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フクロウ・ダンス・パレード  作者: 肥満侍
キリサクタイケン
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銅駝宇随の天地無用

銅駝宇随が当主を勤める銅駝一族の里は、但馬の山奥にある小さな物だ。

背の高い木々に囲まれ、近くには山麓の恵みとも言える不純物の少ない透明な水が涌き出る井戸もある。

人々の集まる城下町からはかなり遠いが、それでもその里に住む銅駝達は忍として、また1つの家族として充実した日々を送っていた。

銅駝の一族は、幼い頃から遊びの一環として忍術の基礎を叩き込まれる。

まず、両手、両足の指の間に石を4つずつ挟み、それを自由に指の間で同時に移動、かつ右手と左手、そして両足全て別の動きをすることを求められる。

そして、彼等銅駝一族のみ扱う事の出来る忍術、「無地流むちる」を体得する為に最も必要なのは、四肢の握力であった。

いや、さらに正確に言えば、「物を掴む力」である。

小石を掴み、木の枝を掴み、布を掴み、皮膚を掴み、岩石を掴み、地を掴み、刃を掴み……、そして果てには、水を、空気すらも掴む。

とは言え、現在100年を越える銅駝一族の中で空気を掴むと言う領域に達したのはさすがに1人しかいないのだがーー。


この無地流を極める事が出来さえすれば、あらゆる角度からの攻撃、そして回避を可能にすることができる。

それゆえ、銅駝一族の忍は戦国の世から高い暗殺術を持つ集団として、高い評価を得ていた。

例えそれが、死体の上に築かれ、血で塗りたくられたものだとしても。

先祖は、無地流の技を極め続けた。

そしてそのあまりにも鍛え上げられ、積み上げられた技の歴史はーー。

殺人術が不要となった現在において、銅駝宇随の体を、呪いの様に締め付けている。


最強の忍、死流山王土。

それに飛びかかった銅駝の行動は、他の忍から見れば最悪手……、気が狂った化のように見えただろう。

誰もが、どこかで死流山を攻撃の対象に入れるのに躊躇していた。

いやーー、それどころか、小屋に集められた忍達が、歴戦の忍達が、即座に佐久間の話に乗らなかったのは、彼があの場にいたのが大きいかもしれない。

この面子で死合えば、いずれは死流山と戦う事になるかもしれない。

その1文が全員の頭によぎったからこそ、あの時もーー、そして今も、一瞬の隙が全員に生じた。

誰も、死流山に刃を向ける事はしないだろう。

それは、死流山本人でさえ、どこか頭の隅で思っていたかもしれない。

その考えが、暗黙の了解とも言えたその空気が。

銅駝の不意打ちを最高の物にまで引き上げる環境になっていた。

(……死ね!!)

体全身、ありとあらゆる殺意を両のかいなに持ち寄り。

銅駝は、百鬼夜行の刃をまずは10、死流山に投擲した。


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