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隊長の愛は時空を越える

イルハンが見送りの人々と挨拶をかわしているあいだ、

暇になってしまったアスランは、

オリバーとレイリークの周りを花びらのように舞うピンクのハートを捕まえようと、びょんびょんとび跳ねていた。


ピンクのハート。

それは、可視化された愛の奇跡だった。


何回目かのジャンプのあと、ようやく捕まえたそれを、アスランはつまんだ。


『わ、あったかーい‼ね、パーパも‼』


まさかあの現象に温度があるなんて思わなかったから、アスランは驚いてオリバーにハートを渡した。


『え?あ、ほんとだ。

ちょっと熱いくらいですねぇ。

でもこれ、わざわざ捕まえなくてもアスランにもいっぱいくっついてますよ。』


オリバーとレイリークの周りをくるくる回るハートのいくつかは、不思議とアスランにまとわりつき、髪にくっついたり、服にくっついたりもするのだ。


『ほんとだぁ。』


『あぁ、そういえば、アスランみつけたときも、こんなんついて……………。

ん?』


オリバーは、アスランの髪の毛についたそれを摘まんで、ふと押し黙った。


そして、自分達の周りをくるくると回る、

淡い桜色や濃い薔薇色の愛で出来たハートの花びらを、ぼんやりと眺めた。


『どうしましたか?』


レイリークの唇がさりげなくオリバーのこめかみを掠めると


またひとつ、新しいハートが生まれた。


それをみて、オリバーの顔が、次第に赤くなっていった。


そして、しゃがみこんだ。


晴れやかな空のした、しゃがみこんだオリバーは、心配そうにのぞきこむアスランとレイリークを見上げた。


そこにシッキムもかけつける。


オリバーはしゃがんだまま、シッキムに話しかけた。


『あの、パーパ。覚えていますか?

アスランがうちに来たときに頭にくっつけていた不思議な花びらみたいなの…』


『覚えてるよ?不思議にあったかい、花びらみたいなピンクのハート……!!!』


シッキムも息をのむと、よろよろと後ずさりした。


『いや、でも、あ、まだ持ってるよ!?

瓶にいれたんだ…。えーと…。』


シッキムは四次元に繋がる腹巻きに手を突っ込むと次々とがらくたを取り出した。


『あ、これだ…!』


透明な瓶の中には、キラキラと輝く、ピンク色のハートが何枚か踊っていた。


『…同じ…ですね?』


オリバーは、自分の周りをくるくる回るそれと

瓶の中でひらひらと、踊るそれを見比べた。


『あの、オリバーさま、話が見えないのですが。』


レイリークは、オリバーの横にしゃがんだ。


『みえないのー‼』


アスランも、一緒にしゃがんだ。


『……えーと、あの。』


オリバーは、アスランを引き寄せた。


『私をアスランと引き合わせてくれたのがですね…。このピンクの花びらでして…。』


『そうなの?』


拾われた当初の記憶は、アスランは曖昧だ。


『はい。アスランの声が聞こえて、探していたときに、この花びらが私をアスランのもとに連れていってくれたのです。』


『そのときに、アスランを守るようにくっついていたのが、これだね。』


シッキムは瓶を差し出した。


『へえぇー。』


アスランは瓶を受けとると、しみじみとみた。


『あぁ。』


レイリークが、頷いた。

そして、やや上気した顔で、柔らかく微笑んだ。


『なるほど。わかりました。』


『なにがわかったのー?』


アスランが首を傾げる。


『目新しいことじゃありません。

知っていたことです。』


そこでレイリークはアスランの髪の毛にくっついたハートをつまんだ。


ハートは再びくるくると回り始めた。


『あなたは、わたくしたちの大切だということですよ。

わたくしはあなたを知る前から、あなたを待っていたのです。

この花びらは、わたくしのあなたがたを愛する気持ちが目に見える形になったものです。

人が生まれてくるときに、魂がどこからくるのかはわかりませんけれど…。』


レイリークは空を見上げた。


空には、どこからかきた雲がぽっかりと浮かび、ゆっくりと風に流されていた。

暖かな太陽の光に、青い空がきらめいた。


レイリークはアスランを抱き寄せたオリバーを、まるごとそっと抱きしめた。
























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