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梟の一声 その1

まったりいきます。

1603年、江戸幕府成立。

戦国の世が終わり、大平の世が訪れた瞬間であった。

武士は刀を置き、筆を取った。

庶民は刀を奪われ、田畑を耕す事に専念する事になった。

時代は変わり、そして人の役目も変わっていく時代。

しかしそんな時代の流れに取り残されつつある者達がいた。

殺しを極め、人目を常に避け生きて来た者達。

彼等は「忍」と呼ばれ、恐れられた。

そんな殺しの技能も、幕府によって統制された大平の世では、全く、「なまくら」、必要とされないものであった。

何とか商人に姿を変え、慣れない商売に手を出した者もいた。

長年積み上げた技術を捨て、土民に帰った者もいた。

しかし、その数は極少数で、ほとんどの者は先祖が磨きあげてきた技術を捨てる事が出来ず、盗賊に身を落とす者が続出した。

これを重く見た幕府は、日本各地に存在する最も殺人技術に長けると言われる10の里に手紙を送った。

「里から1人の代表者を選出せよ。この手紙が到着してから10日後、迎えの者を派遣する」

忍の里は、もちろん全て「隠れ里」と呼ばれる厳重に場所の隠された物だ。

各里の長達は幕府の情報網の広さ、深さに旋律すると共に、この手紙の真意の洞察を始めた。

「処刑されるのか?」

「打ち首……」

「やはり盗賊に落ちた者達……、くそ……」

そのほとんどは陰鬱とした、この先の忍の処遇を憂うものであり、明るい想像をする者は1人もいなかった。

しかし、他ならぬ幕府の命令……。

従わなければ、それこそ里ごと消される可能性があった。

数々の思案を行った後、各里は大人しく代表を選出する事にした。

「打ち首の可能性も考え、消されても支障のない者を差し出すか?」

そのような意見を口にするものは、いなかった。

誰もがその言葉が何より無粋な物だとわかっていたから。

忍ならば、たとえそれが罠だとしても、罠を踏み潰して生還する。

それが本物の忍だ。

おそらくこれが、忍の強さを、世に見せつける最後の好機。

不思議な事に、その結論はどの里でも同じであった。

結果、各里は当代一の使い手を選出し、幕府の人間に差し出した。

忍の里ですら制御する事の出来ない、最強の忍を、差し出した。


……どこかの里が、1つでも末端の平均的な忍を出していれば、これから始まる「戦い」は、これほどまで鮮烈な物にはならなかったのかもしれない。

しかしこれも、時代の流れであった。


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