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第19話 令嬢ですもの、あれもやらなきゃ。

『スカーレット・フレイヤ・ヒル‼

お前との婚約を破棄する‼』


『あぁ?』


『だ、だって、お前っ。』


『あぁあ?』


『会話にならないじゃないかっ…』


『あー…。』



『相手はロビンライト・アマトリーチェ。

そこそこの貴族の次男です。

実際は、そんなに派手な出来事ではなかったようです。

ロビンライトは学園でもファンクラブがある人気のある少年で、そのファンクラブと婚約者であるスカーレットが揉めた時に、うまくさばききれなかった。

スカーレットはあの調子ですから

強気な少女に囲まれて上手く対応できるはずもありません。

それを、悪役令嬢とうとう婚約破棄される…と、おもしろおかしく大きく報道されてしまった。

それで、スカーレットの状態も悪くなった。

だから、こちらに。』


トーマスが、そう話した相手はカイラだった。

それは昼下がりの食堂で、カイラは今日も品のあるメイド服に身を包んでいた。


トーマスはちなみに…と鞄からタブロイドを取り出すと、カイラに手渡した。


それを一読してカイラは目を丸くした。


『まあ…ほんと‼まるで立派な悪役令嬢みたい…!』


『…私も、悪のドクロ紳士として書かれています。』


カイラはタブロイドをしげしげと眺めてぽつりと言った。


『これだけのことができたなら、レットも苦労しないんでしょうね…』


『本当に。』


トーマスも頷いた。



『まず、目を見るんだ。』


今日もミネはスカーレットに喧嘩の仕方…ではなく、挨拶の仕方を教えていた。


その横で、オリヴィエとイルハンがくるくると手を取り合って踊っている。


スカーレットは居心地悪そうに目をそらした。

そんな光景を見守っていたカイラは、ゆっくりとスカーレットに近づくと、横にならび、肩に手をおいた。


『相手の方の目を見るのが難しいときは、ぼんやりと額や鼻の辺りをみればいいんじゃないかしら?少し目を細めて、微笑みながらそうすれば、ほとんど相手の顔なんて見えないわ。』


スカーレットの顔と高さを合わせてカイラはミネをみた。


『はたからみれば、ちゃんと視線があっているように見えるでしょう?』


スカーレットはこわごわ二人を見比べた。


『…オオー。』


そういいつつも、一歩後ずさり、カイラの後ろに回ろうとする。


そのよこで、双子のダンスは激しさを増していく。

イルハがオリバーをリフトしたり

オリバーがピンヒールをはいているのに

ありえない角度までのけぞったりしている。


『…オオー…。』


スカーレットは感嘆をあげつつも、そちらからも距離をとった。



『どーしたの?すか~れっと。』


スカーレットが屋上でヤンキーらしく地べたに座り込みながらぼんやりしていると

水筒とバスケットをもったアスランがやってきた。


『ちぃーす。』


スカーレットは、そっと身を寄せたらっしーをモフモフとかきまぜならがらため息をついた。


『ピクニックシートとブランケットもってきたから、この上にすわりなよ。』


アスランは、背中に背負った敷物をおろすとくるくると広げた。


『さんきゅ。』


スカーレットはもぞもぞと移動した。


『はい。暖かいお茶。ハチミツとミルクもいる?


『んきゅ。』


『スコーンもあるよ。クリームとイチゴジャムも。サンドイッチとチキンとポテトフライも。』


『きゅ。』


スカーレットはアスランにすすめられるがままにがつがつと食べ始めた。


アスランはスカーレットが食べるのを見守りながら、らっしーのボールを二つ出して、お水とおやつをいれた。


それから自身もサンドイッチに手をつけた。





















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