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第9話 上司の魂を呼び戻しました、筋肉で。

深い森の入り口に立つと

たくさんの人が笑ったり歌ったりする声が聞こえた。


『今日は夏至だから、妖精たちがお祭りをするんだよ。』


森の中に、エキゾチックな民族衣装を来た少年がいた。

オリヴィエとよく似た面差しだが、10くらい年上のようにも見えた。

野生の猫科の生き物みたいな、きらきらとした瞳をした精悍な顔つきの少年だった。


『オリバー様?』


『そうだけど、そうじゃない。

あなたたちが探しているのは、大人のオリバーでしょう。』


『あにうえは、ここに?』


『ここだけど、ここじゃない。

あ、あなたはイルでしょう?』


イルハンは、頷いた。


『イルに、見せたかったんだ。妖精のお祭り。』


イルハンは、固い表情を崩さなかった。


そんなイルハンをみて少年は笑った。


『オリヴィエになんか言われた?』


イルハンは頷いた。


『許せなかったと…』


少年は笑った。


『あのあと、いろんな国を歩いたんだ。

ユドグラシアともイルガントとも違う国を、沢山。

空の色も海の色も、信じているものも、なにもかも違うところを。』


少年は、イルハンを真っ直ぐ見た。


『イルがどんな風に暮らしていたかは知らなかったけど、

それでも心配していたんだ。

イルが、立派な大人になれてよかった。』


イルハンは首を横にふった。


『立派なんかじゃない。

わたしは、あにうえを、なんども…』


『ねぇ、イル。

僕らはほんの小さい頃に離ればなれになったけれど、

お互いを忘れなかった。

まあ、同じ顔してるからだけどね。』


イルハンは、左目から涙をこぼした。


『君が幸福であることを、願わなかった日はないんだ。』


少年は、そういうと、今度はレイリークに目を向けた。


『あなたは、はじめましてだね。』


『はじめまして。

わたくしは、レイリーク・カイン・(中略)・ブラッドベリー。オリバー様にお仕えしています。』


『すごい、本物の騎士だ!』


『オリバー様。お願いがございます。

わたくしの左右の肩に、剣でふれて、

レイリークをオリバー様の騎士にすると宣言していただきたいのです。』


『?』


『わたくしは、オリバー様の騎士なので、あなたの騎士でもあるのです。

できることならば、もっと早くにお会いして、

いろいろな国を一緒に歩みたかった。』


『ありがとう。

でも僕は剣なんか持っていないよ。

戦う力なんて、持ち合わせてはいないんだ。』


『いいえ、あなたは美しく強い剣をお持ちです。』


レイリークがそういうと、たしかに少年の手には、水晶でできたかのような、美しく澄んだ剣が握られていた。


レイリークは少年の前に膝をついた。


少年は、レイリークの肩にそっと剣をあて

もう片方の肩にもあて

そして、おごそかに宣言した。


レイリークをオリバーの騎士とする、と。


少年は、強い瞳でにっこり笑った。


『あなたに会えたんなら、やっぱりオリバーは旅に出て正解だったね。』


『わたくしも、オリバー様に出会えたことに感謝しています。

あなたにも巡り会えて本当によかった。』


精悍な猫のような少年は、にっこりと目を細めた。


『あなたたちのオリバー、海のそばにいるよ。』


少年が指を指した方向の木が一気によけて、

道ができた。


『妖精のお祭りに、また招いていただけますか?』


『よろこんで』


レイリークの問いに、少年は嬉しそうに頷いた。
























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