第23話 イケメン図鑑編纂室
黒の森は開拓地でもある。
基本的には駐留軍の宿舎…として使っているオリバーの家以外に寝泊まりできるところはない。
そして、その宿舎もあき部屋は沢山あったが、
客人をもてなす準備は手来ていなかった。
『15人…。』
カイラは深刻に呟いた。
『妙齢の貴婦人が15人…』
それに対してミネルバがカラカラと笑った。
『寝るところがないんだろう?
会議室Aでいいさ。
私も今宵はあちらにとまろう。
適当に毛布でも敷けばいけるだろう。』
カイラは不安そうにミネルバを見上げた。
『…ミネ様は女性…ですよね?』
『すごくよく聞かれるんだが、間違いない。』
『この男所帯の場所で、不便はありませんか?』
『ないなあ。
ここのメンツは当たりだからな。
間違いはおかさないだろう。
集めたのはカイラなんだろう?』
『…よくご存じですね。』
『カイラも我々の組織が観測していたからな。』
『観測…?』
『まあ、詳しくははしょるけれども、
我々は変装程度では、ごまかされない。
気に入った人間の、骨格や仕草、睫毛の本数、呼吸の間合いまで、数十年単位の変遷を記憶して共有しているからね。』
『…超怖いですね…。』
『何人かの毎日の動向が分かると、たまに一枚の絵が浮かぶこともあるんだよ。
この黒の森にはそういう面子が集まっている。
とくに、あの双子に関しては、先々代からデータがあるんだ。』
『…恐るべし、イケメン図鑑編纂室…』
『お、その名前を知っているか。』
『やっぱり首領はあなたでしたか…。
男子禁制の資料の即売会に忍び込もうとして、入り口でばれて、もみくちゃにされたことがあるのですよ。』
『首領とは随分な…。
たんなる恋する乙女の情報交換会だよ。
まあ、あと。オリヴィエがきついからな。』
『オリバーさまですか?』
『万が一、誰かが誰かに何かしたら、ただごとじゃすまないくらいのトラップをしかけてるはずだ。
わたしは魔法の素養がないからわからないがね。』
『はあ、本当によく御存知で。』
『オリバーは知らんが、オリヴィエはなかなかの潔癖性だからな。
それくらいしなかったら、スカーレットを預かったりなんかしないだろうよ。
そんなわけだから、会議室Aを貸してくれ。
できたら、酒とつまみもくれ。
ピザとか、しゅわしゅわした黒い飲み物もあったら嬉しい。』
『…まさか、公爵婦人ズも…?』
『彼女らは、筋金入りだぞ。
イルハンに惚れ込んでいるからな。
でなきゃ、あんな不吉な公爵家に嫁がないさ。』
『イルハン様が囲っているわけじゃなさそうだとは思いましたが…』
『むしろ、守られているのはイルハン殿だろうな。
本当にあの双子は、引きがいい。』
『それは…我々もほめていただいているのですよね。』
『最高級に。んじゃ、よろしく。』
ミネはカラカラと笑うと、てをヒラヒラとふりさっていった。
カイラももろもろの手配のために立ち上がった。




