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君と傷
寂れた校舎と体育館の僅かな空間に僕は何をするでもなく、ただ座っていた。少しだけ離れた所から聞こえる罵声と弱々しい懺悔の声はかれこれ30分以上も続いている。無意識の内に吐き出された溜め息は白く色づき、頭上を覆い尽くす灰色の雲からは今すぐにでも雪が降りそうだった。意味のない時間を無理矢理食い潰しているそんな僕の頬を冷たすぎる風が掠め、思わず身震いをしながら、いい加減止めてもらわないとこっちが凍え死にそうだなんて思った。少しでも寒さを紛らす為に雲と同じ色をした他でもない悲しい叫び声をあげている彼女がくれたマフラーに顔を埋めると、僅かな暖かさに包まれたのと同時に何年も前に貰ったそれからするはずもない彼女の香りがして僕は何故だか無性に泣きたくなった。耳を覆いたくなる程の痛々しい彼女の声は未だに僕の鼓膜を震わせていた。