第18話 オリヴィエの白いワンピース
40代男性が、ある日突然ドレスを身にまとった。
『…わりには、違和感ないですね。』
イルハンは、なんだか不思議なものを見ている気分だった。
同じ顔のはずだが、イルハンが着ても、まったく似合わないだろう。
『逃亡中、何年か、女の子でとおしてたからね。オリヴィエって名乗って。
ああいう、白いふわっとした服、よく着せてたなあ。
髪の毛も…ああそうだ、おいで、オリヴィエ。』
懐かしそうに、シッキムは目を細めると、オリヴィエを手招きした。
そして、ふわりと髪に手を触れた。
すると、真っ白のストレートだった髪が、
クリーム色のゆるふわパーマに
金色の瞳が
柔らかい朝焼けの色に早変わりした。
イルハンは、はっと目を見開いた。
あの夢の中で出会った幼いオリヴィエ。
『私の中のオリヴィエが、どうしても、素敵なレディになって王子様と踊りたいというもんで。』
オリバーはくすりと笑った。
『便乗することにしました。』
イルハンは、一歩下がると、膝をついててをさしのべた。
『レディ・オリヴィエ。よろしければ、練習相手を勤めさせていただいても?』
オリヴィエはふわりと笑うと、イルハンの手をとった。
『よろしくお願いいたしますわ。』
イルハンははじめて、オリバーの役にたったような気がした。




