第5話 チンピラちゃんとお風呂に入りました。
『あ、忘れてたわ…』
カイラはバスタオルを巻き直した。
ご飯を食べさせたあと
カイラはレットを引きずって大浴場にやってきていた。
あまりにも汚れていたからだ。
ざりざりと、チンピラのぼーず頭を洗ってやりながら、カイラは大切なことを思い出した。
『このこ、女の子だった…』
そしてカイラは男の娘だった。
『まっいっか。』
ざぱーっとチンピラの頭にお湯をかけると、カイラは細かいことは忘れることにした。
十中八九、いけない成分に脳をおかされているチンピラは、そもそも目の焦点があっていない。
カイラはオリバーに頼まれた通りに、チンピラに、外から見える場所以外に彫り物がないかを確認した。
肩に一ヶ所、耳の後ろに一ヶ所、脇腹に一ヶ所、彫り物があった。
カイラはそれをじっとみた。
ほんのりと光るそれは、明らかに良くないものだった。
三ヶ所でワンセットなのか、一つ一つが独立しているのかはわかりかねたが、
スカーレットの異常な思考力の低下と
無関係とは思えなかった。
『これはおしゃれなの?いたくなかった?』
『めっちゃ痛かったよ。』
『あらあら?』
『でも、指を詰めるよりは痛くないかなって。』
『え?なんか、これ、ばつなの?』
『わかんない…けど、なんか、一目おかれるんだ。』
『一目おかれる…。』
頭をゆらゆらゆらしながら、スカーレットは頷いた。
『でもやっぱし、自力じゃないから、かっこわりーんだけど。
』
『自力じゃない?』
『だせえから。』
『惰性?ダサい?』
『あたまわりーし、けんかよえーし、カッコ悪い。』
『そんなこと…』
『おじょーだからって言われるのもカッコ悪い。』
『そっか。』
『おっさんと親戚なのもカッコ悪い。』
『おっさん?』
『お城にいる…』
『あ、公爵様ね。なかなかナイスなミドルだと思うけど…』
『ねーちゃんは、ああいうのが、好きなの?』
『うーん。私の好みとは違うけど…紳士よね?』
『わかんない。』
『んー。レットは好きな子はいるの?』
『え?えへ?い、いないよ?』
『あらあら、どんな子なの?』
カイラは、オリバーに渡された入浴剤を入れた湯船にレットを突っ込み、自分も入るとガールズトークに花を咲かせた。
チンピラの刺青は、淡く青い光を放っていた。