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花火
夜空に突如咲いた満開の花に、アスランは歓声をあげた。
「うわあ!キレイ!」
シッキムは、空を見上げた。
風の精霊の集会に、アスランを伴って旅に出て半月。
道なき道を往く日もあり
屋根のない場所で寝る日もあった。
その日は月のない夜で、満点の星空も美しかったが、空いっぱいに広がる光のカーテンと、色とりどりの花はこの世のものとは思えぬ美しさだった。
「綺麗だねぇ。」
「わふん」
「ねぇじーじ、これ、おうちからも見えてるのかなあ。」
「どうだろうねぇ。ほら、アスラン。冷えてきたから、テントにお入りよ。」
「ええー、もうちょっとみたいー。」
「ええー、もー、仕方ないなあ…」
シッキムは毛布でアスランをぐるぐるまきにすると膝にのせた。
そこにラッシーも乗っかってくる。
「重い…けど、あったかいな…」
シッキムは、孫と犬を抱えると、もう一度空を見上げた。




