領主様と隊長はバカップルになりました。
その昔、レイリークが魔獣討伐で勇名を轟かせていた頃、アイスドラゴンですらがその気迫に押されて腰が抜けたという。
…今ではドラちゃんは夏場の製氷機としてカフェの運営に協力してくれるのは、また別の物語である。
そんなレイリークの殺気に、トーマスとシッキムは心臓が止まりそうだった。
『た、隊長…。』
シッキムは自分の憤りを忘れて、動転していた。
『ごきげんよう。シッキム様、ヒル様。』
『ご…ごきげんよう。お、お仕事は…?』
『ちょうど休息時間でして。』
『そ、そうなんだ。
えーと、どこから聞いてた?』
『祝福されるべき喜ばしき日に、不適切な行いが検討された、という辺りからです。』
『そ、そうなんだ。』
シッキムは、天井を見上げた。
『…あー。でも隊長、今日は無理かも。』
なぜなら、
『リークっ‼どうしたんですか‼』
『オリバー様?』
パジャマ姿のオリバーが駆け込んで来たからである。
レイリークはオリバーの姿を視認した瞬間に両手を大きく広げて受け止めた。
『寒くありませんか?どうしたんです?』
少しでも暖めるかのように抱き寄せる。
『うん。
ちょっと、寒いかも。
きょ、今日はもう寝る時間だから、
アスランもお昼寝してるし
最後に、その、リクは元気かなって…
そしたら、なんか、雰囲気が違うのがわかって…
その、ごめんなさい。
ええと、す、ストーカー…みたいで…』
黒の森の守護者という状態を利用して、
ちょくちょくレイリークの動向をチェックしているオリバーは、すぐに異変に気づいたのだ。
オリバーも、自分の執着心に戸惑っているのか
もじもじとそう口にした。
うわぁ…
爺二人は、ちょっぴりひいていたが、
レイリーク本人は先程とは別人のように
新緑の瞳を潤ませて甘えるようにオリバーの肩に額を寄せた。
う、うわぁ…
爺二人は、もはやドン引きだった。
『ど、どうしたんですか?』
『オリバー様、わたくしの頭をなでて誉めてください。』
『『ごふぁっ…』』
爺二人はもう、死にそうだった。
『リクは素晴らしい人間です。』
なでなでなで…
『もっとです。』
『リクはわたしの…』
一日に与えられた時間を終えたオリバーは
そのまま眠りについた。
『『『…………。』』』
すー。すー。すー。
オリバーの規則正しい呼吸音が、三人の沈黙を一層引き立てた。
『わたくしは、大事な用事ができましたので、これで失礼いたします。』
レイリークは、オリバーを大切に抱き上げると、そう言ってカフェテリアを出ていった。
『…ぇえと、なんの話してたんだっけ。』
二人きりになってしばらくしてから、トーマスはようやく口を開いた。
『あー…。うん、その話はまた今度にしよう。』
シッキムはすっかり冷めたお茶を一口飲むと、
席をたって新しく熱いものを用意した。
『それよりもトーマス、今日は君の話をきかせてよ。』
『あ、そ、そだな。
最後にシッキムに会った後からだから…』
爺二人は、その日は存分に旧交を暖めた。




