表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/53

ディアン達の合宿四日目

「やることがなくなったのじゃ」


四日目の朝。理事長がそう言った


「あーえっと、理事長。それはどういう……?」


「言葉通りじゃ。教えることは教えたので後は個人で頑張るのじゃ。黒騎士達も今日は来ているようだし訓練でも見学しに行くのもありじゃのぉ」


お、騎士達の訓練の見学って興味ある。出来れば四天王のが見たかったけど贅沢は言うまい


今日はアストレイも忙しいらしく顔を出せないと言っていたので、丸投げされても昨日と同じことするだけだしな。魔力を纏わせるのはずっとやってるけど


「私は見たいわ」


オーディーさんが手を挙げてそう言う。強い人は気になるみたいだから興味があるようだ


アラーストやヤーナルもそれでいいということになったので今日は黒騎士達の訓練を見学となった


魔族の精鋭の訓練なのでちょっと楽しみだ


◇◆◇◆◇◆


「双方用意はいいかの?」


「「「おおおおお!!!」」」


「「「おおおおお!!!」」」


理事長の言葉に雄叫びをあげて答える黒騎士達


騎士達は集団二組に分かれて実践式の訓練をするようだ。指揮官は四天王の二人。サルマニア=スターリュオでは無いので俺には名前がわからないが


「では、始め」


一気に駆け出す前衛の騎士達。その後ろでは魔法職が遠距離で撃ち合いをしている。前衛にたまに落ちたりしていて危な過ぎる


その前衛も横並び一列で一人につき一人で戦っているので集団戦というより個人戦だし、訓練というより演武だろう。殺陣と言うんだっけか?まぁ実際こんな戦い方では勝てないだろう


「理事長、あれ本気ですか?だとしたら拍子抜けですけど」


「そうじゃのぉ、四天王が出ていないという点では本気ではない。ただ黒騎士達は全力でやっておるのじゃ。作戦なんかは四天王が考えているがな」


つまり四天王が前時代的な戦法しか使わないってことかな。淳也、戦術ぐらい広めとけばいいのに


本当のところは淳也は広めようとしたが、その知識が無かったので上手く伝わらずに、実用化されていないという事だ


俺は浅く広く日本の知識を持っているから戦術何かも多少覚えているが、詳しく知らないので複雑な事は何も分からない。なのでこの訓練にも口は出さないが、その浅い知識でもこれは無いと言える戦術にガッカリしていると、試合が終わったようだ


「それまで。勝者は四天王カラミナ=テノール。四天王ガウィディア=レオンドーラ。しかし、なぜ四天王の二人は出陣しなかった?これは貴殿たちの訓練でもあるはずだが」


理事長が試合の終了を告げると同時に指揮官をしていた四天王二人に告げる


女の方、カラミナ=テノールはダルそうに理事長を見た


「別にうちが出なくても勝てたし。うちは指揮官の訓練として使い古された戦法してればいいんだし?それにおばさんが口出しすることじゃないでしょ」


うわ、理事長にそんな口聞けるのか……俺には無理だ


「……………」


あ、怒っていらっしゃる!物凄い怒っていらっしゃる!


「まぁ、よいわ。ガウィディア=レオンドーラ。貴殿は」


男の方、ガウィディア=レオンドーラは目をつぶって言う


「敵の将が出てこぬのであれば我もまた出る必要なし。我の望みは強者への挑戦のみ。この訓練に意味など無し」


それ以降何も言わなかった。魔王軍が負け続ける理由がわかったよ。これは無理。魔族という種族の意識改革が必要なレベルだから俺にはどうしようもねぇ


俺はここに来て魔神との約束を破ることを決める。やってられないし


「はぁ、なら儂直々に相手をしてやろう。お主ら、見ているがいい。学園の理事長がどの程度のものかというのを、な」


………俺には完全にカラミナ=テノールに対する私怨が見えるんですが。でも元魔王がどんだけ強いのか見てみたいな


前のテレーズの時には魔力をほとんど使い切ってしまっていたからほとんど知らないのだ


「えー、今日の訓練は終わったしもう良くない?うち帰りたいんですけどー」


カラミナ=テノールは日本のギャルみたいだなぁ


「ふん、この老体が怖いのかのぉ。四天王ともあろう者が」


ピクッ、とカラミナ=テノールの眉が動く。安い挑発に乗るねぇ


「……調子に乗るなよおばさん。分かったやってやるよ。オラ立てお前ら!」


先程の訓練で疲れきった黒騎士達を無理矢理立たせる。それじゃあ使い物にならないと思うがな


「我も異論はないのである。元とはいえ魔王様と戦えるのは光栄なのである。いざ」


ガウィディア=レオンドーラは指揮官を放棄して先頭に立っている。この人は脳筋だ。馬鹿なんだ


ほんと、何で人族に滅ぼされてないのか不思議でならないよね。勇者とかいるし


ディアンは知らない事だが、ここ百年程は人族が進行してこなかった。なので兵の練度は落ち、四天王も世代交代してしまった為にこのような状態になっているだけで、昔はそこそこ戦えていたのだ


そんな事は知らずに魔族を強くする事を諦めるディアン。人族と友好的になることを最優先としようと決めた。アストレイの最終目標と一致しているのでそこは協力しなければな


そんな事を考えていると、試合が始まった




「極大闇魔法、シャドウプリズン」


黒騎士達が走り出したが、その前に理事長の魔法が発動。理事長を中心とした広範囲に黒い壁が一瞬で出来る。見た目一番近いのは収容所、かな


「な、なんだこれは!?」


「ふん、スキルLv.MAXの者は自分で魔法を作ることが出来ることを知らんのか。無知は罪じゃぞ?」


そう言いながら壁の上の部分に結界を張り、完全に外と遮断。籠城作戦は一人でやるものじゃないだろ!


壁も結界も生半可な火力では擦り傷一つ付かないので黒騎士達が完全に無力化された。四天王は微妙なラインだな


「む、下がるがいい黒騎士達よ。我がやってみよう」


ガウィディア=レオンドーラが黒騎士達に距離を取らせて壁の前に立つ


「……うちは上が抜けないか試す。おばさんに動かされるのは癪だけど、それだけの力はあったってことよね」


カラミナ=テノールも魔法を準備し始めた。ただ、見た感じ用意している魔法では全然火力足りてない。残念過ぎる


「魔闘技:爆拳(ばくけん)!ぬぅん!」


魔力を纏わせた拳で壁を殴りつけると、周囲に爆発が起こる。派手ではあるけど爆発だし威力が分散してる。それでは駄目だ


「極大風魔法、エアロゲイル!」


カラミナ=テノールは風魔法使いか。見えないという有利な点があるが、威力はあまり高くないのが特徴だ


鎌鼬が抉るように結界を攻撃するが無傷。範囲も広いしこっちも威力が分散してる。考えようぜ……


「硬っ。おばさん頑張りすぎ」


「手こずりそうなのである。カラミナ、手を貸すのである」


お、なにか協力するみたい。まぁ取り敢えず壁か結界壊さないと攻撃すら許されないからな


「ちっ、しゃーない。じゃうちがエアロゲイル撃ったら当たったとこにガウィディアがなんかして」


「取り敢えずそれでいいのである」


適当か。いやまぁ協力してるだけましというものか


「エアロゲイル!」


「魔闘技:龍激衝!」


ほぼ同時に着弾、しかし無傷


「硬すぎっ!何なのこれ!」


「ほっほっほ。その程度かの。これでは成績優秀な学生の方がまだ手応えがあるわい。のぉ生徒諸君」


一斉に俺とマーリナを見る三人。し、知らない。俺は答えないぞっ!


「流石にそれは馬鹿にしすぎっ!」


「うむ。子供に負けるほどヤワではないのであるっ!」


あ、うん。そう思うよね普通


昨日のアストレイとの戦いの時には理事長と対抗戦参加者とメイド達くらいしかいなかったから俺の戦闘能力はほとんど知られていない


「まぁよい。手加減せんでそろそろ壊してくれてもええんじゃよ、四天王達?黒騎士達も攻撃に参加せんでええのか?訓練じゃぞ?」


この会話中にも四天王含め全員全力で攻撃しても擦り傷一つ無い壁を見て俺たち学生は苦笑いだ


「マジ無理この壁硬すぎんですけどっ!?」


「流石元魔王なのである!」


もう黒騎士達はとっくに力尽き倒れている中、四天王二人は未だ粘っている。頑張るねぇ、このままだと壊せないけど


「ふぁぁ……暇なのじゃあ。ディアン=フォーループ、何かしてくれ」


えー、なんか無茶振り飛んできたんですけど。てかこの人俺に色々頼みすぎじゃないですかね


「何かってなんですか」


「四天王共があっと驚く顔が見たいのぉ?」


理事長はニヤリと笑った。えー、取り敢えず理事長の近くまで行くか


俺は転移魔法で結界の中へ入り理事長の隣へ


「えっ!?」「なんとっ」


四天王二人はそれだけで驚いていた。いや、転移魔法くらいアストレイでも使えてたじゃん。魔法陣ではあったけど。それに魔族でもスキルとして使えるものは少なくない


「お、今のは良かったのぉ。少しは溜飲も下がるというものよ」


「こっちにヘイト向けるのやめて欲しいんですけどねー」


笑う理事長にそう言って四天王二人を見る。手、止まってるし


「取り敢えず理事長に言われたんでやりますけどね。そこどいてください四天王の御二方」


驚きから素直に場所を開けてくれる二人を見てから刀を構える


「抜刀術:鬼泪(きなだ)の九頭」


刀を抜き振り抜くと、九つの剣光が一点に向かって走る。狙いは一番脆そうな門の部分


一瞬刀が止まった時は冷や汗ものだったけど、両断することに成功。人が通れるくらいの道ができた


「じゃ、僕は戻りますんで」


「……まさかこじ開けられるとは思わなかったのじゃ。ただまぁ四天王のあの顔を見れたのでいいとするのじゃ」


俺に手を振りながらも四天王の顔見るのを止めない理事長。まぁ、俺も笑いそうになった


二人して口を大きく開けて目を見開いていたからだ


「なに、あれ。ヤバすぎ」


「見事な腕前だったのである……勝てぬ戦いはしたくないのであるな」


未だ固まったままの四天王二人を再起させて理事長は日が暮れるまで遊んでいた。ぶっちゃけ俺達が暇だったよ。見てるだけだし


ただ、ひとつ言わせてもらう


見た目幼女が楽しそうに遊んでいる姿はとてもいいものだと思いました、まる

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ