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ディアン森にて

転移陣に乗ると光に包まれて、少しの浮遊感を感じた後目の前の景色が切り替わった。一瞬の暗転の後、第一武道場から森へ


「着いた。じゃあ散開して、二時間後にここで会おう。殺した人間の首は持ってくること。じゃないとカウントしないから。魔獣の場合は牙か耳がいい。それ以外は放置して」


首かぁ。殺す気は無いし、いるとも限らんからいいが、こんな指示を出すなんて魔王様は本当に人間との和平を望んでいるのかね?


そんなことを考えていると、周りにはグループのメンバーしかいなくなっていた。サマルニアさんも狩りに出かけたらしい


「出遅れたかぁ」


「兄様、殺しはしないのでしたら関係ないのでは?ここで待機でよろしいかと」


マーリナがそう言う。まぁ確かにそうなんだけども、魔獣で俺の力がどの程度なのか試すこともしてみたいんだよな


「………なぁ、魔獣って害なのか?」


俺の質問にはツールドさんが答えてくれた


「基本的には魔族、人族共に被害を出しているため、害ではある。ただ知能を持つ魔獣であったり、テイムされた魔獣であれば害はないな」


「そっか。なら少しくらい魔獣を狩ると点数も上がって害も減らせる。一石二鳥だな」


「一石二鳥って何ですか?」


マーリナが聞いてくる。そうか、日本語だもんなこれ。ことわざなんてこの世界には無いか


「んー、鳥を狩るのに石を使っている者がいるとしよう。普通石一つで鳥一羽。だが偶然にも石一つで鳥二羽とる事が出来た……とかそんな感じだった気がする。違ったかもしれないけど、だいたいこんな感じの言葉だったはずだよ」


「そんな言葉があるのだな。知らなかったぞ」


「私もですぅ」


「兄様は博識でいらっしゃいますね」


「ディアンは他にもいろいろ知ってそうだよね」


各々の感想頂きました


「そんな訳で二度美味しいってね。さ、行こうか。索敵できる人はいるか?」


トゥーラが出来るとのことだったので任せることに


トゥーラを先頭にツールドさん、俺、マリアさん、マーリナの順で縦一列で進む





かなり歩いたけど魔獣も人族も出ないです


「そろそろ森の入口付近になるね。この辺りからは人族の目撃情報が増えてるみたい」


トゥーラがそう言う


「そうなのか。トゥーラは地理とかその土地の情報とかそういうことに詳しいのか?」


「まぁ勉強したからね」


少し誇らしげなトゥーラ。だが、すぐに顔を真剣なものに変えた


「ディアン、索敵に引っかかったよ」


「……魔獣か?」


「残念ながら人族の集団だね。しかも僕達と同じくらいの年の子供だ」


子供がこんな森で何やってんだ……?


「ディアン殿、どうする?」


「取り敢えず隠れて様子を見ようか。何かわかるかもしれないし」


そう言って木の影に隠れる。皆も似たように気配を消して待ち伏せをしていた


その集団は隠れたあとすぐに目の前に現れた



「魔獣全然いないじゃん!これじゃあお金稼げなくてご飯食べられないよー!」


「お腹すいたー!」


「冒険者になってもお金は稼げないねー」



どうやらこの子供たち三人組は冒険者らしい。マジか、こんな若い年から冒険者になれるのか



「そういえば、この森って魔族が出てくるらしーよ!」


「魔族なんている訳ないじゃん!それに出てきても俺たちで倒せるよ!」


「そうそう!それでお金もたっぷり稼ぐの!」



子供がお金お金って……いや仕方ないんだけどさ。何かこう、気持ち的に変な気分になる



「魔族って怖いんだよねー?見た目とかも怖いのかなー?」


「知らなーい!それより魔獣だよー。この辺りならいつも数匹は出てくるのにー!」


「狩り尽くしちゃったのかなー僕達みたいな新米冒険者達が」



ほうほう。ここには新米が来るのか。まぁこんなほとんど何も無い森を熟練冒険者が調査してるのもおかしいとは言わないけどあまりない事だ。危険度は少ないわけだし



「魔族は強いらしいよー?あの《英雄》ウルス様しか一人での戦いには勝ったことがないって。一体に国一つでようやく勝てたって聞いたことあるー!」


「えぇー!怖い!」


「僕達の前に現れ無ければいいなぁ」



《英雄》ウルスか。魔族(こっち)でもそう呼ばれるって事はそれだけ魔族にとって厄介な敵であるということか


あ、最後の子。魔族は君達の近くにいます!


出ていかないけどさ


「ディアン!」「兄様!」


トゥーラとマーリナがこちらに向かって叫んだ



「えっ!?」「人?」「同じ冒険者かなぁ」



三人組がそんなことを言っている。しかし、何で俺のことを呼ぶのだろうか


そう考えた後、俺は頭に強い衝撃を受けて意識を失った。クッソいてぇ!


◇◆◇◆◇◆


「ディアン!」「兄様!」


私は兄様の背後に何者かの気配を感じとっさに叫ぶ。冒険者とやらが騒がしいが構っていられない


背後にいた者に杖で殴られて兄様が意識を失ってしまったようだ。殴った時に『睡眠魔法(スリープ)』でも使ったのか、起き上がる様子はない


私は襲撃者に言葉をかける


「………サマルニア先生、何故兄様を攻撃したのかを教えて貰っても?」


そう、襲ってきたのはサマルニア=スターリュオだった。その顔には笑みが浮かんでいる


「そうだな……魔王様のご命令で強い子を勧誘して来いと言われていることは話したね?」


「えぇ。それとこれとは関係ないように思えますが?」


「いやいや。魔王様は手段を問わず連れてこいって言ったんだよ。つまりこいつは人質ってやつだ。君を魔王軍で働かせるためのね」


なんという事だ。魔王様はそのような強硬策に出たのか!


と、驚いているように見せている私ですが、実は兄様から「こんな感じの強引な作戦だったりしてな」と笑いながら伝えられていたのを覚えていた


兄様の、思い通りなのですね


ならば私はコイツを殺したい衝動を抑えよう。兄様を害そうとした輩を普段なら生かしてはおけないが、兄様の狙いがわからない以上は従っていた方がいいでしょう


「そうですか。それで?」


「君には今から魔王様の元へ来てもらう。授業は終わり。後ろの彼女達はそう皆に伝えて。転移陣は起動してある」


ツールドさんを指さしてそう言うと、「じゃあマーリナさん行こうか」とニヤけた笑みを浮かべる


同性からは嫌われるでしょうね、この人。いえ、異性に好かれるかもわかりません


この女は兄様の策が終わった時に、許可が出たら消してしまいたいと、私は心の中で思った

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