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第7話 チンピラちゃんの保護者を呼びました。

『あれー、おっさん。なんでここにいんの。』


スカーレットが目を覚ますと、そこには年の離れた兄がいた。


疲れきった表情に、白髪混じりの頭は確かにおっさんであったが、よくよく見れば、たしかにオリバーとよくにた面差しをしていた。


『スカーレット…』


『その名前で呼ばないでっていってんじゃん‼』


『スカーレット、お前。よだれ垂らしてないな。』


『よだれ?』


『私は最後に見たお前があんまりだったから、

とうとうお前の脳みそが溶けて、はなと口からでてきてるのかと思っていたんだよ』


『はあ!?』


丸一日眠り続けたスカーレットは、

いけない成分が脳から抜けたかのように

いきいきとした表情をしていた。


『脳みそ溶けてんのは、おっさんだろ?

てか、なんでここにいんの?』


イルハンは目をそらした。


あの夜の次の朝、レイリークが城にかちこんできたのだ。


イルハンのパンジェンシー公爵家よりは格下とはいえ、

レイリーク隊長もなかなかのお家の嫡男だ。

そして、国で一番の危険地域、境界領黒の森の警備隊長でもある。

単純な戦闘力ならば国一番の魔法騎士だとも言われている。

そのレイリークが単騎とはいえ憤怒の表情でかちこんできたのだ。

正直、イルハンは、命の危険を感じた。

そして、今も背後から、さすような視線を感じている。


『わたくしが、お願いしてきていただいたんですよ』


いつものように、低く澄んだ声であったが

レイリークの声には、えもいわれぬ恐ろしさが潜んでいた。


『あれ、アニキじゃないっすか!』


しかし、いけない成分は抜けても、空気を読めないチンピラちゃんは、どこまでも軽かった。

しかし、レイリークのまとう空気はどんどん重く、眉間のシワは、どんどん深くなるばかりだった。


『アスラン、スカーレット様をお願いしていいですか?

クーに言って、何か食べさせてあげてください。』


真っ赤に目を泣きはらしたアスランは頷いた。


レイリークは、厳かにいいきった。


『必ず、オリバー様は戻します。』


そして、まっすぐにイルハンをみた。


『公爵様が、お力をかしてくださいますから。』


アスランはもう一度、頷いた。


そして、


イルハンに、ふかくふかく、おじぎした。


『お願いします。パーパを…オルハン様を助けてください』


レイリークははっとした。


腕のよい魔法使いはまことの名をしっている…


いつかのオリバーの言葉を思い出した。


イルハンは、ただこくんと、頷いた。



真っ白だった。


ライムミントのシーツの上に真っ白い人間の形をしたものが横たわっていた。


『今回は、結構ぎりぎりだね。』


ベッドの脇に置かれた椅子に腰掛け

その真っ白いものの手を握りながら、

クリーム色の髭もじゃのおっさん…

急遽かけつけたオリバーの守護精霊のシッキムは言った。


『あんな異次元に繋がる穴を塞いだりする大型魔法を何十回も使って、大丈夫なわけはないんだよ。

私も力をかしているけど、オリバーの払っているものはとても大きい。』


シッキムは振りかえって、イルハンをみた。


『今回、オリバーは色彩を代償に捧げた。

私が彼に与えた加護と一緒にね。

それでも払いきれずに、こうしている。』


シッキムの瞳は夜明けの空のように、様々な色を宿していた。


『…それでも、オリバーはあなたがた兄妹を助けたいと思ったんだよ。』


イルハンの右目から、涙がこぼれた。


『イルハンとオリバー…オルハンは、とても近しい存在だ。

同じ親から、同じときに生まれ、同じ魂を分けあっている。

魔力だって、ほとんど同質だよ。』


シッキムは、レイリークに目を向けた。


『そして、レイリーク隊長は、オリバーが一番信頼している存在だ。…ちょっと、羨ましいくらいにね。

二人で、オリバーを探しに行ってほしい。

あのこだって、きっと帰りたいはずだ。

そうじゃなければ、きみたちを…世界を守るために、こんなこと、しないよ。』


『『私にできることならば、なんでも。』』


レイリークとイルハンは、同時に承諾した。


『じゃあ、二人とも、オリバーの手を握って。』


二人がオリバーの手を握ると、シッキムは歌うよう言葉を紡ぎだした。


レイリークとイルハンは、オリバーの心の中へと旅立った。

































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