけれど、どうしましょうか?愛子さんのお部屋に行けば良いですか?』

『今夜は仕事が遅いので、家に帰るのも夜中になってしまいますけど?』

『構いませんよ。それで何かしたいのですか?』

『実は、日曜日に、また魔獣が出るらしいんです』

『それで出現地点と時間を絞りたいのですね?』

『はい、いま予測されている場所は、上野、大崎、赤羽の三箇所、大型の魔獣ではないかと言われています。なので、大型の魔獣でも可能な方法でやりたいのですけど』

『分かりました。では、家に戻られたら連絡ください。準備をしておきます』

『はい、ありがとうございます。お願いします』

何だか夜中に呼び出すのは申し訳ないのだけど、時間が無いのでお願いしてしまおう。

「藍寧さんと連絡取ったのですか?」

「え?分かるんですか?」

「少し、愛子さんの髪飾りに力が流れたように感じたので。愛子さんの表情も心ここに在らずみたいでしたし」

「分かる人には分かっちゃうんですね」

「まあ、普通の人には分からないと思いますよ」

そうですね。お師匠様はお師匠様ですからね。

「それでも、人前で使うときには気を付けることにします。では、私はそろそろ仕事に行ってきますね」

「はい、愛子さん、行ってらっしゃい」

私は琴音さんにも挨拶し、勿論お勘定も払ってから喫茶店を出て仕事に向かった。



仕事場であるスタジオの控室に行くと、陽夏は既に到着して準備していた。

「おはよう、陽夏、早いね」

「おはよう。姫愛も十分早いんじゃない?」

「うん、まあ、そうか。それでさ、明日って灯里ちゃんに会えるかな?」

「私たち、午後から仕事だから、会えるとして朝か夜だね。どっちが良いかな?」

「灯里ちゃんの都合の付く方で良いんじゃない?連絡してみようか」

「いま仕事中かもだから、チャットで聞いてみよ?」

「返事来るかな?」

「灯里ちゃんなら、結構チャットやっていたと思うから、夜中までには何か返事が来ると思うよ」

結果と言えば、灯里ちゃんからは仕事が終わる前にちゃんと返事が来た。集合時間を相談したら、なるべく早くネットで呟きたいとのことで、明日の朝に集まろうと言うことになった。


そして、仕事から家に帰った私は、藍寧さんを呼んだ。藍寧さんは、転移で私の部屋にやって来た。藍寧さんも家でくつろいでいたみたいで、部屋着だった。

「藍寧さん、夜遅くにごめんなさい」

「いえ、まだ起きている時間ですから大丈夫ですよ」

「それで、藍寧さんも部屋着ですけど、外には出ないのですか?」

「ええ、転送するだけですので」

「ああ、なるほど」

家にいるだけでできるらしい。

「それで、出現場所を限定するのはどうやるのです?」

「これで魔獣避けの結界を張ります。そうすれば、魔獣が出現できなくなります」

魔獣避けの結界魔導具を見せてくれた。それは黒色の金属でできた薄い円筒形をしたもので、片一方の丸い断面の真ん中に透明な石が嵌まっていた。

「制限したい二ヵ所にこれで結界を張れば、残りの一ヵ所に出現するしかなくなるってことですね」

「はい」

そこまでは、私にも分かった。

「結界は、どう張るんです?」

「この魔道具を、結界を張りたい場所に正六角形の形に配置します。今回は、大型の魔獣のようなので、二重に張ろうと思います」

「正六角形って、正確でないといけないんですか?」

「そうですね。ずれると強度が落ちるので、正確なのが良いです。そのためにこれを使います」

藍寧さんは、持ってきた手提げから、地図と透明なプラスチックの板を取り出した。板には、正六角形の頂点の位置にだけ孔が空いていた。大きい正六角形と小さな正六角形の二種類の点が打てるようになっている。これも定規と呼んで良いのだろうか。

この透明な定規を地図の上に置いて、道の端とか、塀のすぐ内側とか、魔道具を置いても問題なさそうな配置を探します。土地が良くわからなければ、転移陣で向こうの様子を見て確認します。位置決めしたら、赤ペンでマークしていきます。今回は、それを大きい正六角形と小さな正六角形で、それぞれやります。それが、終わったら、探知と地図を照らし合わせながら、力を込めた魔道具を配置します。それで完成です。用が済んだら、同じように探知と地図を照らし合わせながら、魔道具を見つけて回収します。

「地味な作業ね」

「そうですね。これまでは私一人で黙々とやっていましたが、今回は愛子さんと一緒なので、少しは楽しくやれそうです」

私は藍寧さんと、定規を地図に当てながら、あっちが良いか、こっちが良いかと位置決めをし、魔道具に力を込めながら配置していった。

今回は結界を二重に張ったので、一ヵ所で魔道具を12個、二ヶ所で計24個を配置した。大体一時間くらいの作業だった。頭の中の探知の地図と、机の上の地図との重ね合わせには少しコツが必要だったけど、慣れてしまえば簡単になった。

「藍寧さん、できたね」

「ええ、できました。二人でやれて嬉しかったです」

藍寧さんは、作業に使っていた地図や定規を仕舞い始めた。

「それで、あと、魔獣は呼び出せるんですか?」

「はい。魔獣を呼び出す召喚陣があります。でも、それだと何の予兆もなく魔獣が現れてしまうので、小規模な竜巻のようなものを起こす旋風陣を先に使って、注意を引くようにしています」

「それじゃあ、その両方の作動陣とも教えてもらえますか?それとも、その場で藍寧さんが呼び出してくれるかなんですけど」

「私が呼び出しても構いませんが、作動陣は教えますよ」

「うん、藍寧さん、よろしく」

そうして私は二つの作動陣を教えて貰った。どちらも柚葉ちゃんは知らない筈だ。少し柚葉ちゃんに勝った気分になった。

「作動陣は覚えられましたか?」

「大丈夫と思います」

「実際に使うときは、作動陣が分からないように、描かずに起動してくださいね」

「はい、そのやり方は多段の探知陣や、戦うときに使う転移陣で覚えたから、できます」

起動位置の指定は、どちらも探知の地図上でやっていたので、今回の作動陣も同じ要領でできるだろう。

「試しに小さな竜巻のようなものを出してみますね」

探知の地図の中で部屋の空いている場所に位置を指定して、旋風陣を起動してみた。すると、小さな渦が巻いた。

「ね?できたでしょ?」

「はい、バッチリですね」

「うん、じゃあこれで準備は良いですね。夜遅くまでありがとう、藍寧さん。日曜日は私がやるつもりだけど、万が一に備えて、藍寧さんも待機していて貰えますか?」

「ええ、良いですよ。愛子さんは初めてですから心配ですよね」

「うん、少し不安だったから、助かります」

それから藍寧さんは私に認識阻害の作動陣も教えてくれた。不必要なところで目撃されると面倒なことになる可能性があるから、ということだった。確かにそうだ。

「それで、愛子さんに折り入って相談があるのですが?」

藍寧さんのお願いは難しいものでは無かったので、お願いされることにした。藍寧さんは、作業の後片付けを終えると、お休みなさいと言って、転移で帰っていった。

それにしても遅くなってしまった。明日、いや日付は既に変わってしまっていたので、もう今日の朝だけど、私は寝坊せずに起きられるだろうか。


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