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人間機械 ─マン・マシーン─  作者: 安藤 政
人間機械
1/8

プロローグ

2XXX年。


遂に人類は克服した。


戦争も、論争も、争いと名の付く、他者を傷つけなければならない全てを。


──<MA-CHI-NE(マシン)


 Mind──精神

 Action──作用

 Control──制御

 Human──人間

 Intelligence──知能

 Nearby──近くで

 Each──各々の


の頭文字を取ってそう呼ばれる、

「人間の傍で、人間の心の動きを制御することに特化した知能」を搭載した、

様々な姿形の機械たちによって。


<マシン>は常に人間の傍に居るようプログラムされ、人類が感情に身を任せる行動や言動を行えばそれを検知し、その動作を事前に抑制させることが存在理由であり、また使命だった。


<マシン>はどこにでも居た。


職場、自宅、道路、店、役場、ありとあらゆる場所やモノに<マシン>は搭載され、一緒に生活していた。

<マシン>は単にロボットといわれる、ギアやステムで駆動する機械を指す言葉ではなくなっていた。

貴方が座っている椅子、珈琲を置いている机、はたまたそのカップにも感情抑制機能が搭載されている。そう、羽織っているジャケットにもだ。


<マシン>の感情抑制機能により、人類は初めて本当の意味で、自らの闘争本能を完全に抑えることができた。

それは人類誕生から永い年月の末、同族同士で実りある対話が可能になったことを意味していた。


種族として安定期を迎えた人類は、モーターに油が差されたようにうまく回り始めた。


人類は叡知を集結させ、巨大な都市を建設した。

<ネオ・シティ>と呼ばれた都市群は世界の主要国を生まれ変わらせた。人類の進化は目まぐるしく進んでいった。



全てが順調だった。


あの日までは。




***


ある<マシン>、

──ザ・ファースト(最初の反乱者)と呼ばれることになる

が人類に反抗した。

反抗は余りにも突然だった。

ただ、世界最大級の<マシン>として都市そのものだった“それ”は、搭載されていた都市、<ネオ・ヤーク>を完全に閉鎖し、数億の市民を封じ込めた。

これまで映画や小説の中での話が現実となった。

完璧な世界は階段を転げ落ちるかのように、瞬く間に崩れ去った。


人類は捨て去った、「争い」を思い出さざるを得なかった。


抵抗するため、すぐさま人類は<ネオ・ヤーク>に攻め入った。

しかし、<ザ・ファースト>は、生物を模したような人類殺戮用兵器を造り出しており、人類は圧倒的な戦力差に敗北を強いられていた。


日に日に追い込まれる人類。

生物を模したような見た目、機能を有した、人類を殺戮することに特化した知能を搭載された<マシン>兵たちは手強く、ヒトという脆く壊れやすい生物は瞬く間に窮地に立たされた。

絶滅を誰しもが受け入れようとしていた。


だが、ある時、人類は千載一遇のチャンスを手にすることになる。


遠い昔、人類が同族同士で競い合っていた時代の遺産、深宇宙ディープ・スペースへ旅立っていた外宇宙探査船が、未知の鉱石を山のように載積して帰還したのだった。


人類は一抹の望みをその鉱石研究に費やした。

最初は新エネルギー開発だった。燃焼させたり、化学反応を引き起こそうとしたり、砕いたり……。しかし上手くはいかず、日に日に研究者は絶望を宿していった。

莫大なエネルギーをその身に閉じ込めていることは周知の事実だった。

だが、取り出し方が分からない。

研究者は悩んだ。

苦悩した。

毎日、毎時間伝わる、<マシン>たちの侵攻。死に逝く人々に彼らは心を痛めた。

自分達が成果を上げれなければ本当に人類は滅んでしまう。

人が背負いきることが出来ない重荷を下ろすこともできず、疲弊していった。


そして、遂に願うことしか方法が無くなった。

「力を、人類を絶滅から救う力を、我々人類に授けて欲しい」と。


未知の鉱石は緑青(ろくしょう)色に輝き始めた。

彼らはようやく理解したのだった。


それは、“思念”をエネルギーに変換することが可能だったのだ。


人類は鉱石を「力」──<フォース>と名付けた。

しかし<フォース>からエネルギー──<ライヴ>を引き出せる者は数多くはおらず、その少数もまた出力装置の助けなしではエネルギーとして利用できる量を摘出することなど不可能であった。

そこで人類は彼らを適合者として機械マシン化し、<ヒューマノイド>と呼ばれる兵士へと改造し、戦争の最前線へ送り始めた。


皮肉なことに、<フォース>が選ぶのは「力」を持たない、市民が殆どだった。

そして、副作用もあった。

<ヒューマノイド>に改造された者は、どんな人もその本人にとって重要な記憶──“思い出”がごっそりと欠落してしまっていた。

思念(ヴィジョン・)増幅器(アンプリファイヤ)>が思念を取り出す際の弊害だと言われていた。

だが、<ヒューマノイド>達で気にするものはあまりいなかった。


思い出を覚えていない彼らにとって、過去の記憶はそれ程重要では無かったのだ。

それに彼らは日々を生き残るのに精一杯だった。


こうして、人にしか存在しない()()という力で、人類は<マシン>と互角の戦いを繰り広げるまでに戦況を持ち直していた。







***


これから語られるのは、人間と機械の狭間に立った者──<マン・マシーン>の物語。



そして、第二の創世記である。



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