ディアン打ちのめされ決心する
「ゼクト殿。少しよろしいか」
司祭が父さんにそう聞く
「はぁ、家の息子達の事で何かありましたか?」
「えぇ、これを見てください」
そう言って俺達のステータスが書かれた紙を渡す
多分、魔力の量的なあれか?それともスキルの方?あるいはその両方で驚かれた?
「な、何と。これは」
は、早く言ってくれよ!
「父様、どうかされましたか」
堪えきれずにそう聞いてしまう
「う、うむ。驚かずに聞いてくれ。ディアンとマーリナは………魔力が、極端に低い」
………………は?
いやいやいや、4桁だよ?普通は強いほうじゃないの!?
「ど、どういうことですか?」
「普通君達くらいの年齢。つまり5歳で、魔力の数値は1万を超えるんだ。それが魔族の体質だからね」
な、何だってーっ!
まさか5桁安定だったとはっ!魔族だからってそんなのありかぁ!
「ちなみに現在、全年代中人族の最高魔力値は23万で、魔族の最高魔力値は30万だよ」
6桁…だと!?まだ上がいるのかよ!!
はっ……《雷帝》と言われている父さんは!?
「父様、子供の頃の……魔力値は?」
「父さんは……4万だったか?」
「……母様は?」
「5万よ」
チートか!いや、これが普通だった……っ!
まさか少ない方で驚かれているとは思わなかったぜぇ。くそっ、こうなったら絶対見返してやるからな!
俺がそう決心した瞬間だった
「ま、まぁ魔力は努力で増やせますから。頑張ってくだされ、2人とも」
やってる。やってやるぞ……目指せ魔力30万!夢はでっかくね
「帰ったら魔力の増やし方教えてくださいね父さん!」
興奮しすぎて敬語なんてもう知らない状態
しかし、 父さんは頼られたのが嬉しいのか「ま、任せておけ!」と言っていた。母さんも手伝ってくれるそうなので頑張ります
面倒だとか言ってる場合じゃねぇ、これは死活問題だ
少ない魔力だと絡んでくる奴も多そうだしなっ!
……っと、ここまでマーリナを置き去りで話をしていたのを忘れていた。振り返ると、マーリナは困惑顔で俺を見ていた
「あの、兄様。父様との会話の意味が……」
「マーリナ」
俺はマーリナの肩を掴んで言った
「は、はいっ!」
「一緒に魔力を増やすの、頑張ろうな!」
「は、はぃ〜」
顔を真っ赤にしてちょっと人様に見せるのをはばかるとろけ顔をしているマーリナに気がつかず、俺は2人で最強近くまで行けたらいいな、と考えているのであった
◇◆◇◆◇◆
あの後は家に帰り、早速魔力の増やし方を教わる事となった
「では、始めようか」
「「お願いします」」
最初の講師は父であるゼクト
母は何か準備があるらしく後になっている
「じゃあ、まずは魔力の使い方からだな」
確かにそれが分からなきゃ特訓なんてしても意味無いよな
「魔力はお前達の体の中を流れている。血と一緒だな。その魔力だが、一点に集中させることで、魔法になる」
父さんは、そう言って指を1本たて、小さな火の玉を生み出した
おぉ、これが魔法か
「こんな感じだ。この程度なら詠唱も要らないだろう」
あ、やっぱり詠唱とかあるんですね
「じゃあ、取り敢えずやってみよう」
……説明なんてほとんど無かったんや!
でもま、やるだけやってみますか
ラノベや漫画では、魔法はイメージと言う。指先に体の中の何かを集める感じ……父さんは魔力と血は似ているものだと言ってたな。つまり、血を一つの場所に留める感じだから、器に注ぐイメージをしている
試行錯誤していると、指の方に何かが溜まったような気がした。お、出来たか?
溜まった何かを先程見た父さんの炎のように形を変える……頭の中でで粘土してるみたいな感じ
完成!と思った時、俺の指から先程見た火の玉より一回り小さいが、火の玉が出来ていた。成功だ
「おぉ、ディアンは凄いな。今まで俺が教えた奴は誰一人出来なかったのに!」
胸を張ってそういう父さん
……え、マジで!?ならなんで教えるとか言ったんだよ!
「んー!んー!」
隣ではマーリナが必死に唸っている
「む、マーリナには流石に無理そうだな!」
父さんがガハハと笑う
威張ることじゃないからな!
「んー!あっ!」
俺は出来たので1人で遊んでいたが、その声に反応して横を見るとマーリナの手のひらから小さな火の玉を生み出したところだった
出来てるよ、この娘
「なんだと!?まさか二人共出来るとはなぁ」
本当に、なんで教えようと思ったんだろう。心からそう思います
ーーーガチャ
「あら?魔法使えてるじゃない」
色々な道具を持った母さんが入ってきた
「む、フレルマ。準備はいいのか?」
「えぇ、これでバッチリよ!」
母さんが出してきたのは、高くまで積まれた書物や魔法陣っぽいのが刻まれた巻物だった
「何これ?」
そう聞くと得意げに母さんは語った
「これはね、母さんの研究記録よ」
いや子供に読ませるもんじゃねぇ!こちとら5歳児だぞこら!
「んー、よくわかんなーい!」
マーリナが少し読んだだけで匙を投げた
同じく、難しすぎて頭いてぇ!
「あらら?」
「フレルマ……それは流石に無理だろ。まだ子供だぞ……」
「……そうかもしれないわね」
この2人、マジで何がしたいんだ?
「どうしても魔王軍に入って欲しかったから。でも少し早過ぎたようね」
魔王軍、だと?面倒事が待ってる予感
「魔王軍の話、聞いてないんだけど、父さん母さん?」
「えっ、あ、そうね。まだ話してなかったわ。これは5歳になったら話すようになっているのだけれど、10歳になったら希望者は魔王軍育成学校、通称『マギガーデン』に入学できるの。そこに貴方達も入るのよ?」
「聞いてない!」
「言ってないもの」
そんな厄介事しかなさそうなイベントはスルーしたい!
「俺は魔王軍に入りたくないです」
「「えっ?」」
両親揃って驚く。何でや
「ま、魔族の子供は皆入りたがるのよ?」
「俺は嫌です」
「魔王軍に入れる可能性があるんだぞ?」
「だから魔王軍なんて入りたくないです」
「「えぇーーー!!」」
うるさっ!
「と、とにかく!魔王軍に入るくらいなら俺は部屋に籠るからな!」
そう言うと俺は自室に逃げ出した。そして、この話のプロローグの冒頭に戻ろう