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#32
灰色の空に白雪が舞う。世界を眠りに誘うように。
凍りついてしまったかのように動かない、黒髪の少女。雪さえ溶かさぬ肌は白く濁り、固くなってゆくばかり。彼女を抱いて泣き噦る少女は真紅に濡れ、悲歎に我を失いかけていた。
黒髪の少女の唇が綻び、血とともに最後の言葉を零す。その襟元から転がり落ちた白薔薇が、地べたに触れて朱に染まる。一音たりとも聴き漏らさぬように、脳裏に刻みつけるように。蝶の羽音の如き囁きに耳を澄まし、少女は終を噛み締めた。
瞬間、流れ落ちた血と涙とが、赤と白の王冠に変わる。
――僅かに残された時のなかで、少女達は語らう。遠い昔、はじまりの冬の日のことを。