第22話 御姉様の教え
『ご覧になりまして?』
『御義兄様はやっぱり隊長とくっついたのですわ!』
『尊い…』
『はかどりますわ‼』
『置いていかれたイル様の寂しそうなお顔‼』
『捨てられた子犬みたいですわ!』
『イルたんまじ天使』
『目に焼き付けるのです!』
『はやく書き写しなさいな!』
15人の年齢も容姿の系統もバラバラの美女達は、
レイリークに抱えられて去っていくオリバーを食い入るように見つめたり
それを寂しそうに見送るイルハンを360度から見つめたり
紙にスケッチしたりしていた。
『…え、ちょっと、カイラー?
あ、俺も料理しなくちゃ…』
クーもなんだか異様な熱気に恐れをなして厨房へと逃げ込んだ。
『はっはっは、みんな元気そうじゃないか‼』
そこに颯爽と現れたのは男装の麗人、ミネルバだった。
『『『御姉様!!!』』』
15人の公爵婦人が一斉に歓声をあげた。
『お久しぶりですわ‼』
『夏のイベント以来ですわ!』
『新刊拝見いたしましたわ!』
『今日も素敵ですわ!』
『ぎゅっとして下さいまし‼』
ミネルバは、にこにこと順々にハグしていく。
ちなみに、その1メートル横には、イルハンがいるが、誰一人いまだ声をかけない。
ミネルバのハグが一巡したあと、ようやく婦人達はわらわらとイルハンを囲んだ。
困ったように微笑むイルハンの前に一人づつ前に出ると、順番にイルハンの回りをぐるぐる回ってからハグをした。
そのたびにイルハンは、それぞれの背の高さにあわせてかがむ高さを変えていった。
『たぶん、ウィルフのロマンスの帝王力が、微妙な進化を遂げたんだと思うんだよ…』
公爵夫妻ズの再会風景を遠巻きにみていたドクロ紳士のトーマスは、ぼそっと呟いた。
それをきいてシッキムも感慨深げに頷いた。
『あぁ。ほんと。』




