表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/16

ゲーム

 Mはすこぶるゲームに弱い。

 ポーカーにまぐれで勝つことはあっても、オセロもチェスも勝てない。戦略を覚えていないという訳でもないのに、勝たない。不思議だ。

 新年が明けたにも関わらず、Mが相変わらず引きこもりの日々を過ごしていたので、大家に引きずられて彼の実家にやってきた。

 一応首都ではあるが、まるで村のような雰囲気を漂わせている区画に、彼の母親は暮らしているようだった。聞くと、元々は大工の街だったが、バラの栽培を経て、飛行機産業に乗り出した人々が住み着いたのだという。

 大家の母親の住むアパートの居間は壁一面が窓になっており、そこからは街が見渡せた。透き通るような青い空が、朱くそまり、そして静かに闇に包まれる。時間によって街の様子が変わっていくさまは、まるで印象派の絵画のようだった。

 その部屋で、大家と、その母親、そしてMとで『中国の夫人』(別名ダイヤモンドゲーム)で遊び始めた。自分の手持ちの駒を、向こう岸までたどり着かせることで勝利する、簡単な遊びだ。

 最初は、実にさくさく進んだ。

 自分の駒が相手の駒を飛び越えて、それはもう軽快に進んだ。

 ところが、軽快だったのはMだけではなく、対戦相手たちもだった。対戦相手たちの目線に合わせて表現するならMは決して軽快ではなく、むしろ遅れていた。要するに警戒だと思っていたのは、Mの勘違いだったのだ。

 しかし、明らかに劣勢だと理解していても、Mの勘違いは止まなかった。明らかに負けていながら、気分だけは軽快だった。

『また脳がバグを起こしてる。もしかして呪いかな』

 勝負では結局負けて、Mの気分はスッキリした。

 それから大家とMはお暇して、帰路についた。

 真っ暗になった道は、肌寒く、コートの前をかき合わせる。

 どこかの家から夕飯のいい匂いがした。

 今日の夕飯はフォンデュにしよう、匂いにつられてそんなことを考えた。

 家から出るのは、悪くない気分だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ