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梟の一声 その2

「……………」

揺れ続ける籠の中で、銅駝宇随とうたうずいは腕を組んで座っていた。

里に幕府の迎えの者が現れ、銅駝の両手を縛り目をふさいで籠に乗せてから、既に2日は立っているだろう。

(どこに運ばれているのか……。処刑場か、はたまた別の何かか……)

おかしな事に、忍装束の下に仕込んでいた銅駝の武器、「百鬼夜行」は、回収されなかった。

(迎えに来たあの男……、おそらく俺が武器を所持している事に気付いていた……。しかし取らなかったと言うことは……)

武器を持った銅駝を優に制圧出来る術があると言うことか。

「……くく」

舐められたものだな、と。

銅駝は小さく笑う。

(忍の特筆するべき物は武器だけではない……。むしろそれ以外が重要だ)

忍は、侍ではない。

その体から武器を奪った所で、敵を殺す術を忍はその体に幾千と保持している。

(幕府がその程度の物だと言うなら……、焦って逃げる必要もない……)

そこまで思うと、銅駝は目を閉じ、これから起こる何らかの事態に備え、睡眠を取ることにした。


「おい」

「ん……?」

銅駝は低い男の声で目を覚ました。

目を開けるとそこには籠を担いでいたと思われる男が銅駝を見下ろしており(目隠しは取られていた)顎で銅駝に籠から降りる事を促した。

「ふぅ……。全く、長旅だったぜ。こんな狭い籠に3日も押し込まれていた俺の気持ち、あんたにわかるかい?」

「無駄口を叩くな。さっさとついてこい」

「……はっ、わかったよ」

そう言うと銅駝は籠から出、男の後ろに立つ。

(おいおい……こんな簡単に背後を取らせていいのかねぇ)

周りに目を向けると、周囲は鬱蒼とした森だった。

人の気配は全くなく、背の高い木々が視界のほとんどを占める。

空高く上った月に照らされたそれらの木々は、風で揺れるたびゴゴ……と低い音を立て、夜の闇と合わさりかなり不気味なものだ。

(まぁ、こんくらい人里から離れてた場所のほうが、俺としては落ち着くからいいんだけどね……)

銅駝が男に先導されながら10分程歩くと、そこには小さな小屋があった。

白壁に瓦が積み重ねられた屋根が特徴の、どこか倉庫のような小屋だ。

「……お前が最後だ。入れ」

そう言いながら、ここまで銅駝を先導してきた男は銅駝の手に巻かれていた鎖をほどいた。

「……いいのかい?俺を自由にしたらあんたを今ここで殺しちまうかもしれねぇぜ?」

「無駄口を叩くなと言ったろう。早く入れ」

「……はっ、つまらん奴だ」

銅駝は男に聞こえるように大きく舌打ちをすると、小屋の扉に手をかけ、ゆっくりと開いた。

そこにあったのは。

「……はっ……よくもまぁ……」

これだけの化物を集めた物だ……。

小屋の中にいたのは、自分も含め10人の「忍」だった。

それも、どれもこれも名の知れた強者。

絶血ぜっけつ王刀おうとう死流山王土しりゅうざんおうど

三首のみつくびのぬえ合獣鵺ごうじゅうぬえ

鉄身の写楽てっしんのしゃら鉄島写楽てつじましゃら

毒喰み終造どくばみしゅうぞう丑三終造うしみつしゅうぞう

追死の是清ついしのこれきよ座頭是清ざとうこれきよ

消炎のしょうえんのごく鬼山煉獄きざんれんごく

反魂の黄泉はんこんのよみ黄泉原戻よみばらもどり

縛死のばくしのはじめ蜘蛛井一くもいはじめ

祈祷のきとうのし羅世蘭ろよら

そして自分……逆天の宇随さかさのうずい・銅駝宇随。

この時、銅駝は一瞬にして悟った。

今から始まるのは、ただの処刑ではない。

腹を切って首を落とされて終わるような、そんな生易しい物ではないと。

仮にも1つの里の筆頭として、当然感じなければいけない事なのだが。

あまりにもこの面子、揃い踏みは……。

危険だ。御しきれるものではない。

そう銅駝が結論付けたとき、彼の右腕は、忍装束の下に仕込んだ愛用の武器へと伸びていた。



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