ディアン自ら厄介事を引き受ける
理事長から魔王にもなれると評価されているとは知らずに、俺ことディアンは教室で寝たふりをしていた
いや、実際寝てた。だって結果発表まで暇なんだもん
アレンも今は試験中らしく室内にいない。となれば必然的に昼寝タイムだ
教室に帰ってきて、数十分。皆が席につきはじめた
俺も起き上がって姿勢を正す。結果発表の時間だ
扉の方を見ると、アレンと男教師が一緒に入ってくるところだった。アレンは最後に試験を受けたらしいな
「皆お疲れさま。さて、結果発表だ。この後集会用の武道館に全員集まって発表される。その時に特待生や主席、次席も発表されるだろう。この中に特待生制度で入ろうと思ってる奴手を上げてくれ」
アレンと、ほか数名が手を上げる。思ったより少ないな。そう思ったけど、少なくともあと4クラスあるしまぁまぁいるのかも
「よし、確認できた。得点の高かった者が特待生だからな。魔神様に祈っていてくれ。では、武道館に行こう」
二列に並んで廊下を歩く。隣にいるアレンは先程から両手を組んで祈りを捧げている
「……そんなに祈る事か?もう結果が出てるんだぞ」
「俺にとっては大事なんだよ」
アレンが苦笑いでそういう。まぁ分からんでもない。実際魔神と話してなかったら祈ってたかも
まぁ、魔神がかなり軽いのを覚えているので祈る気にはなれないが
距離はなかったようですぐに武道館についた
中に入ると壁にかけられた巨大なモニタ?がすぐに目につく。その下は舞台となっていて結構大きめ
他はすべて座席。何人くらい入るのかぱっと見ただけでは分からない
俺達は前の方。つまり舞台から近い席に座らされた。話を聞くのは基本的に俺達だしな
遅れて他の教室にいた人達も座り始めた
その時マーリナを見つけたので軽く手を振ると、マーリナも微笑んで返してくれた
ん……?マーリナの後ろですっごい睨んでくる男がいるんだが。しかもイケメン。何なんだ
まぁ、そんなのは無視して俺は話が始まるのを待った
◇◆◇◆◇◆
「さて、では結果を発表しよう。あ、儂はこの学園の理事長であるイシュル=マギ=ナタークリア。知ってるものもいるかもしれぬが、通称は『不老不死の元魔王』や『極悪の元魔王』なんかが有名かの」
試験の時の女の子だった。理事長だったんかい!
本当に「迷子?」とか聞かなくてよかった!過去の俺ナイス!
てか、物騒な名前ついてるけど何したんだろ。周りも怯えちゃってる子もいるし
「結果発表。上のスクロールを見よ。順位はその通りじゃ。特待生と上位20名をAクラス。21から60までをBクラス。61から100までをCクラスといった感じでAクラスを除き40人1クラス。Jクラスまである
全837人中390人が受かることになっておる
失格者は帰宅してよいぞ。この後は学園の説明だけじゃからの」
モニタはスクロールと言うらしい。そこを見ると、順位が書かれていて名前が無いやつは失格らしい
俺は……あった。上から2番目。って次席?マジかよ。わりといいとこ行ってたんだな
主席はマーリナだ。流石すぎる
「やった!」
隣ではアレンが喜んでいた
「特待生入れたか?」
「おう!特待生制度で入る奴の中では4番目だった。10人までだったし、よかったぁ!そういや、ディアンは?」
「次席だったよ」
「す、すげぇな。自信ないとか言ってたくせによ!」
俺の背中を叩きつつ自分の事のように喜んでくれていた。やっぱりいい奴だ
「たまたまだろ。それより、これからよろしくな」
「おう!」
アレンと握手をしていると、騒ぎ出すやつが現れた
「嘘だっ!この僕が試験に落ちるはずが無い!」
「そ、そうだ!俺が落ちているなんておかしい!不正がある!」
「学園側の審査ミスだ!」
等々。全く、落ちたなら潔く帰れよ
「ほっほっほ、小僧共。いや、オベロン子爵の息子にゴードン男爵の息子。それに……お主もか、ヘイロー子爵の息子。他の者達まで」
この世界は基本的に王族、公爵、侯爵、伯爵、子爵、辺境伯、男爵、準男爵の順に位が高い
辺境伯、男爵は同じくらいだが
「私は英才教育を受けてきた。試験に落ちるはずが無いんだ!」
オベロン子爵の息子と呼ばれた男がそう言う。英才教育なんて殆どのやつが受けてんだろ。貴族だし
実際昔父さんに聞いたら、殆どの家は子供に家庭教師をつけているらしいし
「平民が入れて我々が入れないなど、あってはならない!」
ヘイロー子爵の息子がそう言うと男爵の息子もそれに乗っかる
「そもそも特待生枠など作るから平民達が集まるんだ!」
そんな馬鹿みたいな理論を口にする貴族の息子達に、多分平民であろう子達が怯え、泣く子も出てきた
貴族の子供達は肝が据わっている。なんだこいつ等という目だ
失格者でも同様にあんなのは貴族の誇りを捨てているとコソコソ話している。聞こえてないと思うけど
「ふむ。小僧共は試験に不正、もしくは学園が不正を働いている、と?落ちたのは自分の能力のせいではなくこちらの責任であると言いたいわけじゃな?」
「その通りだ!」
ゴードン子爵息子がそう言うと、イシュル理事長はニヤッと笑った
「良かろう。では再試験させてやる。文句があるやつは主席と戦え。勝てたやつはAクラスに入れてやるぞ?」
な、何!?マーリナを戦わせるだと!?許せん!
「理事長!女の子が怪我をしたらどうするんですか!」
俺はマーリナの為に質問する。マーリナが怪我をするのは見たくない
「なんじゃディアン。お前の妹が傷つくと思っているのか?」
「全く!でもそれとこれとは話が違います!女の子に男が手を上げるなど貴族としてどうでしょう!?」
傷つく?有り得ない。だが万が一、億が一かすり傷でも作ったら大変だ。だから全力で何とかする
「ふむ、お前の言いたいことは分かった。なら次席のお前が戦えばよかろう。幸い主席と得点は殆ど変わらん。むしろ戦闘面ではお前の方が上じゃからの」
え、それはそれで面倒……でもマーリナの為にやってやるよ!全員速攻でボコる。鑑定してみたら基本、雑魚ばっかだったし
強いのは、大半受かったやつだしな
「分かりました。俺がやります」
「うむ、いい返事を聞けた。聞いたな小僧共!今から模擬戦を第一武道場で行う!次席、ディアン=フォーループに勝てた者はAクラスに入れてやるぞ!」
ざっと450人くらい。ひとりひとりは面倒だ